久しぶりの駅舎。霧島連山のふもと。絵本に出てきそうな霧島神宮駅である。待合室に耳を傾けるとお年寄り2人が楽しそうに方言でカタッ(おしゃべり)ているのが聞こえてきた。すると子供の頃の駅舎の情景が甦ってきた。朝夕は通勤通学でおおいに混雑する。時間帯を過ぎると行商のおばさんたちが列車から降りてきて駅舎内はかごっま弁が飛び交い再び賑やかに。早朝の風物詩になっていた。ふるさとの木造駅舎もいつの間にか消えたが、いまだにホームを発着する列車の音、人の足音、ぬくもりのあった汽笛の響きが聞こえてくる。
鹿児島県さつま町 小向井一成(73) 2021.9.1 毎日新聞鹿児島版掲載