万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

南シナ海中越衝突-ベトナムは中国訴訟包囲網を

2014年05月08日 15時23分14秒 | 国際経済
米国が中国批判「挑発的」…南シナ海の石油掘削(読売新聞) - goo ニュース
 南シナ海のパラセル諸島では、遂に中国艦船が、ベトナムの沿岸警備隊の艦船に対して放水や衝突を繰り返すという暴挙に出たと報じられおります。事の発端は、中国が一方的に海底石油採掘装置を建設しようとしたことにあるそうです。

 ところで、昨年1月、フィリピン政府は、国連海洋法条約に基づき、国際仲裁裁判所にスプーラトリ諸島問題について、中国を提訴することを決定しました。この方法が選択された理由は、国際仲裁裁判の場合には、相手国の同意を得ることなく、一方的に提訴することが可能であるからです。中越間の紛争も、海底の石油資源の採掘をめぐるものですので、当条約に基づいて提訴することができます(調停では無理かもしれない…)。ベトナム政府は、自衛的な手段も辞さない構えを見せておりますが、案外、中国が恐れているのは、こうした訴訟包囲網であるかもしれません。何故ならば、法的正当性を失えば、武力行使は”暴力”に転じ、もはや中国は、国際社会を納得させることはできなくなるからです。平和国家中国の仮面が、剥がれ落ちてしまうのです(既に剥がれてはおりますが…)。東シナ海のガス田について同様の問題を抱えている日本国もこの訴訟包囲網に参加すれば、中国は、法という文明の産物を前にして立場に窮することになりましょう。

 ベトナムは、13世紀にはモンゴルのフビライ・カーンの侵攻を撃退し、20世紀にはベトナム戦争を戦い、中国とも幾度も干戈を交えてきましたが、パラセル諸島の紛争に関しては、軍事的な対抗手段の準備と並行しつつ、法的解決を試みることも一案ではないかと思うのです(軍事的包囲網と法的包囲網の二本立て…)。21世紀のアジアが、法の支配の下で平和を享受するためにも。

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コメント (2)
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