岩国市 会 員 沖 義照
早朝、庭に出ていた妻が戻ってきた。「イノシシがおりに入って捕まったそうよ。見に行かない」と誘う。私は行かなかった。間もなくすると帰ってきて「大きなイノシシがおりの中で暴れていたわ。目がとってもかわいかった」と言う。
今年も春過ぎから、近くの畑を荒らしているという話は聞いていた。山すその畑に鉄製のおりが仕掛けられているのも、見ていた。
そのおりの中で暴れまわっているイノシシを見に行く気にはならない。後のことを思うと、つぶらな瞳を直視できない。「これで安心ね」朝食の支度をしながら妻は明るく言うが。
(2010.10.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載
写真は沖さん提供