はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ネズミ駆除

2020-08-22 18:07:15 | はがき随筆
 妻が突然「きゃっ」と叫んだ。ネズミが横切ったそうだ。そう言えば私も前日、居間で何か動くのを見た。ゴキブリ捕りシートを1週間置いたが、なかなか捕まえることができない。
 ネズミ捕り器を買ってきてセットした。プラスチック製の箱の中にチーズを置くとネズミが入り、入り口が閉まる仕掛けになっている。翌朝にはもう小さなネズミが入っていた。
 さてこれをどう処分するか。説明書に水責めにするか、殺生が嫌なら遠方の地に放生せよとある。それも迷惑がかかる。悩んだ末、住居侵入の罪で箱ごとビニール袋にいれて処分した。
 鹿児島市 田中健一郎(82) 2020/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

虫に好かれても?

2020-08-22 17:59:25 | はがき随筆
 花は大好きなので庭でたくさん育てている。宿根の花も多く、それぞれの時期に咲いてくれるので感心するし、ありがたい。
 土いじりは好きだが、虫は苦手だ。土を耕したりすると、芋虫がコロンなんてこともある。トカゲもあいさつに顔を出したりしてそのたびに「キャー」ということになる葉っぱもよく食べて穴をあけてくれるのも嫌だ。
 先日は、毛虫にやられたらしく、腕や背中にかすり傷のような跡が無数にあるので何だろうと思っていると、次の日にはひどいことになって皮膚科へ。そんなに虫に好かれてもなー。
 宮崎市 高木真弓(66) 2020/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

宝石のようなトマト

2020-08-22 17:50:36 | はがき随筆
 長女夫婦で、長男(トマト農家)の手伝いに行き、4本の苗をもらってきた。我が家のわずかな空き地を耕して植え、支柱、施肥、そして雨よけにビニールを張り、成長を楽しみに。早朝散歩に出かける私も、真っ先に必ずその成長ぶりをながめる。今は縦4㌢ほどの楕円形の粒の房。深紅、黄、緑、色とりどり朝日に映えて、まるで宝石だ。娘が今日の取れ立てを食事前に届けてくれ、記録してみたらもう200個超えたよとニコニコ顔。初めての農作業、コロナで息の詰まりそうな日々、取れ立ての味を堪能しながら貴重な体験よかったね。
 熊本市中央区 原田初枝(90) 2020/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

本日のアドバイス

2020-08-22 17:42:48 | はがき随筆
 夕食後、「俺が片付けるから歩いてこいよ」。夫のことばに促され外に出る。久しぶりの小丸川堤防。灰雲に覆われているが、西の雲間にオレンジの夕焼け。なんだかほっとする。
 4月に肩、腕に痛みがでた。痛みはなかなか治まらず、コロナの広がりと相まって気持ちは沈んでいく。体力も落ちていくのにはねのける気力がない。
 「身体は動かさんと硬くなって駄目になるぞ」。肩を傷め、自力で克服した夫のことば……。少しずつ動き始め、歩こうという気力も湧いてきた。「もっと意識して動けよ」。出掛けに本日のアドバイス。
 宮崎県高鍋町 井手口あけみ(71) 毎日新聞鹿児島版掲載

心のアルバム

2020-08-22 17:37:12 | はがき随筆
 私の心のアルバムは、はがき随筆です。初めて新聞に掲載されたのは82歳の時でした。感激は今でも忘れることはできません。亡き主人が本当かと身を乗り出して取り上げ、穴のあくほど見てくれました。それから今日までその喜びが続いています。随筆は日記帳に貼っています。日記も30年続いています。随筆は日記に花を咲かせています。読み返してみると別の世界が見えて実に面白く、自分の心がシャボン玉のようにいろんな顔を見せてくれます。楽しくてたまりません。やっぱりはがき随筆は心のアルバムとしみじみ思います。私の宝物の一つです。
熊本県八代市 相場和子(93) 2020/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

母の忌に思う

2020-08-22 17:29:51 | はがき随筆
 「ぐつぐつ」と煮物に味が染みていく。味見をするが、何かが足りない。母の煮物の味とはちょっと違うようだ。秘訣があったのだろうか。母は一品一品丁寧に作っていたようだった。やはり愛情の深さが味の決め手になるのかもしれないと思った。
 明るくて料理上手な母が逝って今年で33年目になる。好きな煮物をお供えしようとタケノコを入れて朝から作った。スイカもお供えできた。灯明に照らされて満足そうな母の笑顔が浮かび上がる。何かを話したいような表情にも見えてくる。思わず「お母さん」と呼んでみた。
 鹿児島市 竹之内美知子(86) 2020/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

