万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国による台湾併合を阻止した学生達-日本国の集団的自衛権が必要とされる時

2014年05月11日 15時14分31秒 | アジア
 昨晩、NHKのBS1において、中台サービス貿易協定の締結に反対して立法院を占拠した学生達の24日間を追ったドキュメンタリーを放映していました。

 学生たちが議会を占拠してまで抵抗した理由は、幾つかあります。同協定によって大幅に台湾のサービス市場が開放され、中国大陸から安価な価格でサービスを提供する設定業者が参入すれば、台湾の学生さんの雇用機会は減少しますし、巨大な中国資本が、台湾の中小企業を飲み込むかもしれません。開放分野は出版業にも及んでいますので、政治色を帯びた中国資本に買収でもされれば、台湾の言論の自由は危機に立たされます。ニューヨークタイムズでさえ、中国資本に買収されかけているのですから、巨額のチャイナ・マネーの前では台湾のマスコミは風前の灯となります。また、馬政権が、秘密裏に中国と協定締結に動いたことも、台湾国民の怒りの対象となりました。協定の内容は国民にほとんど知らされていないにも拘わらず、与党としての数を頼みに立法院で強硬に採決しようとしたからです。親中派とされるNHKでは、主としてこうした理由を取り上げていましたが、占拠という直接的な行動に学生たちを駆り立てた危機感とは、経済的手段を用いた中国による台湾併合の阻止にあることは疑いのないことです。学生たちの勇気ある抵抗運動は、あわやのところで台湾の独立を護ったといっても過言ではないのです。そして、この激しい抵抗は、近年中国が進めてきた”合法的”な台湾併合政策が頓挫したことをも意味しています。この件に関して、4月3日に開かれたアメリカ議会の公聴会では、ランドール・シュライバー元国務次官補代理が”今後、中国は軍事力での台湾の占領を試みるかもしれない”とする趣旨の見解を述べ、棚上げにされていた台湾へのディーゼル潜水艦供与の検討等を提言されたそうです(5月6日付JBPress記事より)。

 南シナ海では、今なおも中越の軍艦による睨み合い続いており、台湾、フィリピン、ベトナム…を結ぶラインは、中国の軍事的な脅威に晒されています。高まる緊張をよそに、日本国では、公明党に配慮し、集団的自衛権の行使は72年の解釈に基づいて”必要最低限”に留めるとする方針のようですが、東シナ海から南シナ海にかけてのシーレーンは、日本国の生命線でもあります。独立を、そして、民主主義を守り抜いた勇気ある台湾との連携を強めるためにも、日本国政府は、集団的自衛権の行使に対して中国の顔色を伺うことはあってはならないと思うのです。

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コメント (4)
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