はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

母の日には「恩送り」

2011-05-26 20:03:03 | 岩国エッセイサロンより
2011年5月 8日 (日)
   岩国市   会 員  山下 治子

 母を亡くして以来、母の日には、親代わりのような姉と、何かと気遣ってくれる義妹など、感謝したい何人かに鉢植えの花を贈っている。

 ことしもそのつもりでいたが、届け先が被災地に近いため、宅配が遅れ気味というので花はやめることにした。

 何か希望の品をと、姉に問い合わせると「この年になると特には…」と欲がない。

 それでも何かをと食い下がる私に、「気持ちは十分にもらったから、義援金としてその分、被災地に送ってよ。これからずっとね」と姉は言った。

 そして、これは「恩送り」といって、受けた恩は、その人だけにではなく、枝葉をつけてたくさんの人たちに送りつないでいくものだとも。

 贈る予定の人たちに、その旨を伝えると喜んで賛同してくれたので、わずかだが日本赤十字社宛てに送金した。

 これからの母の日には、毎回そうすることに決めた。

  (2011年5月8日 中国新聞「広場」掲載) 岩國エッセイサロンより転載

勉強中

2011-05-26 13:42:06 | はがき随筆
 血液型を勉強中だ。昨年、手術前の検査でAB型といわれ、今までB型と信じておりショック。その相違を勉強する気持ちになった。日本人はA型40%、O型30%、B型20%。AB型は10%の少数派とわかる。血液型には深い神秘が潜んでいる。
 ある日、近くの4年生の女の子が遊びに来た。「何を読んでいるの?」。「血液の勉強中」と答える。「私はO型よ、将来薬剤師さん」。本に「O型は将来へ目的を持つ」と書いてありピッタリ符合したことで勉強への元気をもらう。AB型は行動的とあるが、自問自答しながら明るい初夏の空を眺めている。
  鹿屋市 小幡晋一郎 2011/5/26 毎日新聞鹿児島版掲載

「ええ格好よさらば」

2011-05-26 13:40:08 | 岩国エッセイサロンより
2011年5月26日 (木)
    岩国市  会 員   山本 一

「珍しい人よ、電話を替わるね」。行きつけのスタンドのママさんからだ。暗に「出てこい」というサイン。現役時代の仲間たちとのあうんの呼吸である。

 今回は30代のころに一緒に仕事をした8歳年下のNさんからだ。話をしていたら、途端に飛んで行きたくなった。が、ぐっと我慢する。「行けないけど、僕のボトルを飲んで」と□まで出かかったが、これも思いとどまる。退職後、7年がたち、年金生活にやっと順応してきた。でも、心の中を一抹の寂しさがよぎる。まだ駄目だ。往生際の悪い我が身に言い聞かせる。「ええ格好よさらば」
 (2011.05.26 毎日新聞「はがき随筆」掲載) 岩國エッセイサロンより転載



はがき随筆4月度入選

2011-05-26 12:31:16 | 受賞作品
 はがき随筆4月度の入選作品がきまりました。
▽志布志市有明町野井倉、若宮庸成さん(71)の「今年の桜」(15日)
▽霧島市溝辺町崎森、秋峯いくよさん(70)の「春の別れ」(25日)
▽鹿児島市城山、竹之内美知子さん(77)の「最期の息」(24日)

──の3点です。

 甲突川の桜の開花に一喜一憂したり、和気公園の藤を堪能し、帰れば旬の蕗と筍を味わう。東日本の大災害の報道を身たびに、このようなあたり前の日常の生活ができる幸福をしみじみと感じます。この大災害に遭遇して、私達の意識の持ち様が変わるような気がします。
 若宮庸成さんの「今年の桜」は、観桜旅行を楽しみにしていたが、「自粛」し、戻された予約金を義捐金に回し、庭の桜で満足したという内容です。このお気持ちはおそらく多くの人の気持ちを代弁していると思います。自粛すべきかどうかが議論されていますが、それは議論すべき問題ではなく、心の問題でしょう。その逡巡がよく現れた文章です。
 秋峯いくよさんの「春の別れ」は、ご母堂への追悼の文章です。夫の戦死後、女手一つで子どもを育て上げ、100歳を越えてもなおはっきりした意識で、介護の人などに感謝しながら息を引き取るという、まさしく大往生の様子が描かれています。死は悲しみですが、このような死は幸せでもあります。大災害を意識するとつい比較したくなってしまいます。
 竹之内美知子さんの「最期の息」も、正常の、幸福な死の描写が(適当な表現ではありませんが)内容です。ご主人がお孫さんたちに手をとられて亡くなられた時の様子が、劇的に描かれています。やはりこころよい追悼の文章です。
 入選作の他に2編を紹介します。
 霧島市国分中央、口町円子さん(71)の「気になる」(9日)は、テレビ小説「てっぱん」の登場人物の出産のエピソードに、自分の子どもの時のあだ名のマルチャンとを結びつけ、円(まどか)と名づけられるまで気になったという、軽快な文章です。
 鹿児島市慈眼寺町馬渡浩子さん(63)の「踊りのけいこ」(1日)は、子どもの時習った踊りの「香に迷う」を、なんとなく「カニマヨ」とツナマヨみたいに思っていたということから、発表会の失敗談、それをからかった友達の家の塀に「おしっこ」をかけて帰ったという、連想が奔放で生き生きした文章です。
(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

玉葱

2011-05-26 12:09:55 | はがき随筆
 

家庭菜園を始めて10年が過ぎた。玉葱は、さまざまな調理ができる上、栽培しやすく保存も出来るので、毎年一束100本の苗を買い、栽培する。
 収穫した玉葱を軒下につるす時、最も大きな物を記録している。3年前の800㌘が今までで最大だったが、今年は記録更新。周りは45㌢、重さ1㌔ある。全体的に大物が収穫できた。
 先日、1個の大きな玉葱を、サラダ2回、てんぷら、カレーライス、野菜炒めと2人暮らしに5食分の料理に使った。
 有機栽培に徹し試行錯誤で玉葱を作る。加齢で外出が少なくなったが、楽しさが心にわく。
出水市 年神貞子 2011/5/25 毎日新聞鹿児島版掲載 画像はフォトライブラリより