はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

彼岸花

2021-09-08 22:04:29 | はがき随筆
 真っ赤な彼岸花が公園の一角で咲いている。8月下旬、梅雨を思わせる長雨がやっと一息ついた日、散歩中の目に飛び込んできた。秋の彼岸まではまだ3週間ぐらいあるはずなのに、とわが目を疑う。
 白い花の彼岸花も近くの民家の庭で見かけていたが、赤い花はひときわ訴える力が強い。「いやあ、長く降りましたねえ。上がるのを待ちかねてましたよ」というような勢いさえ伝わってきた。
 私たちの暮らし方がかなり影響しているとされる地球環境の激変。季節を少し先取りした彼岸花がさりげなく教える。
 熊本市東区 中村弘之(85) 2021.9.8 毎日新聞鹿児島版掲載

イペ

2021-09-08 21:48:13 | はがき随筆
 中間試験が終わった午後、友人が頼みに来た。「日本の高校を見たいらしい。大勢来るから生徒会の一員となって対応してくれないか」一夜漬けしたので気乗りはしなかったが「いいよ」と応えてバスを待った。降りてきた十数人はどう見ても日本人。私がお相手したのは長い黒髪のぱっちりした瞳。いっぺんに目が覚めた。ぴったり横について校内を案内して回った。話をつなごうとやっと思いついた質問の「体育館は何て言うの?」に「ジナスィオ」と小さな唇はささやいた。別れ際、細い指先から手渡されたのは黄金色のイペ。ブラジルの国花だった。
 鹿児島県出水市 山下秀雄(52) 2021/9/7 毎日新聞鹿児島版掲載

休肝日

2021-09-08 21:40:05 | はがき随筆
 料理しながら、日本酒にするかビールにするか考える。量は控えめながら種類は多い。ワインと日本酒は取り寄せて常備。たまには地元の焼酎をお湯割りで呑むこともある。
 週に1日は休肝日にせねばと思うのだが、まあいいかと先延ばしし続けてしまう。ある日思い立ってノンアルコールビールを飲むことにした。何も飲めないのは寂しいが、ノンアルビールが飲めればと納得。食後ビールを飲んだ気で飲み足りなく感じ、他の酒に手を伸ばそうとして、いかん、いかん、今日は休肝日だったと一人苦笑い。
 宮崎県串間市 岩下龍吉(69) 2021.9.6 毎日新聞鹿児島版掲載

Gパンでおしゃれ

2021-09-08 21:31:39 | はがき随筆
 一年中活躍するGパン。でも今年の夏は外出用のロング丈、七分丈のGパン2本が大活躍。綿100%なので汗も雨もよく吸収してくれ肌もべとつかず、毎日着て毎日洗濯している。
 私たちの若い頃は、Gパンは若い男性の代名詞だった。それが今や老若男女全てに人気。おしゃれ服にも普通に合わせて違和感がない。むしろナウいとなる。この春買い替えたブルー系のスニーカーと色が合い、おしゃれ感も十分。
 外出と言っても今は人通りの少ないアーケード街往復2㌔のウオーキングと買い物。お気に入りのGパンで心晴れ晴れ。
 熊本県八代市 今福和歌子(71) 2021.9.5 毎日新聞鹿児島版掲載