褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 ヒズ・ガール・フライデー(1939) マシンガントークが炸裂

2021年12月20日 | 映画(は行)
 映画がサイレントからトーキーへ変わってきた時代(1930年代)において、スクリューボール・コメディと言われる分野の映画が流行した。サイレントだと動きで笑わすことになるが、トーキーになってくると台詞で笑わそうとする映画が出てくる。男優と女優がもの凄い台詞の量をテンポよく早口でまくし立て、その台詞がまたユーモアに富んでいるような映画のことだ。
 そんな映画の代表作とでも言うべき歴史的作品が今回紹介するヒズ・ガール・フライデー。今の時代において男女平等、ジェンダーフリーなどが叫ばれ、ちょっと昔はまるで女性の社会進出が拒まれていたなんて時代があったようだが、本作は相当古い時代の映画だが主演女優のロザリンド・ラッセル演じる女性の役割を見ていると男性陣を相手に丁々発止のやり取りが見れる。女性が男性に対等以上に渡り合うのもスクリューボール・コメディの魅力としてあり、今の女性なんかは1930年代から1940年代のスクリューボール・コメディの作品なんかは楽しく観れると思う。

 それでは会話だけでなく物語もテンポよく進むストーリーの紹介を。
 女性敏腕記者としてならしたヒルディ(ロザリンド・ラッセル)が婚約者のブルース(ラルフ・ベラミー)を伴って、辞職を願って元旦那で編集長であるウォルター(ケーリー・グラント)の元へ挨拶にきた。ヒルディはブルースと結婚して彼の田舎へ移り住み、今日中に列車で出発するとウォルターに告げる。しかし、ウォルターはヒルディの記者としての才能を買っており、しかも彼女に対してまだ未練があった。ウォルターは彼女の結婚を遅らせるために、あの手この手を使って妨害し、更には彼女に最後の仕事と頼んで、翌朝に執行される死刑囚の取材を命じるのだが・・・

 元夫妻であり上司と部下である間柄のウォルターとヒルディの会話のやり取りが多くを占める。この2人の膨大な台詞の量も凄いが、テンポが良過ぎるぐらいの会話のやり取り。脳みそよりも先に口が勝手に動いてしまうような印象さえあるが、会話の内容も非常にユーモアがある。そしてウォルターの強引過ぎるヒルディの引き留め対策がなかなかの見物。犯罪、トラップ、賄賂など何でもありなのが、腹が立つどころか笑える。
 この主演の男女の会話の応酬も楽しいのだが、その周りのドタバタも非常に楽しいし、場面転換のテンポも良いのでダレずに最後まで見ることができる。女性が活躍する映画というのは、何時の時代も楽しい作品が多い。改めてコメディの分野は現在よりも、この時代の方が洗練されていて面白いと思えた。
 よく耳にするけれどスクリューボール・コメディとは何ぞや?と思っている人、古い映画の名作を見たい人、新聞記者になりたいと思う人、女性が頑張る映画を観たい人・・・等に今回はヒズ・ガール・フライデーをお勧めしておこう。

 監督は名匠ハワード・ホークス。コメディは本作のような洗練された作品を撮るし、西部劇においても名作を連発。コメディでは赤ちゃん教育、ハードボイルド作品では三つ数えろ、パイロット達の友情と恋愛を描いたコンドル、傑作西部劇リオ・ブラボーなど、お勧め映画多数の名匠です。
 


 

 

 


 
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映画 ヒーロー/靴をなくした天使(1992) 本当のヒーローとは何か?

2021年06月03日 | 映画(は行)
  目立ちたがり屋に多く見受けられるのが、やたら英雄(ヒーロー)に成りたがる者。ただ今の時代において様々なSNSを利用して自分自身で発信する者が多いが、その中には自分を等身大以上に見せかけようとして嘘やハッタリを並べてヒーロー気取りの輩を見受けられる時がある。そもそもヒーローなんて成ろうと思ってなれるものではない。ここぞという時に現れるのがヒーローなのだ。
 大人になってしまった男性の中には少年の頃には、僕も大きくなったら英雄(ヒーロー)になるんだ!なんて叫んでいた人も多いと思うが、果たしてヒーローって何だろう?そんな疑問を少しだけ解決できた気分になれる映画が今回紹介するヒーロー/靴をなくした天使

 今こそヒーローの出現を待ち望まれているのだが、残念ながらヒーローが生まれにくい状況であるのも確か?そのように考えるとなんだが絶望した気分になったりするが、本作を観ると少しばかり明るい気分になれる。それではストーリーの紹介を。
 ちんけな詐欺師であるバーニー(ダスティン・ホフマン)は離婚した元妻と暮らしている息子と会うために廃車寸前の車を運転していたのだが、目の前で飛行機が墜落。嫌々ながらも乗客を救出して、早く息子に会いたいためにその場をそそくさと去っていく。
 しかしながら、墜落した飛行機の乗客の中にいた敏腕女性レポーターのゲイル(ジーナ・デイヴィス)は自分を含め、乗客全員を助け出した謎のヒーローを探し出すために、マスコミを挙げて賞金100万ドルをチラつかせる。たちまちカネの必要に迫られたバーニーはその報道を知ってニンマリするのも束の間、なんとホームレスのババ(アンディ・ガルシア)がヒーローとしてテレビに写っており、世間から大人気を得ていた・・・

 とにかく何をやっても上手くいかないダスティン・ホフマン演じる詐欺師のダメっぷりが笑える。目の前で飛行機が墜落してしまう不運さも笑えるが、せっかく訪れた英雄(ヒーロー)になれるチャンスを逃してしまう半端ないツキの無さが笑える。今まで俺は自分の運の無さを嘆いていたが、実は俺って幸運じゃんなんて思えたきた。
 しかし、ショボい詐欺師もそうだが、嘘つきのホームレス、私利私欲で動く女性レポーター等、ロクでもない登場人物ばかり出てくるので、ヒーローを探し出すのが困難だったのだが、本作の台詞で明快にヒーローが何処にいるのかを教えてくれる。意外にもヒーローって近くに居ることを知ることが出来るし、ヒーローとは何か?そしてヒーローの存在価値まで教えてくれる。そして、噓八百をSNSを使って流しまくる愚か者のおかげで人間不信に陥ってしまっている人も居ると思うが、そのような人たちに対して、これからの生き方を教えてくれるので非常に有難い。
 基本的にはハートフルな気分になれるのだが、都合よくヒーローを生み出したり、逆に突き落としたりするマスメディアに対する皮肉が描かれている点も本作の素晴らしいところ。ハリウッド映画ってエンタメの中に社会性を入れてくるのが本当に上手い。
 そして、本作のオチが端的だが凄い。それまでは感動的にヒーローという物を描きながら、貴方は本当にヒーローになれますか?と問いかけられてるような結末はインパクトがある。この問いかけに対して何の迷いも躊躇もなくイエスと答えることが出来れば、貴方は間違いなくヒーローに成れる。
 財布やそして靴などの小物の使い方が上手く、大まかな内容だけでなく細部に至るまで巧みな映画で、玄人も素人も唸らせる優れものである。笑えるし、感動できるし、癒される気分にもなれるし、偉そうなことばかり言っているだけの目立ちたがり屋を見抜ける方法までも知ることが出来る?映画ヒーロー/靴をなくした天使を今回はお勧め映画に挙げておこう。

 監督はスティーヴン・フリアーズ。コメディ、シリアス、社会派、文芸作品・・・等、幅広い分野において良品を撮り続ける職人気質な監督。有名なラクロ原作の古典的作品を映画化した危険な関係、詐欺師一家の予想外な顛末を描くグリフターズ/詐欺師たち、ロンドンを舞台に不法移民達が必死に生きようとする様子を描いた堕天使のパスポートをお勧めに挙げておこう。
 



