「一件落着」

2010年10月 5日 (火)

岩国市　　会　員　　　山本　一

　突然左耳で「がさがさ」と音がする。異物があるらしい。私の耳掃除担当、妻の出番だ。しばらくほじくっていたが「何も見えない」と言う。自分でやってみる。激しい音だ。

　「何かある。また、変な病気になったかもしれない」と不安が募った。ここ数年、体のあちこちが突然不調になる。「またか」。すでに病院は閉まっている。眠れないまま、翌朝、耳鼻科に駆け込んだ。

　医者は「１㌢ほどの白髪が鼓膜に当たっている」と言った。「黒髪だったら見えたのに」。妻の悪態を聞きながら晩酌を倍にして祝杯をあげた。
　（2010.10.05　毎日新聞「はがき随筆」掲載）岩国エッセイサロンより転載　

睡眠不足の夏

　猛暑のために睡眠不足だったこの夏。ついついテレビをつけた。そして、夜中のボンヤリとした頭は、生のフルーツのプレゼント付きが魅力だったのか、テレビショッピングで、パワージューサーなるものを買った。
　本体とは別便で新鮮なリンゴとブドウも確かに届いた。
　新しい物好きの私は早速、暑さをしのごうと体を冷やす効能のあるキュウリでジュースを作った。「なかなかいける！　肌もきれいになっていく感じ」
　ボンヤリ頭がもたらした朝いっぱいのフレッシュな野菜ジュースが主人の健康をも維持してくれそうである。
　　鹿屋市　田中京子(59)　2010/10/6　毎日新聞鹿児島版掲載

マリンパーク

　円すい形の頭に、32面体の銀色の球体が乗った建物。入り口から地下に降りた。目の前のガラスの向こうで、濃い藍色をしたカツオが群れで切れ目なく回遊している。その下では、大きなウミガメがゆったりと動き、色鮮やかな熱帯の魚が泳いでいる。軟体動物もいる。
　ここは旭山動物園で有名になった行動展示されている最近の水族館ではない。30年以上も前に、鹿児島市与次郎ケ浜の長水路の中に建てられたマリンパーク。今は痕跡もない。誰の企画による施設か知らないが、何度も通い、楽しかった場所としての記憶は今も残っている。
　　鹿児島市　高橋誠(59)　2010/10/5　毎日新聞鹿児島版掲載