01逢いたや2015秋(4)

2015-12-30 | 海外蒸機
水沼先生の“01逢いたや2015”を続けます。 水沼先生のレポートは青■で書き込みます。

同行した松岡君のレポートも併せて書き込みます。 松岡君のレポートは緑■で書き込みます。

地図と01の走行したコースです。  by松岡君(大きく拡大できます)

赤い↑矢印が「行き」です。
青い↓矢印は「帰り」です。

撮影日記

2015年10月3日、25回目の統一記念日を迎えたドイツ連邦共和国。 これを記念して旧西独ミュンヘンから旧東独アルンシュタットまで記念臨時列車が運転されました。

往路はバンベルクで客扱いを行ったのち、フラケンヴァルト峠を越えて旧国境駅プロープストツェラ、東独01の配置区ザールフェルトを経由してアルンシュタットへ向かうルート。 復路はチューリンガーヴァルト峠を越えてオーバーホフ、シュヴァインフルトを経由してバンベルク、ニュルンベルクへと帰ってくるルートでの運転でした。
主催者はEisenbahn Nostalgiefarten Bebra e.V.、一部客車を除き、車両の手配と運転はバエイエルン鉄道博物館が担当しました。


4 最後の追っかけ

朝、カーテンを開けると昨日までの好天が嘘のようにやっぱり空のほとんどに雲が広がる。
01曇りだ。
今回もジンクスは守られた。
ミュンヘンからの大学生A君も参加、ほとんど撮り鉄は初心者だ。 松岡君のナビで最初のお立ち台、バイエルスドルフ~ケルスバッハ間の田園地帯でカメラを構えた。 昔からの電化区間で架線柱が古いらしい。 空は7割がた雲に覆われている。





IC、各停が次々と姿を現す。

しかし少しずつ空は明るくなってきて01が来る前から日が射してきた。



朝日の中を01 180を先頭に煙突回りからドレーンを吹き上げ、猛烈なスピードでやってくる。





次位の01 66の運転席のマックス君は我々に気がついたようで大きく指を立てて合図してくれた。


早朝6時頃にミュンヘンを発った列車はKombiverkerの新型電機BR185に牽引されてニュルンベルク中央駅へ。ニュルンベルク中央駅からは先頭に01 180+2066、最後尾にV100 1365が連結されました。

ニュルンベルクを発って約40分、最初の撮影地に01がやってきました。


Baiersdorf ~ Kersbach 松岡さん撮影

ニュルンベルク~バンベルク間は1930年代の電化当時の架線柱が残っている珍しい区間ですが(画像の架線柱は恐らく戦後のものだと思います)、複々線化工事のため間もなく見納めです。 シャッターを切ったあとに両方の01の運転台に手を振ったところ、みなさんが僕らに気づいて手を振り返してくれたのは嬉しかったです。

ここから必死の追っかけでギリギリFrankenwaldbahnの勾配区間のハイライトに間に合いました。


直前に日が当たる幸運に驚喜しつつ、急いで撤収し次のポイントへ向かう。

01は速くこちらも相当跳ばさないと追いつかない。 次の撮影地は山の中、フランケンバルデンの勾配区間のハイライトだ。 峠の未舗装の道をかき分け、ベンツを飛ばす。 車を降りてカメラを持って走る。 回りではあの歯切れの良いブラストがもう聞こえている。 松岡さんは三脚を立てる余裕もなくカメラを構える。 タッチセーフ!黒煙を上げ01は通過していった。









松岡さん撮影

直後に反対方向から古い電機機関車が現れ、これも相当さびたタンク車を牽いていった。




Förtchendorf ~ Steinbach am Wald

列車はSteinbach駅での40分間の給水停車ののち、旧国境駅Probstzella、最後の東独時代の01配置区Saalfeldを越えて終点Arnstadt駅へ向かいます。

