2017年 ことしの一冊たち

2017年もジャック・ヒギンズばかり読んでいた。
最終的に、ヒギンズ作品リストをまとめ、またヒギンズ作品についての全体的な感想は、ヒギンズまとめに書いた。

ヒギンズ以外にとった本のメモは以下。

4月

「漫画 吾輩は猫である」(近藤浩一路/著)

5月

「伝記物語」(ホーソン/著)
「こわれがめ」(クライスト/作)
「紫苑物語」(石川淳/著)
「昔には帰れない」(R・A・ラファティ/著)

「アウラ・純な魂」(フエンテス/著)
「宇宙探偵マグナス・リドルフ」(ジャック・ヴァンス/著)
「薪小屋の秘密」(アントニイ・ギルバート/著)

6月

「危険がいっぱい」(デイ・キーン/著)
「永久戦争」(P・K・ディック/著)



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ヒギンズ作品リスト

長ながとヒギンズ作品について書いてきたけれど、これでおしまいにしたい。
当初の予定通り、手元にあったヒギンズ作品はすべて読むことができた。
今回まとめている最中、古本屋でみつけてうっかり買ってしまった作品もみな読んだ。
まだ読んでいない作品は図書館で借りれば読むことができるだろうけれど、もうこの辺でいいだろう。

戯れに読み終わったヒギンズ本を積み上げて測ってみると、56センチになった。
文庫とハードカバーも混ざっているし、すでに手元にない本もあるからいいかげんなものだけれど。
しかしまあ、よく読んだものだ。
そして、ヒギンズもよくまあこんなに書いた。

以下に、ヒギンズの作品リストを載せる。
参考にしたのは、「廃墟の東」「鷲は飛び立った」の巻末に載せられた作品リスト。
また、ネット書店や図書館の書誌など。

リストでは、ヒギンズ作品を前中後期と3つに分けてみた。
前期は、処女作から「鷲が舞い降りた」の直前まで。
中期は、「鷲が舞い降りた」からディロン・シリーズの1作目「嵐の眼」の直前まで。
後期は、「嵐の眼」以降。

左の数字は、原書の刊行年。
ヒギンズは、さまざまな名前で作品を書いたけれど、その点については省略。
みな、ヒギンズ作品としてまとめてしまった。

原題の作品は、日本語訳が刊行されていないもの。
タイトルの脇にある国名は、作品の主な舞台。
初期のヒギンズはさまざまな国を舞台にしている。
後期のディロン・シリーズでは、国から国へむやみに飛びまわるようになるので、国名ははぶいた。

また、”Without Mercy”以降の作品は、ネットで確認したものだけれど、なにしろ英語ができないので間違っているかもしれない。
リンクが貼られていなくて、タイトル脇に「*」があるものは未読の作品だ。

全体的な感想は次回に。
ことしの更新はこれが最後。
皆様、よいお年を。

後期
2016 The MIdnight Bell ディロン22
2014 Rain on the Dead ディロン21
2013 The Death Trade ディロン20
2012 A Devil Is Waiting ディロン19
2010 The Judas Gate ディロン18
2009 The Wolf at the Door ディロン17
2009 A Darker Place ディロン16
2009 First Strike 児童書
2009 Sharp Shot 児童書
2008 Rough Justice ディロン15
2008 The Killing Ground ディロン14
2007 Death Run 児童書
2006 「消せない炎」 児童書
2005  Without Mercy ディロン13
2004  Dark Justice ディロン12
2003  Bad Company ディロン11
2002 「報復の鉄路」 ディロン10
2001 「復讐の血族」 ディロン9
2000 「審判の日」 ディロン8
1999 「ホワイトハウス・コネクション」 ディロン7
1998 「双生の荒鷲」 
1997 「大統領の娘」 ディロン6
1996 「虎の潜む嶺」 チベット (1963刊行の改作)
1996 「悪魔と手を組め」 ディロン5
1995 「闇の天使」 ディロン4
1994 「密約の地」 ディロン3
1994 「シバ 謀略の神殿」 中東 (1963刊行の改作)
1993 「サンダー・ポイントの雷鳴」 ディロン2
1992 「嵐の眼」 ディロン1

