万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の周辺諸国分断戦略にストップを-集団的自衛権を怖れる理由

2014年05月09日 11時06分45秒 | 国際政治
南シナ海、緊迫 中国「相手が故意に衝突」 ベトナム反発、提訴も(産経新聞) - goo ニュース
 世界屈指の帝国を建設したローマには、”分割して統治せよ”という有名な戦略がありました。周辺諸国の団結を阻止し、自国中心の秩序を形成しようというものです。こうした分断政策は古代ローマの専売特許ではなく、古今東西を問わず、大国がしばしば採用する周辺諸国に対する政策でもあります。周辺諸国をばらばらにし、一国づつ攻略していくことは、一致団結して立ち向かわれるよりも、はるかに打ち負かすのが簡単なのですから。

 今日のアジア諸国は、軍事力を背景とした中国の”帝国化”という問題に直面しています。そして、帝国化という”中国の夢”を追う習政権もまた、周辺諸国の分断政策に躍起になっているのです。スプーラトリ諸島の問題で他国に先駆けて国際仲裁裁判所に中国を訴えたフィリピンに対しては、あらゆる手段を駆使して孤立化を図り、東南アジア諸国の結束に楔を打とうとしています。南シナ海で一触即発の状態にあるベトナムに対しても、今後は同様の孤立化政策を陰に日向に仕掛けてくることでしょう。日米同盟も例外ではなく、日米離反に向けた工作活動も、日米両国において活発に展開されています。中国が、集団的自衛権を怖れ、日本国の行使にストップをかけたい理由はまさにここにあります。集団的自衛権とは、周辺諸国の一致団結への道を開き、自らが遂行している”分断政策”にストップがかかることを意味しているのですから。安倍首相は、政権発足に際して毛利元就が残した”三本の矢”の逸話をアベノミクスの柱として打ち出しましたが、実のところ、”三本の矢”は、集団的自衛権の効用をも語っております(一本の矢ではすぐに折れてしまうけれども、三本束ねればなかなか折れない…)。

 古代ローマ帝国は、辺境の地に文明をもたらしたことで評価をも受けましたが、21世紀の中国は、ローマ法を広げるどころか、アジアを、そして世界を法なき野蛮な状態に陥れようとしています。周辺諸国の結束こそ、中国の野望を挫くのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする