はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆様へ

2009-12-22 23:26:18 | はがき随筆
 お寒うございます。今朝もあなたの欄から続みました。
 夫は、名前を手でかくして読み「○○さんだ」と当てるのを楽しんでいます。私は病み上がりでもんもんとしていたころに初投稿、細々と続けています。ペンクラブの方々とも親しくさせていただき、ありがたく思っています。
 骨折でへこんでいた時に舞い・込んだ年間賞は、まさに奇跡。
まさにホールインワン。
 狭いスペースながら大きな力を秘めたあなたに、どれほど助けていただいていることでしょう。お礼にシクラメンでもお届けしましょうか。   かしこ

鹿児島市 馬渡浩子(62)


子供貯金

2009-12-22 23:17:08 | はがき随筆
 小学生のころ学校で「子供貯金」があった。貯金日に6年生が窓口で預かり、先生が郵便局に持って行く仕組みだった。
 4年生の秋、友達がいつも貯金しているのを見て、私も一度はしてみたいと思った。金を稼ごうと、学校帰りにいとこと落花生の殼むきをした。むしろの上の乾いた落花生の殼を割って実を取り出すのだ。実が1升になると20円もらえた。いとこは20円、私はやっと10円稼いだ。指先には血がにじんでいた。
 貯金日、10円持って窓口に行くと、先生が「教育扶助を受けている人は出来ない」としかった。訳が分からず悲しかった。
  薩摩川内市 森孝子(67) 2009/12/21 毎日新聞鹿児島版掲載


ピアス

2009-12-22 23:14:00 | はがき随筆
 ついにピアスの穴を開けた。小心者で「痛かろうに」と思うと怖くて、ピアスの穴など開けようとは考えたこともなかった。それが立て続けにイヤリングを無くし、損害額も7~8万円になってしまった。
 片っぽずつのイヤリングを手のひらで転がしながら考えた。
 「新しいイヤリングを買ってもまた無くすだろうな。かといって左右違うイヤリングをつけるのは変だよね。よ~し、いっちょ穴を開けるか」
 大枚5000円を払い、決死の覚悟で耳に穴を開けてもらった。10日ほどだつが、触るとまだ痛い。早く痛みよ去~れ!
  出水市 清水昌子(56) 200912/20 毎日新聞鹿児島版掲載

冬の一断面

2009-12-22 23:02:08 | はがき随筆
 11月末、つがいのヒヨドリが裏畑の熟柿を交互につつき合っている。早速ちぎって干し柿にした。富有柿は豊作だったが渋柿は裏年だった。ハエ対策も施した。12月に人り天候を見ながら旬の作業にせかれた。ニンジンの間引きと追肥。春菊やビオラの定植やほうれん草の間引きと除草。サルスベリのせん定。サツマイモやボンタンの収穫など。部屋では狂句・川柳やはがき随筆の推敲、年賀状の手書きなど。それに洗濯、台所作業などは日課。老体をいたわりつつ、むち打つ様は見事だろうと苦笑している。一年を顧みつつ年の瀬に向かってまい進したい。
  薩摩川内市 下市良幸(80)2009/12/19 毎日新聞鹿児島版掲載







失速

2009-12-22 23:01:07 | はがき随筆
 県マスターズ陸上記録会で、70歳代前半の部・百㍍走に出場したのは私を含めて5人。「速度違反はいけません」とか「お″足″柔らかに」などと冗談を言い合って号砲を待つ。
 スタートで飛び出す。北風が心地よい。「トップは清田君」のアナウンスに励まされ、ラストスパートをかける。必死の腕振りもかなわず、失速。ゴール前でYさんに抜かれた。
 夏の選手権大会と同じ結果だ。情けない。Yさんと私の記録は16秒台。タイムの悪さに、顔を見合わせて苦笑い。
次の大会では馬力をつけて、納得のいく走りをしたい。
出水市 清田文雄(70) 2009/12/18 毎日新聞鹿児島版掲載



ごめんね

2009-12-22 23:00:52 | はがき随筆
 降霜の夜は一段と冷え込む。そんな真夜中、夫のトイレに起こされる。さすがに4回目となると私は不機嫌になり布団を出る。そして、よろけて立つ夫を支えトイレに導く。冷気が足元から体中を包む。思わず「寒い」と声を出す。夫を支えながら布団を掛け終わると「ありがとう。寒いのにごめんね」。私は無表情のまま布団に潜り込む。
 難病のため視力障害となった夫。その絶望的なつらさを思えば、私が出来ることなど微々たることだ。今こそ思いやりの介護を、と反省。
 「さっきはごめんね」と夫の耳もとにささやく。  
  鹿児島市 竹之内美知子(75) 2009/12/17 毎日新聞鹿児島版掲載

