はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

秋のひとこま

2008-10-16 12:48:59 | はがき随筆
 コスモスの花が揺れる昼下がり。私は団地の道を歩いていた。あるマンションの前にさしかかった時、1階の駐車場から婦人と男の子が飛び出してきて、外の階段を上がっていった。
 歩き方がいやに不自然だったので、何事だろうと暗い駐車場に入ってみた。見ると何台かの車の奥に、1人の少女が壁に向かって目隠しをしている。なあんだ隠れんぼかと私は、そーっと少女の後ろに寄って小さな声で「2人とも階段を上がったよ」と教えて駐車場を出た。
 「キャー、キャー」という笑い声を背中に聞いて、私は一人ほくそ笑みバス停へと急いだ。
   鹿児島市 高野幸祐(75) 2008/10/16 毎日新聞鹿児島版掲載

伝説の道真公

2008-10-16 12:41:01 | はがき随筆
 菅原道真は、本当に太宰府で亡くなったのだろうか。
 確かめるため、東郷町の藤川天神の宮司に伺った。なんと幸運にも、公の自画像と伝えられる古い肖像画を見せていただいた。あせて、顔や目の輪郭もはっきりしないが本物のよう。さらに、西方となりの湯田口で、逃亡時に船をつないだという「船つなぎ石」も探し出した。道真愛用のすずりも、鹿児島市のM家にあるという。
 ひょうとしたら、道真は藤川天神で死んだのかもしれない。
 幼いころ「ここはどこの細道じゃ。天神さまの……」と歌った童謡が、なお謎めく。
   出水市 小村 忍(65) 2008/10/11 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真は海太郎さん