英国一家、ますます日本を食べる

「英国一家、ますます日本を食べる」(マイケル・ブース/著 寺西のぶ子/訳 亜紀書房 2014)

前作の評判がたいそう良かったためだろう。
原書からの翻訳のさい、分量の都合によりカットされた章に、番外編や日本の読者に向けたメッセージなどをつけ加えた続編が新たに刊行された。
それが本書。

おかげで、前作でつながりが悪かった部分や、ものたりなかった部分が補われた。
ここでも、著者が訪れた場所や、食べた料理を列挙していこう。

築地
ウニは英語で、Sea urchin roe、海のハリネズミの卵というそう。
「食べるのは生殖腺だ――そして、生殖腺はうまかった」

東京、味の素社を取材

焼津でカツオの加工を見学

天城山でワサビの取材
このときの取材は著者ひとり。
奥さんと息子さん2人は、キッザニアにいっていた。
「本ワサビはまさしく、チューブ入りペーストとはまったく違う味がした」

東京、かっぱ橋
ワサビおろし器その他、料理道具を購入。

東京、3つの料理体験教室に参加
家庭の日本料理と、店の日本料理と、スシ。

京都、ある料理クラブの招きにより著者が料理の実演
フランス料理――タイをつかった魚料理をつくるが、食材をそろえるのに四苦八苦。
料理教室の先生はオムライスをつくる。
このとき記される、洋食についての要を得た説明はこうだ。

「洋食というのは、日本料理と西洋料理のハイブリッドで、ライスカレーや、トンカツ(ポークシュニッツェルのこと)など、日本人が欧米人から取り入れて自分たちの好みに合うように手を加えた料理のことだ」

京都の庭園を見学
エミル君が、前日おもちゃ屋で買ってもらったブーブークッションを、こともあろうに庭に放りだし、拾うために庭に侵入。
両親は大いにあわてて、「今すぐ戻ってらっしゃい」と声をかけるが、エミル君はいうことを聞かない。
そこで、著者は威厳を示す。

「エミル、今すぐだ。そうしないと、そうしないと……もうポケモンはナシだぞ」

高野山
宿坊に泊まり、精進料理を食べる。

松坂で和牛を取材
和牛にかんするさまざまな噂――ウシに音楽を聴かせているのか、ビールを飲ませるのか、マッサージをしているのか――を、畜産業者に直接確かめる。
また、ウシをマッサージすることにバカバカしい魅力を感じていた著者は、念願がかないマッサージさせてもらえる。
さらに、しゃぶしゃぶやすき焼きにつかわれる肉について。

「しゃぶしゃぶもすき焼きも、肉そのものはピンクがかった鮮やかな赤い色で、脂肪が細かい網の目のように全体に広がっていて、脂肪たっぷりの肉を食べているのか、肉質がたっぷりの脂肪を食べているのかわからなくなる」

しゃぶしゃぶについての説明も明快だ。

「実は、しゃぶしゃぶが日本で食べられるようになったのは20世紀になってからで、モンゴルの料理に端を発すると考えられている。肉をしゃぶしゃぶするのはほんの数秒だけで、ポン酢かゴマベースのたれ、あるいはまれに、生卵をつけて食べる。貴重な牛肉を食べ終わったら――アスガーとエミルは夢中になって食べたが、こういうパフォーマンスの要素の大きい食べ方は、小さい男の子のために考案されたのに決まっている――今度はシイタケ、タマネギ、キャベツ、豆腐などを鍋に入れる――いうまでもないけど、子どもたちは、これには夢中じゃなかった」

三重県鳥羽で海女を取材
観光案内所でもらったパンフレットに載っていた海女の写真を最初にみたとき、著者は、一瞬すごくスタイリッシュな溶接工かと思ったとのこと。

香川県
日本で唯一「むしこ麹法」という伝統製法にもとづき醤油を製造している、かめびし屋を取材。
それから、和三盆のお菓子。
「口に入れると、舌の上ですっと溶けて、花のような甘い後味がかすかに残った」