中期
1991 「鷲は飛び立った」 英国
1990 「反撃の海峡」 英国
1989 「地獄の季節」 英国
1989 「ダンスホール・ロミオの回想」*
1986 「狐たちの夜」 英国
1985 「黒の狙撃者」 英国
1983 「デリンジャー」 メキシコ
1983 「エグゾセを狙え」 仏
1982 「テロリストに薔薇を」 英国
1981 「ルチアノの幸運」 シチリア
1980 「暗殺のソロ」 英国
1979 「ウィンザー公掠奪」*
1978 「裁きの日」 ドイツ
1976 「ヴァルハラ最終指令」 ドイツ
1975 「鷲は舞い降りた」 英国

前期
1974 「ラス・カナイの要塞」 リビア
1974 「地獄島の要塞」 エーゲ海
1973 「死にゆく者への祈り」 英国
1972 「脱出航路」 英国
1972 「非情の日」 アイルランド
1972 「暴虐の大湿原」*
1970 「勇者たちの島」*
1971 「勇者の代償」 英国
1971 「神の最後の土地」 南米
1971 「サンタマリア特命隊」 メキシコ
1969 「真夜中の復讐者」*
1969 「謀殺海域」*
1968 「廃墟の東」 グリーンランド
1968  Hell Is Always Today
1967  Dark Side of the Street
1967  Brought in Dead
1966 「鋼の虎」 チベット
1966 「雨の襲撃者」 英国
1966  Midnight Never Comes
1965 「地獄の鍵」 アルバニア
1965  The Graveyard Shift
1964 「闇の航路」*
1964 「獅子の怒り」*
1964  Thunder at Noon
1964  A Phoenix in the Blood
1963 「裏切りのキロス」 エーゲ海
1963  Pay the Devil
1962 「地獄の群衆」 英国
1962 「復讐者の帰還」 英国
1962  The Testament of Caspar Schultz
1961  The Thousand Faces of Night
1960  Cry of the Hunter
1959  Sad Wind from the Sea

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報復の鉄路

「報復の鉄路」(ジャック・ヒギンズ/著 黒原敏行/訳 角川書店 2007)
原題は、“Midnight Runnner”
原書の刊行は、2002年。

ショーン・ディロン・シリーズの10作目にして、前作「復讐の血族」の続編。
このあとも原書のシリーズ刊行は続くが、日本語訳の刊行は本作が最後となる。

本書は、アメリカ元上院議員ダニエル・クインの来歴を語ることからスタート。
ダニエル・クインは1948年生まれ。
ハーヴァード大学を卒業し、ヴェトナム戦争に志願。
ヴェトナムでは、シスターと子どもを助けるという活躍をみせる。
帰国後、ハーヴァードで3年間哲学を学び、一族のビジネスに参加。

その後、祖父が夢みた政治の世界に入ることを決意し、まず下院議員選挙に出馬して僅差で当選する。
再選ののち、上院議員選挙に挑戦してこちらも当選。

しかし、議員生活がしだいに重荷となり引退を決意。
そこへ、ジェイク・ギャザレット大統領から声をかけられる。
ちょうど自分はきみのようなひとに、国際問題の解決要員になってほしいと思っていた。
そこでクインは一種の移動大使のような職に就き、イスラエル、ボスニア、コソヴォなどにでかけることに。

妻は白血病にかかり亡くなる。
娘のヘレンは、ハーヴァード大学に進み、ローズ奨学金を得て、オックスフォード大学に2年間の留学中。

――クインのこの履歴は、「大統領の娘」で語られたジェイク・ギャザレット大統領の履歴とほぼ同じ。
妻が白血病で亡くなったところまで一緒だ。

さて、そんなクインは、ある日ホワイトハウスに呼ばれる。
そして、大統領からアメリカ大統領直属捜査機関〈ペイスメント〉や、ファーガスン少将やディロンについて、それから現在ロッホ・ドゥ女伯爵となったレディ・ケイト・ラシッドについての話を聞かされる。
クインは、ケイト・ラシッドの調査に着手することに。

クインの調査の結果は、ファーガスン少将のもとへも届く。
ケイトの寄付先に、〈階級闘争行動〉〈ベイルート児童信託基金〉といった団体があることに、ディロンたちは着目。
じつは、ケイトの寄付先は、テロ組織の偽装団体であると、ディロンの依頼で調査した車イスのコンピュータ専門家ローパーは看破する。
〈階級闘争行動〉という大仰な名前の団体は、ケイト・ラシッドの城であるロッホ・ドゥ城で、子どもたちに野外活動を体験させていた。
しかし、年長者には軍事訓練をほどこしている。
〈階級闘争行動〉はイギリスの主な大学に支部があり、ダニエル・クインの娘ヘレンはオックスフォード大学のメンバーに入っている。

