ボンボン

DVD「ボンボン」(2004 アルゼンチン)

主人公はおじさん。
ガソリンスタンドをクビになり、手づくりのナイフを売るもののうまくいかない。
おじさんは好人物。
車が故障して困っている娘を助け、家に車と娘を送りとどける。
さらに、車の修理までしてあげる。
そのお礼にと、血統書つきの犬を譲りうける。
名前はボンボン。

ボンボンは、娘の家では厄介者扱いされていたけれど、訪れた銀行の銀行員には目をかけられる。
銀行員はドックトレーナーを紹介してくれる。
なぜかサーキット場に住むトレーナーは、ボンボンに惚れこみ、すぐドッグ・ショーにでることに。
ボンボンは初参加で賞を得る。

ボンボンのもとに種付の依頼がくる。
が、ボンボンはその任を果たせない。
これでは、種付の報酬で稼ぐことはできないと、おじさんもトレーナーも困惑してしまうのだが――。

登場人物が、皆いい顔をしている。
視点がおじさんからはなれず、それでストーリーをよくもたせる。
たんたんと一定のペースで、おじさんのわらしべ長者のような物語が停滞なく語られていく。


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素敵なサプライズ

DVD「素敵なサプライズ」(2015 オランダ)

本作はおとぎ話的な、愁いのきいたコメディ。

貴族の家系に生まれ、大きなお屋敷で大勢の使用人にかこまれて暮らすヤーコブは、母と2人暮らし。
高齢の母が亡くなり、ヤーコブは弁護士を通じ、屋敷を売却して財団に寄付することに。
ヤーコブ自身は、首をくくったり、銃をつかったり、排気ガスを車内に入れたりして死のうとするが、いつも邪魔が入りうまくいかない。

その後、訪れた崖で、ヤーコブは奇妙な光景を目にする。
男が車から、車いすに乗った老人を下ろし、崖に向かうのだが、もどってきたとき車いすにはだれも乗っていないのだ。
ヤーコブが崖にいってみると、「エリュシオン(死後の楽園)」と書かれた消しゴムが落ちている。

ヤーコブは、ベルギーのブリュッセルにあるエリュシオン社へ。
なんとこの会社は、非合法に、死にたいひとたち向けに死を提供している会社だった。
支配人である年配の男性は、ヤーコブにいう。

《もし当社が旅行代理店で、究極の目的地へと、生涯一度の旅を提供するといったら興味はおありで?》

エリュシオン社は全宗教対応。
偶発的な事故を装い、そのさいは周囲の環境への配慮も怠らない。
旅立ちの方法は、特注もあればサプライズもある。
契約したら解約は不可。

展示会場で、自分の棺を選んでいたヤーコブは女性に声をかけられる。
エコな棺をさがしているという、女性の名前はアンネ。
ヤーコブ同様、自分では旅立ちの方法を選べず、サプライズにしたという。

屋敷にもどったヤーコブは、執事長のムラー老人に命じ、使用人を全員解雇。
じっとサプライズを待つのだが、なにごとも起こらない。
エリュシオン社に問い合わせると、普通に生活するようにと忠告される。

いつも金曜日はなにをしていただろう。
薔薇の手入れをしにもどってきたムラー老人にたずねてみると、以前は母上とダンスをしにいかれていましたという返事。
そこで、スピリチュアルな店で店番をしているアンネを誘い、一緒に年寄りばかりのダンスホールへ。

アンネは幼いころ両親が事故で亡くなったという。
そこで隣家の養女となり育ったのだが、いまだにあちらの家風にはなじめないと、心情をヤーコブに話す。

ダンスホールをでて道を歩いているとき、ブレーキのこわれたトラックが坂の上から暴走してくる。
これこそがサプライズにちがいない。
2人は手をつないで道の真ん中に立つ。
が、トラックは2人の脇を通り川に落下。

翌朝、ブリュッセルにあるアパートで一室だけが爆破されたというニュースがラジオから流れる。
そのアパートにいってみると、エリュシオン社の社員――支配人の息子たち――が、棺を車に乗せているところ。
現場にはアンネもきており、ヤーコブはアンネを屋敷に誘う。

屋敷を案内してくれたのはムラー老人。
アンネはムラー老人からヤーコブについての話を聞く。
ヤーコブの父は、ヤーコブと世界をまわろうとヨットを建造した。
ところが、試乗してそのままもどってこなかった。
以来、ヤーコブは感情をすっかり失ってしまった――。

この映画は2度目にみたほうが面白いかもしれない。
2度みると、小出しにされる情報の意味がよくわかる。
セリフのはしばしまで気を配っていることがみえてくる。

高級車がたくさんでてくるのも本作の特徴。
お屋敷に車のコレクションがあるし、訳あってアンネが車好きだからでもある。

オランダは天気の変わりやすいところなのか、すぐ雨が降ったりやんだりする。
天候がこの作品に味方している感じだ。

ちょうど映画の真ん中あたりで、曇り空の砂浜でヤーコブとアンネがダンスの練習をするシーンがある。
このシーンは素晴らしい。
2人の距離が縮まったことがひと目でわかる。
なにより曇り空というところがいい。

このあと、ヤーコブは徐々に感情をとりもどし、なんだか死にたくなくなってしまう。
エリュシオン社に契約履行の延長をもとめるが、相手は非合法なことをしているのだからヤーコブの申し出など受けられない。
支配人の息子たちは、銃を手に、車に乗って追いかけてくる。

この映画は、カーチェイスの場面でもクラシックが流れる。
なんとも優雅なことだ。
そして、追いかけていた息子たちは、あとで野蛮なことをしてと、父親である支配人に叱られる。

さらに、後半はアンネが大活躍。
ちょっと、ついていけないくらいの活躍ぶり。
ヤーコブがダンスホールにアンネを誘ったとき、店の店主がアンネのことを「慎ましい女性、でも積極的、オテンバ」と紹介するのだが、その紹介は正しかった。
アンネ役は、青くて大きい目をした、愛嬌のある女優さんが演じており、たいそう魅力的だ。

加えて、ストーリーには屋敷の売買問題がからむ。
屋敷は、胡散臭い弁護士のフェルメールの手により、ロシア人に売られることになる。
ロシア人は屋敷を美容とスパの施設にするつもり。
契約後48時間は、ヤーコブに拒否権がある。

はたして屋敷は売却されてしまうのか。
エリュシオン社との契約はどうなるのか。
ヤーコブとアンネは結ばれるのか。
と、ストーリーは続いていく。

砂浜でのダンスのシーンが素晴らしかったので、DVDを見終わったらそこだけ見返そう。
そう思っていたら、エンディングでのスタッフロールで、本編とはちがう、砂浜での様ざまなダンスシーンをみせてくれた。


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