下関でフグ
「日本の天皇は、フグの身も食べてはいけないことになっている」
これは知らなかった。
著者は、フグの肝を味見してみたいという、奇妙な考えにとりつかれて、料理人が目をはなしたすきに、ちょっとだけなめてみる。
フグの味は期待はずれ。

「海の味わいと歯ごたえがあり、ちょっとイカに似てるけれど、タイっぽくもある。チリソースやポン酢がなければ、そうたくさんは食べられない」

沖縄、那覇でウミヘビ料理そのほか
ウミヘビは、「とにかく骨だらけだ」。

沖縄の、世界一長寿の村といわれる大宜味村(おおぎみそん)
「豆腐よう」という、豆腐を発酵させた伝統食を食べる。
まるごと一気に食べてしまったので、思わず吐きだしてしまう。

沖縄の製塩会社、ぬちまーすを取材

城崎温泉
外国人の日本探訪記には、温泉に入る記述がつきもの。
温泉に入るまでの手続きを、ここでも要を得た文章で簡潔に記したあと、湯につかると――。

「至福のときが訪れるのは、この瞬間だ。温泉では何度も幸福感に包まれるけれど、これが最初の幸せな瞬間だ」

「運がよければ、僕が勝手に「オンセン・ハイ」と名づけた気分も味わえる。湯の熱、という浮遊転移の感覚が、麻薬のような効果をもたらしてくれるのだ。正直、僕の意識は完全に飛んでしまった」

そして、カミミソ。
「カニミソは香りの強い、どろっとした茶色のもので、この文章を書いているだけであの濃厚な風味のパンチがよみがえるほど、うま味がぎっしり詰まっていた」

著者には、フィンランドの食を取材した、「The Almost Nearly Perfect People」という著作もあるそう。
ぜひ読んでみたい。
翻訳されないものだろうか。


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英国一家、日本を食べる

「英国一家、日本を食べる」(マイケル・ブース/著 寺西のぶ子/訳 亜紀書房 2013)

タイトル通りの本。
英国人の一家が、3か月ほどかけて、北は北海道、南は沖縄まで、取材し、食べ歩いたルポルタージュ。
原題は、“SUSHI AND BEYOND:What the Japanese know about cooking”
これを思うと、内容を端的にあらわした、この邦題は素晴らしい。

著者は、フードジャーナリスト。
あるとき、日本での取材旅行を思いつく。
きっかけはさまざま。
料理学校で知りあった、友人のトシに、日本料理の素晴らしさについて大いに喧伝されたこと。
また、トシからもらった辻静雄の本、“Japanese Cooking:A simple Art”に触発されたこと。
はたまた職業柄、美食生活を送っていた報いで、コレステロール値が危険水域に達し、ヘルシーさで名高い和食に興味をおぼえたこと。
著者は日本食の現在とこれからについて大いに探求心を燃やすことに。

日本での取材旅行について、奥さんのリスンさんに話すと、大いに乗り気。
「子どもたちも連れていきましょう」
子どもたちと一緒にすごす時間の少なさに罪悪感をいだいていた著者は、この案を受け入れる。
かくして、6歳のアスガー君と、4歳のエミル君も同行し、一家は8月終わりの日本に到着。

著者は、3か月の日本滞在で、よく食べ、よく観察し、よく取材している。
食材を確認し、料理する順番をおぼえ、料理人から話を聞き、その話をうまくまとめ、かつユーモアに富んだ説明を加えている。
密度の高いその記述ぶりには感心するばかり。
旅行記を書かせると、いまでもイギリス人は世界一なのだろうか。

さて、以下は具体的な内容について。
例によって、著者がなにを食べ、どう記したかを簡単に引用していこう。
それから、日本の印象についても。

相撲部屋を取材し、ちゃんこ鍋
「相撲取りは伝統的に四足の動物を食べない。なぜなら、力士にとって四足になることは負けを意味するからだ」

これは知らなかった。
本書は、この種のうんちくに満ちている。
このあと、著者はこう続けている。
「加工した豚肉なら、問題はないみたいだ」

人気スターSMAPによる料理番組の取材
Jポップについての著者の見解はこう。
「思考停止したような10代の女の子たちの受けを狙う、パッとしない和製ポップミュージック」