Steinbach、Saalfeld駅での停車を利用して最後にもう一発。


勢いづいた我々はまた追っかけを続けた。

標識にはザールフェルドの名前が現れた。



国鉄時代編集長山下さん、モデルズ井門の鈴木さんそして私の聖地だ。

東ドイツ末期に石油危機があり、このザールフェルドに生き残ったSLが集結した。 原型01も東独型015も41,44,52といった貨物用機関車もいた。 ちょっと寄ってみたいが、次の撮影地まで時間がぎりぎりで断念させられた。

3回目パウリンゼラ~シンゲン間の牧草地の高台だ。 Sカーブがあり、教会のある小さな村がある。 もう地元のてつ達が高台にラインを作って並んでいる。 待つ事しばし、豪快なブラスト音と共にSカーブの端に列車が現れ目の前を通過した。 村の教会の前を過ぎ森の中へ消えていった。













Paulinzella~Singen 松岡さん撮影

山間に響き渡った豪快なブラスト音に皆満足で“Gut!(いいね)”を連発している。 異国での追っかけはかなり緊張する。 新人のA君が興奮しすぎで携帯を無くして大騒ぎだ。 午前中はこれで終了、昼の休憩地となっているアルンシュタットを目指した。 遠くに煙が見えるので目指していくと、01 180 が給水、給炭をしていた。



松岡君が機関助手に訪ねると 01 066 は少し先の機関区にいるとのことだった。 先には結構大きな扇形庫があった。 01 066 はすでに庫の中に入って点検、保守作業中だ。 松岡君が話かけるが皆忙しそうだ。 マックス君が機関車の下に入っているのに気づき、さっそく写真を見せている。

静態だが蒸機がずらり並んでいる。







Arnstadt駅に併設する博物館を少しだけ見学して乗務員さんたちに御挨拶







旧東独地帯だけあってソ連製のディーゼル機関車231やルーマニア製の110がいる。





東ドイツ型の015は旧保存指定機だった 01 531 が扇形庫の端にいる。 煙室扉が尖った古いタイプだ。 この機関車はザールフェルドに末期までいて私の写真にも残っている。 長い間、静態だったが今年になって動態復活したらしい。 ドイツの蒸気機関車復活は日本より一枚上手だ。 突然、若い日本人から声をかけられた。「もしかして水沼先生ですか?」 彼は国立のがんセンターで私の部下だった先生のもとで研修中とのことだった。つまり孫弟子みたいなものだ。 井門さんのサイトも見てくれているそうだ。 ヨーロッパ内で何泊も夜行で過ごしていたというから筋金入りの鉄ちゃんだ。 松岡君らと早速情報交換している。 ここで昼食をと思ったが1時間程度しかなく、ロケハンしながら復路を先行することにした。

昼食は自然食品カフェのようなところで購入できたものの食べる時間なく最初の撮影地へ。

ついに雲がでてきた。 「01原型が走ると日が射さない」は今回も守られる。

松岡君得意の山登りでデルベルグ~ゲルベルグ間の峠の中腹で構える。 線路脇でかなり狭いがすでに4,5人の地元のファンがいる。 後からきたドイツ人がなんと線路標識を曲げてしまった。 ちょっとびっくりだ。 曇り空だが谷が深くどちらにしても光は当たらない。 復路は 01 066が先頭で今度もしっかり煙をあげてカーブを回り込んで2台が通過していった。















Dörrberg ~ Gehlberg 松岡さん撮影
Oberhofまではかなりの勾配区間で、この日一番のサウンドでした。
乗務員さんたちにとっても Arnstadt~Oberhof 間が一番のハイライトだったようです。 ネルトリンゲンに帰区した両機のボイラー上には、ブラストによってトンネルから剥げ落ちた煤の塊が積もっていました。