 





 

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映画 ブラッド・シンプル(1984) 今や名監督のデビュー作

2021年02月23日 | 映画(は行)
 一流監督ともなればデビュー作からして非凡な才能を見せつける。今や名監督として君臨するスティーヴン・スピルバーグは『激突』、クリストファー・ノーランは『フォロウィング』、ダニー・ボイルは『シャロウ・グレイブ』といった具合だ。そして今回紹介するのがこれまた名監督であるコーエン兄弟のデビュー作であるブラッド・シンプル。この監督の個性がデビュー作品から随所に見られるのが楽しい。ちょっとした出来事がドンドン大事件に向かっていく展開、勘違いだらけの登場人物、小道具の見せ方、流血シーン、そして笑える殺人シーン。数々の傑作群を世に送り出しているが、デビュー作品からその作風が確立されていたことに気づかされる。

 コーエン節が全開するスリラー色の強いストーリーの紹介を。
 舞台はテキサス州。酒場を経営するマーティ(ダン・ヘダヤ)は、従業員のレイ(ジョン・ゲッツ)と妻のアビー(フランシス・マクドーマンド)が浮気をしているのではないかと私立探偵のフィッセル(M・エメット・ウォルシュ)に調査させる。妻が浮気をしていることを確信したマーティはレイを呼びつけて問い詰めるが、話し合いは不調に終わる。
 怒りが治まらないマーティはフィッセルに何とレイとアビーの2人の殺害を依頼する。しかし、事態は思わぬ方向へ転がっていき・・・

 随所にコーエン兄弟の特徴が表れたシーンがたくさん出てくる。全体的に不穏な空気が流れているので不気味さが漂っているのだが、ハラハラドキドキするようなシーンにおいて笑いをちょくちょく入れてくるのがコーエン兄弟らしいところ。少しばかりシュールなギャグが俺には楽しめた。しかし、登場人物達のズッコケ振りが凄い。わざと物事が大げさになるように行動してるのかよ?なんて思えたり、どうしたらそんな勘違いをしてしまう?なんて思わせてくれたりで、アホらしくて見てられない展開のはずが、監督の演出が良いのか飽きさせずに最後まで見られる。とにかく終盤に訪れるクライマックスはヒッチコック監督の『裏窓』を凌ぐ出来栄えで、スリルと笑いを共有できる。
 それほど見た目にインパクトのある人物が出てこないが、ゾンビ並みにしぶとい奴、運が良いのか悪すぎるのか微妙な奴、登場人物のキャラクター設定も笑える。少々の記憶力は要するが今や名匠の域に達した感のあるコーエン兄弟監督のお勧め映画として今回はブラッド・シンプルをお勧め映画として挙げておこう。

 監督は前述しているようにコーエン兄弟。お勧め多数の名監督で彼の作品のファンである映画好きはとても多い。ギャング映画ミラーズ・クロッシング、サスペンスとユーモアの融合が素晴らしいファーゴ、コメディ色が強いサスペンスビッグ・リボウスキ、できればカラーではなくてモノクロの映像の方で観て欲しいバーバー、脱獄コメディ映画オー・ブラザー!、彼らにアカデミー賞をもたらしたノーカントリーあたりがお勧め。

 
 
 

 

 





 
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映画 ペーパー・ムーン(1973) ロードムービーの王道です

2021年02月15日 | 映画(は行)
 主人公が旅をしながら様々な経験をしていくロードムービーというのは今や映画のジャンルとして成り立っているが、実際に『イージー・ライダー』『パリ、テキサス』『レインマン』など名作がとても多い。そんなロードムービーの多くある設定が、仲が悪かったり、価値観の異なる二人組が旅を経験していく内にお互いの仲が深まっていくパターン。今回紹介する映画ペーパー・ムーンもロードムービーであり、例の如くのパターンを踏襲している。しかし、本作が面白いのは親子ほどの開きがある大人と少女の掛け合い。この2人のやり取りが、他のロードムービーに足りない笑いを誘ってくれる。

 それではロードムービーの面白さを感じさせるストーリーの紹介を。
 1930年代におけるアメリカの大恐慌の時代において。元カノが自動車事故で亡くなり葬儀に現れたモーゼ(ライアン・オニール)。そこには元カノの娘で9歳の少女アディ(テータム・オニール)が居た。実はモーゼは聖書を売りつけて金を騙し取る詐欺師。今も詐欺の仕事で追われていたのだが、孤児になってしまったアディを叔母さんの家まで送り届けることになってしまった。最初こそは全くソリが合わない2人だったが、親子関係を装って詐欺を次々成功させるにしたがって、2人には本当の親子関係のような親近感が湧いてくるのだが・・・

 行く先々で詐欺を働くモーゼだが、少々お粗末な行動が見受けられる。危うく詐欺がバレそうになったり、金遣いが荒く、女癖も悪くて、せっかく金を稼いでもすぐに浪費してしまう。そんなダメダメな大人のモーゼに対して機転を効かして助け舟を出すのが、まだ9歳の少女アディというのが笑える。詐欺に関しては天才少女ぶりを見せつけるのが楽しいし、またモーゼを睨みつける表情が凛としていて、ダメっぷりを発揮するモーゼと対照的で笑える。
 モーゼとアディを演じるライアン・オニールテータム・オニールは名前から想像できるように、本当の親娘の共演。よってストーリーの方も、実はモーゼとアディって本当の親子か?なんて思わせる件があったりして、少しばかり話に重みを感じさせる。
 はっきり言って子供の教育には良いはずが無いような内容だが、ロードムービーの王道を行くようなストーリーは単純でわかり易くて、笑えるのが良い。そして、テータム・オニールを観ていると本当に天才子役だと感じれるのも本作の大きなポイントだろう。少々古い映画でモノクロが苦手という先入観のある人も本作に関してはそんな心配は全くの無用。老若男女問わず誰もが楽しめる映画として今回はペーパー・ムーンをお勧め映画として挙げておこう

 監督はピーター・ボクダノヴィッチ。何かと映画愛を感じさせる作風がハマる人にはハマる。映画愛を感じるラスト・ショー、奇病に罹っている少年と母親の交流を描いたマスクがお勧め。


 

 
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映画 フォーンブース(2003) 今頃紹介するような映画では無いような気がしますが・・・

2020年07月25日 | 映画(は行)
 今や小学生でも携帯電話を飛び越えてスマートフォンを持っている時代。田舎はもちろん都会においても電話ボックスなんかあっても場所の無駄にしかならない。全編に渡って電話ボックスの中が舞台という今となっては時代遅れ感丸出しの映画が今回紹介するフォーンブース。実は本作が公開された2003年においても既に携帯電話が普及している時代。しかも、折りたたみ式の携帯電話の時代だから、まだ本作を観ていない人にとっては相当なレトロ感を覚えるかもしれない。そんな映画を今さらながら紹介してしまう当ブログはいかにも時代錯誤の批判を受けそうだが、忘れ去られそうで面白い映画をテキトーなタイミングで掘り出してくるのも当ブログの役割だ。

 さて、電話ボックスというワンシチュエーションだけで、スリル満載の映画が作れることに驚けるストーリーの紹介を。
 自称やり手のメディアコンサルタントのスチュー(コリン・ファレル)は、携帯電話を持っているのに今日もニューヨークのブロードウェイの通りの電話ボックスから女優志望のパム(ケイティ・ホームズ)に電話をする。『愛している君を僕が売り出してあげるよ』なんて甘い話をし続けた後に、電話ボックスを出ようとしたその直後、切ったばかりの電話のベルが鳴った。ついつい電話に手をかけてしまったスチュだが、話しかけてきた男は意外なことを言う。『電話を切るとお前を撃つよ』。そこからはスチュにとっては悪夢の始まり。あの手、この手で電話ボックスから脱出しようとするのだが・・・

