褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 バットマン ビギンズ(2005) 誕生秘話です

2024年03月08日 | 映画(は行)
 DCコミックが送り出した不滅のヒーローであるバットマン。現在に至るまで多くの俳優がバットマンを演じてきたが、最も格好良いのが本シリーズにおけるクリスチャン・ベールが演じるバットマン。そんなシリーズの第一作目が今回紹介する映画バットマン ビギンズ。生身の人間であり金持ちの御曹司であるブルース・ウェインが如何にして戦闘能力を身に付けたのか。そんなバットマン誕生秘話が描かれているのが従来のシリーズとは違うところであり、この辺りは個人的には楽しめると同時に、ヒューマニズム性も感じさせらた。

 すっかり腐敗してしまった生まれ故郷であるゴッサムシティの街に平和を取り戻すために戦い続ける宿命を背負ったバットマンを描いたストーリーの紹介を。
 少年時代に目の前で両親を浮浪者チル(リチャード・ブレイク)に殺されたブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)。青年になった彼は司法取引で仮出所をしてきたチルを復讐するために拳銃を持って近づいた矢先に、ゴッサムシティを牛耳るマフィアの親玉ファルコニー(トム・ウィルキンソン)の手下によってチルは射殺されてしまう。
 その帰り際に幼馴染みであり、今や女性検事補になっているレイチェル(ケイティ・ホームズ)から復讐しようとしたことを責められ、ゴッサムシティが不況に陥り、浮浪者を大勢生みだし、司法、警察の汚職や腐敗を招いているのは全てファルコニーが原因だと諭される。
 ブルース・ウェインは単独でファルコニーに会いに行くが、彼の手下に叩きのめされ、しかも刑事や政治家がファルコニーに操られていることに、己の無力さを知ってしまう。そんなウェインは自ら犯罪を繰り返して、犯罪者の気持ちを理解しようとし世界中を周る。彼がアジアの刑務所に収監されている時に、謎の男(リーアム・ニーソン)と出会い、彼の下で戦闘力を身に付けるべく修行に励むのだが・・・

 少年時代にレイチェルと一緒に遊んでいる時に井戸に落っこちてしまいコウモリに襲われたり、両親を目の前で殺されたり等、トラウマを抱えてしまったブルース・ウェイン。やさぐれてしまった気持ちを、どこへ向けるのかと思っていたら犯罪者になることだって!正直なところ、この展開は失敗しているようにも思えた。しかし、この映画の奥深いのはブルース・ウェインがゴッサムシティに戻ってから。復讐することは単なる自己満足であることに気付かされ、本当の正義に目覚めてからはバットマンというコウモリ姿のコスプレに身を纏い悪人を叩きのめす。そんなバットマンだが、どんな悪人であろうと決して人殺しはしないことを信条にしている。そんなことは当たり前だろうとツッコミたくなるが、その信条が時には弱点になることもある。
 そして強い奴が現れたら、更に強い奴が現れる。善人がいるから悪人も存在してしまう。まるで国際関係の仕組みを暗示しているようなテーマ性を含ませる内容は流石である。そして、この監督の特徴でもある意外性も感じさせてくれるのが良い。そんな理由でとにかくバットマンの映画が大好きな人は勿論だが、少しばかり奥が深いアクション映画を観たい人に今回はバットマン ビギンズをお勧めに挙げておこう

 監督はクリストファー・ノーラン。本作の続編にあたるダークナイトは必見。他では天才マジシャン同士の対決を描いたプレステージ、デビュー作にあたるフォロウウィング、救出作戦を描いたダンケルク、驚きの映像が観れるテネット等お勧め多数の天才監督です










 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト(1992) チョ~悪です

2024年03月01日 | 映画(は行)
 本来ならば正義の味方なのに、なぜか映画の悪役でよく使われるのが刑事。そんな映画史上においてもナンバーワンに値する極悪刑事を描いたのが今回紹介する映画バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト。かなりブ千切れた刑事を本作で観れることができる。ありとあらゆる違法行為やモラルに反することに手を染めてしまうように刑事失格どころか、人間として失格。超ダメダメの刑事に対して訪れる運命は如何なるものか?

 早速だが悪の限りを尽くす刑事がやらかしてしまうストーリーの紹介を。
 ニューヨーク、ブロンクスにおいて。息子2人を車に乗せて学校へ送り届けるような良きパパに見える警部補(ハーヴェイ・カイテル)。車から息子を下した後に、コカインで一発決めた後に殺人現場へ向かう。現場のことよりも自ら手をだした野球賭博の結果が気になり、しかも不運なことに彼が賭けているチームは負け続ける。その間も麻薬の売人と売り買いをしたり、家庭がありながら愛人や売春婦にのめり込む。
 更に警部補はドラッグ、アルコールにまみれて、しかも野球賭博で負け続けて借金も倍々に膨らんでしまい、もはや酩酊状態。そんな時に修道士の女(フランキー・ソーン)が2人の若い男にレイプされる事件が発生。警部補はレイプされた修道士の女に、『俺が犯人を見つけて代わりに成敗してやる』と告げるが、彼女から意外な言葉を発せられ・・・

 今や名優であるハーヴェイ・カイテルが猛ハッスルする。ボカシが入るほどの全裸になったり、自慰行為をしたり、イライラしてきたら拳銃をぶっ放し、思いっきり泣き叫ぶなど、メーターを振り切った怪演を披露する。とにかく悪の限りを尽くし、野球賭博で負け続けて本当に首が回らなくなるほどの借金を背負ってしまう警部補はどんな結末を迎えるのか。
 警部補は修道女と出会ってから、心の変化が現れる。すっかり泥沼にはまりこんでしまい、今さらマトモな人間になんか成れるわけがないだろうと思っていたら、キリスト様は粋な計らいをする。まさにキリスト教の厳しさと優しさの相反するような両者を身をもって感じさせられた。
 正直なところ子供に見せるには悪い影響を与えそうな内容だが、大人が観るには充分に鑑賞に堪えられる。自分の人生がどん底に陥ってしまいそうな人に映画バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリストをお勧めに挙げておこう






 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 ハムレット(1947) モノクロ映像の素晴らしさに感服