Oberhofでの30分の給水停車を利用して先回りです。


追っかけはさらに続く。 秋の日の傾くのは早く、往路の2本目オーベルホフ〜ゼラーマーリス Oberhof~Zella-Mehlis 間はすでに斜光線だ。

うろこ雲からわずかに光の差す中を 01 066、01 180 が通過していく、後追いのショットではわずかに夕日が反射してくれた。











Oberhof~Zella-Mehlis 松岡さん撮影

正面に薄く夕日が差してくれたおかげで先輪が光りました。118号機とは違う、2066号機のカサカサと煤けた感じも出て満足です。 あと1分遅れてくれれば夕日が完全に差してくれましたが・・・。

復路はArnstadt発車時点で30分ほど遅れていたのでスジが読めませんでしたが、定時なら40分停車のMellrichstadtで抜けると考え、さらに先のMünnerstadt駅で待ち構えることに。


ターミネーターなみにしつこい我々はさらに列車を追っかける。 線路脇の並走する一般道を走る。 風がなく線路には煙が残ってる。 しかし予想外に村が多い、村に入ると速度制限50km/h制限になる。 列車は100km/hは軽く超えているだろう。 前に見える01の煙は少しづつ薄く、遠くなり列車に引き離されて行く。

ついに日没になった。 諦めて高速で先回りし小さな駅へ先回りする。 ミンナーシュタットというホームも短い駅だ。 静かに01の列車がやってきて停止した。 ここで数分の整備だ、軸焼け防止にオイルが注入される。 火床整理もしている。 マックスさん達はすでに8時間を超えて運転しているはずだ。 かなり過酷な労働のはずだが粛々とこなしている。 線路の裏は森が広がっているようだが、暗くてはっきりしない。 ベンツのヘッドライトを向けるがほとんど役に立たない。








Münnerstadt 松岡さん撮影

単線路線の交換駅ということで遅れていたもののきちんと停車してくれました。
2面2線の小駅で雰囲気も最高でした。 停車時間を利用して足回りの点検をするため、ヤラセではなく両機とも点検灯が点いています。



信号が青になると、汽笛2声、列車は出発していった。

もうすっかり暗くなり、最後の停車駅、シュバインフルトへ先行した。

すぐに列車はやってきた。 ここで給水、列車はしばらく停車する。 乗客達は列車をおりて暗いホームを歩き回っている。 列車の中で飲み過ぎたのか合唱も聞こえる。 ここで松岡君は交渉に成功、ニュルンベルグまで01に添乗することになった。



2台の罐は蒸気圧が上がりすぎたか、盛んにドレーンを切っている。
機関車前方に勢い良く蒸気が排出される。 しばらくすると車掌が大声のドイツ語で呼び回りだした。 多分「All aboard: 出発します、乗ってください」だろう。 皆が列車に上がりホームは人気が少なくなった。

この旅が終われば海外へ来ることが困難になる私にとっては多分、生涯最後の01の発車の場面だ。 カメラを置いて最後は見るてつで脳裏に焼き付けることとした。 夜空に蒸気と煙があがる。 短笛2声、いつもの腹に響くようなブラストで列車は加速して行く。 どこかで拍手と歓声があがる。 私は立ち尽くしたまま01が視界から消えるまで見続けた。






運転時刻

Bft Nurnberg Hbf 8.59 Gl.8
Abzw N-Jansenbr 9.03
Bft Furth Gbf 9.05
Bft Furth/By Hbf 9.06-08
Vach +14-21
Elstersdorf Ust 9.27
Bft Erlangen Gbf 9.30
Bft Erlangen Pbf 9.31-33
Baiersdorf 9.38
Abzw Trubbachbr 9.43
Forchheim 9.44-46
Eggolsheim 9.51
Bk Buttenheim Hp 9.51
Hirschaid 9.55
Strullendorf 9.58
Bamberg 10.04-07
Hallstadt 10.14
Breitengrusbach 10.19
Zapfendorf 10.26
Bad Stafelstein 10.35
Lichtenfels 10.40
Hochstadt-Marktz 10.47
Kups 10.55
Kronach 11.00
Pressig-Rothenk. 11.12
Fortschendorf 11.17
Steinbach am W 11.23-12.02
Ludwigsstadt 12.08
Probstzella 12.14-18
Saalfeld(Saale) 12.39-46
Bad Blankenburg 12.54
Rottenbach 13.00
Stadtilm 13.12
Arnstadt Hbf 13.32