余計なお世話でも

2020-08-22 17:20:26 | はがき随筆
 加齢とともに「意地悪ばあさん化」「小言幸兵衛化」に拍車がかかつてきたように思う。
 昨年末、某百貨店の駐車場に気になるパネルが。「元旦から閉場を早めます」とある。早速店内のコンシェルジュに「間違った表記だ」と伝えた。開場時刻なら、午前中だから片目をつぶっても、夜については譲れない。2時間後に駐車場に戻ったら、旦の字の一が消されていた。なんという早業。数日後に入ったらバランスの悪い「元日」の部分に、新しい小さなパネルが貼られていた。流石である。
 鹿児島の老舗百貨店だから、正しい表記を、と思った次第。
 鹿児島市 本山るみ子(67) 2020/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

新人採用

2020-08-21 05:53:13 | はがき随筆
 新しい状業員を採用した。働けと命令すれば24時間いつでも働く。しかも文句一つ言わずにモクモクと働く。「きついから給料上げてください」とも言わない。「今日は体調が悪いから休ませてください」とも言わない。その正体はロボット掃除機である。
 中には、その動きがペットみたいに思えてニックネームまで、つけている人がいるというが、その気持ちは何となく分かる。近づいてくるとついヨシヨシ頭をなでたくなるのである。
 しかし家内には評判が悪い。なぜなら掃除が趣味でライバルだからだ。頭が痛い!
 宮崎市 谷口二郎(70) 2020/8/21 毎日新聞鹿児島版掲載

ウオミケマイマイ

2020-08-21 05:44:21 | はがき随筆
 小学1年生の孫が急にカタツムリを飼いたいと言い出した。図鑑を見て興味を持ったようだ。自宅付近で探したがみつからなかったので「じぃじの庭で探して」と依頼が来た。
 家の周りを探索すると簡単に2匹捕まえた。早速捕獲品を受取に孫が来た。一緒に来た父親が虫籠を眺めながら「1匹は珍しいケマイマイの一種だ」と。彼も図鑑を読んでいた。虫眼鏡で覗くと、平たい殻の周りに電動ノコギリの歯のように毛状の突起が並んでいる。地名にちなんで「ウオミケマイマイと命名しよう」と言うと、孫はけげんそうな顔つきになった。
 鹿児島市 高橋誠(69) 2020/8/19 毎日新聞鹿児島版掲載

山と音と風と

2020-08-18 17:11:38 | はがき随筆
 一時の晴れ間に、栗の木の下草を切る。全身に浴びた日差しは暑く、汗が流れ落ちる。
 1時間ほどで機械を止め、切った草の上に腰を下ろす。取り換えたタオルで顔を覆い汗を鎮めた。遠くの国道を走る大型車の音が近づいては消え、耳を澄ませると、かすかに五ヶ瀬川の瀬音が入ってくる。
 静けさの中のその音は目を閉じていると眠りにさえ誘われる。「山はいいなぁ」。空気がいい。風がいい。
 下界ではグレーに似た風が吹き続き、やむ兆しが見えない。
 いつになったら平穏な風が戻ってくるのだろう。
 宮崎県延岡市 川並ハツ子(75) 2020/8/18 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆7月度

2020-08-18 16:27:48 | はがき随筆
 月間賞に平田智希さん(宮崎)
 佳作は増永さん(熊本)、
 福島さん(宮崎)、
 馬場園さん(鹿児島)

 はがき随筆7月度受賞者は次の皆さんでした(敬称略)

【月間賞】 18日「若木の香り」平田智希=宮崎県都城市
【佳作】14日「7年後の気掛かり」増永陽=熊本市中央区
▽5日「間借りできます」福島洋一=宮崎市
▽28日「ツバメの再来」馬場園征子=鹿児島県薩摩川内市

