はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

石になりたい

2010-10-08 22:15:49 | はがき随筆
 外を走り回っていた勢いで、店内へ駆け込んで来るなりかれは「僕のお父さんね~、石になりたいんだって」「え~っ、石は蹴られるから嫌いだ」と私。「蹴られても固いのでダメージが少ないから石になりたいと言ってた」「ふ~ん」
 彼は駄菓子を買い求め、屈託なく元気に外へ飛び出して行った。
 冷静に考えたら道路は整備され、石ころを蹴ることは今やセピア色だ。
 友だちと石ころを蹴りつつ、未舗装の道を下校してたことを妙に懐かしく思い出させてくれた彼のひと言。
  垂水市 竹之内政子(60) 2010/10/8 毎日新聞鹿児島版掲載

青い空

2010-10-08 22:10:37 | はがき随筆
 サッシ窓から、ふと外を見ると、青い空にモクモクとわく入道雲。この雲を見ると、夏だなあと思う。日差しはまぶしいが、夏の空は格別青く美しい。
 飛行機の窓から見た空も、ヘリコプターの窓から見た空も、キラキラまぶしく光って、ああなんて空は青いんだろうと思った。6階病室の窓から見た空は青く、近く、入道雲に手が届きそうな気がした。 
 この青い空が、真っ赤に染まった時代があったと思うと、恐ろしく、悲しい。
 「青い空は」の歌を口ずさみながら、平和な青い空をいつまでもながめていたいと思った。
  出水市 山岡淳子(52) 2010/10/7 毎日新聞鹿児島版掲載

「間に合いそう」

2010-10-08 14:06:36 | 岩国エッセイサロンより
2010年10月 8日 (金)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 「禁煙治療にも保険が適用されます」。このポスターを見てから主人の禁煙レースは始まった。「最初はたばこを吸ってもいいんだって。薬を飲んだら、だんだん吸いたくなくなって6割の人はやめられるらしい」。そう言いながら最後の1本が終わった。 

予想は、ダメな4割の人だったのに「禁煙の秘けつは家族愛」の呪文が効いたのか、三日坊主どころか、10日も頑張っている。薬の効果も絶大で吸いたくないそうだ。今、家の中にはたばこの代わりにアメがごろごろしている。薬代もアメ代も家計から投資してるんだからリタイアしないでね。

  (2010.10.08 毎日新聞「はがき随筆」掲載) 岩国エッセイサロンより転載