Arnstadt Hbf 16.10
Plaue(Thur) 16.17
Grafenroda 16.23-26
Gehlberg 16.40
Oberhof(Thur) 16.45-17.17
Zella-Mehils 17.22
Suhl 17.27-38
Dietzhausen 17.45-51
Grimmenthal 18.01
Ritschenhausen 18.03
Rentwertshausen 18.09-16
Mellrichstadt 18.26-19.08
Neustadt(Saale) 19.18
Munnerstadt 19.26-44
Ebenhausen 19.55
Oberwerrn 20.00
Schweinfurt Hbf 20.07-33
SchweinfurtStadt 20.36
Gadheim 20.43
Hasfurt 20.51
Zeil 20.56
Ebelsbach-Eltm. 21.00
Staffelvach Bk 2 21.04
Staffelbach Bk 1 21.05
Oberhaid 21.09
Abzw Hoflein 21.12
Bamberg 21.14-20
Strullendorf 21.27
Hieschaid 21.30-32
Bk Buttenheim Hp 21.34
Eggolsheim 21.36
Forschheim 21.41-43
Abzw Augrabenbr 21.45
Baiersdorf 21.49
Bft Erlangen Pbf 21.55-22.05
Bft Erlangen Gbf 22.07
Bft Erl-Bruck 22.09
Eltersdorf Ust 22.10
Vach 22.13
Bft Furth/By Hbf 22.19-22
Bft Furth Gbf 22.24
Abzw N-Jansenbr 22.27
Bft Nurnberg Hbf 22.32 Gl.8 (wird DPE96, Nurnberg Hbf ab 22:48 -Munchen Hbf )






第一回鉄道模型芸術祭

2015-12-27 | 鉄道模型
池袋西口、芸術劇場、第一回鉄道模型芸術祭は本日17:00で終了です。


昨日、土曜日午前中は人影も少なかったのですが12時台NHKニュースで紹介されてから大盛況でした。

非常に内容は濃いですので是非お出で下さい。


RASSの皆様がが持ち込まれた“マフポッター”は快調に大都会の真ん中で汽笛を響かせています。


広場ではおぎのやの釜めしや甲斐のお弁当、台湾の駅弁が販売されています。


一例、釜めしです。

釜は回収してくれます。

私も17:00終了まで会場に居ります。




忙しくしてます

2015-12-23 | 国鉄時代
自宅の夜中が唯一のわずかな「時間」です。

ドイツレポートを進めたいのですがまさに死ぬほどの忙しさ・・・

明日(今日)は会社出社後午後から夕張に向かいます。

昭和50年12月24日、国鉄最期の蒸機列車、夕張線6788列車が走って40年です。

私たちは夕張で臨時6788会を開きます。

ゲストは昭和50年デビューの夕張市清水沢駅前の電器店『燕商会』の御嬢さん“リリーズ”が我々蒸機ファンの為にコンサートを開いてくれます。
蒸機ファンと家族で30人、それに追分機関区の元蒸機乗務員4人、夕張市民などが招待客として集まります。

鉄道趣味界始まって以来最高に素晴らしいお馬鹿なイベントだと自負して居ります。

25日朝から山を下り、新千歳から出社して模型を携えて池袋芸術劇場です。

26(土)、27(日)の第一回鉄道模型芸術祭に出展します。

http://tetsudomokei.jp/

https://www.geigeki.jp/performance/20151226g1/

出展者名は“日本の蒸機を愛する会”

出展名は『我らが愛しき日本の蒸機』です。

出展はジオラマ、レイアウト、パイクが主流と思われますが、日本の鉄道模型は車両工作が本流である筈だということで蒸機加工の名人が集まって作品を見せます。
(末席に井門も展示場の汚し程度に参加いたします)