 主人公は、なぜ俺がこんな目に遭わなければならないんだ!と思うような状況に追い込まれてしまうが、どこからかライフルで主人公に照準を合わしている犯人の目的が次第にわかってくる。中身がスッカラカンなのに偉そうにしている人間の欺瞞、虚栄、出鱈目さが暴き出されていく。観ている我々もサイコスナイパーに狙われる恐怖を感じると同時に、身の丈以上に振る舞う主人公の姿に、自分の周りにもこんな奴が居るよな~と思い当たったりする。
 主人公が殆ど電話ボックスの中に居るだけのアイデアも素晴らしいが、人間の本性をあぶり出していく過程も非常によくできている。そして、犯人の電話を通しての渋い声もなかなか聞きほれてしまいそうになるが、冗談交じりに話している内容が妙に説得力があって良い。そして映画の中と実際の時間経過が一緒というのも昔からある手法だが、本作ではそれが抜群の効果を発揮している。
 異様なスリルがあり、追い込まれた人間の心理が描かれていたりで非常に濃密な内容の81分という短い映画。面白い映画を観たい人、電話ボックスが懐かしいと感じる人、見栄っ張りの人、サスペンス映画が好きな人、ちょっとばかし暇つぶししたい人・・・等に今回は映画フォーンブースをお勧めに挙げておこう

 監督は先日亡くなったジョエル・シュマッカー。バットマンシリーズのバットマン・フォエバーといったヒット作もあるが、若手スターが多く飛び出した青春映画セント・エルモス・ファイアー、現代人の怒りをパワフルに描きだしたフォーリング・ダウン、ジョン・グリシャム原作の映画化依頼人がお勧め。

 
 




 
 
 

 




 
 
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映画 ペイチェック/消された記憶(2003) アイデア抜群のSFアクション映画

2020年02月23日 | 映画(は行)
 アメリカを代表するSF作家のフィリップ・K・ディック。とっくの前に故人となってしまっているが、彼の小説を原作とする映画化作品は現在に至るまでブレードランナー、トータル・リコール、マイノリティ・リポート・・・等ヒット作品が多いし、面白い映画も多い。さて、アメリカのSF小説の第一人者の原作をアクション映画の巨匠であるジョン・ウー監督で映画化した作品が今回紹介するペイチェック/消された記憶
この監督でSF映画となると少々不安な気持ちもあったのだが、そんな心配は全くの無用。アクションシーンは楽しいし、先の読めない展開もぐいぐい引き込む。そしてガラクタ同然と思われた多くの小道具が意外な効果を発揮するアイデアが抜群に楽しい。
 ちなみにタイトルのペイチェック(Paycheck)の意味は『報酬』。それにしても本作の主人公は不思議な奴だ。俺だったら喜んで頂戴してしまうような大金の報酬をアッサリ諦めてしまうとは。

 主人公のキャラクターは天才科学者のはずなのだが、そんな設定だったことを見始めて数十分で忘れてしまうストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 凄腕のフリーランスの科学技術者であるマイケル(ベン・アフレック)は極秘プロジェクトを完遂させるたびに、機密保持のためにプロジェクト期間の記憶を消されていた。そんな彼の元へ旧友である大企業の社長であるジミー(アーロン・エッカート)から大きな仕事を依頼される。そのプロジェクトに関わる期間は3年間。その間の記憶を消す代わりの報酬が9200万ドルの凄すぎる大金。全く断る理由も見当たらないのでマイケルは引き受ける。
 さて、3年後のこと。しっかりと仕事を完遂し終えて記憶を消したマイケルは早速、報酬を受け取りに法律事務所に向かう。ところが渡された紙袋の中には大金の報酬ではなく、ガラクタ同然のライター、キー、メモ用紙・・・等のたくさんの小道具。しかも、その送り主が自分であることにビックリ。何故こんなことが起きたしまったのか考える余裕もなく、FBIや殺し屋から追われてしまい・・・

 なぜ、一生分どころか更に若いネエチャンを集めて遊べるほどの暮らしができるほどの大金よりも、そこらのコンビニで買えそうな小物ばかりを欲しがったのか。たびたび記憶を消すたびに脳ミソがおかしくなってしまったのかと思いきや、実はこれがお助けアイテムだったという展開が非常に楽しい。そして、記憶を消された科学技術者は一体何を開発したのか?危機一髪でピンチを乗り越え、謎も一気に解明してしまうクライマックスが楽しい。ジョン・ウー監督にしてはアクション控え目、込み上げてくるような熱さが足りないなど不満な点もあるが、サスペンス的な面白さが充分にカバーしてくれる。それにこの監督らしい遊び心も健在だ。
 頭が良くて、武術を心得ており、バイクも華麗に乗りこなす文武両道の主人公のキャラに違和感を感じない人、少し暇つぶしにアクション映画が観たい人、ハリウッド映画らしい映画を観たい人、フィリップ・K・ディックの原作映画が好きな人・・・等に今回は映画ペイチェック/消された記憶をお勧めとして挙げておこう。



 監督は前述したようにジョン・ウー。香港時代は男たちの挽歌などで香港ノワールと呼ばれるアクション映画を生み出してきた監督。本作と同じくハリウッドで撮った映画として、香港時代の彼らしいシーンが見られるアクション映画の傑作フェイス/オフ、これぞジョン・ウーらしい熱い男同士の友情に感動できる戦争映画ウインドトーカーズがお勧めです。



 

 


 
 


 




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映画 僕の村は戦場だった(1962) ソ連発の反戦映画です

2020年01月27日 | 映画(は行)
 映像の詩人なんて呼ばれることの多いソ連出身の映画監督アンドレイ・タルコフスキー。その美しい映像は今日においても魅了される人は多いが、その一方で『難しくて意味がわからん』『テンポがとろい』『眠たくなる』だの批判する人もいる。しかし、今回紹介する映画僕の村は戦場だったは彼の他の作品に比べてストーリーがあり、わかり易い作品。彼の映画はどの分野が相当なのかわからないのもあるが、本作は反戦映画の分野に入る。ソ連といえば日本から見ればヤクザっぽい武闘大国のイメージがあったりするが、そんな国でも立派な反戦映画を撮ることができる。
 戦争を背景にした映画となると、過剰なぐらいの暴力や残虐なシーンが出てくることがある。しかし、本作は少しばかり銃声が聞こえたり、弾道の灯りが見えたりするぐらいで目を背けるようなシーンは出てこない。それでいて戦争ってやっぱり悲惨だよな~と観ている者に訴える表現が上手い。

 モノクロ作品でありながら美しい映像が散りばめられ、子供を主役にした珍しい反戦映画のストーリーの紹介を簡単に。
 舞台設定は第二次世界大戦、ドイツと戦っている最中のソ連において。まだ12歳の少年であるイワン(ニコライ・ブルリャーエフ)はソ連軍の斥候として働いていた。大尉だの中尉だのエラいさんの大人たちは、イワン少年の身を案じて彼を戦場から外して幼年学校へ行かそうとする。
 しかし、イワン少年は優しい大人たちの提案を頑なに拒否。彼を戦場の最前線に駆り立てるのは肉親を爆撃で殺されたドイツ軍に対する憎しみ。やがて戦争も終わり・・・

