はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

これがなかったら

2021-09-11 21:50:47 | はがき随筆
 私が26歳のとき、同じ職場で人事担当をしていたМさんは、社内登用試験の実施にあたって、私の受験申込書を無断で作成し、応募したのである。
 結果として、私は九州支社に転勤し、そこでキャリアを積むことになった。あのとき、Мさんのおせっかいがなかったら、私の人生は大きく変わっていたに違いない。
 私は持病があり、総合病院に二十数年お世話になっている。病は深刻だが、人一倍健康管理に努め、海外旅行にも26回行った。私に持病がなかったら、今も元気に生きているかどうかわからない。
 熊本市北区 岡田政雄(73) 2021/9/11 毎日新聞鹿児島版掲載

利尻・礼文島の旅

2021-09-11 21:28:49 | はがき随筆
 初夏に咲くレブンアツモリソウを見たくて、いくつかのツアーコースに申し込んだが、人数不足で催行には至らなかった。
 7月のツアーでやっと北の島を訪れた。西の礼文島は、平地でも高山植物が見られる得意な環境。散策しながら植物観察をする時間があり、スマホと使い捨てカメラで何十枚も撮った。
 利尻島は、屋久島のように島に中央に高い山があり、東西で天気が全く違う日も。稚内と各島を結ぶフェリーが臨時ダイヤで、観光の順番や昼食時間で調整したようだ。エゾカンゾウは真っ盛り。目的の花は絵はがきで我慢する。
鹿児島市 本山るみ子(68) 2021.9.11 毎日新聞鹿児島版掲載

化け物

2021-09-11 21:21:32 | はがき随筆
 今年も暑い夏だ。70歳の頃から、めっぽう暑さに弱くなった。夕方花壇に水やりをしただけで熱中症の症状が出る。だから、朝の青空を目にしただけで憂欝になる。朝っぱらからクーラーにつかり、今年はテレビでのオリンピック観戦が日課となった。そんなある日に左腰の辺りを手で触ると米粒ぐらいの突起。もしやと即病院へ。案の定、4回目の帯状疱疹だった。
 幼児期にかかった水ぼうそうのウイルスが、抵抗力減退の私に、帯状疱疹に化けて出てきたのだ。涼しさなどみじんもかんじさせない厄介な化け物にとりつかりた夏となった。
 鹿児島県肝付町 吉井三男(79) 2021.9.10 毎日新聞鹿児島版掲載

もったいない

2021-09-11 21:13:44 | はがき随筆
 東京五輪開会式で弁当が4000食も廃棄されたと聞いて驚いたが、何のことはない、日本では年間約2500万㌧の食品廃棄物が出ているそうだ。
 その中の四分の一が食べられるのに廃棄される「食品ロス」で国民1人当たり茶わん1杯分を毎日捨てているとのことだ。食料自給率が40%に満たない国がそんなことでいいはずがない。世界で飢餓線上にあるとされる数億人のことを考えると罪悪感さえ覚える。
 ケニアの故ワンガリ・マータイさんの愛した日本語「もったいない」を我々日本人は忘れてはならない。
 宮崎市 高橋幸彦(62) 2021.9.9 毎日新聞鹿児島版掲載