「シバ 謀略の神殿」「地獄島の要塞」

去年、手元にある、未読のジャック・ヒギンズの本を読もうと志を立てた。
ジャック・ヒギンズの本はひと山ある。
それが書棚の一角を占領し、もう何年にもなる。
これらの本を読破し、きれいさっぱり片づけるのだ。

という訳で、せっせと読み進んではいるものの、まだ全て読み終わらない。
古本屋で、手元になかった本をみつけると、うっかり買ってしまったりするのがいけないのかもしれない。
全て読破した上で、メモを整理してここに載せようと思ったけれド、それにはまだ時間がかかりそうだ。
そこで、読んだはしから、メモを載せることにする。
整理は、今後の課題ということに。

「シバ 謀略の神殿」(ジャック・ヒギンズ/著 黒原敏行/訳 早川書房 1999)
原題、”SHEBA”
原書の刊行は1994年。
訳者あとがきによれば、この作品は、1963年にヒュー・マーロウ名義で刊行した「Seven Pillars to Hell」に手を加え、新作として発表したものだとのこと。

第2次大戦もの。
3人称多視点。
1939年3月末日、ナチス・ドイツは、9月1日に予定しているポーランド侵攻にあわせて、スエズ運河の爆破を計画した。
その拠点として、サウジアラビアの南、「虚無の地域」という意味をもつルブ・アル・ハーリー砂漠で発見された、シバの神殿をつかうことをたくらむ。
シバの神殿とは、あのシバの女王が建てたとされる神殿。
神殿は、ベルリン大学の教授が発見したもので、まだ世に知られていない。

ところで、アデン湾には、ギャヴィン・ケインという名のアメリカ人船長がいた。
考古学者で、コロンビア大学で講師をしていたが、妻と離婚したあと空軍に入隊。
1年間の飛行訓練と4年間の予備役兵の訓練を受けたのち、アメリカの考古学調査隊の一員として、ヨルダンで発掘に従事。
それからも転々として、現在はダーレインで暮らしている。
このギャヴィンが本書の主人公。

8月、このギャヴィンを、ルース・カニンガムというアメリカ人女性が訪ねてくる。
学者である英国人の夫が、内陸のシャブワ地域に向かったまま行方不明になってしまった。
ローマの将軍が残した、シバの神殿をみつけたという古文書を、夫は解読していたという。

フランス人とアラブ人のラシード族のハーフである、実業家のマリー・ペレの元で、ルースの夫がシャブワ地域に向かったという確証を得たギャヴィンは、マリーの助力でルースとともに現地におもむく――。

再版にあたり、作者が手を加えたというのは、冒頭のナチス・ドイツがスエズ運河爆破計画を練っているあたりだと思う。
この冒頭は、素晴らしくテンポがいい。
本編に入ると、雰囲気はあるものの、話がなかなか進まないという、ヒギンズ初期の作風があらわれる。


「地獄島の要塞」(ジャック・ヒギンズ/著 沢川進/訳 早川書房 1974)
原題は、“Night Judgment at Sinons”
原書の刊行年が記されていない。
「廃墟の東」の巻末に載せられた著作リストによれば、原書の刊行は、1970年。

〈わたし〉の1人称。
主人公は、42歳のアイルランド人、ジャック・サヴェージ。
戦中戦後と、英国海兵隊特別攻撃隊に所属。
1958年に退役し、現在はエーゲ海でサルベージの仕事をしている。

冒頭、サヴェージはエジプト軍からの依頼で、海底に沈んだイスラエル軍の戦闘機ミラージュをサルベージすることに。
が、イスラエルの情報員だった相棒のダイバーが――そのことはサヴェージも知らなかった――、ミラージュを爆破してしまう。
サヴェージは、撃たれた相棒を助けようとするが、けっきょく相棒は死に、サヴェージはサルベージ事業をふいにする。

驚いたことに、この冒頭のエピソードは本筋にはかかわらない。
ただ、登場人物の紹介が手際よくなされるだけだ。

その後、サヴェージはキロス島の沖で海綿採りをして糊口をしのぐ。
そんなサヴェージに、アレコという富豪が接触してくる。
ギリシア内戦中、共産党軍が占拠していた要塞から、捕虜になった将軍を助けだしたという、サヴェージの経歴を知っているアレコは、サヴェージにある仕事をもちかける。

ギリシアの軍事政権転覆をたくらむ者たちが、ある場所で集会を開いた。
そこで、反政府人物たちのリストがつくられた。
そのリストは、無理に開けようとすると爆発する装置が仕掛けられたアタッシュケースに入れられ、特使の手首に鎖でつながれて、飛行機ではこばれた。
が、エンジンの故障のため、飛行機はクレタ島沖合に墜落。
パイロットだけが助かり、シノス島の政治用監獄に収容されている。
このパイロットが口を割る前に、シノス島から救いだしてほしい。

ところで、富豪のアレコには、サラという義妹がいる。
奥さんの妹だったが、奥さんは亡くなった。
サラは、イギリス人で、19歳。
美人で、伯爵令嬢で、お金持ちの叔父がいて、白血病をわずらっている。
とまあ、あんまり出来すぎた設定でちょっと笑ってしまう。
サヴェージはサラと恋仲になる。

サヴェージはアレコの依頼を一度は断る。
しかし、アレコの策謀にはまり、船を失うことになる。
サラと結婚すれば遊んで暮らせるにもかかわらず、サヴェージはアレコの依頼を受け、政治犯の救出に向かう――。

ここが、全体の3分の2あたり。
展開がいかにも遅い。
しかし、ここからがぜん面白くなる。
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