万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

欧州議会”極右躍進”-防御的右派に新たなネーミングを

2014年05月27日 16時58分46秒 | ヨーロッパ
中道右派が第1党維持=仏などで極右躍進―欧州議会選(時事通信) - goo ニュース
 昨日、欧州議会選挙の結果が判明し、新聞等では、”極右躍進”の見出し散見されます。しかしながら、”極右”という表現は、現実を正確に表していいないと思うのです。

 政党の性格を左右で分類する方法はフランス革命に始まるそうですが、極右であれ極左であれ、”極”が付きますと、暴力主義的な過激思想の集団というイメージがあります。特に極右は、常々、ゲルマン民族優越主義を唱えたナチスが想起され、今日でも、極右の代表格は、暴力的排外主義を是とするネオ・ナチです。しかしながら、今日、ヨーロッパ諸国で起きているナショナリスティックな運動は、暴力を手段とするものでもなく、自民族優越主義を主張するものでもありません。行き過ぎたEU統合に対する警戒感や、移民や異文化の急激な流入によって自国が変質し、祖国を喪失することに対する防御反応と考えられるのです(職を失うことも含めて…)。ナチスの系譜を引く”極右”が外部に対して攻撃的でアグレッシブであるとしますと、今日の”極右”は、極めて保身的であり(閉鎖的…)、逆に内向き志向のなのです。行動の方向性が正反対なのですから、両者を同じカテゴリーに含めますと、要らぬ混乱や誤解を招くことになります。

 確かに、左右の分類軸では右側に位置するものの、防御的右派は、”極右”と称するのではなく、別の呼称を用意すべきなようです。直ぐには適切な表現が思い浮かびませんが、例えば、”保守系右派”あるいは、”国民系右派”…などが考えられます。そしてこの現象は、ヨーロッパに限られたことではなく、許容レベルを超えて進む急速なグローバル化に対する一般国民の危機感や不安感の現れなのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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