短編を読む その17

「死体をかつぐ若者」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 3」(東京創元社 1973)

継母を殺した父を救うため、死体を隠そうとする息子。大変な緊張感。

「木石雲」(カーソン・マッカラーズ)
「悲しき酒場の唄」(白水社 1990)

新聞配達の少年が酒場で、妻に逃げられた老人から、愛の哲学を聞かされる。いきなり女に恋をしてはいけない。木石雲を愛することからはじめなくてはいけない――などと老人は語る。

「淵の死体」(ルーファス・キング)
「不思議の国の悪意」(東京創元社 1999)

ギャングが死体を淵に沈めるのを目撃した老婦人。報復を恐れながらも裁判で証言し、ギャングは電気椅子送りになる。ところがある日、家に不審な侵入者があらわれる。どんでん返しが楽しい。

「思い出のために」(ルーファス・キング)
同上

継母が砒素をつかい夫を殺害。遺灰を海に撒き、証拠はないと勝ち誇る。次に狙われるのは娘と思われたが――。おとぎ話のような設定の一編。

「子守女」(エミリー・ハーン)
「ニューヨーカー短編集 3」(早川書房 1986)

日本軍に占領された香港。〈わたし〉は陸軍捕虜収容所にいる夫に、娘の姿をみせるため、子守女と苦心をする。

「マイアミプレスの特ダネ」(ルーファス・キング)
「不思議の国の悪意」(東京創元社 1999)

勝気な女性が、特ダネを狙ったあげく誘拐されてしまうのだが、最後はすべてがうまくいく。スクリューボール・コメディ風サスペンス。

「いっぷう変わった人々」(レーナ・クルーン)
「木々は八月に何をするのか」(新評論 2003)

嬉しくなると宙に浮かんでしまう女の子。ちゃんとしてちょうだいと親にいわれても、なかなかちゃんとできない。女の子は影をもたない男の子や、鏡に姿がうつらない男の子と友だちになり、3人でクラブを結成する。ロダーリの作品にも似た、児童文学のような味わい。

「悲しき酒場の唄」(カーソン・マッカラーズ)
「悲しき酒場の唄」(白水社 1990)

独立独歩で、訴訟好きで、医者の真似事が好きな女性と、その女性と一緒に暮らすことになった女性のいとこ、そして女性の元夫との奇妙な関係をえがいた中編。西部劇のようだ。

「秘密のコーヒー 葦の物語」(レーナ・クルーン)
「木々は八月に何をするのか」(新評論 2003)

夏、いつもコーヒーを飲む桟橋の上で、少女が見知らぬ少年に出会うという幽霊譚。

「青白い月」(眉村卓)
「ロマンチックSF傑作選」(集英社 1977)

パラレルワールドに迷いこんだ〈ぼく〉は、殺人容疑をかけられ、見知らぬ女性と逃避行をしたあげく、心中をせまられる。編者は豊田有恒。これの一体どこがロマンチックなのか。


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短編を読む その16

「人間狩り」(都築道夫)
「未来警察殺人課」(徳間書店 1982)

科学技術の発達とテレパシー能力者の存在により殺人がなくなった未来。殺意を事前に発見し処分するのが任務の、警察三課の星野はケニア警察の通報を受けナイロビに赴く。007かスピレーン作品のSF版といった風。

「マルセーユの幻影」(ジャン・コクトー)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

警察から逃れるため女装していた若い男が、たまたま出会った紳士に助けられる。紳士は相手をすっかり女性と思いこみ、部屋をあてがい、うやうやしくもてなす。

「父との再会」(ジョン・チーヴァー)
「橋の上の天使」(河出書房新社 1992)

3年前に母と離婚した父に再会した〈僕〉。父はむやみに大声をだす、高圧的で無作法なひとだった。

「ダイヤモンド」(マンディアルグ)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

裸でダイヤモンドを鑑定していた女性。気がつくとダイヤモンドのなかに入ってしまう。

「ボア」(マルグリット・デュラス)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

日曜の午後、塾の女先生と動物園でボア(王蛇)が若鶏を呑みこむのをみたあと、必ず先生の下着姿をみせられていた少女時代を回想する。なんだか痛ましい。

「アフリカ秘話」(マルタン・デュ・ガール)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

作家の〈わたし〉が聞いた、姉と子をなくした書店員の話。これまた、とびきり痛ましい話だ。

「シルヴィ」(ネルヴァル)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

村の幼なじみと、劇団の女優と、いまでは修道院に入った女性と、3人の女性に心惹かれるが、自分の妄想に執着する〈わたし〉の恋心はだれにも理解されない。

「家庭の事情」(カーソン・マッカラーズ)
「悲しき酒場の唄」(白水社 1990)

仕事を終え、2人の子どもとアルコール中毒の妻が待つ家に帰る男。家庭を保つため、男は子どもの世話をし、妻をなだめる。

「ただならぬ部屋」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 3」(東京創元社 1973)

泊り客が次々と自殺するホテルの部屋。真相を突きとめるため、ホテル探偵ストライカーは、自らその部屋に泊まる。

「裏窓」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 3」(東京創元社 1973)

けがのため気晴らしに窓から外をながめるよりほかなくなった男が、隣家で夫が妻を殺害したのではないかと怪しみはじめる。ヒッチコック映画の原作。


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