2024年02月17日 | 映画(は行)
 誰もが知っている超有名人のイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピア。多くの傑作戯曲を遺しているが、現在においても世界の何処かで上演されているだろう。その中でもシェイクスピアの四大悲劇の一つとされ、彼の最も有名な作品はハムレット。今回紹介する映画がそれを原作とする同名タイトル作品。名優ローレンス・オリヴィエが監督、主演を務め、彼はシェイクピア俳優として有名なだけに渾身の作品となっている。
 ちなみに本作はモノクロ映像であり、それを活かした重厚なセットかつ緻密なカメラワークが素晴らしい。またタイトル名は知っているが、内容は全く知らない人も居る思うが、そんな人でも現在においても通じるテーマが本作では描かれているし、比較的登場人物も少ないのでわかり易い。

 それでは全体的に憂いをおびた主人公が印象的なストーリーの紹介を。
 デンマークにおいて。デンマーク国王が死亡、その跡を継いだのが王の弟であるクローディアス(ベイジル・シドニー)。そして彼は前王の王妃であるガートルード(アイリーン・ハーリー)を娶る。父王の死と母である王妃の早すぎる再婚に悩むハムレット(ローレンス・オリヴィエ)は聡明な父とは違い、新しく王に就いた叔父のクローディアスの人間性を嫌っており、彼のやり場のない怒りは深まるばかりだった。
 ある日のこと、ハムレットは親友のホレイショ(ノーマン・ウーランド)から夜の12時に城壁の露台に、亡き国王(ハムレットの父)の幽霊が現れると聞きつける。その話を確認するためにハムレットはホレイショー達と一緒にその場に向かい、父の亡霊と会う。ハムレットは亡霊から、父の意外な死因を聞かされてクローディアスに対して復讐することを誓うのだが・・・

 とにかくハムレットは新しく王となった叔父さんのことが大っ嫌いで、亡き父から復讐をそそのかされるのだが、これがいざ実行になかなか移せない。しかも、ハムレットのとった作戦は正気を失ったような振りをする織田信長と同じ、うつけもの戦法。正直なところそんな作戦必要?なんて俺は思ったのだが、物語を盛り上げるためには効果充分。恋人オフィーリア(ジーン・シモンズ)や王妃である母親を苦しませ、悲劇的結末にも良いスパイスを効かせていた。
 しかし、本作の凄いのは前述したが重厚なお城のセット。こんなセットを作り上げ、またそのセットの奥行きを計算したかのようなカメラワークも抜群。内容だけでなく演出でも惹きつけられる。そして、本作では人間の欲望といったテーマが盛り込まれているが、それも現在までハムレットがなぜ人気があるのか理解できる要因であるだろう。そして、「生きるべきか、死ぬべきか」・・・等、多くの印象的な名台詞も本作の格調の高さを感じさせる。しかしながら、悲しいことに俺の記憶力の悪さが、それらの殆どを忘れさせてしまった。
 シェイクスピアに興味がある人、またはシェイクスピアは敷居が高いと思っている人、格調の高い映画を観たい人、原作の内容を知っている人も知らない人も、モノクロの映像テクニックに浸りたい人・・・等に今回はハムレットをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したようにローレンス・オリヴィエ。個人的には俳優としての方が印象が強い。彼のお勧め俳優作品を挙げるとヒッチコック監督作品のレベッカ、ダスティン・ホフマン共演のマラソンマン、脇役ならスパルタカス素晴らしき戦争もお勧め












コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 冒険者たち(1967) ロマンが溢れるも・・・

2023年09月04日 | 映画(は行)
 男2人と女1人が友情及び三角関係に結ばれつつ一攫千金とその夢の果てを描いたのが今回紹介する映画冒険者たち。タイトル名から謎解きをしながら、宝物を探しに出かけるトレジャーハンターのスリルに満ちたアドベンチャー映画を想像すると大間違い。むしろ全編に渡って男同士の友情が描かれている。その中に割って入るようにカワイ子ちゃんが入ってくるが、お互いにその女性に気がいきながらも男の友情は壊れそうで壊れない。なんせ夢はでかいことで共通する2人だが、生き方が不器用なところまで共通しているので、尚更2人の男の友情は熱い。そんな2人、いやカワイ子ちゃんも入れての3人の宝物探し、そして悲劇を味わうことによって三角関係が美しい物に昇華される・・・。

 それでは大人達のロマンを感じさせるストーリーの紹介を。
 画期的な車のエンジン開発に挑んでいるローラン(リノ・ヴァンチュラ)、パイロットでインストラクラーであるマヌー(アラン・ドロン)の2人の男は固い友情で結ばれている。そこへ鉄くず同然の廃車になっているドア等を集めにローランの仕事場にやってきたのが美人でスタイル抜群なレティシア(ジョアンナ・シムカス)。レティシアは前衛アートの彫刻家であり、成功を夢見ている。ローラントとマヌーは少し変わっているレティシアを好意的に受け容れる。そして3人は助け合いながら夢に向かって進もうとする。
 しかしながら、3人は夢に破れて挫折。ところがコンゴ共和国の海に莫大な財宝を載せた飛行機が墜落したとの噂を聞く。彼らは一攫千金とばかりにコンゴの海へ行き、何と今までのダメダメな人生を覆すかのように財宝を発見。大喜びしているのも束の間、他にも財宝を狙っていた一味が居て・・・

 夢に向かってチャレンジしろ!なんて言って後押しする人がいるが、この3人を見てたらもう止めとけって思える。しかし、どこに運が転がっているかわからない。ところが本作は財宝を発見してスゲーって思ってたらアッと言う間に悲劇が起きる。ストーリー紹介の後で船上で銃撃戦を起きてしまい、何とレティシアが巻き添えを喰らって死亡。まだ中盤の出来事なのに、最高にショックな展開が起きてしまう。しかし、2人の男は命を亡くしたレティシアに潜水服を着せて海中深くに葬ってやるのだが、このシーンは名場面だと言って良いぐらい神秘的に思えた。でも、ふと思ったのだが、もしもレティシアが生きていたらローランとマヌーの友情はどうなってただろう?みんながみんな人生を思う通りには過ごせんな。
 しかし、大金なんか手にしたらロクでもないことは、この後の展開を見ればわかる。なぜなら、カネの匂いを嗅ぎつけた悪い奴らが2人を追いかけてくるのだが・・・。そして最後の運命を決す場所が良い。その場所はここでバラさないので映画を見て欲しい。
 口笛を使った音楽が甘酸っぱいような青春映画を感じさせるし、自分の事よりも相手の事を思いやれる友情に感動するし、ジョアンナ・シムカスは綺麗で目の保養になるし、オッサン2人が船の上ではしゃぐシーンはノスタルジーを感じさせる。たまにフランス映画を観たくなる人に今回は冒険者たちをお勧めに挙げておこう