その国のことは、世界的に活躍しているスターではなく、自国で人気のスターをみたほうがはるかによくわかるものだ。

「日本人は、器量がよくて行儀がよくて健全な若者が好きだということで、ボーイズバンドは一斉に右へ倣えでそういう型に納まり、誰もがバラードを歌うときにはしんみりとした表情になり、ラップになればリズムよくステップを踏む」

バラードを歌うときにしんみりとした表情になるのは、万国共通だと思うけれど。

天ぷら
「どれもこれも、絶妙の味わいだった。カリッとしていて、衣が油っぽく光っているのに食べてみると全然油っぽくない。なかの魚はしっとりとして熱々で、最高だ」

アスガー君とエミル君も、天ぷらには満足したよう。
「パスタとケチャップを押しのけて、(天ぷらは)彼らの好物のトップに躍り出た」

服部栄養専門学校を取材
服部幸應氏にインタビュー。

歌舞伎町でクジラ
著者は、捕鯨をするノルウェー人に抗議するため、ダウニング街を行進したことがあるそう。
にもかかわらず、クジラを食べてみるのだからえらい。
「クジラは、日本人が食する最大の海洋生物だが、幸いなことに、たいへんおいしいとはいえなかった」

東京
「東京の人たちはフレンドリーで親切で、子どもたちにすごく興味を持ってくれたが、東京はパリよりもさらに子ども向きの街じゃない。子どもが遊ぶような公園はこれといってないし、好きなだけ走り回ってエネルギーを発散できるような場所もなく、どことなく落ち着かない感じの人たちがあちこちにたくさんいる気がした」

品川にあるポケモンセンター
2人の息子たちは、ポケモンが大好き。
著者は、品川にあるポケモンセンターに2人を連れていく。
その、ポケモンについての説明――。

「ポケモンというのは、奇抜で風変わりなキャラクターが登場する漫画で、世界中で人気を得ているが、18歳以上の大人にとって理解を超えるアニメだ」

なお、息子さん2人は、日本の若い女性にもてはやされたそう。
欧米人の子どもは、日本において観光大使の役割を果たす。

札幌でバターコーンラーメン
「センセーショナルだった。それまでに食べたラーメンのなかで最高だった。最初に陶器のスプーンで汁をすくったとき、油が浮いているのが気になったが、それを口に入れたとたん、ラーメン天国にいる気分になった」

陶器のスプーンとは、レンゲのことだろう。
レンゲと訳さないところが素晴らしい。

カニ
食べた当初こそ、大騒ぎするほどではないとがっかりしたものの、しばらくたつと恋しくなったという。

「僕は今でもあのカニが恋しくて、なぜ札幌にいる間に、もう見るのもいやだと思うようになるくらい毎日でもたらふく食べなかったのかと心から思う」

日本人の味覚について
「日本人は口に入れた食べ物の舌触りを味と同じように重視し、料理の温度についてはさほどでもないものの(なにしろ、温かい料理はやけどするほど熱々にするのがデフォルト設定だから)、食感についてはとてもきめ細かいニュアンスを大切にする」

「食感のバリエーションとコントラストは、今回の日本食べ歩き旅行で得た最大の発見だった」

南茅部町でコンブについて取材
「この大きくて緑色をした動物の皮のような姿の海藻が、日本の食事にとってどれほど大切かは計り知れない。日本人は50種類もの海藻を食べるが、昆布はそのなかのキングだ」

京都でたこ焼き
「「タコボール」すなわちたこ焼きは、味のついたドーナツみたいなもので、歯ごたえのあるタコのぶつ切りがなかに入っている」

「たこ焼きを作るには、直径3センチぐらいのくぼみが10個ほどついている、専用の鉄板が必要だ(北欧の伝統的なドーナツ、アブレスキーヴァーを作るための鉄板によく似ている)」
奇しくも、「米国人一家、おいしい東京を食べ尽す」と同じく、北欧のドーナツを連想している。

トイレ
やはり日本というと、トイレだろうか。
京都で借りた家は、古い家だったけれど、水洗トイレだけが最新のものだった。
このトイレは、アスガー君のお気に入りとなったそう。

