短編を読む その9

「正義の代行者」(エリザベス・フェラーズ)
「パパとママに殺される」(早川書房 1983)

知人の夫と寝たことを写真に撮られゆすられていた女性。その夫が亡くなり、励ますふりをして写真を手に入れようと、知人宅を訪れ葬儀の手伝いをしていると、こんどは知人の死体に出くわす。エリザベス。フェラーズの作品をはじめて読んだけれど、とても面白い。

「勝負あり」(ジョン・ウェインライト)
「パパとママに殺される」(早川書房 1983)

不倫した妻を殺そうとする夫の話。鼻もちならない夫の1人称が効いている。

「狙撃」(アイザック・アシモフ)
「ユニオン・クラブ綺談」(東京創元社 1989)

グリズウェルド翁の自慢話にクラブのメンバーが煙に巻かれるというシリーズものの一編。ミステリというよりとんち話といった話が多いなか、この作品はサスペンスがある。

「目撃者」(エリス・ピーターズ)
「パパとママに殺される」(早川書房 1983)

修道士カドフェル・シリーズの一編。登場人物が皆ところを得ており無駄がない。

「小柄な靴屋たち」(アイザック・B・シンガー)
「ばかものギンペルと10の物語」(彩流社 2011)

民話の語り口で靴屋一家の絆をえがいた名編。素晴らしい。

「幻談」(幸田露伴)
「幻談・観画談」(岩波書店 1990)

釣りにでた旗本が海中の死人から竿を得る。枯れた味わいの水のような怪談。

「観画談」(幸田露伴)
「幻談・観画談」(岩波書店 1990)

気を病んだ学生が山中を旅し、大雨のなか寺の草庵で一幅の絵をみる。山の描写、寺の描写、雨の描写、一切合財名人芸。

「不可能犯罪」(E・D・ホック)
「こちら殺人課」(講談社 1981)

渋滞中の車から絞殺された死体が発見される。しかし車に乗っていたのはこの死体だけだった。レオポルド警部がこの謎を解く。

「三文作家」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 1」(東京創元社 1986)

カバー絵に合わせた小説をひと晩で書くために、ホテルに缶詰めになった三文小説家。コメディ調の作品。ラストがちょっと気の毒だ。

「蛙のプリンス」(ジョン・コリア)
「予期せぬ結末 1」(東京創元社 2013)

お金持ちで不格好な女性との結婚を考えた男が、おあいにくさまな結末を迎える。なかなか思いがけないおあいにくさまぶり。


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短編を読む その8

「小惑星の力学」
「切り裂きジャックはあなたの友」(ロバート・ブロック 早川書房 1979)

介護士の女性が介護していたのは、元数学の教師で、犯罪者で、探偵と対決したさい滝に落ちて車いす生活となり、以後は著名な科学者にアイデアをさずけたりして暮らしていた人物だった。タイトルはモリアーティ教授が書いたという論文から。

「ワシ像の謎」
「怪盗ニックを盗め」(エドワード・D・ホック 早川書房 2003)

2万ドルの報酬で価値のないものを盗む怪盗ニック・シリーズの一編。本作は宝探しまであり盛りだくさん。

「兎」(志賀直哉)

なにかの日本文学全集で読んだ。娘さんに乞われてウサギを飼う話。短編ではなく随筆かもしれない。ウサギの感じがよくでていて愉しい。ウサギは喜ぶとグウグウと鳴くのだそう。

「教会の猫」(エリス・ピーターズ)
「ある魔術師の物語 イギリス・ミステリ傑作選’76」(早川書房 1980)

強盗殺人の被害者である老婦人からごはんをもらっていた猫が、期せずして老婦人の仇討ちをするというクリスマスストーリー。

「列車に御用心」
「列車に御用心」(エドモンド・クリスピン 論創社 2013)

乗りあわせた列車から運転士が消失。たまたま強盗も乗りあわせていたため、駅は警官が包囲していからどこかにいくはずがない。この謎をフェン教授が解き明かす。

「ここではないどこかへ」
(同上)

四角関係にまつわる殺人をフェン教授が解き明かす。皮肉のきいた結末がついており、それがタイトルにも反映している。

「本の話」(由紀しげ子)

これもなにかの日本文学全集で読んだ。姉の闘病資金を得るため、その夫である義兄があつめた本の買い手をみつけようと〈私〉は奔走する。

「秘めごと」(由紀しげ子)

出生の秘密をもつ友人との、女学生のころから戦後友人が亡くなるまでをえがいた作品。友人はなぜか薄幸の運命をたどる。

「ジェイスン・Dの秘密」(デスモンド・バグリイ)
「ある魔術師の物語 イギリス・ミステリ傑作選’76」(早川書房 1980)

金銭トラブルから甥が伯父を殺したとおぼしき事件が発生。パーカー部長刑事は甥の犯行を確信しているのだが…。こんなに警官がコテンパンにされる作品もめずらしいのではないか。

「女秀才、花を移して木を接(つ)ぐこと」
「今古奇観 5」(平凡社 1975)

男装して塾に通った、蜚蛾(ひが)という少女。受験に合格して秀才になった彼女は、2人の学友のうち、ひとりの嫁になろうと心に決めていた。ところが無実の父を救うため上京したさい、美しいお嬢さんに見染められてしまい、話はいよいよもつれることに。


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