短編を読む その3

「ブレシアの飛行機」(ガイ・ダヴェンポート)
「紙の空から」(柴田元幸/編訳 晶文社 2006)

友人たちと航空ショーを見物しにいったカフカの文章をもとに書かれた作品。旅行の雰囲気があり楽しい。有名人が多数登場。ブレリオが飛ぶ場面が印象的。
「この人、カフカ?」(ライナー・シュタッハ/著 白水社 2017)という本に、このときの航空ショーの写真が載っており、そこにカフカと思われるひとの後ろ姿の写真が写っている。こんな写真、よくみつけたものだ。

「娘」
「コールドウェル短篇集」(コールドウェル 新潮社 1979)

人種差別を題材とした痛ましい話。徐々に状況が明らかになっている筆致が素晴らしい。

「賭け」(フリップ・ジャレット)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

酒場にいた見知らぬ男が、土地の若者とダーツで賭けをはじめる。ハードボイルド風の一編。緊迫感がある。

「情熱なき殺人」(ベン・ヘクト)
「世界傑作推理12選&one」(光文社 1978)

踊り子との別れ話の最中に、相手を殺してしまった弁護士。アリバイ工作をするのだが、すべて裏目にでてしまう。
ベン・ヘクトはアンソロジーでその名をみかけるけれど、一冊の本としてはみかけたことがない。ベン・ヘクト作品集なんてあってもいいと思うけれど。作品が少ないのかな。

「キリストのヨルカに召されし少年」
「ドストエフスキイ後期短篇集」(福武書店 1987)

クリスマス物語。アンデルセンのよう。

「ポタ、ポト、ポッタン、ポットン」
「時は老いをいそぐ」(アントニオ・タブッキ 河出書房新社 2012)

イメージをつないでいったような作品。見事な手腕。読んでいると昔のことを思いだす。

「犯罪者誕生」(T・M・アダムス)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

ミイラとりがミイラになる話。

「切り札」(T・M・アダムス)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

トランプをうまくつかった作品。

「骨董品が多すぎる」(ロズ・アヴレット)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

壁から古い人骨がでてくるのだが―。面白いが少々無理があるか。

「15年後」(ヘレン・メリアン)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

おそらくO・ヘンリの「20年後」を意識して書かれたもの。1人称によるミスリードが上手だ。


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短編を読む その2

「クレイジー二人旅」(ドナルド・オグデン・ステュアート)
「ユーモア・スケッチ大全1」(国書刊行会 2021)

青年と年配男性が列車に乗って降りるまでを面白おかしくえがいた落語のような作品。まちがえた列車に乗ったり、苦労して切符を買ったり、その切符を失くしたり、網棚から荷物が落ちてきたりする。
「ユーモア・スケッチ大全」は少しずつ読み進め、大変楽しい思いをした。

「真珠の首飾り」
「真珠の首飾り」(レスコーフ 岩波書店 1951)

クリスマス物語。むやみに結婚したがっている男が、縁を得て結婚する。それにしても、なぜこの成金のしゅうとは嫁にいく娘にこんな真珠の首飾りを贈ったのだろう。

「これが最後よ」(アンドリュー・クレイヴァン)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

夫の不倫をめぐる物語と思ったら…。見事などんでん返し。
「英米超短編ミステリー50選」は読みやすくて面白い。

「殺意の明日」(キャロル・ケイル)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

夫殺しのミステリと思いきやコメディに転ずる、愉快な作品だ。

「怪盗ルビィ・マーチンスン、ノミ屋になる」
「最期の言葉」(ヘンリー・スレッサー 論創社 2007)

悪の天才(?)ルビィにいつも振り回される〈僕〉。今回はノミ屋をさせられたあげく、払戻金が払えなくなりパニックに。

「ガス・ステーション」(パトリシア・J・サーモンド)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

勤務帰りの看護婦が寄ったガス・ステーションで起こったサスペンス。ひとつの視点から見た状況の変化が鮮やか。

「大佐の家」
「最期の言葉」(ヘンリー・スレッサー 論創社 2007)

年老いた大佐と、大佐と一緒に暮らす使用人をえがいた人情話。

「お訊きしたいこと」(ヒラリー・ウォー)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

殺人を犯した夫から逃げようとする妻の話。長い作品の一部分のよう。すさまじい緊迫感。

「不思議な石」
「五無斎先生探偵帳」(横田順彌 インターメディア出版 2000)

五無斎先生がいいかげんな推理をしたあと、別の真相が明かされるのがパターンの明治物ミステリ。のんきな感じが好ましい。横田順彌さんのことだから、端役などもみんな実在の人物なのかもしれない。

「死者の託宣」(ピーター・ラヴゼイ)
「英米超短編ミステリー50選」(光文社 1996)

新婚旅行先でクリケットに興ずる夫と、それに腹を立てる妻。とにかくうまい。

今回は以上10作品。
それにしても、短編ミステリは夫婦殺人ものが多い。
アンソロジーをつくったら、全何巻にも及ぶものができそうだ。


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