はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

コロナの時代に

2020-08-04 11:18:50 | はがき随筆
 施設に入所している母に100日ぶりに面会ができた。「3月から面会禁止」となったとき、まさかこんなに長くなるとは思わなかった。会える日まで生きていてと切に祈った。6月から予約を取ると5分間だけ面会できると知り、すぐに申し込んだ。1週間後、順番がきた。
 娘を覚えているか不安だったが、分かっているようでうれしかった。孫たちの写真を見せながら「これは○○、そっちは○○よ」と教えていくと、記憶の糸を手繰り寄せるように見入っていた。あっという間の5分間で「もう帰るの」。それが久しぶりに聞いた母の声だった。
 鹿児島県出水市 清水昌子(67) 2020/8/1 毎日新聞鹿児島版掲載

アリの知能指数は?

2020-08-04 11:12:01 | はがき随筆
 朝のテーブルで、家主の許可もなく小さなアリ三、四匹が運動会をしている。が、電気をつけると明るさに驚いて、右に左に、前に後ろに逃げ惑う。
 動きは素早い。瞬時に30㌢は移動する。1㍉に満たない小さな体のどこにあのような機敏さが潜んでいるのだろうかと驚く。
 指先で蟻を軽く押さえつけて、動きを止める。すると一、二秒間は死んだようにうごかないが、じわじわと安全を確かめるように動きだして、また、元の機敏な動きに戻る。私のチョッカイを屁ともおもわない、そんなしたたかさにも驚く。
 宮崎市 日高達男(78) 2020/8/1 毎日新聞鹿児島版掲載

ママは看護師さん

2020-08-04 11:05:37 | はがき随筆
 「あっ! ママだ!」と娘が保育園の玄関に跳んできた。担任の先生が「さっきのお話、ママにも教えてあげて」と娘の耳元でささやく。「あのねぇー、ゆいちゃんのママは看護師さんでね、かっこいーの。ゆいちゃんもね、看護師さんになるのよ!」。小鼻は少し膨らんでいる。
「そっかぁー、楽しみだな」
 いつもひとり親家庭でいつもどこか後ろめたさと申し訳なさを感じていた。そんな私にとって娘の一言は、最高の良薬だ。ゆいちゃん、ありがとう。でもね、ママはまだ看護師さんになるための勉強中。自慢のママになれるように努力するから見ててね。
 熊本市東区 坂本奈穂(39) 2020/8/1 毎日新聞鹿児島版掲載

疲れたコーン作り

2020-08-04 10:57:20 | はがき随筆
 「アナグマにやられた」と早朝苦笑いで畑から帰ってきた主人。「何でェ、あんなに予防網をめぐらしているのに、どれくらい?」と私。「おそらく百本ぐらいは……」と。
 「自作のものを友に」と始めたスイートコーン作り。ここ何年かしてきたが、初めてだ。わなをかけ、回転灯をつけても連日なぎ倒され、食い荒らされて、出るのはため息のみ。
 アナグマの餌場と化し、その執念にあきれる。賢いアナグマ君の勝利だ。こちらにも送る分だけの物と少しの利を残してくれた。共存共栄ということか。それにしてもくやしい!
 宮崎県西都市 河野満子(70) 2020/7/30 毎日