 まだ12歳にもなってないような少年を戦争で危険な任務につかそうとするとは、ソ連の軍人はひどい奴ばかりだと思っていたら、ストーリー紹介にも述べたようにかなり優しい大人達。むしろ大人達はイワン少年に愛情を注いでいるようにも見える。しかし、戦争は純粋な少年の心に憎しみの気持ちをもたらしてしまい、少年の怒りが表される目がひたすら悲しい。本作を観れば戦争は命を奪うだけでなく、人間の心を蝕んでしまうことがダメだ。この少年の結末には思わず涙を出させる。
 本作はアンドレイ・タフスキー監督の長編デビュー作である。しかし、デビュー作品から彼らしさが一杯。火や水の使い方、たびたび出てくる夢のシーン、セピア色での白樺のシーン、空中浮遊・・・等など。他のタルコフスキー作品を観たことがある人が本作を初めて観ると彼らしい作風を楽しめる。
 そして今回改めて観て気づいたのが、音楽やセットに黒澤明監督を感じさせること。この2人は交友があったのは有名だが、それは本作からも感じさせる。アンドレイ・タルコフスキー監督の作品は好きなのだが、なぜか本作は観てない人、あるいはアンドレイ・タルコフスキー監督の名前は聞いてことがあるけれど自分には敷居が高いと思って避けている人、ソ連の映画を観たくなった人、ストーリー展開よりも映像に興味がある人・・・等に今回は僕の村は戦場だったをお勧め映画として挙げておこう。





 監督は前述したアンドレイ・タルコフスキー。観る人を選ぶ映像作家だが、個人的にはお気に入りの監督。SF映画の金字塔として名作に挙げられる惑星ソラリス、彼の遺作サクリファイス、タルコフスキー監督の平和への想いが伝わってくるノスタルジアがお勧めです。


 
 
 

 
 

 




 
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映画 フレンチ・コネクション2(1975) ポパイが前作以上に大暴れします

2019年11月26日 | 映画(は行)
 ただ今、何かと麻薬、覚せい剤を長年に渡って辞めることが出来ない芸能人の話題が飛び込んでくるが、そんなニュースを見て思い出す映画が今回紹介するフレンチ・コネクション2。前作のフレンチ・コネクションでは、通称ポパイことドイル刑事(ジーン・ハックマン)が地元ニューヨークを金儲けのために麻薬で汚染するフランス人のシャルニエ(フェルナルド・レイ)を捕まえ損ねて逃がしてしまう。
 そして、今回はドイル刑事が単身で敵地のフランスのマルセイユに乗り込んで地元の警察と協力してシャルニエを捕まえようと奮闘するストーリー。このドイル刑事は熱血漢で仕事熱心な優秀な刑事ではあるのだが、仲間を誤って射殺してしまうオッチョコチョイな面も持ち合わせている。前作から数年を経ても、欠点があの芸能人と同様に改善されていないために今回も初っ端から仲間に損失を与えてしまう。
 とにかくシリーズ作品というのは、二作目以降はだいたいストーリーに工夫が無く、カネだけが注ぎ込まれて大掛かりになっただけで内容がスカスカの作品が多くてガッカリさせられることが多いが、このシリーズは前作が映画史に残る刑事映画として最高傑作なだけに非常にハードルが高いので、同様の心配があったりするが珍しく続編として成功している部類だ。

 とにかくドイル刑事が執念でシャルニエを追いかける姿に感動すら覚えるストーリーの紹介を。
 ドイル刑事(ジーン・ハックマン)はニューヨークで逃がしてしまったフランスの麻薬王シャルニエ(フェルナンド・レイ)を捕まえるためにマルセイユにやって来る。しかし、ドイルがマルセイユにやって来たことを知ったシャルニエは、先手をうってドイルを拉致監禁して麻薬を投与しまくり・・・

 本作のストーリーが面白くなるのは勿論ストーリー紹介の後からの展開。すっかりシャルニエに返り討ちにあってしまい麻薬漬けにされてヘロヘロになってしまったドイル刑事だが、ここから猛烈な暴れっぷりを見せる。禁断症状に苦しむシーンはシャワーを浴びただけで克服してしまったような感じで少々拍子抜けしてしまったが、今までの恨みを晴らすべくシャルニエをとことん追いかけまくるシーンは感動すら覚える。俺が薬物中毒に罹ってしまった人間にアドバイスを贈るとしたら、『とにかく走りまくれ!』と言うこと。
 さて、本作の面白いところにアメリカからやって来たドイル刑事とフランスの刑事とのやり取りがある。それはまるで米仏文化交流事業の一環を見せられているような気がした。俺が笑えたのがドイル刑事がフランス人の刑事に対してニューヨークヤンキースだのミッキー・マントルだの野球の話を長々と話しかける場面。フランス人なんか野球の話なんかされても興味が惹かれるわけがないだろう!と思わずツッコんだ。そして、アメリカ人の我こそルールだと言わんばかりのジコチュ~さにも笑えるが、フランス人のミョ~な誇り高き姿勢にも笑えた。このフランス刑事なんかマシな方で、この映画に登場する一般のフランス人の態度なんかは不親切そのもの。そりゃ~ドイル刑事がイライラするはずだ。
 刑事アクション映画が観たい人、何かと薬物から離れることができない芸能人やスポーツ選手、仲が良いのか悪いのか今一つよくわからない米仏関係について考えたい人等に今回はフレンチ・コネクション2をお勧めしておこう。

フレンチ・コネクション2 [DVD]
ジーン・ハックマン,フェルナンド・レイ
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント


フレンチ・コネクション2 [Blu-ray]
ジーン・ハックマン,ベルナール・フレッソン,フェルナンド・レイ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 監督はアクション映画で多くの傑作を遺したジョン・フランケンハイマー。米ソ冷戦時代を背景にした影なき狙撃者、ナチス対フランスの鉄道職員という一見ミスマッチの熱い戦いが見ることができる大列車作戦、カーアクション映画の傑作グラン・プリ、日本の浪人をイメージさせるRONIN等がお勧めです。



 
 






 

 

 
 

 

 

 
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映画 ブリット(1968) 刑事アクション映画のはしりです

2019年11月07日 | 映画(は行)
 まあアラフィフの俺が生まれる10年前ぐらいの刑事映画の主人公なんか腹が出たオッサンや超マジメだったり走れない奴ばかり。ところが今では刑事のキャラ設定もチョイワルで格好良く、スポーツマンみたいに運動神経が抜群で女にモテモテのイメージがある。そんな流れの原点にあたる映画が今回紹介するブリットスティーヴ・マックイーン演じる刑事のキャラクターが前述したそれ。そして彼の場合はチョット面倒なことが起きてもニヒルな振舞いで任務を遂行していく。
 どうせ1960年代の後半の映画だから、刑事アクション映画と言ってもそんな大したアクションなんか無いんだろうと思われるかもしれないが、サンフランシスコのロケ地の急斜面を利用して、車がピョンピョン跳ねる怒涛のカーチェイスシーンを観ることができる。これからも映画史に残るカーチェイスシーンとして永遠に映画ファンに語り継がれるだろう。

 立ち居振る舞いもそうだが、ファッションセンス、空港を舞台にした追跡シーン等、何かと色々語り継がれるストーリーの紹介を。
 マフィア撲滅を公言しているチャルマース上院議員(ロバート・ヴォーン)は、優秀な刑事であると評判のブリット(スティーヴ・マックイーン)に重要証言者であるジョー・ロスと言う男の保護を命じる。ブリットはロスをホテルの一室に匿うが、彼を守ることに失敗。しかも、私利私欲に走るチャルマース上院議員から何かとプレッシャーを受ける。
 しかし、ジョー・ロスが殺された現場と、その場に居ながら撃たれて重傷を負った同僚の刑事の証言から、この事件の裏側に更に何かがあると察知したブリットは、チャルマース上院議員にはロスが死んだことを知らせずに真相を探ろうとするのだが・・・