 長かった梅雨も明け、九州各県真夏日が続いています。
 令和2年の梅雨入り最初の日曜日。いつ降り出すかも知れないお天気を予感して、洗濯物を干す場所を考え、軒下の風の当たる場所を選び、干しに出た平田さん。
 昨日の雨が水蒸気になって若く伸び行く緑の風を感じとり思わず深呼吸してみた。それがこれから伸び行くであろう若木の香りだと感じとれたのは今朝の息子のラジオインタビューを聴いたから……。
 平田さんの息子壮一朗さんは、はがき随筆4月度の月間賞受賞者でした。掲載作はМRT宮崎放送ラジオ番組「潤子の素敵に朝!」で朗読され、そしてインタビューがあるのです。そのラジオから流れてきた息子の声はみずみずしかった、と。根を張りぐんと伸び行く若木のかおりだ。洗濯物を干すひととき、そう感じ、深呼吸を何度も繰り返し味わい、その思いを書きとめた。見守る深い愛を感じ取った作品でした。
 新聞各社のみならず、書籍もデジタル化が進んでいる。早朝の新聞宅配が続いているが、これからも紙の新聞を読むことができるのだろうか……。
 増永さんの気掛かりは二つあります。お気に入りの日曜掲載のクロスワードの第1000回を全問正解で達成したいという夢の実現。達成にはと計算を試みてみると、あと残り約370回、ざっと計算すると7年後になる。これが「7年後の気掛かり」。
 もっと大きな気掛かりはパズルの設問120余りの答えがデジタル画面になれば書いたり消したりできない。そんな時代が来たら諦めるしかないのか。深く考えて読むには紙の新聞も絶対に必要だと痛切に思うと、増永さんは書きます。きっと多くの人がそう思っているはずです。7年後の全問正解のために寿命と脳力を期待しています。
 鹿児島と宮崎、ツバメ関連の投稿がはがき随筆7月号に掲載されました。
 「ツバメの再来」と「間借りできます」。鹿児島の馬場園家の古い巣にツバメが8年ぶりに飛来。奇跡と喜びながらツバメの夫婦にヒナが誕生。大きく口を広げて待っているヒナに親ツバメが餌を運んで育てるのを見守り、巣立ちまでの2カ月を幸運が舞い込んだ日々と記されている。
 宮崎の福島家は、ツバメの夫婦の巣選びの状況を耳を澄ませて観察。天敵のカラスからヒナを守るために最高の場所を選ぼうとしているツバメのさえずりを理解できる長いつきあいを、ほのぼのとご披露。ツバメは、軒先を借りる住人の優しさも考慮にいれてるなんてすてきな洞察です。人との往来を自粛しなければならないコロナ感染のただ中にある今、自由に行き来できる空飛ぶツバメに収束への希望を託しましょう。
  日本ペンクラブ会員 興梠 マリア








ドラゴンと餃子

2020-08-18 16:20:09 | はがき随筆
 この盆休みに、闘病生活が続く父親を見舞う段取りをあれこれ計画して心待ちにしていた長女だったが、断念した。日に日に感染者数が増え続けている、このコロナ禍のさなか、東京に居を構えているものとしては残念ではあるが、当然の決断でもあった。テレビ電話で父親の様子を見知ってはいても、それだけに直接会いたいという思いもなお一層募っていた。落胆している娘に手作りの餃子を送ることにした。私の数少ない「おふくろの味」にカボスも添えた。それに大切に冷凍保存しておいた夫の釣った大ぶりの太刀魚、ドラゴンも丁寧に梱包した。
 熊本県菊池郡菊陽町 有村貴代子(73) 2020/8/16 毎日新聞鹿児島版掲載

コロナ給付金

2020-08-18 16:05:11 | はがき随筆
 コロナ対策の定額給付金が届いた。財源はもともと私たちの税金なんだから、首相に上から目線で恩を着せられたくないものだが。
 私たち夫婦は実家の母と同居しており、家賃がかからない分、わずかな年金でも生活は成り立っている。コロナの影響はほぼない。
 日ごろから国の予算は不要不急の戦闘機に巨額を充てるより福祉に配分すべきだと考えているので、今回国に代わって給付金の一部をこども食堂とホームレスを支える会に寄付した。少しだけコロナに反撃した気分になった。
 鹿児島市 種子田真理(68) 2020/8/15 毎日新聞鹿児島版掲載

父の祈り

2020-08-18 15:57:20 | はがき随筆
 8月15日に全国戦没者追悼式がテレビで放映される。その時父母と姉、私は正座し式典に参加している気持ちとなった。
 従軍記者の経験がある父は戦地のことを語るのだった。ある日、行軍中に相手から突然発砲を受けた。命令が出ないので自分が「伏せ! 伏せ!」と大声を発したと。危機一髪での命拾いであった。「最前線へ行ってきた」と言うのが父の口癖であった。
 最前線の状況を、妻や子供に話すのは悲惨で辛かったはず。テレビの前で深く頭を垂れた父の胸中を思う。15日の父の祈りは他界するまで続くのだった。
 宮崎県延岡市 源島啓子(72) 2020/8/15 毎日新聞鹿児島版掲載








平和とコロナ

2020-08-18 15:50:11 | はがき随筆
 私が卒業した小学校の校歌は5番まである。普段は2番まで歌うが、卒業式と入学式の時だけ5番まで歌う。
 この校歌は私が生まれた昭和24年に当時の校長先生が作詞して新しく作られた。その4番に、「自主と自由のしるしもて」、5番に「民主日本の若き楯」とある。教え子を戦地に送った悲しみ、戦後教科書を黒塗りにした苦しみ、未来を担う子どもたちへの強い願いがそこにある。
 今年はコロナで卒業式も入学式も簡素化され、校歌はどうだっただろうか。平和への課題、ウイルスへの課題、私たちが向き合うべき大きな課題である。
 熊本県八代市 今福和歌子(70) 2020/8/15 毎日新聞鹿児島版掲載