 監督はロベール・アンリコ。本作にも出演しているジョアンナ・シムカス主演の若草の萌えるころ、ジャン=ポール・ベルモント主演のオー!HO!、そして追想がお勧め

 
 

 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 バラキ(1972) マフィアの実態がわかります

2023年05月07日 | 映画(は行)
 タイトル名はジョゼフ・ヴァラキという人物名に由来する。ギャングとマフィアを混在している人がいるが、実はその由縁とするところは大きく異なる。ギャングというのも近寄りたくないが、マフィアというのはイタリアのシチリア諸島を起源とする犯罪集団のこと。欧州から多くの人達が新大陸アメリカを目指すが、マフィアも例外ではなく彼らもアメリカへ渡り勢力を広げた。
 そして彼らがアメリカでやっていることと言えば、人殺しのみならず麻薬、賭博など犯罪に手を染めていた。しかし、なかなか犯罪を取り締まるFBIも警察もマフィアの実態がよくわからない。そんなマフィアの実態を全国放送のテレビで放映された公聴会でバラしたのが、マフィアの構成員の1人であったジョゼフ・ヴァラキ
 なかなか内容が内容なだけに映画化となるとマフィアからの報復が怖いので、この映画の企画を持ち込まれた多くのハリウッドのプロデューサー達は断ったようだが、そこで立ち上がったのがマフィア発祥の地であるイタリア人の名プロデューサーであるディノ・デ・ラウレンティス。それでもマフィア連中からの脅迫はあったようだが、まさに命がけで撮った作品が今回紹介するバラキ。生々しい描写、マフィアの怖さ、そして死の接吻オメルタ(血の掟)、コーサ・ノストラという組織、マフィアの内部事情まで教えてくれる映画だ。

 それではマフィアの本当の怖さを知らされるストーリーの紹介を。
 1962年、アトランタの刑務所に服役していたヴァラキ(チャールズ・ブロンソン)は、かつての仲間から刑務所の中でも命を狙われる。ヴァラキの大ボスであるヴィト・ジェノヴェーゼリノ・ヴァンチュラ)も同じ刑務所に服役しており、ヴァラキは助けを求めるためにヴィト・ジェノヴェーゼに面会を求める。実はヴァラキの殺害を指示していたのはヴィト・ジェノヴェーゼであり、ある事件について密告していたのはヴァラキだと思い違いをしていたのだ。ヴァラキがジェノヴェーゼに疑いを晴らそうとするが、ジェノヴェーゼはヴァラキの首に賞金を懸け、手下に殺害を指示する。
 ヴァラキは別の刑務所へ護送され、そこでFBI捜査官のライアン(ジェラルド・S・オローリン)と面会する。ヴァラキはライアンにコソ泥をして生活をしていたことに始まり、マフィアに入る切っ掛け、最初は幹部の運転手からスタートして、やがて殺害にも加わるようになったこと、そしてマフィアの争い、コーザ・ノストラというマフィアの組織、そしてオメルタ(血の掟)で結ばれたマフィアの同士の結束等などを話していく・・・

 チャーリー・ルチアーノサルヴァトーレ・マランツァーノ等、大物マフィアも実名で登場する。ドキュメンタリータッチで描かれているだけに、生々しいシーンもあったりする。この映画の制作開始時は、まだヴィト・ジェノヴェーゼジョゼフ・ヴァラキも存命中。しかも、ヴィト・ジェノヴェーゼは刑務所の中からでも殺害指令を下すことができる等、本作を映画化しようとしたスタッフ達もマフィアの連中から脅迫されてしまい、結局はヴァラキもジェノヴェーゼも獄中で死を迎えてから本作は公開された。
 本作を観ればマフィアの怖さを知るのは当然として、一般市民の生活の中にもマフィアが入り込んでいることがわかる。一部の警察と組んでいたり、労働組合にも入り込んでいたりするので突然不当なことで仕事を解雇されたりする。そして、マフィアの世界にも時代の流れがあり、マフィアの変遷も少しは理解できる仕組みになっている。オメルタ(血の掟)なんかは、日本のヤクザとも共通点が見いだされるし、一度泥沼に嵌ってしまった人生から抜け出すことの難しさをラストで痛感する。
 今回はちょっと怖いマフィアの世界を覗いてみたいという人、マフィア映画が好きな人等に映画バラキをお勧めとして挙げておこう

 監督はテレンス・ヤング。007シリーズの初期の作品が有名。同じチャールズ・ブロンソン主演でサスペンス映画夜の訪問者がお勧め。
 
  
 




 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 薔薇の名前(1986) 中世の修道院を舞台にしたミステリー

2022年09月18日 | 映画(は行)
 名優ショーン・コネリーが亡くなってから、もうすぐ2年が経つのかと思うと時の流れは早い。かつては007シリーズでジェームズ・ボンドを演じ、そのまま続けていればもっと大金が自分の懐にザックザックと入っていただろう。しかし、彼の役者魂が自分のキャリアをジェームズ・ボンドだけで終わらせることを許さなかった。ジェームズ・ボンドのイメージを完全に拭い去ったと個人的に思っているのが、今回紹介する映画薔薇の名前。それにしてもジェームズ・ボンド役では女たらしのスパイを飄々と男臭く演じていたイメージがあるが、ジェームズ・ボンド役を自ら降板してからは名優の貫録が抜群。本作においても色々と個性的な脇役陣が登場するが、その中でも抜群の存在感を発揮する。
 さて、本作は1300年代の中世、そして修道院を舞台にしたミステリーというのが珍しい。カトリック教会における宗教の知識や歴史に疎い人は観ている間は少し重苦しいと感じるかもしれないが、逆に言えば少しばかり中世の歴史とカトリックについて少しばかり学べた気分になれる。現在世界中にカトリック信徒が12億人いると言われる。キリスト教から派生した中でも最も多いのがカトリックだ。しかしながら、本作を観ればわかるがカトリックもこの時代になると教会において、腐敗、魔女狩り、免罪符を売りつけたり、徐々に本来の教義を忘れて私利私欲に走る人間が修道院の中にも、外にもたくさんいることがわかる。