工作途中の写真をアルバムにして閲覧できるようにします。

そして、芸術祭の目玉は本物の蒸機が走ると言う事です。

夏のコンベンションに続き“おぎのや”の釜めしも登場いたしますので大宮の鉄道模型フェスタともどもぜひお立ち寄りください。

翌日から28日からは一族で両親のダイヤモンド婚式旅行です。 ダイヤモンド婚から10月10日後に生まれたヤツはその辺りで還暦になるわけです。

猛烈な年末年始に向かって最終ダッシュ頑張ります。







01逢いたや2015秋(3)

2015-12-13 | 海外蒸機
水沼先生“01逢いたや2015秋”を続けます。


3. 01添乗

乗ってみるとマックス君が今日は機関士で、指導機関士はハイナーさん。
驚いたことにマックス君のガールフレンドのマチーナさんがエンジニア席にいる。 なんと機関助手見習い中らしい。ただ彼に付き合ってきているだけと思った相当なテツコらしい。 そして機関士がもう一人, クリスティアンさんだ。
短い警笛と共に01は走りだした。
マチーナさんが投炭し、マックス君が追加の投炭をする。



ものすごいブラストだ、低くて歯切れが良い。 こんな音は聞いたことがない。

もっとももこんな罐の近くで聞いたのは初めてだ。



汽笛が鳴り機関車はさらに加速していく。



周りにはバイエルン地方のなだらかな牧草地が広がる。

秋の斜光線を浴びて美しい田園風景に01の影が写る。







青い空と秋の風、響き渡る01のブラスト。

これがもし夢なら覚めてくれるな、時間よ止まれ。



現実に本線を蒸気機関車が走るのは大変で、後ろからコンテナ列車が追い抜いて行ったり、ICEが凄いスピードですれ違ったりする。



運転司令所からも次々連絡がくる。 当然100km/h以上で走らなくてはいけない。 01の運転はいかにも難しそうだ、しかし楽しそうだ。



撮り鉄、乗り鉄いろいろあるが、極めれば蒸気機関車運転テツだろう。









しかも,世界の名機関車01だ。蒸気現役時代を知らなかったドイツの若者達が一生懸命、運転しているのは素晴らしい。







日も暮れてきた。 01 180は向きを変えるために切り離されていった。 駅でしばらく停車だ。









地上に降りたマックス君が記念に写真を撮ってくれた。

あまりの親切に恐縮するばかりだ。



2時間の運転席で、手は真っ黒だ。しかし01の煤だからこのまま洗いたくない。







01は日の暮れたニュルンベルグ駅に滑り込んで行った7時30分を過ぎている。



皆と握手をしてホームへ降りた。





時刻表を見るとドナウベルトへ戻る列車は1時間後の各停しかなく8時30過ぎの発車だ。

しかもドナウベルト到着まで1時間30分以上かかる。 眠らないように起きている、帰りは長く感じる。

ドナウベルト駅前で駐車していたベンツに乗り込む、眠気を押さえてニュルンベルグまで運転だ。

12時を超えて、やっとホテルへ着いた。 松岡君がすでに着いており、半年ぶりをビールで乾杯し明日に備えた。

残念ながら天気予報は曇りだ。








01逢いたや2015秋(2)

2015-12-08 | 海外蒸機
2.ネルトリンゲン

結構、疲れていて、翌朝は8時過ぎに目を覚ます。

遅い朝食を取り博物館へ向かう。

門は半分閉まっている。

あれ、今日は休館日だ・・・。



ネルトリンゲン バイエルン鉄道博物館前の駐車場に置かれた軽便蒸機

しかし、勝手知ったる他人の家だ。
ちゃっかり車を機関庫の前に止め、これも半開きの庫の扉から中へ入る。
 


機関区の中の52型にも火が入っている。 点検しているのは数年前44型をデトレフさんと運転していた若い方のマックス君だ。 土曜日に52型を運転して専用線を走るそうだ。






いつも修繕に使う庫の前に01がいる。 2台の01にはすでに火が入っている。 長いデフに朝日が逆光でシルエットになり煙が上がっている。

山下さんでなくても拝みたいくらい格好がいい。






この01 066をじっくりと眺めていると背の高い青年がやってきた。

運転手の服を着ている。
彼の名前もマックス君 (Maximilian Flemming) だ。

「やあ、今日はヒデキと一緒じゃやないのかい?」

と聞いてきた。
ヒデキ?松岡君のことか、最近、週末になるとネルトリンゲンに来て修理を手伝っているらしい。
ニュルンベルグで合流予定だと答えると

「じゃあ01に乗って行くかい?」

と言われた。
まさか? 今日は写真を撮るつもりと答えかかってどきどきしながら考える。
01の添乗なんてまるで夢のようだ。 ニュルンベルグに着くのは夜7痔30分過ぎらしい。 電車でネルトリンゲンまで帰ってくると深夜になる。 彼はその辺も察してくれて途中のドナウベルトで乗ったらと言ってくれた。



給炭場へいくとさっき移動した 01 180 が給炭作業をしている。
クレーンで豪快に給炭している。

太い煙突、太いボイラー、少し複雑な手摺、西ドイツ型もよく見るといいものだ。






この01 180はお昼には移動機に押されて 庫の前に戻ってきた。


2台の01が向きを換えて2台が並んだ。


空は雲一つない青空、
そして皆、お昼をとっているのか誰もいない。 今日は休館日でお客さんは一人もいない。 2台の01からは少しづつ蒸気が流れて、しゅーという排気音が静かに流れる、まるで息をしているようだ。 蒸気機関車は止まっていても生きているのだ。 ぼんやりと雲一つない青空を眺める。 遠くで52型のクルー達が家族とランチを摂っている。

なんと贅沢な時間だろう。 このまま時が止まってもいいだろう。


午後になると 01 066 が動きだした。







給炭場へ行き給水とクレーンで豪快に石炭を積み出した。 秋の斜光線に栄えてデフや2mの動輪が輝いている。








そうこうするうちに客車数台を牽いて 01 180 が出発線に移って行く。







ディーゼルも動き出した。 01 066 も出発線に出て行く。
こうしてはいられない、ベンツに戻りこちらも出発だ。

途中で写真を撮れるか場所を探す。
しかしこの道は3年前にS3/6にぶっちぎられた場所だ。 ドイツの一般道は100km、村の中は50kmだ。 ドイツの旅客用機関車は戦前から時速120km以上で往くのだ。 1973年、元祖『01逢いたや』で斎藤晃さんの運転するワーゲンはあっさり01に追い抜かれた。 ドナウベルトまで01が速いに決まっている。 撮影は諦めドナウベルト駅へむかう。

合流のある結構大きい駅だ。 時間は午後5時、ホームは8番まである。

列車はどこから来るのかわからない。
真ん中の6番線できょろきょろしながら01を待つ。
ICEがやってきた。 結構短い時間で大きな荷物を持った人達が乗り降りし、音もなく出て行く。

視界が開けると01が止まっている。 送り込み列車だ、両端に01が居て真ん中に控え室として使っている客車が2両、そして補機用のディーゼル機関車が挟まっている。 なんとホームから数100m先の留置線に止まっている。 ホームを降りるか?一瞬ためらったが、ボランティアのドイツ人が犬走りを走って行く。 私もそのまま飛び降りるとそのボランティアを全力で走り追いかけた。 普段サーフィンしているから体力には自信ありだ。

列車の先頭の 01 066 には彼とほぼ同時に着いた。 見上げると運転室はすでに4人は乗っている。 どうしようとボランティアの彼が聞くとマックス君がヤパニッシュ(日本人)と返事をした。 彼はすごすごと後ろに下がり、自分は運転室に上げられた。

遂に夢のような01添乗が始まった。