 今観てもオープニングからして格好良い。大して期待せずに、とりあえず見てみようかぐらいに思った人でも一気に画面に釘付けになる。確かにブリットがヒットマンを追いかける場面も前述したカーチェイスシーンを交えて楽しめるが、この映画の本当のテーマはブリット刑事とチャールマス上院議員のバトル。何かと体を張って危険な任務をこなす刑事と、自らの私欲のために刑事を脅しつつ利用する偉そうにしている政治家のいがみ合い。まあ、そのような構図はよくあるパターンなのだが、本作はそれが露骨に出ていて笑える。観終わった後によく考えたら、実はブリット刑事は事件の真相を探し出すことよりも、チャールマス上院議員の邪魔をしたかっただけ?なのかと悩んでしまった。
 そして、これぞマックイーンだと思わせるのが飛行機の中で、殆ど無表情のままで捕まえようとする奴を見つけ出そうとする場面。ついつい大声で笑ったり、ペラペラくだらないことばかり喋っている俺なんかは本当に反省させられた。寡黙な男は格好良い。
 ストーリーはいい加減なところもあったような気がするが、スティーヴ・マックイーン演じる刑事、カーチェイスシーン、そしてジャクリーン・ビセットの半端ないぐらいの綺麗さによって、そんな欠点は補って余りある。そして、何かと刑事という仕事は辛いことばかりなのを理解できることも本作の良かった点として挙げておきたい。
 ちょっと古いアクション映画を観たい人、刑事という仕事に憧れている人、アメ車が好きな人、ハリウッドの永遠の大スターであるスティーヴ・マックイーンという名前を一度は聞いたことがある人等に今回は映画ブリットをお勧め映画として挙げておこう。

ブリット [DVD]
スティーブ・マックィーン,ロバート・ボーン,ジャクリーン・ビセット,ロバート・デュバル
ワーナー・ホーム・ビデオ

 

 
 

 







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映画 ボーダーライン(2015) 麻薬戦争の舞台裏を描いています

2019年08月24日 | 映画(は行)
 今年の1月メキシコ大統領アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドールはカルテル(麻薬組織)の撲滅をすっかり諦めたのか、中途半端な形で『麻薬戦争終結』を宣言してしまった。そもそも麻薬戦争とは何なのか?カルテル同士の抗争を終わらせるために、2006年にメキシコ政府が本腰を入れて、軍隊や当局を送り込む。さらにはカルテルの違法薬物市場と化したアメリカも黙って見てるわけにいかず麻薬取締局(DEA)を送り込む。ところがカルテル同士の抗争が鎮火するどころか、これらが入り乱れての武力紛争化してしまった。メキシコ政府の軍事介入以降は麻薬戦争絡みの被害者は皮肉なことに民間人も巻き込まれて年々増加する一方。どうやら麻薬戦争のおかげで20万人以上の人が命を失った。そりゃ~、今の大統領にしたら、俺の頃に始めた武力介入じゃないんだからとサッサと終結させて当然ってか。
 そんな麻薬戦争を舞台にした映画が今回紹介するボーダーライン。サスペンス映画でありながら登場人物達のそれぞれの思惑、人間性がしっかりと描き込まれており一種のヒューマンドラマとしても見応え充分。本作は2015年に公開されているから、まさに麻薬戦争の真っ只中。そして、現在のアメリカ大統領であるドナルド・トランプが共和党の有力候補として売りだしてきた頃と時期が被ることを思うと非常に興味深く感じる作品だ。
 
 それではアメリカとメキシコの国境を舞台に、我々日本人の常識では全く太刀打ちできないことを感じさせるストーリーの紹介を。
 アメリカのアリゾナ州において、FBIの女性捜査官であるケイト(エミリー・ブラント)は今日も先頭にたって誘拐犯のアジトに乗り込み大活躍。その功績が気に入られて、国防総省を主体とする特別チームにスカウトされる。かなりだらしない格好をしたマット(ジョシュ・ブローリン)がチームリーダーとして君臨するのだが、彼らの目的は誘拐事件の主犯とされるカルテルの親玉の組織を壊滅させること。ヤバそうな勘が働いたケイトだったのだが、少しばかり興味を持ってしまった彼女は作戦に参加することを決める。
 テキサス州のエルパソに移動したケイトは、そこでマットのパートナーであるコロンビア人のアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)と会う。何者なのか得体の知れない人物のように思われたが、メキシコの無法地帯化しているシウダー・フアレス市ではやたら現地に詳しく、行動力は抜群でアドバイスも的確。しかしながら、アレハンドロの常識外れな行動、それを許可しているかのようなマットの態度にケイトは次第に疑念を抱くようになり・・・

 冒頭からFBI捜査官であるケイトの女性でありながらも、男性顔負けの勇気とリーダーシップを発揮する場面を見ることができる。同時にアメリカって国は女性も男性も関係なく、最前線で戦わなければいけないほど凶悪犯が蔓延っていることに愕然とさせられる。これは流行りの女性主人公が大活躍するアクション映画なのかと思いきや、そんな期待は全く裏切られる。
 アメリカでもハードな現場を見ていたはずなのだが、メキシコに乗り込んだらアメリカでの経験が殆ど役に立たないし、同行していた男性たちからは『見ておくだけで良いんだぞ』なんて言われてしまう有様。だったら何でわざわざスカウトされるんだと思ったりするが、明快な回答を見せつけられた時にビックリさせられる仕掛けだ。
 そのメキシコの無法っぷりだが、市民が普通に行き来できる場所で死体がありえない姿で吊るされていたり、何台にも連なったデルタフォースの車がメキシコ警察の主導でシウダー・フアレス市に乗り込むのだが、とにかく一瞬でも止まったら四方八方から弾丸が飛んでくるので、狭い通路も混んでいるところもスピード違反などお構いなしにぶっ飛ばす。高速道路で渋滞に巻き込まれて、怪しい奴を発見したら、あらかじめ完全武装していたアレハンドロと仲間たちは民間人の目の前で撃ちまくる。そして、日常的に銃声や爆発音が鳴り響く様子を見て、正直俺なんかは『ア~、日本に産まれて良かった』と心からそう思った。世の中には法を守ってたんじゃ自分の命が吹っ飛んでしまう場所があることを知ることができるのだが、それでも日本人の中には死んでも良いから法を遵守しなさいと余計な説教をしてくる迷惑な奴がいるからイライラさせられる。
 
 何が善で悪なのか、この世の中は本当に正義が通用するのか、なぜ麻薬が無くならないどころかその栽培、使用が合法化してしまう国が出てくるのか、トランプ米大統領はなぜメキシコとの国境に壁を作ろうとし国民はそれを支持してしまうのか、そして恨みを買ってしまった人間は一生背負い続けることになってしまうことが理解できる映画ボーダーラインを今回はお勧め映画として挙げておこう

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 監督はカナダの俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴ。本当に重た~い映画を撮る監督。最近はブレードランナー2049に抜擢されるなど最もノッテいる監督の1人。母親が子供達を愛する姿を意外な形で表現した灼熱の魂、この世の中において自分と同じ人間がもう1人存在することを知ってしまったらどの様な行動をとってしまうのかを描いた複製された男、誘拐された我が子を探し出すために何でもありのお父さんを見ることができるプリズナーズ、そして宇宙人とのコンタクトを通して女性の強さを感動的に描いたメッセージ等、俺が彼の映画を見たところ今のところ外れなしです



 
 
 
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
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映画 ハッド(1963) アメリカを暗喩しています

2019年03月12日 | 映画(は行)
 未だに日本人の中にはアメリカのことを、貧乏人でも金持ちになれる一攫千金の夢のある国として妄信している人が多いようだが、実際にアメリカンドリームを実現して人生を謳歌しているような人間なんてほんの一握り。確率的に言えば宝くじ一等当選する確率より遥かに低い。あの国はコツコツと労働することの尊さを失い、成金になりたがる人間が多すぎる。拝金主義が蔓延り、モラルの低下が著しいアメリカ社会は今に始まったことではない。そんな嘆かわしいアメリカを暗喩しているかのような作品が今回紹介する映画ハッド。本作を観ればポール・ニューマン演じる粗野な男から病めるアメリカの一面がわかる。

 古き良きアメリカの象徴である家族の絆が、脆くも崩れ落ちていく様子が描かれているストーリーの紹介を。
 テキサス州で牧場を構えるバノン一家。父ホーマー(メルヴィン・ダグラス)とその息子であるハッド(ポール・ニューマン)は何かと気が合わないでいた。ハッドは夜になると酒と女を買いに街に繰り出しているダメ息子だ。しかし、そんなハッドを今は亡き彼の兄の息子のロン(ブランドン・デ・ワイルド)は好きでいた。
 ある日のこと、バノン家の牛に病気が発生。政府からの飼牛を全頭殺処分の命令が伝えられる前に、牛を全て売ってしまいたいハッドと父ホーマーは対立する。その対立の中でハッドは自分がなぜ父親から嫌われているのか意外な真相を聞かされてしまう。すっかり自暴自棄になったハッドは家政婦をしていたアルマ(パトリシア・ニール)に襲いかかり・・・

真面目に汗水たらして働く人間よりも、ちょっとアウトローな生き方をしている人間の方が格好良く思われる風潮があるが、本作がまさにソレ。ロン少年のハッドが好きな理由がチョイワルなオジサンが格好良く見えたから。しかし、ロン少年がエラいのは、オジサンの生き方が間違っていることに気付くところ。少年なりに、おじいちゃんが体現している古き良きアメリカ象こそ自分が進む道だということを理解したのだろう。
 今の日本も核家族化してしまって世代間のつながりが無くなってきた。そして、更に親子の仲でさえ気持ちが通じないことが多い結果が生まれてきている。そして、個性が大切な時代だと叫び続けた挙句に多くの利己的な人間がすっかり多くなってしまった。そんな日本の現状を照らし合わせて本作を観ると、非常に意味深なシーンが多いことに気付く。
 本作はテキサスを舞台にしているし、カウボーイハットを被った人がたくさん出てくるように西部劇風の装いに見える。本作以前の西部劇には男は愛する家族を守るんだという美学が貫き通されていた。しかし、本作の主人公であるハッドにはそんな古き良き概念が全くない。彼の愛する者は家族よりもカネだ。まさにハッド自身が病めるアメリカそのものを表しているし、ハッドに訪れる運命もなかなか味わい深いものがあり、現在の日本人も考えさせられるものがある。
 そして本作以前のハリウッド映画の男性主人公と言えばゲイリー・クーパーやジェームズ・スチュワートに代表されるような正義と良心を体現していた。しかし、ハッドを演じたポール・ニューマンだが彼が演じる多くの役柄は反骨心があり、アンチヒーローが多い。まさにアメリカの変化が生み出した俳優だと言えるだろう。
 ポール・ニューマンが好きな人、非常に意味深な映画が観たい人、家族の絆とは何かを改めて確認したい人、すっかり今の日本もアメリカもおかしいぞと思っている人等に今回はハッドを紹介しておこう

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映画 フロスト×ニクソン(2008) 世紀の対決です?

2019年01月05日 | 映画(は行)
 歴史に残る世紀の戦いと聞いて、パッと頭に浮かんだのがアントニオ猪木VSモハメッド・アリの異種格闘技戦。凡戦だったと評価されることが多い戦いだったが、現在に至る格闘技戦の方向を示した歴史的な戦いだったことに異議はないだろう。さて、今回紹介する映画フロスト×ニクソンも世紀の対決と呼ぶに相応しいバトルを見せてくれる。ちなみにニクソンとはアメリカの歴代の大統領のひとりとして有名だが、フロストとは一体誰なのか?
 とりあえずリチャード・ニクソンのことを全く知らない人のために少々説明をしておくとウォーターゲート事件によって、アメリカ史で唯一任期途中で失職した大統領。
 そして、もう一つ有名なのが現在においても最も人気のある元アメリカ大統領ジョン・F・ケネディと繰り広げた大統領選挙戦。彼らの討論会の様子をラジオで聴いていた人は明らかにニクソンの勝利を確信していたようだが、一方でテレビを観ていた人には、ニクソンのテレビ映りの悪さに愕然とさせられ、結局そのことが原因で僅差でニクソンはケネディの後塵を拝することになってしまう。
 そんなわけで何かと負のイメージが強く、歴代の中でも最も不人気な大統領として有名。しかし、泥沼にはまってしまったベトナム戦争からの完全撤退、ソ連や中国といった共産主義国家との外交、変動為替相場制を取り入れる等、非常に歴史的意義の高い政策を実行した大統領として評価されている面もある。そのような知識を予め得ておければ、本作はより一層面白く観ることができる。
 一方、フロスト(デービット・フロスト)って誰?と思う人が殆どだと思うが、イギリスやオーストラリアで主にバラエティ番組の司会をしていたイギリス人タレント。そんな彼がアメリカ進出の野望を叶えるため、ニクソン元大統領から失言を引き出そうと果敢にテレビ番組用のインタビューを行ったストーリー。前半はチャラいだけのテレビタレントが思い付き同然でニクソン元大統領に戦いを臨むのだが、これが身の程知らずも良いところで無謀という二文字が直ぐに俺の頭の中をよぎった。フロストVSニクソンを世紀の対決と煽ってしまった自分が恥ずかしい。
 
 元アメリカ大統領とテレビタレントが対決する歴史的インタビューの様子を描いたストーリーの紹介を。
 1974年、リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)はウォーターゲート事件において、法廷に立つことも無く疑惑を国民に残したままでアメリカ大統領を辞職する。その時、イギリスのテレビ番組の司会者であるデービット・フロスト(マイケル・シーン)は、これはチャンスとばかりにニクソン元大統領へインタビューを試みようとする。ニクソン元大統領をテレビ番組でインタビューして、アメリカ国民にニクソン大統領の嘘っぱちを見せつけて、フロスト自身はアメリカ進出への野望を果たそうとしていたのだ。
 一方、ニクソンも政界復帰への意欲を失っておらず、このインタビュー番組をチャンスと捉えてフロストの申し込みに応える。ハッキリ言って百戦錬磨のニクソンにとってはフロストなんかはショボすぎる相手。実際にインタビューの第一ラウンドではニクソンはフロストをいとも簡単に軽くあしらい、フロストも目の前の相手がとんでもない大物だということに気付くのだが・・・