 さて、ヨーロッパの中世、修道院を舞台にした本格的ミステリーのストーリーの紹介を。
 1327年の北イタリアにおいて。フランシスコ会のウィリアム修道士(ショーン・コネリー)は弟子であるアドソ(クリスチャン・スレイター)を伴って、高台にポツンと建っている修道院を目指していく。この修道院において、他の修道院の修道士もやって来て、ローマ教皇と今後の財産を含めたカトリック教会の方向を議論することが目的だった。
 しかし、頭脳明晰、観察力抜群のウィリアムは最近において、この修道院で殺人があったことを察知する。そのことを修道院長であるアッボーネ(ミシェル・ロンスダール)に問いかけると、アッボーネは驚きながらもそのことでウィリアムに相談して、殺人の真相を調べることを依頼する。しかし、瞬く間に殺人事件が再度発生。ウィリアムとアドソは調べれべ調べるほど複雑な人間関係がわかってくる。ようやく事件の真相とウィリアムのこの修道院に来た目的を達しようとしたときに過去に因縁のある異端審問会のベルナール・ギー(F・マーリー・エイブラハム)がやって来る・・・

 我ながら西欧の中世の時代に産まれなくて良かったと思えた。異端審問官なんて酷すぎる。こいつ等の行っている裁判なんかやばすぎて、うっかり宗教の自由なんて叫んでしまったら火あぶりの刑に遭ってしまう。俺なんかは今まで笑いの力は世界を平和にすると思っているのだが、ここに登場する修道士の中には『笑い』を許さない奴まで出てくる。どれだけカトリックというのは厳しいんだ。
 そんなカトリックの厳しさを見せつけられながら、ウィリアム修道士とアドソが殺人事件を捜査するのを見ているとシャーロック・ホームズとワトソン君のような関係で本格ミステリーとして楽しめる。そして、この修道院にはキリスト教圏内で一番大きな図書館があるというのが本作を面白くしている要素として挙げられる。この図書館の中がまるで迷路。ウィリアム修道士だからこっそり入って、抜け出すことができるが、俺がこんな図書館に入ってしまったら迷子になって死んでしまうだろう。なかなかのゴシック風で少々怖さを感じさせるサスペンス。タイトルの意味が俺にはよくわからなかったのだが、そのことを考えながら観るのも一興だろう。ちなみに本作はウンベルト・エーコの同名タイトルの小説の映画化。一度は読んでみたいのだが、なかなか文量が多いので根気のある人は小説を読んでください。

 監督はフランス人のジャン=ジャック・アノー。ブラッド・ピット主演のセブン・イヤーズ・イン・チベット、スナイパーの対決を描いたスターリングラードがお勧め。




 
 


 

 
 


 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 ビッグ・フィッシュ(2003) ほら吹きファンタジー

2022年08月17日 | 映画(は行)
 ちょっと昔の俺は女性にはモテモテで、とにかく毎日違う女の子と出会ってデートの繰り返しで有無を言わせずにプレゼントを贈りまくっていた。それもそのはずで、知らない女の子でも悪そうな奴らに迫られているような場面に出くわすと、ヒーローの如く俺が登場して、そいつらを叩きのめして助けてあげるとその女性と付き合ってしまうことになる。ここまで書いてしまうとホラ吹きと言うよりも大噓つきになってしまうか。
 さて、今回紹介する映画ビッグ・フィッシュだが、どこまでが事実かわからないようなホラを吹くお父さんと、小さい頃はお父さんのホラ吹き話が楽しかったのだが、次第に年齢を重ねると父親のホラ話を聴くのが嫌になってしまう息子。仲違いしてしまった親子だが、死が間近に迫ったきた父親とその息子は果たして仲直りできるのか、というのが大まかなストーリー。
 映画の構成は父親の死期が迫った現在と、父親の若き青春時代を交互に描き出す。やはりと言うか父親のあり得ないような若き時代のストーリーが面白く、ティム・バートン監督らしい鮮やかな色彩を駆使しているし、ほら話の中にとんでもないような人間達?が登場する。身長5メートルの大男、目を見合わせると死に方がわかってしまう魔女、そして狼男?、上半身だけ別々になっている双子の女性など、ホラーテイストを加えながらも笑えるストーリーを繰り広げるのだがティム・バートンの得意なパターンが炸裂している。

 どこまで本当か嘘かわからない話ばかりしているお父さん、そんな父親のことが全く理解できないでいる息子。果たして2人は親子の絆を取り戻すことができるのか?出来るだけストーリーの紹介を簡単に。
 ウィル(ビリー・グラダップ)とジョセフィーン(マリオン・コティヤール)の結婚式の最中にウィルの父のエドワード(アルバート・フィニー)は得意のホラ話で来客者たちを笑わしていたが、父親のホラ話に嫌気がさしているウィルはその場を飛び出し、結婚式は台無し。ウィルはジョセフィーンと一緒に出て行ってしまい父親と会わなくなる。
 しかし、父親の病気が深刻化していることを母親のサンドラ(ジェシカ・ラング)からの手紙で知る。早速ウィルとジョセフィーンは3年振りに実家へ帰り、ウィルは父親のエドワードと二人っきりで話すも結局は父親のことは理解できぬまま。
 ウィルは父親から聴かされた若き頃のエドワード(ユアン・マクレガー)の奇想天外なホラ話を回想しながら、父親の本当の姿、生き様を知ろうと行動を起こすのだが、現実は・・・

 アルバート・フィニー演じるエドワードは体調が悪くてもホラ話なのか作り話なのかわからないが、なかなか面白いことを言っているのだが、多くの人を楽しませている人気者なのだが、そんな父を嫌っているのが息子のウィルだけ。確かに赤の他人が聴くと楽しい話だが、息子のウィルにとってはデタラメばかり話しているのを聴かされるのは自分に置き換えても確かにキツイものがあるか。
 エドワードの若き頃をユアン・マクレガーが演じており、彼が出演している場面はエドワードのホラ話の出来事を演じているのだが、この場面が鮮やかな色彩で見栄えが良く、芸達者な脇役陣のお陰で非常に楽しいシーンが満載。あり得ないようなホラ話ばかりだと思いきや、意外にも真実も含まれている。最初は頭を空っぽにしてどんな話なのか観たい人も居ると思うが、どこまでが真実でどのように盛ったホラ話が展開されるかを考えながら観ても非常に楽しい映画。
 まあ、俺の近くにも嘘つきで、自分自身を偉そうに見せるために大ホラを平気で話している奴が居る。そいつの場合はとにかく嘘やホラ話をして自分を偉そうに見せて格好をつけないと恥ずかしい人生を送ることになってしまうので他人の迷惑を考えずに必死過ぎて可哀想にさえ思えてくる。本作のエドワードのように事実を大きく盛って笑いをとる、その姿勢を少しは見習え!
 まあ俺なんかは自分を落とした自虐ネタで笑わすことが多いので、ホラ話で笑わせることが羨ましく感じるし、とにかく本作には親子の絆、夫婦の絆、人助けの精神といった人間同士の絆を感じさせるのが良い。今や人と出会いにくい時代になってしまっているが、そんな時だからこそ今回は映画ビッグ・フィッシュをお勧め映画に挙げておこう

