褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 ペーパー・ムーン(1973) ロードムービーの王道です

2021年02月15日 | 映画(は行)
 主人公が旅をしながら様々な経験をしていくロードムービーというのは今や映画のジャンルとして成り立っているが、実際に『イージー・ライダー』『パリ、テキサス』『レインマン』など名作がとても多い。そんなロードムービーの多くある設定が、仲が悪かったり、価値観の異なる二人組が旅を経験していく内にお互いの仲が深まっていくパターン。今回紹介する映画ペーパー・ムーンもロードムービーであり、例の如くのパターンを踏襲している。しかし、本作が面白いのは親子ほどの開きがある大人と少女の掛け合い。この2人のやり取りが、他のロードムービーに足りない笑いを誘ってくれる。

 それではロードムービーの面白さを感じさせるストーリーの紹介を。
 1930年代におけるアメリカの大恐慌の時代において。元カノが自動車事故で亡くなり葬儀に現れたモーゼ(ライアン・オニール)。そこには元カノの娘で9歳の少女アディ(テータム・オニール)が居た。実はモーゼは聖書を売りつけて金を騙し取る詐欺師。今も詐欺の仕事で追われていたのだが、孤児になってしまったアディを叔母さんの家まで送り届けることになってしまった。最初こそは全くソリが合わない2人だったが、親子関係を装って詐欺を次々成功させるにしたがって、2人には本当の親子関係のような親近感が湧いてくるのだが・・・

 行く先々で詐欺を働くモーゼだが、少々お粗末な行動が見受けられる。危うく詐欺がバレそうになったり、金遣いが荒く、女癖も悪くて、せっかく金を稼いでもすぐに浪費してしまう。そんなダメダメな大人のモーゼに対して機転を効かして助け舟を出すのが、まだ9歳の少女アディというのが笑える。詐欺に関しては天才少女ぶりを見せつけるのが楽しいし、またモーゼを睨みつける表情が凛としていて、ダメっぷりを発揮するモーゼと対照的で笑える。
 モーゼとアディを演じるライアン・オニールテータム・オニールは名前から想像できるように、本当の親娘の共演。よってストーリーの方も、実はモーゼとアディって本当の親子か?なんて思わせる件があったりして、少しばかり話に重みを感じさせる。
 はっきり言って子供の教育には良いはずが無いような内容だが、ロードムービーの王道を行くようなストーリーは単純でわかり易くて、笑えるのが良い。そして、テータム・オニールを観ていると本当に天才子役だと感じれるのも本作の大きなポイントだろう。少々古い映画でモノクロが苦手という先入観のある人も本作に関してはそんな心配は全くの無用。老若男女問わず誰もが楽しめる映画として今回はペーパー・ムーンをお勧め映画として挙げておこう

 監督はピーター・ボクダノヴィッチ。何かと映画愛を感じさせる作風がハマる人にはハマる。映画愛を感じるラスト・ショー、奇病に罹っている少年と母親の交流を描いたマスクがお勧め。


 

 

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2 コメント

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「ペーパー・ムーン」について (風早真希)
2024-02-04 16:48:06
毎回、貴ブログの映画レビューを拝読すると、紹介されている映画の魅力や本質を、あますところなく表現されていて、本当に素晴らしいなと思います。

今回レビューをされているペーパー・ムーン」について、コメントしたいと思います。

この映画「ペーパー・ムーン」は、古き良き時代のアメリカ映画への夢を託した珠玉の名作だと思います。

1970年代のアメリカ映画の映画史的な流れとして、過去を取り上げた、いわゆるノスタルジックな映画が流行しました。

過去を取り上げるだけなら、そんなに珍しい事ではありませんが、色彩から衣装、音楽の使い方に至るまで細心の神経と注意をはらい、ノスタルジックな郷愁をかきたて、気分を盛り上げていくような映画が数多く製作されました。

それは、一面では現実からの逃避という側面もありますが、良質の優れた映画には、過ぎ去ったものを、もう一度見直そうとする真摯な精神が満ち溢れていたのではないかと思います。

映画批評家出身のピーター・ボグダノヴィッチ監督は、1968年の「殺人者はライフルを持っている!」で鮮烈なデビューを飾った後、1971年のノスタルジア映画の最高峰とも言われる名作の「ラスト・ショー」を撮り、まさに監督としての絶頂期の1973年にこの「ペーパー・ムーン」を撮りました。

その頃、フランシス・フォード・コッポラ監督、ウィリアム・フリードキン監督という当時の新進気鋭の監督たちと、「ディレクターズ・カンパニー」という独立した映画会社を設立し、その第1回作品として、この「ペーパー・ムーン」が製作された事はあまりにも有名です。

