01逢いたや 2013 秋

2013-11-02 | 海外蒸機
01逢いたや 2013 秋

 2013年も10月になった。
 9月一杯でオランダで秋の学会が終わった。 10月3日はドイツの統一記念日だ。 またネルトリンゲンを訪問することにした。 残念ながらデトレフ氏は当日、ネルトリンゲンには行かない予定とのことだった。 しかし、昨年知り合ったフリードリッヒさんが“Sissi express”に乗るとのことだった。
 10月2日、夕暮れなずむネルトリンゲン駅に到着した。 今回もお供はポルシェ911のオープンカー、フランクフルトからは270km近くだ。 すでに夜は暮れている。 フリードリッヒさんからメイルがあり、夜のピザパーティーに招待してくださるとのことだった。 2階に小部屋があり、10人近い人々が集まっていた。





 バイエルン鉄道博物館は完全に私立で、国や州から独立しているとういう。 従って資金も充分ではなく今此処に集っているのもボランティアだという。 今晩は機関士が2名助手が2名居る。 普段はBMWで働いていたりディーゼルの運転士をしているという。 他の人は車掌役をするという。 ドイツでも蒸機がなくなってから30年以上の年月が経っている。 メンバーは20代と思われる若手が多い。 恐らく現役で蒸機が走っているのを見たことは無いに違いない。 今日は全員がこの博物館に泊まるそうだ。 もし蒸機と添い寝ができるのならこれに勝る幸せはないだろう。


博物館から出ると星空の下、18型が静かに蒸気を上げていた。



翌朝、朝7時すぎでも完全には明けていない。


駅を覗くと一条の煙が上がっている。


“Sissi express”は8時40分の発車だ。 7時30分過ぎにフリードリッヒさんが迎えにきてくれる。 まずは機関区内で整備されている彼の電気機関車E63を見せてもらった。


E63


E63


E63

 赤い色のロッド式の小型機関車だ。 彼は子供の頃このE63の模型を買って貰えなかったという。 何十年後かに本物が売りにでているのを見て、遂に買ってしまったそうだ。
娘にはこれだけお金だせばポルシェを買えるでしょうと文句いわれたらしい。


E63とフリードリッヒさん


隣の小型蒸機

外で豪快な排気音がした。





 外を見ると18型機関車がブローオフ中だった。 4気筒の機関車なので、前面の2シリンダーからも濛々と蒸気が上がっている。





 機関車は良く磨かれていて正面に95のサインがある。 この機関車は95歳である。 統一ドイツになる前のバイエルン王国鉄道の機関車である。







 列車は何度かポイントを渡りホームに着いた、しかしこの時点で8時40分だった。 出発まで5分もない。 慌てて駅を離れチェックアウトしていると出発の汽笛が響いた。

 外をみると“Sissi express”は出発していった。
 名著「01逢いたや」で斎藤晃さんが01の追っかけをされている。 アウトバーンをフォルクスワーゲンで先行しようとするが時速120kmで快走する01にあえなく抜かれてしまうシーンがある。 幸いわが2013年式ポルシェ911は俊足だ。 軽く加速していく 。前回の44形も貨物用機関車とは思えないくらい速かったが軽く追いついた。 バイエルンの快晴の空に煙が見える。 並走する道を追いかける。
 ドイツの一般道路は時速100km/hだ。 しかし110kmでおいかけても18型はじりじり離れて行く。 まさか95歳の蒸気機関車に追いつけないとは思いもしなかった。
 やむなく130kmまでスピードをあげるが、先行するフォードのワゴンに追いついてしまう、一般道で抜くのは度胸がいる。 まして左ハンドルで片手にCanon 5Dを
動画モードにしている。 やっと抜かして撮影地へ向かうが踏切がしまっている。


万事窮す!逆光のなか“Sissi express”は踏切を抜けて行った

 GPSで計算するがドナウベルトでもアウグスブルグでももう追いつかない。
 まさか2013年型のポルシェ911カレラSとI phone5の地図を装備しながら95年前の蒸気機関車に負けるとは、、、
 日本で走っている蒸機とはスピードが違うのだ。 ここに至って初めてドイツのパシフィック型機関車の凄さを思い知った。
 一応ドナウベルトまで走らせたが、すでに30分前に列車は通過していた。
 折り返し点はミュンヘンの先になっている。 行けないことはないが本日中にフランクフルトに帰らなくてはいけない。 折り返す距離が500kmになってしまう。 この日はウルムの西ドイツ型01(01-10も走っているのに気がついた。
 11時頃アウグスブルグに着く。 やむなく車をドナウベルトの駐車場に止め
アウグスブルグまでローカル列車に乗って行くことにした。



 11時過ぎに01の引く列車が姿を現した。 テンダーを2台連ねている。 長い旅に備えているのだろう。 西ドイツ型の01-10(三気筒140㎞/h)で動態保存はこの1台だけだ。 良く磨かれていて門鉄型のようなデフレクターを備えている。(ウィッテデフ;門鉄デフの手本) 生憎、逆光で足回りが潰れがちだ。

 停車は5分しかない。
 必死でホームの反対側にいくと息をつく間もなく発車の汽笛が響いた。 後ろにはオリエントエクスプレスのような塗装の客車が延々と続く。







 独特の3気筒のブラスト音を残し、列車は出発していった。



 今回も01との逢瀬は数分だった。

 さて午後までたっぷり時間が余ってしまった。 デトレフ氏に電話すると、ウルムはここ、アウグスブルグから1時間程度らしい。 ICEに乗ってウルム駅へ行くと昨年のようにベンツのオープンカーでやってきた。 近くの保存鉄道へ案内してくれるという。 車で行った場所はアイゼンバーンロマンティックで訪問したウクスルバーンだった。 あの時は01の重連とナローゲージの列車が並走したが、今日は空っぽでナローゲージの機関車を載せるフラットカーがぽつんと置いてあった







 鉄道趣味は釣りのようなものだ。

 ある時は次々にくる列車に興奮し、ある時は一日待って何も来ない。
 
 だが、来る毎に、友人が増えるのは幸いだろう。

 次にドイツへ来るのはいつのことかわからない。 しかし01型蒸気機関車を見たいと思っている限り、また機会はやってくるだろう。

 それまで私の[01逢いたや]は続くのだ。