 監督は前述したようにティム・バートン監督。ジョニー・デップとのコンビ作品で楽しい映画が多い。特にシザー・ハンズエド・ウッドスリーピー・ホロウチャーリーとチョコレート工場がお勧め。他ではバットマンバットマン リターンズの2作品。そしてビートル・ジュース等、お勧め作品が多いです。






 


 
 
 
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 フリック・ストーリー(1975) 先日亡くなられたジャン=ルイ・トランティニャン主演です。

2022年06月19日 | 映画(は行)
 先日ヨーロッパ映画の名作に多く出演したジャン=ルイ・トランティニャンが亡くなった。たまたま彼が死亡したことを知った前日ぐらいに見た映画が今回紹介するフリック・ストーリー。タイトル名にあるフリック(Flic)とは警察の俗称。本作はフランス映画なのだが原題はFlic Storyで英語が使われている。
 ちなみに本作はアラン・ドロンジャン=ルイ・トランティニャンの二大スターの共演。アラン・ドロンは30歳代半ば、ジャン=ルイ・トランティニャンは40歳ぐらいと役者として最も充実している時。今の映画好きの人にはジャン・ルイ=トランティニャンと聞いても誰だ?となるが、俺のブログでも彼の出演作ではベルナルド・ベルトルッチ監督の暗殺の森離愁、ミヒャエル・ハネケ監督の愛、アムールをブログに挙げているし、他にもクロード・ルルシュー監督の恋愛映画の名作男と女、コスタ・ガブラス監督の政治サスペンス映画Z、ルネ・クレマン監督の仁義を感じさせるアクション映画狼は天使の匂い等は観ているし多くのヨーロッパの名監督の作品に出演している名優だ。
 本作は犯罪サスペンス映画。どうやら実話を原作にしているからか、それほど捻りがあるわけではないが出世欲丸出しのアラン・ドロン演じる刑事、脱獄しても犯罪を繰り返して刑事に情報を差し出すような人間を迷わず拳銃で殺す凶悪犯がジャン=ルイ・トランティニャン

 それではストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 戦後間もない1947年のこと。恋人と結婚するために早く係長に昇進したいと思っているボルニッシュ刑事(アラン・ドロン)に新たな事件を任される。それは戦前から人殺しを繰り返していたエミール(ジャン=ルイ・トランティニャン)が脱獄したので国家警察の威信を賭けて捕まえること。ボルニッシュ刑事は昇進のチャンスとばかりにエミール逮捕に乗りだすが、エミールは高級レストランで金持ちの客から宝石類を強奪し、ボルニッシュ刑事の追及も難とか逃れていたのだが・・・

 何と言ってもジャン=ルイ・トランティニャンの表情を変えずに、すぐに拳銃を取り出して無表情で射殺してしまう冷酷さが良い。アラン・ドロンもいつもの如く格好良いのだが彼も犯罪者役の方が個性を発揮するので本作では少し損している印象がある。
 ストーリーのテンポも良いし、普通にサスペンス映画として面白い。しかし俺が本作を観ていて特に驚いたのが、ジャン=ルイ・トランティニャンはジョン・マルコヴィチに似ているし、それ以上にアラン・ドロンがジャック・ニコルソンに相当似ていることに気付いた時は、少々笑ってしまった。
 昔の映画でありながらそれほど刑事と凶悪犯の対決という設定に新鮮味がないが、今や大ベテランのハリウッドの名優と似ているかを確かめたい人には映画フリックス・ストーリーをお勧めとして挙げておこう。

 監督はジャック・ドレー。これまた本作と同じくアラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンド(昨年享年88歳でお亡くなりになりました)のフランスの二大スターがタッグを組んだボルサリーノが面白い

 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 犯罪河岸(1947) 良質なフランス製サスペンス映画

2022年04月11日 | 映画(は行)
 漢字四文字のタイトル名で「はんざいかわぎし」、「はんざいかぎし」・・・結局何と読むのかわからなかった。読み方はわからなかったが、映画の方は人物の描写が素晴らしく、また人間の悲喜こもごもが描かれており、人情を感じさせる。そして殺人事件が起きてからフランスを代表するジャン・ギャバンと並ぶ名優であるルイ・ジューヴェ演じる刑事がバリバリの存在感で引っ張る。色々な名作に出演しているが、この人が出てくると映画が締まる。

 主な登場人物は4人だが、殺人事件を巡っての各々の思惑が描かれることによって一筋縄では行かぬストーリーの紹介を。
 頭は禿げかけていて、見た目は冴えないピアニストである夫のモーリス(ベルナール・ブリエ)だが、けっこう可愛くて、色気がある場末の二流歌手であるジェニー(ジュジー・ドレル)という妻が居るのだが、モーリスは嫉妬深いためにジェニーに近づいてくる男には苛ついているところを見せる。何かと喧嘩が絶えない夫婦だが、2人は愛し合っている。
 そして彼らの階下に住んでいるのがモーリスの幼馴染みであり金髪美女で独身のカメラマンであるドラ(シモーヌ・ルナン)。ドラはモーリスを好いているが、ジェニーとも非常に仲が良い。

