短編を読む その34

「四階の部屋」(アガサ・クリスティ)
「愛の探偵たち」(早川書房 1980)

夜、鍵を失くして部屋に入れなくなった4人の若者。石炭をはこぶリフトをつかって部屋に入ろうとしたところ、間違えてひとつ下の階の部屋に入ってしまう。リフトにもどり、めざす4階の部屋に入ったものの、手には血がついていた。もう一度、階下の部屋にいってみると、床に女性の死体がある。たまたま、この建物の上の階に住んでいたポアロが、この事件を解決する。

「巨象のブルース」(ドナルド・E・ウェストレイク)
「ウェストレイクの犯罪学講座」(早川書房 1978)

映画用の動物を飼育している会社に脅迫状が届く。脅迫は実行され、馬が撃たれ、キリンと猿は毒殺される。4度目の脅迫状が届き、今度は象のバスターが標的に。保険会社に雇われた探偵ジェフは調査におもむく。

「モカシン電報」(W・P・キンセラ)
「and Other Stories」(文芸春秋 1988)

強盗をしたインディアンが警官隊に撃たれて死亡。この出来事にアメリカン・インディアン同盟が首を突っこんでくる。強盗は被害者とされ、大勢のマスコミや野次馬が押しかけ、居留地は大騒ぎになる。

「イン・ザ・ペニー・アーケード」(スティーヴン・ミルハウザー)
「and Other Stories」(文芸春秋 1988)

12歳になった〈僕〉は、かねてから念願の遊園地ペニー・アーケードにやってきた。しかし〈僕〉の目に、遊園地はすっかり色褪せたものに映ってしまう。なぜこんなことになってしまったのか。最後、〈僕〉はその秘密に思いいたる。クレーンゲームのクレーンが「起重機」と訳されている。

「藍色の死体」(ランドル・ギャレット)
「魔術師を探せ!」(早川書房 1978)

架空のヨーロッパを舞台に、リチャード殿下の主任捜査官ダーシー卿が、魔術師マスター・ショーンとともに、さまざまな事件の謎を解くという、ミステリ・ファンタジー・シリーズの1編。病没したケント公爵のために用意された棺のなかには、ケント公爵夫人の主任捜査官バートン卿の死体が入っていた。しかもバートン卿の死体は、なぜか全身が青く染められていた。この事件には国家に反逆する〈古代アルビオン聖協会〉がかかわっているのか。国王より、じきじきに命を受けたダーシー卿は、事件の起きたカンタベリイで捜査を開始する。このシリーズは面白くなりそうなのに、不思議と面白くならない。

「幻のブレンド酒」(O・ヘンリ)
「O・ヘンリー ニューヨーク小説集 〔2〕 街の夢」(筑摩書房 2022)

ケニーリーズ・カフェのバーではたらくコン・ラントリーは、女性を前にすると、舌がもつれ、顔が真っ赤になtってしまう青年。階上に住むアイルランド人家族の娘キャサリンに惚れているが、ろくに話もできない。ある日、カフェに日焼けした2人の男がやってきて、せっせと酒の調合をはじめる。2人は、高い関税から逃れるために、ビンから樽にさまざまな酒をぶちまけたことで偶然できた、素晴らしいブレンド酒を再現しようとしていた。ブレンド酒は、コンのひと言がきっかけで見事に完成。そしてこのブレンド酒は、コンにも魔法のような効果をあらわす。

「ブルー・ラージャ」(サックス・ローマ―)
「骨董屋探偵の事件簿」(東京創元社 2013)

事件現場で眠ることで、そこに残った思念を感知して事件を解決する、モリス・クロウ探偵譚の1編。ロンドン市から国王にダイヤを贈ることになり、その会合が開かれる。市長や参事、宝石商や警部補が集まったなか、突然、中庭から叫び声がする。一同が窓から外をみているうちに、密室状態のこの部屋から、ダイヤモンド〈ブルー・ラージャ〉が消え失せてしまう。今回のモリス・クロウは眠らない。事件現場で無念無想となり、大気中から思念を得て、事件を解決にみちびく。

「死人に口なし」(シンクレア・ルイス)
「犯罪文学傑作選」(東京創元社 1978)

大学教授の〈わたし〉が死期の迫った老人から、父の遺稿を引き受けてほしいと頼まれる。読んでみると、天才の作品だと〈わたし〉は確信。現地調査をおこない、この天才を世間に紹介し、伝記を書いて出版する。ところが、〈わたし〉の仕事には手厳しい反論が寄せられる。そこで、〈わたし〉は婚約者から旅費を借り、この反論者に会いにいく。知られざる詩人を探求する〈わたし〉の奮闘をえがいた、愉快な一編。

「身代金」(パール・バック)
(同上)

子どもの誘拐を心配する裕福な夫婦。不安は現実のものとなり、子どもは誘拐されてしまう。事前に決めていた通り、夫婦は警察に通報。夫は自分の父親を頼り、身代金を用意し、犯人の要求通りそれを支払う。はたして無事に子どもはもどってくるのか。緊迫感に満ちた作品。

「園遊会まえ」(サマセット・モーム)
(同上)

聖堂参事会員の園遊会にでかけようとしている父と母。それにボルネオで夫を亡くしたミリセントと、その妹。ミリセントは夫を亡くしてから様子がおかしい。園遊会で講演をすることになっているのは中国での伝道に従事していた主教で、この主教から、ミリセントの夫の死は熱病ではなく、自殺だったのだという話がもたらされる。ボルネオで何があったのか。ミリセントは家族に真相を語り聞かせる。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 短編を読む ... 短編を読む ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。