このロッホ・ドゥ城は、「密約の地」にでてきた城。
じつは、この城はもともとダーンシー家のものだった。
キャンベル一族に50年契約で賃貸され、5年前レディ・キャサリン・ローズが亡くなったとき、契約は終了しダーンシー家にもどった。
「ケイト・ラシッドとは10年前から因縁があったみたいな感じだ」とディロン。

以前、舞台となった場所や人物を再利用することで、その場所や人物に深みをあたえるというのはシリーズならではのことだろう。
また、省力化もはかれるだろうし。

ケイト・ラシッドには、失った3人の兄の代わりに、ルパート・ダーンシーというパートナーができた。
18世紀にアメリカに渡ったダーンシー家の分家の出。
元海兵隊員で、湾岸戦争で銀星章をもらい、セルビアとボスニアでも勤務。
ロンドンのアメリカ大使館で警備任務につき、そのときケイトと会い意気投合。
が、ルパートは女性には興味がない。

ディロンはロッホ・ドゥ城におもむき、管理人を脅しつけ、〈階級闘争行動〉が実際に軍事訓練をしていることを確認。
その後、ハリーやビリーを誘い、皆でホテルにいき、やってきたケイトとルパートに会い宣戦布告。

前作に登場したトニー・ヴィリアーズもまた登場する。
ケイトは南アラビアの〈虚無の地域〉にあるファドでも、テロリストを養成している。
教官は元IRA。
ハザール斥候隊の指揮官であるヴィリアーズは、そのケイトのたくらみを調査しようとする。
が、そのさい副官のボビー・ホークを殺されてしまう。

前作でも、ヴィリアーズは副官をラシッド家に殺されていた。
ケイトは、ヴィリアーズを脅しつけるだけにしたかったのだが、それに失敗という顛末に。

ところで、元上院議員ダニエル・クインは、ケイトたちとどうからんでくるのか。
〈階級闘争行動〉のメンバーであるヘレンは、デモに参加する。
そのさい、ルパートはヘレンのボーイフレンドを脅しつけ、覚醒剤エクスタシー入りのチョコレート・キャンディーをヘレンにあたえるよういいつける。
警官に逮捕されたとき、元上院議員の娘が覚醒剤をやっていたというのは、いいゴシップネタになるからだ。

が、ここでも、ケイトたちの目論見は裏目にでてしまう。
ボーイフレンドにウォッカを飲まされたあと、エクスタシーを舐めたヘレンは急死。
露見を恐れるルパートは、ボーイフレンドを殺害。
娘の急死の背後に、ラシッドの影があることから、ダニエル・クインは復讐の念にかられる。

このヘレンにまつわる一連のエピソードは、うまくいっているとはいいがたい。
むやみにひとが殺される砂漠の世界とは裏腹に、ヘレンに覚醒剤を飲ませようと画策するルパートは、なんだかちぐはぐでいじましい。

こんな風に、本書は全体的に散漫。
このあと、ダニエル・クインが活躍するのかと思ったら、あんまりしない。
ルパートも活躍するのかと思ったら、たいした見せ場もなく退場する。
早い場面転換で読ませるというのはいつもの手法だけれど、本書は切れ味があるというより、ただ散らかっているという感じ。

だいたい、ケイトがなにをしたいのかもよくわからない。
ケイトの狙いは、物語も終わりに近づいたころようやくわかる。
南アラビアの油田から海岸部まで、原油を輸送するためのパイプラインが線路に沿って走っており、そのパイプラインを線路の橋ごと爆破する――というのが、ケイトのたくらみだった。
爆破に成功すれば、世界の原油生産量の3分の1が失われる。
パイプラインはケイトの会社の所有だが、そうまでしてもアメリカを未曽有の恐慌に陥れたいというのがケイトの願いだ。

その目的のため、ケイトはIRAの爆発物専門家テロリスト、バリー・キーナンを雇う。
キーナンは、前作に登場したIRAのエイダン・ベルの甥。
そして、パイプライン爆破を阻止するため、ディロンとビリーがまたしても活躍する――。

印象散漫な本書だけれど、もちろん印象的な場面もある。
ケイトに撃たれ、ビリーが重傷を負った場面。
車ではこばれるビリーの上に、ディロンは背をかがめる。
そのあと、こんな記述が続く。

《こいつはおれの弟のつもりでいたな、とディロンは思った。》

ディロンの内心が書かれるのはめずらしい。
上の一文は、そのめずらしい、印象深い例だ。


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復讐の血族

「復讐の血族」(ジャック・ヒギンズ/著 黒原敏行/訳 角川書店 2005)
原題は“Edge of Danger”
原書の刊行は、2001年。

ショーン・ディロン・シリーズ第9作。
今回の敵役は、ラシッド族。
ラシッド族とはどんな一族なのか。
冒頭から、素晴らしい手際のよさで、この一族について語られる。

ラシッド族は、オマーン首長国の、ペルシャ湾に面したハザール地方に住む遊牧民(ベドウィン)の一族。
ポールたちの父親である先代のラシッドは、ラシッド族の部族長だった。

代々、男は戦士になる家系で、父もサンドハースにある英国陸軍士官学校に入隊。
ダンスパーティで、ロッホ・ドゥ伯爵の娘、レディ・ケイト・ダーンシーと出会う。
2人のあいだには、ポール、マイケル、ジョージ、ケイトの4人の子どもが誕生。

ポールも陸軍士官学校に入隊。
その卒業間際、ある事件が起きる。

ハンプシャー州にある一族の屋敷、ダーンシー・プレイスに流れ者があらわれた。
連中の犬がアヒルを殺す。
そこで、皆で抗議にいったところ、粗暴な男にお母さんが殴られてしまったのだ。

家に帰り、それを聞いたポールは兄弟たちとともに、流れ者のところへ。
母を殴った男の耳を削ぎ落し、脅し、地所から追いだす。

陸軍士官学校を卒業後、ポールは近衛第一連隊に入隊。
北アイルランドで一任期つとめ、1991年には陸軍特殊空挺部隊(SAS)の一員として湾岸戦争に従軍。
ポールたちの父親は、オマーン首長国の将軍であり、サダム・フセインの友人。
父親はイラク側の立場で戦争に関与し、けっきょく戦死した。

マイケルとジョージも陸軍士官学校に入学。
卒業後、マイケルはハーヴァード経営大学院(ビジネス・スクール)に進学。
ジョージは、落下傘第一連隊に入隊。
ポールと同じく北アイルランドで勤務したが、一年で除隊し、大学で資産管理学を学ぶ。

ケイトは、セント・ポールズ女子学校を卒業。
オックスフォードのセント・ヒューズ学寮で学んだあと、ロンドンの社交界で華麗な生活を送る。

1993年、ポールたちの祖父である老伯爵が他界。
レディ・ケイトはロッホ・ドゥ女伯爵となる。
(ダーンシー家はスコットランド貴族。ロッホ・ドゥとは黒い湖の意味で西部高地(ウェスト・ハイランド)にある湖にちなんでいる。スコットランド貴族はイングランド貴族とちがい、男子の相続人がいなくても、称号は女子を通じて受け継がれる)
遺産は3億5千万ポンド。

この資産で、一族の事業をはじめることをポールは提案。
湾岸地域で石油探査権を買うには、ベドウィンにとり入らなければならない。
ところが、ペルシャ湾岸でわれわれ以上に影響力を行使できるものはいない。
そこで石油会社は、わが一族に助けをもとめるわけだ。

ラシッド家はドファール行政区北部で、新しい油田を開発。
事業は順調に成長し、マイケルとジョージは、ラシッド投資会社の共同経営者となる。
ケイトはオックスフォード大学で修士号をとったあと、最高業務責任者に就任。
ポールは、ほとんどの時間をベドウィンとともにすごす。
長老会議は、次のスルタンにポールを選ぶだろうと、もっぱらの評判。

ある夜、ポールがシャブワのオアシスで野営していると、兄弟たちがヘリコプターに乗ってあらわれる。
スルタンがわれわれを裏切り、ハザールでの共同探査権についてロシアやアメリカと合意したと、兄弟たちは告げる。
ほぼ同時に、ポールは暗殺者に狙われるが、からくも無事。
暗殺者はスルタンが送りこんだ者たちだった。

追い打ちをかけるように、母親のレディ・ケイトが交通事故で亡くなるという知らせが。
事故の相手は、ロシア大使館の商務官イーゴリ・ガトフ。
飲酒運転のため対向車線を走り、母親の車に正面衝突したという。
外交特権をもつガトフは、イギリスの法廷で裁かれることはない。

葬儀のあと、参列者のファーガスン准将から兄弟たちは声をかけられる。
2日後、ポールとケイトはファーガスン准将を訪問。
准将のフラットには、ディロンとハンナ・バーンスタイン警視が。

イーゴリ・ガトフは、じつは2重スパイだったと、ディロンは兄妹に話す。
ガトフは、ロシアとアメリカが協力している石油事業の仲介者だった。

レディ・ケイトが亡くなることになった交通事故は偶然。
しかし、報いを受けてもらわなければならない。
ポールとマイケルとジョージは、ガトフを抹殺。
気絶させたガトフにガソリンをかけ、車に乗せ、火をつけ、坂から谷に落とす。
また、スルタンも暗殺される。

2人が死んでも、ポールは満足しない。
アメリカとロシアは、ベドウィンを踏みつけにして南アラビアを荒廃させてきた。
教訓をあたえてやらなくては。

ポールがいいだしたのは、アメリカ大統領ジェイク・キャザレットの暗殺。
北アイルランドで和平プロセスが進行中のいま、IRAの凄腕テロリストが大勢ぶらぶらしている。
かれらにこの仕事をしてもらおう。

ケイトとジョージは北アイルランドにおもむき、凄腕テロリスト、エイダン・ベルに仕事を頼むことに。
そのさい、ディロンの手を借りる。
もちろん、ディロンに本当の目的は話さない。
北アイルランドで事業を展開するための、安全確保を手伝ってくれる人材をさがしているというのがその名目。

北アイルランドのドラムクリーで、ケイトとジョージは、ディロンとともにエイダン・ベルと接触。
ディロンとベルは旧知の間柄だ。
ベルは、アメリカ大統領暗殺の依頼を了承する。

以後、大統領暗殺の話が続く。
このシークエンスも面白いのだが、全部紹介しているわけにもいかないので端折る。
結局、アメリカ大統領暗殺は失敗。
ベルは逃亡。
ベルの助手であり、負傷したリーアム・ケイシーは、現場でベルにとどめを刺される。
が、ケイシーはまだ生きていた。

アメリカ大統領直属捜査機関〈ペイスメント〉の責任者、ブレイク・ジョンスンは、ケイシーから大統領暗殺についての経緯を聞く。
ラシッド家のこと、エイダン・ベルのことなどを話したあと、ケイシーは死亡。

こうして、ファーガスン少将――この作中昇進した――やディロンたちとラシッド家は、完全に対立することに。

原書が刊行されたのは、2000年。
南アラビアのベドウィンとスコットランド貴族とにルーツをもつラシッド4兄弟を造形し、それをディロン・シリーズに登場させたのは、やはり9.11のためだろう。

大統領暗殺のあと、ラシッド家はなにを狙ってくるのか。
ディロンたちは、ポールらにさぐりを入れることに。
すると、ラシッド家はたちまち反応し、ディロンたちを消そうとたくらみ、結果、バーンスタイン警視が撃たれ、重傷を負う。
復讐の念に燃えるディロンは、ラシッド家を監視するため、ロンドンのギャング、ハリー・ソルターとその甥のビリー・ソルターとともに南アラビアのハザールへ。

ハザールでは、なんと「エグゾセを狙え」で主役だった、トニー・ヴィリアーズ大佐が登場。
ハザールには軍隊がなく、ハザール斥候隊という民兵隊があるきり。
その指揮官にはイギリス人があたっており、現在の指揮官はヴィリアーズ大佐がつとめている。

さて、南アラビアでのラシッド家の目的は、ベルをつかいハザール長老会議に出席する12人の長老たちを爆殺することだった。
ディロンたちはこの目論見を阻止。
そのさい、ラシッド家の三男ジョージを殺害する。

このあとは、ディロンたちとラシッド家の報復合戦が続く。
なにやら初期の作風にもどったよう。
最終的に、ラシッド家はケイト以外全滅。
ケイトとディロンたちの対決は、次作「報復の鉄路」にもちこされる――。


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