特にピーター・ボグダノヴィッチ監督は、過去へのノスタルジック物が大好きで、「ラスト・ショー」で1950年代を描いた後、今度は「ペーパー・ムーン」で1930年代を描きましたが、この映画は白黒スタンダード映画で、男と少女という設定は、チャップリンの名作「キッド」へのオマージュを捧げた映画になっているのは明らかです。

そして、映画批評家出身で映画オタクでもあるピーター・ボグダノヴィッチ監督が、"古き良き時代の映画よもう一度"という夢を託した映画でもあると思います。

だからといって、古色蒼然と撮っている訳ではなく、カメラ・ワークや編集の仕方は、いわゆる当時のアメリカン・ニューシネマ以後のアメリカ映画の新しさをもっていて、ピーター・ボグダノヴィッチ監督は、非常に斬新で凝った映像作りをしていると思います。

この映画は1930年代のアメリカの不況時代の中西部を舞台に、ライアン・オニール演じる詐欺師の男モーゼとテイタム・オニール演じるアディという少女の心の交流を描く映画で、映画の題名の"ペーパー・ムーン"というのは、当時の有名なヒット・ナンバーの題名となっていますね。

この映画の実質的な主人公は、母親が他界して孤児となった9歳の少女アディで、母親の葬儀に突然現れた詐欺師のモーゼと一緒に、聖書を使って、人の善意につけ込む怪しい商売をしながら旅を続ける事になるという、アメリカ映画お得意のロード・ムービーという形をとりながら描かれていきます。

そしてアディは、モーゼよりも一枚も二枚も上手をいく天才的な悪知恵を働かせて、モーゼの窮地を救ったりというエピソードが描かれていきます。

当時は未曾有の大恐慌の時代で、子供にとってもサバイバルが大きな問題で、このような悪い時代を軽妙な詐欺で乗り切ろうとする、"シニカルでユーモアたっぷりな設定"が大変うまく生かされ、二人はいい加減な日々を逞しく生きながらも、やがて親子のような絆を作り上げていきます。

カーニバルのアトラクションとして展示されている"ペーパー・ムーン(紙でできた月の模型)でも、信じれば本物の月のように見えるように、いい加減な人生の中にもひとかけらの真実が宿るという事もあるんだよ"という事を、映画の作り手たちは、我々観る者の心に語りかけて来ているような気がします。

ピーダー・ボグダノヴィッチ監督が、映画の中で1930年代を再現しようとする凝り方は異常なくらい、凝りに凝っていて、映画のロケ地であるカンザス州の田舎町は、南部と中部を中心に8000キロのロケハンをしたあげくに探し出したところだと言われていますし、衣装についても、1930年代の映画でビング・クロスビー、ロバート・テーラー、ジェイムズ・キャグニーなどが着用した撮影用の服もそのまま再使用されたとの事です。

そして、クラシック・カーのラジオやホテルの古いラジオから流れてくるビング・クロスビーの歌やトミー・ドーシー楽団のスウィングなど1930年代のヒット・ミュージックが、映画をノスタルジックに楽しく、ワクワクさせてくれます。

この映画の大成功の要因はやはり、撮影当時9歳だったテイタム・オニールのキャスティングにあり、一見すると少年のような容姿ですが、そんな彼女がモーゼが入れ込むグラマーな芸人に対して、ひとりの女としてライバル心を燃やすところの心理描写を実にうまく演じていて、まさに舌を巻く程という形容がぴったりとするくらいの天才的な演技力を示しています。

そして、テイタム・オニールは、この映画の演技で、1973年度第46回アカデミー賞で最優秀助演女優賞を受賞し、同年の第31回ゴールデン・グローブ賞で有望若手女優賞を受賞しています。

テイタム・オニールの9歳でのアカデミー賞の最優秀助演女優賞の受賞は、アカデミー史上最年少での受賞であり、それまでの「奇跡の人」でヘレン・ケラーを演じて16歳で同賞を受賞していたパティ・デュークの記録を破る画期的なものでした。
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風早真希さんへ (ディープインパクト)
2024-02-06 10:07:31
コメントありがとうございます。本当に映画に詳しいですね。僕の知らなかったことが、いっぱい書かれてあり非常に参考になりました。
 古き良き時代を描いているハリウッド映画は多いと思いますが、その中でも本作は秀逸な出来栄えですね。この監督さんではラストショーも勿論すきです。
 ラストショーはまだブログに載せていませんが、近日中に観直してブログに載せたいと思っています。
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