一番世の中で

2009-12-22 22:58:13 | はがき随筆
 1週間に3、4日ほど一人暮らしである。3時、4時に起床でき、創作・日記にも精出し、気ままにできる。
 妻は、陶芸に没頭している。仲間とわいわい。女性のパワーはすごい。夜明けまで猫・犬・ウサギ・象と小物づくりを楽しんでやっている。器用さをよさに、紐やかなところまで作る。人物も、今にも動き出しそうで語り出しそうである。
 3日、4日の空白はつきものの私にとっては困る時も生じる。食事はともかくとして、アイロンかけには一向に慣れぬ。夫婦ってやはり同居していることが一番世の中でいいのかも。
  出水市 岩田昭治(70) 2009/12/16 毎日新聞鹿児島版掲載


街はずれの灯

2009-12-22 22:46:56 | はがき随筆
 ミサが終ると、日はとっぷりと暮れている。
 聖堂のあかりを消して帰るころ、眼下に街はずれの灯が美しい。
 高1のとき、担任が言った。街の灯に胸のときめく者は不良の可能性が高い」
 わたしはときめき組だった。
 また、うつうつとさまよい、歩き疲れて帰る夕暮れ、家々にともるあかりがなつかしく、かなしかった。
 にぎやかに食卓を囲んでいたり、一人で泣いていたり……。
 たくさんのドラマが見えてきて、あかりたちがいとおしくなる。
  鹿屋市 伊地知咲子(73) 2009/12/15 毎日新聞鹿児島版掲載


母の証言

2009-12-22 22:42:30 | はがき随筆
 満10歳の時の「大正3年新玉の1月12日、桜島大爆発の日」のことを母は覚えていて語る。
 爆発の何日か前から地震が度々あった。その日、朝10時ごろ、ものすごい音がして地震が来た。その瞬間屋根が地面に着いたと思った。自分は弟をおんぶして母親や妹と裏の城山(垂水市)へ逃げた。兄姉はもっと奥へ逃げた。桜島方面から逃げてくる人で道はいっぱいだった。ガタンガタンガタンと何日も揺れて溶岩や灰が降る。夜は皆で竹林で寝た。昼も夜も、燃えさかり噴火する桜島をあぜんと眺めるだけだった。作物も出来ず、恐ろしい日々だった。
  霧島市 秋峯いくよ(69) 2009/11/13 毎日新聞鹿児島版掲載


ひまわりのこと

2009-12-22 22:41:23 | はがき随筆
 「生き生きサロン」は地域の老人と遊ぶ会である。アドバイザーは6人になった。「みんなのために何かやりたい。私も仲間に入れてください」。自分から申し出た人たちなので、会っていて気持ちがいい。
 「次は、私がちゃんぽんを作りましょう」「腕カバーも作りたいなあ」「お正月には参加者にマフラーを編んでプレゼントしない?」「王様ひまわりの町にしようよ。私が苗を育てるから」
 話はどんどん広がっていく。
 転勤族だったので友だちがいなかった私だが、すっかりなじんで、ご機嫌な日々だ。
  阿久根市 別枝由井(67) 2009/12/12 毎日新聞鹿児島版掲載



煩悶

2009-12-22 22:40:38 | はがき随筆
 朝夕は急に肌寒くなってきた。霜月も早過ぎもう師走。齢を重ねるごとに歳月過ぎ行く早さに感覚がついていけない。
 あれもしたい、これもしたいと思いながら何もかもが中途半端でいたずらに時間たけが過ぎ去り、空虚な思いに駆られる。「お前はいったい何しに生まれてきたのか」と問いたくなる。
 こころを空しくして紺碧の空を仰ぐと、秋から冬にかけて空は青く澄み、老いの感傷を預けるにふさわしい。古稀もとっくに過ぎた。ぼつぼつ生きていた証しを、などと煩悶するが考えがまとまらない。時は過ぎる。このままで終わるのか……。
  志布志市 一木法明(74) 2009/12/11 毎日新聞鹿児島版掲載