紅葉の時期になると、亡き夫との京都旅行を思い出す。寺院の紅葉は見事で京都ならではの趣があった。その中でも永観堂は特に心に残っている。山門を入ると、思わず息をのむ真っ赤にもえるような紅葉が目に飛び込んでくる。参道を進み、お堂の壇上に「みかえり阿弥陀像」が安置されていた。その慈愛に満ちたお姿、振り返るまなざしに、しばし足を止めて、夫の健康を拝んだ。その美しい立像に感銘を受け、離れがたいように立ち尽くしていた夫のことを思い出す。近年出かけることもなく、庭のイチョウに晩秋を感じながら当時に思いをはせる。
鹿児島市 竹之内美知子 2012/2/4 毎日新聞鹿児島版掲載