 ある日の事、ジェニーはドラの部屋で写真撮影をしていると映画会社の社長で金持ちの老人ブリニョン(シャルル・デュラン)から映画出演させてやるから、会わないかと言われる。そのことが気に食わないジェニーの夫のモーリス。ブリニョンとジェニーが会う前にモーリスが現れ、ブリニョンに喧嘩を売り結局話はおじゃんになる。
 しかし、出世欲が強いジェニーがモーリスにばれないようにブリニョンの自宅へ行こうとしていることを知り、怒りや嫉妬に駆られたモーリスは拳銃を持ち、アリバイを作ってからブリニョン宅へ行くのだが、ブリニョンは頭から血を流して死んでいた。驚いたモーリスはその場を去ろうとするのだが、目の前で車を盗まれてしまい、何とか走って家へ帰る。モーリスはジェニーがブリニョンを殺害したと思っているのだが、やっと現れたルイ・ジューヴェ演じるパリの刑事アントワーヌだが、彼はモーリスがブリニョンを殺害した容疑者の第一候補として捜査を開始する・・・

 モーリス、ジェニー、ドラの麗しき仲間意識に涙が出そうになる。モーリスは完全にジェニーがエロ爺であるブリニョンを殺害したと確信しているのだが、決してルイ・ジューヴェ演じる刑事に妻が犯人であることを言わない。そしてジェニーはドラに対して「私がブリニョンを殺したのよ」と言ってしまい、警察へ行って自供しようとするのだが、その時のドラは「そんなことをしたらモーリスが悲しむから警察へ行かないで」なんて言うところなんかは女同士の友情、意地、幼馴染みのモーリスに対する熱い想いを感じることができる。しかも、ドラはジェニーのためにブリニョンの自宅へ行ってジェニーの指紋を消したり、証拠品を燃やしたり、ジェニーが置き忘れたマフラーを持って帰ってやったりする。このあたりのモーリスとドナのジェニーに対する愛情や友情は感動もの。しかし、そんな3人を抜群の推理力と行動力を持ってルイ・ジューベ演じる刑事が追い詰める。
 単なるサスペンスに終始した映画ではなく3人の男女のそれぞれの思惑を考えるだけでも切なくなるし、またルイ・ジューヴェ演じる刑事にしても、なかなか面白い冗談をいったりするのだが、彼の今までの人生には苦労が付きものだったことに、人間を描いた奥深いサスペンス映画だということに気付かされるのが良い。
 事件の結末はここまで読んだ人はもうわかったと思うかもしれないが、実はかなり意外な結末を迎える。正直なところ犯人が誰か推理しながら観る映画ではないので、その手のタイプの映画を期待すると失敗するが、人生を感じさせるサスペンス映画としてはハマる人にはハマるだろう。今回は人間の悲喜こもごもを感じさせるサスペンス映画として犯罪河岸をお勧め映画として挙げておこう。

 監督はアンリ=ジョルジュ・クルーゾ。フランスを代表するサスペンス映画の名手。ナチスドイツの侵攻によって多くのフランスの映画監督はアメリカへ逃げたが、この人はフランスに留まって映画を撮り続けた。ナチスドイツの影響を感じさせる心理サスペンス密告、ホラーのようなどんでん返しの妙を感じさせる悪魔のような女、メガトン級のスリルを感じさせるハラハラドキドキさせる恐怖の報酬がお勧めです。


 

 
 


 

 



 











 



 


 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 波止場(1954) これこそ男の中の男です

2022年03月03日 | 映画(は行)
 ついにロシアのプーチン大統領が、ワケのわからん理由でウクライナに侵略を開始した。世界はウクライナを助けろ。そして、ロシア国内の中にもプーチンが武力を行使したことについて批判している人がたくさん居るはずだが、正義を信じるならば勇気をだしてプーチンをひっ捕らえて鉄槌を下せ。
 なかなか平気で人殺しをするような奴に表立って批判することは勇気がいるし、しかも殆どの人間は心の中では批判はしたいが、凶悪な権力者に対して命を賭してまで盾突くことができない。こんな偉そうなことを書いている俺自体が、実は全くの臆病者なのが情けない限りだ。さて今回紹介する映画波止場だが、ギャングの不正にたった一人で立ち向かう男のストーリー。プーチンを怖がっているロシア人には是非観て欲しい映画だ。

 正義と良心の呵責に悩み、そしてボロボロに殴られ、蹴られても立ち上がる男のストーリーの紹介を。
 ニューヨークにある波止場が舞台。元プロボクサーのテリー(マーロン・ブランド)は兄のチャーリー(ロッド・スタイガー)と一緒に、港湾の労働組合を支配するギャングのジョニー(リー・J・コッブ)の手下として働いている。ジョニーは日雇い労働者をピンハネして働かせ、組合費を高くカツアゲし、港湾の利益を殆ど独占していた。
 ある日の夜、テリーの友人のジョーイがアパートの屋上から突き落とされて殺されてしまう。ジョーイは労働組合の不正を犯罪調査委員会で暴露するつもりだったのだが、先手を打ってジョニーの手下どもによって殺されたのだ。ジョニーはジョーイ以外にも自分にとって邪魔になる者は殺害して口を封じ込めていて、多くの労働者たちも殺されるのが怖くて誰もジョニーの不正を告発しようという気になれないでいた。
 ジョーイの死体の側で彼の妹のイディ(エヴァ・マリー・セイント)は泣き崩れていた。結果的にジョーイの殺人に関わってしまうことになってしまったテリーは、悲しみに暮れているイディを見て、良心の呵責に悩まされ、イディに好意を抱くようになる。しかし、イディはテリーが兄の死について何かを知っているとにらんで質問攻め。自分は関係ないと言い張るテリーだったが、イディの事を愛するようになったテリーは、勇気をだして犯罪委員会でジョニーの支配する港湾労働組合の不正、ジョーイの殺人について真実を述べるのだが・・・

 次第に良心に目覚めだすテリーだが、運命は彼に厳しい現実を突きつける。ボスのジョニーはチャーリーに弟のテリーを殺せと指示し、結局弟を殺せなかった兄のチャーリーは見せしめの如く無惨にも殺される。最初こそは同じく兄を殺されていたイディは随分強気に出ており、不正を告発できないテリーに対して弱虫扱いしていたのだが、イディはこの場所がどれほど恐ろしい場所か理解してしまい、テリーと一緒に遠くの西部へ逃げて暮らすことを望み始める。しかし、兄チャーリーを殺されたテリーはボスのジョニーに対して復讐心で一杯だ。そしてテリーは逃げることなくジョニーに立ち向かっていくのだ。イディとテリーの心情が逆転してしまう構成がなかなか上手い。
 そして、勇気あるテリーの行動はさぞかし労働者の仲間達から賞賛されるのかと思いきや、自分の命が惜しい労働者達はテリーを遠ざける。俺がテリーなら金髪の綺麗なネエチャンであるエヴァ・マリー・セイント演じるイディと一緒に遠くへ逃げてしまう所だが、テリーは男の中の男だ。テリーの行動を今のロシア人は見習え。そして、本作にはカール・マルデンが演じるカトリックの神父がいるが、彼の言葉の数々が本当に素晴らしい。テリーを突き動かしたのは無惨に殺された兄の姿もあるが、神父が放つ言葉の数々によってテリーは自らの信念に火が点いたように思える。俺はキリスト教ではないのに、なぜかイエス様に見守られている気分になった。
 骨太なドラマを見たい人、弱者が強者に向かって行くストーリーが好きな人、二十世紀最高の俳優であるマーロン・ブランドに興味がある人、何時までも色あせない名作映画を観たい人・・・等に今回は映画波止場をお勧めしておこう

 監督は名匠エリア・カザン。多くの名作を遺した監督ですが、マッカーシー旋風の赤狩りは彼の人生に暗い影が付きまとい続けているだけに、少しばかり彼の人生を知ると今回紹介した波止場に対して色々と違った角度から見ることができます。他にお勧めは伝説と化したジェームズ・ディーン主演のエデンの東、アメリカ国内におけるユダヤ人差別を描いた紳士協定、テネシー・ウィリアムズの同名戯曲の映画化であり、ビビアン・リー、マーロン・ブランド共演の欲望という名の電車、これまたマーロン・ブランド主演のメキシコの英雄を描いた革命児サパタ等がお勧め。
 
 

 
 
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 パフューム ある人殺しの物語(2006) 凄いクライマックスを見れます

2022年02月18日 | 映画(は行)
 そういえば綺麗な女性3人組の「Perfume」というアイドルグループを知っているけれど、歌を一曲も知らないよな~なんて思ったり、2年ぐらい前は「香水」という曲が大ヒットしたよな~なんてことを考えていて、ふと思い出したのが今回紹介する映画パフュームある人殺しの物語。ドイツの小説家であるパトリック・ジュースキントのベストセラー小説の映画化作品。
 パフュームというのは香水の意味。香水の製造過程のシーンもあるように香水に興味がある女性には特にお勧めしたい、というのは半ば冗談。タイトルがネタ晴らししているように、猟奇的な殺人鬼の生き様を描いた映画。人殺しを描いたような映画は多々あるが、本作の主人公のキャラクター設定が非常に特異なのが、生まれながらにして数キロメートル先の物でも匂いで嗅ぎ分けることができること。警察犬よりも鋭い嗅覚をしていたら、臭い匂いにぶち当たってしまうだろう、なんてツッコミたくなったりするが、どうやらこの主人公は臭い匂いについては判断はしないらしい。
 この世の中においても生まれながらにして特殊な才能を持っているような人に出会うことがあるが、天才と狂気は紙一重。その才能をもっと世の中の役に立つことや、もっと自分の幸せのために使えよ、なんて思いながら観ていたが我々のような凡人には想像できないことに天才は憑りつかれてしまい、自らを苦しめてしまうのか。

 冒頭でいきなり主人公が格子の中で鎖に繋がれているシーンから始まるが、さてこの主人公に訪れる運命とはこれ如何に、それではストーリーの紹介をしよう。
 18世紀のパリにおいて。悪臭が漂うパリの魚市場において赤子が産み落とされる。孤児院で育てられたジャン=バティスト・グルヌイユ(ベン・ウィショー)と名付けられた男の子は生まれながらにして数キロメートル先の匂いを感じとることが出来た。やがて成長したグルヌイユはパリで綺麗な女性と出会って驚く。彼女の体臭から今まで経験したことのないほどの香りを覚えたしまったのだ。グルヌイユは彼女の後を追いかけていくのだが、誤って彼女を殺してしまう。ところが死んだ彼女から香りが消えてしまっていた。
 グルヌイユは殺してしまった女性の香りが忘れられず、再現するために香水調合士であるジュゼッペ・バルディーニ(ダスティン・ホフマン)に弟子入りする。そこで香水の製造方法を学ぶのだが、その香りを保存する方法を更に学ぶために香水のメッカとして知られるグラース市へ旅立つ。そこへ行くと奇蹟的に殺害した女性と同じ匂いがする富豪であるリシ(アラン・リックマン)の娘ローラ(レイチェル・ハード=ウッド)を見かける。
 グルヌイユは香りを保存する方法を習得し、ますますあの時の香りを再現したい欲望に憑りつかれ、実験のために若くて綺麗なネエチャンを殺しまくりグラース市を恐怖のどん底に陥れる。そして、いよいよその魔の手はローラにも迫ろうとしていたのだが・・・

 若くて綺麗な女性ばかりを狙うジャン=バティスト・グルヌイユだが、決して強姦といった類のことをするのではない。ただ彼が凶行に至るのは、偶然に殺してしまったあの女性から放たれる香りを再現したいため。根は悪い奴じゃないというか、ただあまりにもの世間知らずが度を過ぎてしまったがための行動だと言えるか。
 しかし、本作は匂いの表現が重要なのだが、映像を通してそのことを観る者に伝えるのは難しいと思うのだが、本作はその点は完全にクリア。18世紀の悪臭漂うパリの街や、ジャン=バティスト・グルヌイユが作り出す香水の素晴らしい出来栄えの描き方は視覚を通して嗅覚に伝わってくる。
 それにしても異常に嗅覚が鋭いジャンだが、その個性は香水調合士として大成功を収めて世界を支配しようとすれば出来るほどの天才さなのだが、この天才さは暗殺者として最高の腕を本作で発揮させる。敵が近づいてくれば嗅覚で未然に察知してその場を巧みに逃れるし、また狙った獲物はどれだけ遠くへ離れて逃げても追いかける。今まで嗅覚が鋭いと警察犬みたいに犯人を捜すのに便利だと思っていたのだが、本作でまさかの逆バージョンで嗅覚の鋭さを活かされるとは驚いた。
 そして、クライマックスで訪れるドンデン返しには本当に驚いた。750人のエキストラを使ってのトンデモないシーンを見れるのだが、知っていれば俺もエキストラに参加していたのにと残念に思えた。それにしても凄い香水を作り上げたのだと感心させられることは間違いなし。
 しかし、本作はハッキリ言って主人公の行動が常軌を逸しており、多くの凡人には理解しがたいことがあるので、やたらとナレーターによる説明が多い。この原作の映画化がいかに難しかったかを感じさせられたし、それでも色々と難解に感じることが多々ある。
 例えばこの主人公には自分自身に匂いが無いことに気付いたりするが、そのことは何を暗示するのか?、そして最後の結末は一体何だったんだという疑問に襲われた。そして、あのクライマックスで主人公が涙を流していたのは何故なのか?この主人公に関わって自分の私利私欲のために利用した人達が次々に死んでいったりするが、それはどういう意味なのか?なかなか観終わった後に深く考えさせられる映画だ。
 観る人によってはドン引きするシーンもあるので、大人が自分の子供と観たり、恋人同士で観たりするのは避けた方が良いし、猫が好きな人も避けた方が良いとアドバイスを送りつつも今回は猟奇的サスペンス映画が好きな人にパフューム ある人殺しの物語をお勧めとして挙げておこう