「アスガーはこのトイレに夢中になり、京都にいた3週間、しばらく姿が見えないと思ったら、必ずといっていいほどそこにいた――便器に座って、夢見るようなうっとりした笑みを浮かべているのだ」

京都で懐石
「ひとつひとつの料理が――ここに書いたのは、その晩僕が食べたコースの一部だ――綿密な計算によってひとつのコースを構成して、きちんと盛りつけられ、かわいらしく、逆らい難い風味と食感に満ちている」

京都で流しそうめん
流しそうめんとは、川にそうめんを流して、それを箸ですくって食べるものだと著者は思っていた。
が、やっとの思いでたどり着いた店は、もちろんそうではなかった。

「料理人が川に直接麺を落とし、そのまま流れてくる麺を、幸運にも森の理想郷を訪れた僕らが引き上げるのではなく、ほんの数メートル先の小屋に隠れているウェイトレスが、その溝にそうめんを流すのだった」

広島で日本酒
外国人として、はじめて杜氏になった英国人、フィリップ・ハーパー氏と利き酒。
日本酒についての著者の感想は、「石油っぽい」。
ちなみに、日本のビールについては、「すばらしい」。
日本のワインについては、「僕が飲んでみたから、みんなは飲まなくていい」。

フィリップ・ハーパー氏による、日本酒と料理との相性について
「ほとんどの酒にはうまみが含まれているから(アミノ酸がたっぷりと含まれている)、たいていの料理に合う」

「よく、鮨を食べながらビールを飲む人がいるけど、あれは間違いだ。ビールは鮨に使われている酢や砂糖とは恐ろしく相性が悪い。でも、酒なら、あらゆる魚とすばらしくよく合うんだ」

京都で鯖鮨
鯖鮨は、「あっぱれというしかない」。

京都で湯豆腐
「熱々の鍋にどっぷりと入っているのはキューブ型の豆腐で、甘みがあってクリームキャラメルのような舌触りだ」

なお、この章は、日本人男性に著者がいいよられて閉口するという一幕があり、全編中異彩を放っている。

京都
「僕らはみんな京都独特の「よそとは違う」雰囲気をとても気に入ったけれど、子どもにとっては京都は東京よりさらに窮屈なところだった。常に「シーィッ」と言われているような気分になる街なのだ」

大阪でお好み焼き
「お好み焼きがどんなものかについては、「ジャパニーズピザ」だとか、「オーサカオムレッと」だとか、さまざまな表現を聞かされたが、いずれにしても当たっているのは円形の食べ物ということだけだった。実際のお好み焼きは、パンケーキとトルティーヤのハイブリッドといった方が近い」

お好み焼きは、アスガー君とエミル君には受けなかった。
「アスガーもエミルも、ちょっとつついただけで、「中身がいろいろと入りすぎ」という理由で拒否した」

大阪でドッグカフェ
「僕は、すばらしい日本のビジネスのリストにドッグカフェを加える、と頭のなかにメモした。帰国したら僕を金持ちにしてくれるはずのリストだ」

アスガー君とエミル君は、このドッグカフェが大変気に入ったそう。
2人にとって、この日本旅行での断トツのハイライトは、このドッグカフェだったとのこと。

大阪で味噌について取材
取材の相手は、日本人女性と結婚して、彼女が味噌蔵の娘であったので、その家業を継ぐことになった英国人。

おでん
「おでんというのは、日本風のシチューのようなもので、いろいろな具が入った身体が温まる料理だ。なかに入っているのは、四角く切った豆腐、肉類、ゴボウ、大根、ジャガイモ、フィッシュケーキ(練り物)、昆布、ゆで卵などだ。興味深いこんにゃく――粉末状のコンニャクイモの根から作る、味がなくて弾力ある肉っぽいもの――にもお目にかかれる」

「料理人がいくつかみつくろってよそってくれた――揚げた豆腐、柔らかなポーク、大根、そして固ゆで卵。おいしい。もっとも、そう感じたのは、この料理にあまり期待をしていなかったせいかもしれない」

