『将軍たちの金庫番』

2010-06-28 21:52:06 | 本の話
毎晩サッカー見てて目が疲れるとは情けない・・・

そのセイにして?読書をさぼっておりますが
佐藤雅美著『将軍たちの金庫番』新潮文庫です。

一見、小説のような表紙になっていますが
小説ではなく新書に近い内容です。


1989『江戸の税と通貨』として刊行されたものを
1994『江戸の経済官僚』と改題され徳間文庫に。
それが更に改題され新潮文庫になったものです。

大ヒットではないが需要がある本の証拠でしょうね。


名著『大君の通貨』などで皆さまご存じの佐藤雅美が
江戸時代の歴史経済小説を書いてゆくうちに、小説の
流れの制約を受けない形で、江戸時代の幕府財政を
体系的に著したくなったという出版物です。

大変に面白い内容です。

読む前は、従来の小説の焼き直しだろうと思っていたら
違いました。

通史という形で見えてくることの数々
さらに、財政に苦しむ現代に通じる話。

文庫のためのあとがきで筆者はこうも書かれています。

役人というものの度し難さに触れた後
「役人はいつの時代にも油断がならなかったり、怠慢だったり
する、これも一例である」

まったく現代と変わらないのです。


天保一分銀で「銀貨の金貨化という錬金」にふれ
それが例の幕末の金貨大流出につながる話は、この本の白眉で
受験参考書などにさらっとまとめてあるアホな話(通説?)
しか知らなければ恥ずかしいところです。

本書を未読の方、『大君の通貨』しか読んでいない方
あなたは損をしておられます!