万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

広島市長の平和宣言は逆効果―中国を批判する勇気を

2013年08月06日 15時29分35秒 | 国際政治
インドへ原子力技術、日本政府に懸念 広島市長平和宣言(朝日新聞) - goo ニュース
 毎年、8月6日が廻ってくるたびに、原子爆弾の投下により、さようならの一言も言えずに、一瞬にしてこの世から消えてしまわれた方々の犠牲の重さに心が痛みます。被爆地である広島市の市長が、核廃絶に熱心に取り組む気持ちは痛いほどよく分かります。しかしながら、核廃絶を求める相手を間違えますと、再度、日本国を核攻撃が襲うとも限らないと思うのです。

 昨日、中国共産党機関紙である人民日報系の環球時報において、復旦大学の沈丁立教授の寄稿として、”中国は核の威嚇能力を向上させよ”と主張する、驚くべき記事が掲載されたそうです。そもそも、中国の核保有は、NPTにおいて認められているに過ぎません。しかも、NPTの前文には、”武力による威嚇又は武力の行使を…慎むこと”を明記しておりますので、中国が、堂々と核を威嚇に使うとすれば、これは、NPTの存在意義を根底から覆す行為です。言わば、”核兵器で周辺の非核保有国を脅かし、他国の領土を奪おう”と言っているようなものですから…。NPTは、核保有国のこうした蛮行を想定しておらず、国際法において中国の核による威嚇が許されるはずもありません。しかしながら、現実には、中国はNPT体制に縛られるつもりはなく、日本国をはじめとした周辺諸国は、中国の核への対応策を急がなければならない状況にあるのです。こうした中、松井広島市長は、インドに原発技術の移転を進めている日本国政府を批判したそうですが、批判の矛先は、核による威嚇を企てている中国にこそ向けられるべきです。中国や北朝鮮を批判せずして日本国政府を叩いても、それは無意味どころか、逆効果となります。中国のために、核の威嚇がより効果を発揮する状況を造り出しているに等しいのですから…。

 松井市長は、自らを平和主義者と位置付けたいのでしょうが、現実の国際社会に対する影響は逆であり、今後の状況次第では、中国の軍国主義の協力者とさえなります。広島市長には、姑息で偽善に満ちた自国政府批判に終始することなく、中国を堂々と批判する勇気を持っていただきたいと思うのです。

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コメント (2)
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