さらに大阪では、串カツやうどん。
全部は引用していられない。

辻調理専門学校を取材
辻芳樹氏にインタビュー。

福岡
「着いたそのときから、福岡はくつろげる街だった。日本で訪れた街のなかで、もしも住むとしたらここだと思うのが、福岡だ。適度に小さくて扱いやすく、大都市のおもしろみ味も備えていて、独特の――リラックスしていて、快適で、遊び好きで、気取らない――雰囲気を持っている」

博多ラーメン
「博多ラーメンは、豚骨から取った白っぽいスープがベースだ。他のラーメンよりスパイシーだけど、とても美味しい」

新横浜ラーメン博物館で、ラーメン雑学王に取材
うまいラーメンと、並のラーメンの見分けかたについて、雑学王はこう答える。

「麺がアルデンテかどうかが基本になります。中国人は食感をあまり気にしませんが、日本人はとても大切にするので、かん水を加えて麺の腰と歯ごたえを出します。日本人はうまみも大好きですから、スープにだしを使います――中国ではそんなことはしません。醤油も、日本と中国では違いがあります」

沖縄で、長寿の秘訣を取材し、ゴーヤーチャンプルー
ゴーヤーについては、以前、京都滞在中に挑戦。
しかし、生だったのでとうてい食べられるものではない。

「アスガーは、口に入れて恐る恐る噛んだとたんに、僕の手のなかに全部吐き出した。僕もかじってみたが、我慢できないくらい苦くて、受けつけ難い日本の食材のジャンルとして、「いったいどういうつもりだ?」というカテゴリーのなかに入れていた」

「でも、こうして卵や豚肉と一緒に炒めると苦みは和らいで、料理の脂っこさを抑える働きもしている」

最後に、再び東京。
服部幸應氏の紹介で、一見さんお断りの店で食事。

ハモが入った、黄色い菊の花びらを散らしただし汁
「ふわっと湯気の立つだし汁をひと口すすってみると――葛でとろみがつけてあるが、欧米の料理でとろみをつけるときに使う小麦粉、バター、コーンスターチなどと違って、余計な風味が加わらない――喜びで本当に体が震えた」

「このだし汁は深いこくがあり、病みつきになるほどうまい風味を土台としていて、そのうえで、かすかな磯の香りがふっと鼻を突く。どこまでが味でどこからが香りかを区別するのは不可能で、僕が思うにそれこそがこのだし汁、というかすべてのうまいだし汁の力強さの源なのだ」

――ほかにも興味深い記述は多々あるけれど、このくらいに。
それにしても、こんな風に料理名を列挙していると、開高健の「新しい天体」(光文社 2006)を思いだす。

本書の冒頭で、辻静雄の“Japanese Cooking:A simple Art”を読んだ著者は、「デザートに関する記載がまったくない」ことを不思議がっていた。

「日本料理とはそういうものだというのなら、それはものすごく不思議だ。一度も笑ったことがない人がいると聞かされたら、とても不思議に感じるのと同じだ。きっと、辻は甘党ではなかったのだろうと勝手に考えて、読み進んだ」

日本料理にデザートの概念があるのかどうかは知らない。
でも、日本には和菓子がある。
取材熱心な著者も、和菓子までは手が回らなかったようで――あるいは、たんに美味しく思えなくて興味がもてなかったのかも――本書にはほとんど記述がない。
そこで、もし外国人が書いた和菓子についての本があったら読んでみたいと思った。
和菓子も、外国人の目を通せば、この本のように興味深いものになるのではないか。

もっとも、味噌や日本酒をつくる外国人がいるのだから、外国人の和菓子職人がいたっておかしくない。
そのひとが、すでに和菓子についての本を書いているかもしれない。

和菓子といえば、本書には「もちケーキ」と呼ばれる食べものがあらわれる。
新宿のデパ地下にやってきた著者の視界を一瞬横切った「もちケーキ」は、こんな風に紹介される。
「もちケーキ(米粉でできていて、小豆のペーストなど甘いものを詰めた菓子)」

「小豆ペースト」とは、あんこのことだろう。
すると、「もちケーキ」とは大福のことだろうか。

本書は続編、「英国一家、ますます日本を食べる」が出版されている。
それについては次回。



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