私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

イサム・ノグチ原爆慰霊碑建立の勧進(4)

2022-12-06 10:12:05 | 日記・エッセイ・コラム

 

 NHK制作番組『イサム・ノグチ 幻の原爆慰霊碑』を自分でコピーしたDVDを、また、見てみました。建立勧進の気持ちはいや増すばかりです。残り僅かな私の持ち時間の尽きる前に、せめて建立への運動の立ち上がりだけでも見たいものです。

 イサム・ノグチ原爆慰霊碑建立の勧進(3)では民放の番組『イサム・ノグチ:地球を彫刻した男』(ナレーター:木村哲哉と仲代達矢)も紹介しました。その後、KSPSという米国のテレビ会社制作の番組『ISAMU NOGUCHI』とNHKの「日曜美術館」の古い番組『イサム・ノグチのモエレ沼公園』をDVDに移すことが出来ました。以上4つのDVDは、イサム・ノグチ原爆慰霊碑建立の勧進(1)の末尾に書きましたように、ご希望であればお送りします。

 札幌のモエレ沼公園はとても素晴らしい公園です。幼い子供から車椅子の老人まで楽しい時間を満喫できるこのタイプの公園としては、比類を絶する、世界に冠たる規模と芸術性を持っています。

 この秋、コロナ規制の緩和もあって、紅葉の京都は内外からの訪問客で溢れました。確かに古都京都の秋は美しい。しかしこの大混雑の中で、どれだけの人々が本当の秋の風情を胸に焼きつけたでしょうか。

 嵐山の渡月橋のあたりの雑踏の模様を見ながら、私は、昔、米国で見たテレビ番組のタイトル「You Were There」を思い出していました。これは一種の歴史ストーリー番組で、過去の名高い事件の現場に立ち会ったような臨場感を視聴者に与える試みでした。「あなたはそこに居た!」というわけです。「京都の秋の嵐山に私は居た!」「I Was There!」 その思い出(証拠写真)のために誰もが、先ずは、スマホを振りかざす。

 私がモエレ沼公園を訪れたのは20年ほども前で、すでに多数の樹木が植えられていました。今では立派な林や森ができていることでしょう。札幌では春に梅と桜が同時期に咲きます。美しく繊細な葉のもみじの木も大きな葉のメープルの木も育ちます。モエレ沼公園を、いわゆる桜の名所、紅葉の名所に仕立てるのは、イサム・ノグチの意図にそぐわないでしょうが、京都府立植物園のように、一種の穴場のような形でモエレ沼公園の春と秋が内外から多数の訪問客を誘致するようになってくれることを私は夢見ています。この公園は一度に一、二万の人々が訪れても、ビクともしません。“密"状態になる心配などありません。

 イサム・ノグチのモエレ沼公園の礼賛に力が入り過ぎて、やや勇み足気味になってしまいましたが、次回にはまた本題のイサム・ノグチ原爆慰霊碑建立の勧進の話題に戻ります。私は、この札幌のモエレ沼公園を、広島と長崎に並ぶ、原爆碑建立の有力な候補地と考えて居ます。

藤永茂(2022年12月6日)