はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「2年越しのアマリリス」

2011-05-30 22:00:56 | 世の中、ちょっとやぶにらみ


2011年05月30日 | 季節の移ろい・出来事        

梅雨に入ったとたんの台風襲来による大雨。この雨を待っていた植物もある。
大きなツボミを抱え、開こうかどうしようか・・・迷っていた感じの純白のアマリリス。
雨と共に一気に開いた。背こそ高くはないがその大輪の華やかさ。応援して待った甲斐がある。

昨年は全く花の兆候を見せないまま、梅雨をやりすごした。
今年は2年越しの開花である。
たかが庭に咲くアマリリスではあるが、咲いて見せてくれると嬉しくなる。

咲くべき花が咲かなかったり、生るべき実が生らなかったりすると、「手入れを怠ったのだろうか」「水遣りの手間を省いたのだろうか」あれこれ自分を責めることになる。

遠く離れた共に久しぶりの手紙を出してみる。
返事が返ってくればホッとする。同時に先方の元気に触れて嬉しくさえなる。
ところが、なかなか返ってこなかったら「それまでの無沙汰が失礼だったのだろうか」「今回の手紙になにか余計なことを書いたのだろうか」「体調を崩しているのではないだろうか」と心配になってくる。

こんな時は決まって、良い方向に考えることはない。
否定的で後ろ向きな想像ばかりが頭をよぎる。
「いやぁ元気ならそれでいいよ・・・」などと言ってはみるが、内心複雑である。

2年ぶりとはいえ見事に咲いた花にホッとさせられる。枯れてなどいなかった。
こんな心配をしないですむよう、花が終わったらまた一つ手をかけてやろう。
たかがアマリリス。されど命ある生き物には違いない。
 
by yattaro-さん

「世の中ちょっとやぶにらみ」ブログより転載

「息子夫婦の心遣いで家族旅行」

2011-05-30 21:52:46 | 岩国エッセイサロンより
2011年5月28日 (土)
     岩国市  会員  横山恵子
 先月の連休に長男夫婦が車で下関の奥座敷・川棚温泉へ連れて行ってくれた。脳梗塞の後遺症で手足が不自由な夫と、1歳2カ月の孫を連れての5人の旅だ。
 朝10時過ぎに出発。下関市に着き、8年間住んでいた住宅周辺を見に行った。
長男が通っていた幼稚園は当時のままで、懐かしく写真を撮った。
 そして夫が小学校教論のとき、教えたNさんの家へ。結婚式に招かれて20年、話に花が咲いた。 
 夕方、川棚温泉に到着。部屋に外の景色が見える風呂があり、夫にとってはありがたかった。私は露天風呂へ。徳島から来られた方から「被災者のことを思うと気が進まなかったが、自粛ばかりでも貢献ができないと思い、1週間前に申し込んだ」と言われ、思いは同じと思った。葉っぱが浮かび、外気を吸いながらの入浴は心も体もリフレッシュできた。
 夕食、数日前、70歳を迎えた夫を祝ってビールで乾杯。
ノンアルコールビールの夫も満足そうだった。
 翌日は有名な唐戸市場へ。「あーたん」などと発する孫との触れ合いは心安らぐ時間だった。夫を連れて行ってくれた二人の心遣いに感謝したい。

    (2011,5,28 朝日新聞「声」欄掲載)岩國エッセイサロンより転載

緑のしずく 

2011-05-30 21:44:59 | ペン&ぺん
 遠い山並み。常緑樹の深い緑色。それをフロントガラス越しに眺めながら車を走らせる。
 知覧あたりに近づく。道路の左右に茶畑が見え隠れする。茶葉の緑は光るような若い緑に見える。
 一番茶の茶摘みが一段落すれば、二番茶。一年で最も忙しく、最も茶畑が美しい時期だろう。
   ◇
 毎日新聞の投稿欄「みんなの広場」に26日、神奈川県相模原市の高校生が「被災地で再び野菜作りを」と題する文章を寄せていた。
 「私の家のすぐ近くに住む祖母は野菜を作っている。私は昔から畑でとれた野菜をたくさんもらって食べていた」
 そう振り返った高校生は、東日本大震災の被災地に思いをはせる。「早く被害が収まり、農家の方がまた、おいしい野菜を育てられるように、心から祈っています」。そう投書は結ばれている。
 鹿児島面の「はがき随筆」でも、同じ趣旨の文章が24日に掲載された。出水市の小村忍さんが書いた一文。畑に植えた作物の相性に触れながら「被災地の福島周辺の畑にも早く、ナスとピーマンが植えられ、実る日が来てほしい」と祈る文章になっていた。
 緑豊かな大地のめぐみ。その大切さを今年は、例年以上に誰しもが感じるのではなかろうか。
    ◇
 知覧を訪れたのは、読者へのプレゼントコーナー「贈!」の取材のためだ。宮原製茶工場(南九州市知覧町郡)にうかがって、農薬や化学肥料を出来るだけ使わない特別栽培の上煎茶を提供していただくことになった。
 掲載は6月上旬の予定だ。商品を撮影し、お茶をいただいた。ほっとする味わいだ。
 お茶の箱に書かれたキャッチコピーを読み、ひとりうなずいた。「緑の香り 緑のしずく 大地のくれた贈り物」
  鹿児島支局長 馬原浩 2011/5/30 毎日新聞掲載

山椒魚を見た日

2011-05-30 15:35:04 | はがき随筆
 新緑の二上山が見え、やがて青々とした耳成山も見えて来て懐かしい。いよいよ奈良。吉野の山々を右手に見ながらダム沿いに山道を行く。今ごろ咲いている遠山桜が美しい。
 大台ヶ原に着く。連休で人手が多い。つり橋が架かっているという谷へ下る。険しい岩道だ。岩のすき間に小さな山椒魚がいるのを小5の綾子が発見。皆でのぞき込む。体長10㌢もない。頭が大きく、身は細く四足が短い。薄茶色で柔らかそう。
 井伏鱒二の短編小説「山椒魚」を思い出しつつ眺めていた。
  霧島市 秋峯いくよ 2011/5/30 毎日新聞鹿児島版掲載