映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

闇の列車、光の旅(2009年)

2014-05-12 | 【や】

★★★★★★☆☆☆☆

 昨年、図書館で数か月待ちして、ロベルト・ボラーニョ著『2666』を借りた。図書館でその本を受け取った瞬間、借りて読もうなどと姑息な考えを反省した。その厚さは恐らく5センチ近くあったのではなかろうか。総868頁、おまけに2段組。借りて読もうなど無謀そのものだったと改めて反省。それでも2週間で読めるところまで読んじまおう、と頑張ったけれども、第2章の途中で時間切れと相成った。悔しいので、第3章以降を未練がましく拾い読みして、第4章のキョーレツさに閉口、、、。

 その後、まだ購入していない(ので当然読了していない)。だって、お高いんだもん。当然と言えば当然だが、税込価格7128円 (本体価格6600円)もするのである。おまけに、この本は異常に重いので、寝っころがっては読めない。別に座って読めば良いのだが、購入への心理的ハードルはもの凄く高い。

 で、本作を見て、その冒頭5分ほどで、頭に浮かんだのが『2666』だったのである。本作が醸し出す雰囲気が、まさしく『2666』だった。ボラーニョの描写から私の頭の中に湧いたメキシコの風景は、もう、まったく本作のまんまであった。なので、一気に引き込まれたというわけ。

 『2666』の続きでは、まさに、本作の前半で描かれる(恐らくそれ以上だと思うが)信じ難い悪の蔓延る世界が繰り広げられるらしいのだが、一旦、ギャングの組織に組み込まれた人間の行く先には「絶望」あるのみなのだ。殺るか殺られるか、逃げ出したくても絶対逃げられないという、底なしの地獄。もう、見ているだけで息苦しくなってくる。

 それだけに、主人公カスペルが組織のナンバー2を殺した後の展開は、少し拍子抜けである。移民でアメリカに密入国を目論む少女サイラと出会い、サイラに惚れられ、2人の逃避行が続くのだが、これが陳腐な恋愛ロードムービーっぽくなってしまっている感あり。最初は心を閉ざしていたカスペルが徐々にサイラと心を通わせていく辺りとか、ちょっと食い足りない。別に、カスペルとサイラの逃避行でも良いけれど、恋愛モードなど一切ナシで、ヒリヒリするような緊張感溢れる、絶望に追われる逃避行の過程を描いた方が、前半の描写が効いてくるのではないかと感じた。

 とはいえ、ほんの少しの希望を感じさせるラストは良いと思う。とことん救いのないハナシじゃ、見終わってドッと疲れるだけだもんね。ハッピーエンドじゃなくても、何とか未来を期待できそうなラストは、本作の場合は正解だと思う。

 『2666』も、メキシコで実際に起きた大量殺人事件がその下敷きにあるというが、本作を見るまで、なんというか、心のどこかで信じていなかった部分もあったのだが、本作を見て、そういう世界がそこには確かにあるのだ、と信じてしまえたような気がする。『2666』の続きがモーレツに読みたくなってきてしまった!!

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