気ままな情事

DVD「気ままな情事」(イタリア・フランス 1964)
原題、Il Magnifico Cornuto。

イタリア艶笑喜劇。
主人公は、事業に成功し、美しい妻もいる帽子屋の主人。
あるとき知人の妻と浮気をした帽子屋は、妻も不貞をはたらいているのではと妄想にかられるように。
ついには浮気を白状するように妻に詰めよる。
やってもいない浮気を白状するはめになった妻は、結果、本式に浮気をするように――。

テンポがよく、白黒の画面が美しく、音楽も軽快。
嫉妬のあまり、気がちがったようになる主人公は、ときおり喜劇の範疇を越えてしまいそうになる。
そのたびに、軽快な音楽が物語を喜劇に引きとどめる。

ひとつ、妙に気になった場面が。
妄想にかられた夫から逃れるため、妻は夜、知人夫妻――帽子屋が浮気をした相手とは別の知人――のお宅に身をよせる。
しかし、奥さんの様子が少々おかしい。
妻は4回も流産して、精神が多少不安定になっているんだと、知人の夫。
ふだんはなんともないんだが。

本筋とかかわりのないエピソードだけれど、コメディのなかにふいに影がさしたかのようで強い印象を残す。
知人の夫は続けていう。
「嫉妬なんて健康と富があっての贅沢だと思うがね」


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ハリーとトント

最近、DVDで映画ばかりみている。
これからは映画についてのメモもとっていきたい。

DVD「ハリーとトント」(アメリカ 1974)

妻に先立たれ、猫のトントと暮らしていた老齢のハリー。
区画整理のためアパートを追いだされたハリーは、トントとともに3人の子どもたちを次つぎに訪ねる――。

ロードムービー。
ハリーとトントは最終的に、NYからLAまでアメリカを横断する。
トントがいるため飛行機をやめてバスで移動。
でも、バスの移動もむつかしく、けっきょく中古車を買って移動。
ヒッチハイカーを拾ったり、自分もヒッチハイクをしたり、出会ったひとたちとのやりとりが点描される。

子どもたちは、それぞれ事情をかかえている。
ハリーとともに暮らしたいけれど、そうもいかない。
ハリーだって、子どもに迷惑はかけたくないし、また縛られたくもない。

各エピソードに、オチらしいオチはない。
そのおかげで余韻が残り、ひとつのエピソードが終わっても、それで映画全体が終わったような感じにはならない。
全体のテンポはとてもいい。

老齢の親が、自立した子どもたちを訪ねるというストーリーは、「東京物語」を思い起こさせる。
コメンタリーによれば、監督は「リア王」を意識したとのこと。
ハリーは中産階級のリア王なんだ。

主演のアート・カーニーは、アカデミー賞主演男優賞を受賞。
トントにもアカデミー賞もあげたらいいと、監督がコメンタリーで語っている。
まったくそのとおりだ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )