建物づくりの原点を観る-7

2010-05-22 10:27:58 | 居住環境
少し間が空きましたが、先回の続きで、ドロミテ地域の建物の諸相を紹介します。
出典は、同じ“ALTE BAUERNHAUSER IN DEN DOLOMITEN”です。
今回は、先回載せなかった石積みの多層建築。

石を加工しない(加工しても叩き割った程度)野面積みのようです。

いずれにしても、日本では普通にはお目にかかれない建物づくり。
西欧の都会にある石積み建物よりも、私にはこちらの方が好みに合う。
ロマネスクと呼ばれる建物づくりにも共通するところがあります。
それは、つくりたいことが、素直で明確なこと。
表向きの顔を先ず綺麗にすることに努める、などということとは無縁。だからかえって綺麗なのかもしれません。

最初は標高950mほどの集落の一画。「建物づくりの原点を観る-1」(http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/aacd0728d16f3fa859676f7f9282608a)の地域拡大図の北東にある CENTRO CADORE のあたりではないかと思われます。



最上階以外は人の暮す場所のようです。
窓まわりには、よい建具が入ってます。内側が内開きの両開きガラス戸、外側に外開き鎧戸(よろい ど)。
別の本で、内側も外側も外開きで、内側を閉めたまま、外側の鎧戸を開けることのできる「機構」を見て驚いたことがあります(いつか紹介します)。

次は、場所の比定はできませんが、少し標高の低い500mあたりの建物。急斜面に建っているようです。



何気なく、必要に応じて設けられた窓の並びの美しいこと。
もちろん、石積みの建物の原則で、開口部はかならず上下に通らなければならない。その原則をまもりながら、美しい。
これは石積みだけではなく、組積造共通の原則。隅には開口を開けることはできず、いくらかの壁の部分をつくる、これも原則。
このあたりは以前に紹介した EARTH CONSTRUCTION に詳しく説明されています(http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/a1e5197a0fd0d53a4f82d9ed892bddbd)。

積み方は、窓を設けるレベルまで積んでゆき、開口位置を確認して開口間の壁だけ積み上げる・・・この繰り返しで石を積む。
目地材:接着材は、石灰(シックイ)か特産のドロマイトでしょう。

それにしても、どうやって石を上まで運ぶのか。

次の2枚は、標高1000m弱のあたりの建物。
2枚目の方は、石積みの上を白壁で仕上げている。多分、ドロマイト塗り。





石積みの建物は、いずれも屋根は瓦葺きのようです。

次は、今回紹介の2枚目の写真の建物の手前側の巨石を積んだ部分の詳細です。
瓦の様子もよく分ります。これが瓦の原理・原型。日本で言う本瓦と理屈は同じ。

さかのぼれば、同じ形の瓦を交互に上向き、下向きにして使うのが原型だったらしい。中国の庶民の住居で見たことがあります。



今回のおしまいは、こういう石積みの建物が建ち並ぶ風景。

窓には、目線の高さまでカーテン。上から陽を採りこむためではないかと思います。

バルコニーの付け方が分ります。



あと2回ほど、紹介を続けます。
一回は「納屋」の建物の紹介。もう1回は個々の建物の断面図などの予定です。
ちょっと、間が空くかもしれません。

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