 本作は実話。1977年のテレビ番組でインタビュー番組が放映されている。フロストがニクソン元大統領にインタビューして、それをアメリカの三大ネットワークに売り込もうとするのだが、アメリカ人にとって全く誰だかわからないようなイギリス人司会者の番組にカネを出そうとする奴なんかいるわけがない。本作の中でもニクソンの情報を探しながら、資金集めに奔走する場面が描かれているが、結局は自腹を切ってニクソン陣営にギャラを払い、自主制作番組になってしまう。
 しかし、本作を観ていても大統領として君臨した男の凄さを感じることができる。彼にすれば、どこの馬の骨かわからないような人物からのインタビューを利用した論戦に対し、堂々と受けて立つあたりは政治家としてのプライドを感じさせる。俺の知っている政治家の中には議論から逃げてばかりで、しかも反論できないとわかれば何故かキレてしまう政治家としてのプライドが全くない奴がいる。どれだけギャラを積まれたからと言っても、この映画のニクソンからは政治家としてのあるべき姿を見せてくれる。
 しかし、ニクソンに訪れる運命は今回もメディアによって負けてしまうという皮肉な結果。相手をフラフラになるまで追い込んだのに最後の最後に、しくじって負けてしまうあたりは、まるでケネディとの大統領選挙の再現を思わせ、ニクソン大統領も普通の人間だということを感じられる。インタビューを舞台にした論戦ではあるが、そこそこ緊迫感のある戦いを観ることができるし、戦いの後に訪れる爽やかな感動が非常に心地良い。
 ニクソン大統領に全く興味がないという人以外に今回はフロスト×ニクソンをお勧め映画として挙げておこう

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 監督は最近はトム・ハンクスを主演にしたダヴィンチ・コード等のロバート・ラングドン教授が活躍するシリーズでヒットを飛ばしているロン・ハワード。彼のお勧め映画としてトム・ハンクスがまだコメディ路線を突っ走っていた頃のスプラッシュを挙げておこう。

 

 

 
 
 
 
 
 

 
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映画 フレンチ・コネクション(1971) 刑事映画の最高傑作

2018年12月20日 | 映画(は行)
  仲間を誤って射殺してしまう少々おっちょこちょいの刑事を主人公とする映画が今回紹介するフレンチ・コネクション。ちなみにタイトル名の意味は、フランスを経由してアメリカに密輸される麻薬ルートのことだ。今ではすっかりメキシコ経由で麻薬が大量にアメリカに入ってきていることを思うと、なんだか懐かしい気分にさせてくれる映画。しかし、俺の中では未だに刑事映画の最高峰に君臨しているだけに面白さは抜群だ。
 ジーン・ハックマン演じるドイル刑事こと通称ポパイのキャラクターが良い。ものすごい熱血漢であり、カンに頼って捜査するようなあわてんぼうの刑事だが、仕事ぶりは至って真面目。とにかく麻薬絡みの犯罪者を見つけたら、徹夜も厭わずにあらゆる手段を使ってでもとことん追いかける。この刑事の悪人を追いかける鬼のような形相だけ見れば、どっちが悪役なのかわからないぐらい。しかし、この世の中をのうのうと生きているヤクザまがいの連中を見ていると、このような刑事も絶対に必要だと思わせる。
 この映画のユニークなところがフランス人の悪役。こいつが金持ち風情をしており、ちょっとお洒落なオジサン。傘を小粋に杖の代わりにして歩くなど貴族的雰囲気を漂わせていて、見た目だけなら刑事の方が悪そうに見える。しかし、コイツが麻薬を大量に売りさばくだけでなく、ヒットマンを抱えているのだ。
 そしてこの映画の凄さが、ドキュメンタリータッチのようなロケ撮影。登場人物たちの会話が全く聞こえない場面を多用しているのだが、これが退屈かと思いきや不思議とドキドキさせる。そして普通の刑事映画以上に追跡、見張り、走る場面が多いが、その迫力が画面から伝わってくる。1970年代の映画は大した特撮が使われなくても、リアルに感じさせるスリルを味わえる映画が多い。

 それではニューヨーク市警と麻薬組織の対決を描いたストーリーの紹介を。
 ひと仕事を終えたドイル刑事こと通称ポパイ(ジーン・ハックマン)とクラウディ(ロイ・シャイダー)は二人でナイトクラブに出かける。そこで彼らが見たのはマフィアの大物たち。しかし、その中に見たことのない若夫婦に違和感を持つ。
 さっそく二人は、この若者夫婦が何者かを知るために尾行する。やがて、夫の方はマフィアの大物ワインストックの部下であることがわかり、近々ニューヨークでフランス人と麻薬の取引が行われることを知る。そして捜査線上に黒幕としてフランスのマルセイユからニューヨークにやって来ているシャルニエ(フェルナンド・レイ)の存在が浮かび上がる。
 ポパイとクラウディは麻薬取引の現場を押さえて、フレンチコネクションを一気に叩き潰そうとするのだが・・・
 
 本作は色々と楽しい尾行や追跡のシーンがあるが、ポパイとシャルニエの追跡シーンが挙げられるだろう。この二人の全く会話はないが、駆け引きが面白い。地下鉄のシーンでのお互いに白々し過ぎる様子は笑えるし、シャルニエのポパイを小馬鹿にしたような仕草が、短気なポパイだけでなく俺もムカつかせる。
 そしてポパイ達が外からシャルニエを見張っている場面が印象的。安月給で働かさせられている刑事と麻薬で大儲けしている密売人の経済的格差が描かれているが、刑事の仕事の大変さが理解できるシーンだ。そりゃ~くそ寒い中で熱いコーヒーを飲めても、悪事を働いて儲けた金で優雅に昼飯を食っているところを見せつけられたら俺だって腹が立つ。
 この映画が大いに盛り上がるのが、シャルニエがポパイに対して差し向けたヒットマンを返り討ちにすべく、ポパイがヒットマンを逆に追いかけるシーン。この時のポパイの執念が凄すぎる。高架列車をハイジャックして逃げるヒットマンを、ポパイは高架の下を車で追いかける前代未聞のカーチェイスシーンを見ることができる。
 単なる刑事アクション映画と違って結末は色々な感情を抱かせるし、この映画は脇役も良い。特にポパイの相棒であるクラウディ(ロイ・シャイダー)が良いアクセントになっていたり、ヒットマンや財務省の役人も嫌な奴を演じていたりで、ストーリーに深みを与えている。
 熱血漢が主役の映画を観たい人、面白い刑事映画を観たい人、悪役が面白い映画を観たい人、アメ車が好きな人・・・等に今回はフレンチ・コネクションをお勧め映画として挙げておこう

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 監督はウィリアム・フリードキン。ホラー映画の傑作エクソシストが有名。最近は1977年に公開された恐怖の報酬のオリジナル完全版が日本で公開されています。


 
 


 
 
 
 

 
 
 


 

  
 



 

 

 
 



 
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映画 ホテル・ルワンダ(2004) ルワンダ大虐殺です

2018年11月29日 | 映画(は行)
 近年はICT(もうITなんて言葉は古い?)立国としてアフリカ大陸の中でも目覚ましい経済成長を遂げている国がルワンダ。しかしながら、この国にもかつては忌まわしきルワンダ虐殺が行われた。ルワンダ虐殺とは1994年に起きたフツ族過激派による、フツ族穏健派やツチ族を殺しまくったジェノサイド。フツ族とツチ族の民族対立が背景にあるが、100日間で50万から100万人の人が惨殺されたと言われている。
 そんな恐怖の出来事の真っ最中に、1200人以上のツチ族やフツ族穏健派の人々を匿い、助けたアフリカのシンドラーと呼ばれる男であるポール・ルセサバギナ。彼の良心的な行動が実話を基に描かれているのが今回紹介する映画ホテル・ルワンダ。決してこの男はスーパーヒーローでなければ、戦うための武器を持っている軍人でもない。ただのホテルの支配人に過ぎないごく普通の人。そんな普通の人間が如何にして、ナタを振り回して襲ってくる野蛮な過激フツ族の民兵団から、1200人以上の難民を救うことができたのか?

 この世の中、自己保身のためなら平気で人を売り飛ばすようなことをする卑怯者が存在することに絶望している人も多いはずだが、決して絶望的な状況に陥っても人間の良心を持ち続ける人もいることを知った時、生きる希望が湧いてくるストーリーの紹介を。
 1994年のルワンダ。ようやく多数派のフツ族と少数派のツチ族の内戦が終結に向かう頃。しかしながら当時のフツ族出身の大統領ハビャリマナ大統領が暗殺されたことを切っ掛けに、フツ族過激派が組織した民団兵によるツチ族に対する大虐殺が始まった。ホテルの支配人であるポール・ルセサバギナ(ドン・チードル)は自分がフツ族であるからか事の重大さに気づかなかったが、実際に大虐殺が始まってビックリ。このままでは彼の妻タチアナ(ソフィー・オコネドー)がツチ族であるために、妻子が殺されてしまうことに気づいたポールは国連軍に守られているホテルに逃げるのだが、大虐殺の勢いは止まらず多くのツチ族やフツ族の穏健派たちもホテルで匿うことになってしまうのだが・・・

 フツ族だのツチ族だの民族名が出てくると、小難しい映画のように思われるかもしれないが観ている人にわかり易いように説明してくれるので、ルワンダの歴史を知らなくても苦労せずに観ることできる。ポール(ドン・チードル)が勤めるホテルは一流で国連軍やマスコミが常駐している。当初は安全地帯として機能しており、ポール自身も最初はツチ族の妻を守るためだけに自宅からホテルに逃げてきた。しかし、やがて難民が次から次へとホテルに逃げ込んで来てからが、スリル満点の展開を観ることができる。なんせ相手はツチ族抹殺に執念を異常にむき出しにしているので難民を匿えば匿うほどピンチになるジレンマ。しかし、これだけマスコミが居て世界に向けて発信してくれているし、やがて国連軍が大挙して助けに来てくれるだろうと思っていたら、それは甘すぎる考えだと知らされる現実に観ている人もショックを受けるだろう。
 しかし、この映画から学べることが多くあるが、その一つに絶対に諦めるな!ということ。ポールが今まで築いてきた人脈をフルに駆使して、ダメもとで動き回る姿を見ていると苦境に陥った時の人間の底力に大いに感動する。そして民族対立、ジェノサイドなんて言うのは、ルワンダだけの話ではないということ。実は日本人にも大いに考えさせられる問題でもある。
 ルワンダという国に興味を持った人、良心の呵責に悩まされる極限状態に陥った時の人間ドラマを見たい人、人を助けるとはどういうことかを知りたい人、戦争が起きたら国連が守ってくれると勘違いしている人、本作と同じようなルワンダ虐殺をテーマにしたルワンダの涙を観たことがある人等に今回は映画ホテル・ルワンダをお勧め映画として挙げておこう


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映画 暴力脱獄(1967) 脱獄映画の傑作です

2018年11月01日 | 映画(は行)
 タイトル名から想像できるように、囚人が暴動を起こして脱獄するストーリー、と言うのは嘘。ポール・ニューマン演じる主人公ルークが脱獄を繰り返すストーリーだが、彼が暴力を振るうようなシーンは全くないし、そもそも暴力的なシーンが殆どない。
 ちなみに原題はCool Hand Luke(クール・ハンド・ルーク)。これはルーク(ポール・ニューマン)の手が冷たいという意味ではない。まあ、俺なんかはよく色々な人から「クールですね!」なんて言われるが、そんなのはもう当たり前すぎて飽きた。このタイトルの意味するところはルークが他の囚人達とポーカーをするシーンがあるが、そのシーンを見ればわかる。
 しかし、この邦題の駄目さは歴代映画の中でもトップクラス。クール・ハンド・ルークのままにした方が格好良いと俺は思うのだが。

 ちなみに本作は何気に脱獄ムービーを装っているが、実は非常に多くのテーマを内包している映画。刑務所を舞台に所長や看守に対し、囚人でありながら反抗的な態度を取り続けるルーク(ポール・ニューマン)。彼の刑期はたったの2年なのに、なぜ無意味に思えるような行動をするのか?それではストーリーの紹介を簡単に。
 戦場において多くの勲章を手にしていたルーク(ポール・ニューマン)は夜中に酔った勢いで、パーキングメーターを次々に壊していく。もちろん警察に捕まり、器物損害の罪でアメリカ南部フロリダ州の刑務所に収監される。何かと反抗的な彼の態度は囚人達の中のボス的な存在である大男のドラグライン(ジョージ・ケネディ)から目をつけられ、そして刑務所長(ストローザ・マーティン)や看守達からの過酷な労働、体罰にも遭うが、彼はいつも笑顔を浮かべて決して屈しなかった。そんなルークのキャラクターは次第に他の囚人達の尊敬を集め、ドラグラインですらルークの虜になってしまう。
 しかし、ルークに母親の悲報を知らされる。そのことを切っ掛けに彼は脱獄をしては、捕まりの繰り返し。二度目の脱獄に失敗しての拷問に近い体罰には心が折れそうになったルークだったのだが・・・

 冒頭からのパーキングメーターを壊していくシーンからして、もうこれは単純な映画ではないと観ている者は思う。刑務所内での反抗的な態度、脱獄を繰り返すのは、どうでも良いような規則にたいしての彼なりの反乱であり、悪しき権力への抵抗の表れ。それを笑顔を見せながら実行していくポール・ニューマンが格好良いし、本当にクール。刑期がたったの2年なのに脱獄を繰り返すなんて、ただの馬鹿のように思えたりするが、あえて茨の道を進んで自らの手で自由を勝ち取る信念を感じさせる。
 しかし、この映画ほど印象的なシーンが多い映画も珍しい。例えばルーク(ポール・ニューマン)とドラグライン(ジョージ・ケネディ)の殴り合いのシーン。とにかくルークが殴られっぱなし。しかし、どれだけ殴られても立ち上がり、最後はドラグラインが根負けしてしまう。
 そして、ゆで卵を50個も食べるシーン。女性から見たらくだらないシーンに思われるかもしれないが、俺から見ればけっこう熱くなるシーン。男は時にこういうくだらないことにプライドをかけるのだ。
 他にも炎天下で道路の舗装をさせられるのだが、これが重労働。他の囚人たちはやる気がなくダラダラしているのだが、ルークの一声でみんなが楽しそうにやり出して、看守達がビックリするぐらいに早く終わらせてしまったり等など見せ場がたくさんある。
 そして、この映画は宗教的示唆に満ちているのも特徴。ゆで卵を50個食べきった後の倒れ込むシーン、脱獄中に教会に入って神に問いかけるシーン、ドラグラインが『ルークは常に笑っていたよな』なんて言っているのはキリストの弟子たちによる福音書を思わせるし、ラストシーンなんかイエス・キリストの有名なシーンそのもの。他にも色々と宗教的な暗示を示すシーンがたくさんある。
 そして主演のポール・ニューマンだけでなく脇役も良い。常にグラサンを掛けていて片手でライフルを持ち全く喋らない看守がいるがコイツがちょっと怖い。
 反骨精神にあふれる男の映画を観たい人、現実の社会に不満を持っている人、自分の名前を永遠に残したい人、権力を握りたいと妄想している人、偉いさんの無謀な要求に従ってばかりの人、そして笑顔が素敵な人間になりたい人・・・等に今回は映画暴力脱獄をお勧め映画として挙げておこう。

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