 監督はドイツ人のトム・ティクバ。なかなかユニークな映画を撮る注目したい監督。フランカ・ポテンテ主演の愛のために走りまくるラン・ローラ・ラン、世界の観光地を巡った気分になれる金融市場の闇をテーマに描いたサスペンスとアクションが合体したザ・バンク堕ちた巨像がお勧め

 

 
 





コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 ハードエイト(1996) ポール・トーマス・アンダーソン監督の長編映画デビュー作です

2022年02月03日 | 映画(は行)
 世界中の映画祭でありとあらゆる賞を受賞しまくっている今や名監督として君臨する鬼才ポール・トーマス・アンダーソン。そんな彼の長編における監督デビュー作品が今回紹介するハードエイト。デビュー作品でありながら、なかなかの豪華キャスト。後々に名監督と言われる人はデビュー作品から才能を見せつけることがよくあるが、彼もその中の1人。デビュー作品ながら、なかなか意欲的で後々の彼のスタイルが既に出来上がっていることを感じさせる。ちなみにタイトルの意味だが、よくカジノで行われるサイコロの2つの数字の合計を的中させるゲームがあるが、『サイコロの4のゾロ目』こと。タイトル名から想像できるように少しばかりギャンブルチックな内容もあり、ラスベガスやリノといったカジノで有名な都市を舞台にしている。

 それではミステリアスな雰囲気を漂わせる老人が主役のストーリーの紹介を。
 母親の葬式代を稼ごうとしてラスベガスで財産を殆ど投げうってしまい一文無しになってしまったジョン(ジョン・C・ライリー)は、喫茶店の前ですっかり打ちひしがれていた状態でいた。そんな彼の前に全く見ず知らずの老人であるシドニー(フィリプ・ベーカー・ホール)が現れる。何とこの老人はジョンにコーヒーを奢り、更にはギャンブルで勝たしてやるから今からラスベガスへ戻ろうと言いだす。ジョンはこの老人を怪しく思っていたのだが、他にどうしようもないので一緒に再度ラスベガスへ行くのだが、何とシドニーのアドバイス通りにギャンブルに臨むとドンドン儲かっていく。そして、そのことを切っ掛けに2人はまるで親子関係のように親密になってゆく。
 そして2年後、リノで2人は再会する。すっかりプロのギャンブラーになったジョンはウエイトレスをしている恋人であるクレメンタイン(グウィネス・パルトロー)と友人であるジミー(サミュエル・L・ジャクソン)を、シドニーに紹介する。しかしながら、4人の出会いは思わぬ秘密が暴かれることになってしまい・・・

 シドニーと呼ばれる老人が非常にミステリアスで、最初の登場からこの爺さんは何者?なんて思いを抱きながら見ることになる。とにかくお節介なぐらいジョンに対して親切。ジョンをカジノで勝たせてあげるだけでなく、彼がトラブルに巻き込まれたら、どんなことをしてでも解決してあげる優しいオジサンであり、まるで頼りになるパパみたいな存在だ。それにしても、なせ老人シドニーはジョンに対してこんなに親切なのか?それにしても、お金を貸してくれるし、ギャンブルで勝たしてくれるし、暴力沙汰の事件も警察沙汰にならないように解決してくれるし、素敵過ぎる老人。俺もこんな知り合いが欲しいと思いながら観ていたのだが・・・。
 一応は映画の分野としてはミステリーサスペンスに入ると思うのだが、けっこうストーリーは淡々と進む印象があるし、会話のシーンも多めなので少しばかり冗長に感じる人もいるだろう。しかしながらこの監督らしい無駄なバイオレンスシーンは観る気を煽らせるし、なかなか人生の役に立つような台詞もあったような気がする。そして数年前に40歳代で亡くなった名優フリップ・シーモア・ホフマンが、まだ大して有名でない頃の彼が見られるし、けっこう印象的な演技を見せる。ポール・トーマス・アンダーソン監督のデビュー作品と聞いて興味が惹かれた人は迷ってないで観ることをお勧めしておこう

 監督は前述したポール・トーマス・アンダーソン。現在のところ51歳で、まだ映画監督としては若い。本作が26歳だった時の作品だと知って今さらながら驚いた。作風的に万人受けするとは思えない気もするが、ポルノ業界の裏側を描いたブギーナイツ、何じゃこりゃとラストで思わせるマグノリア、少しばかりバイオレンスな恋愛コメディパンチドランク・ラブ、ダニエル・デイ=ルイス主演の欲望と権力に憑りつかれた石油王を演じるゼア・ウィル・ビー・ブラッドがお勧め。

 


 

 

  

 



 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 ぼくの伯父さん(1958) アートセンスを感じさせる

2022年01月11日 | 映画(は行)
 独独の笑いを提供してくれるフランスの映画監督であり主演も脚本もこなしてしまうジャック・タチ。そんな彼の代表作でもあるのが今回紹介する映画ぼくの伯父さん。彼が演じるユロ氏を主演とした映画においてはぼくの伯父さんの休暇(1953)プレイタイム(1967)等あるが、本作が最も有名で前述した2作品より面白い。
 ちなみにユロ氏のキャラクターだが極端に台詞が少なく、背が高く、常にパイプを口にくわえており、晴れの日でもレインコートを着ている。そして、全く悪気はないのだが次々に騒動を巻き起こす。そのユーモラスな見た目と行動はけっこう笑わせてくれる。

 古い作品だが、今観てもモダン的な感覚に溢れているストーリーの紹介を。
 もういい年をしたユロ氏(ジャック・タチ)だが無職で独身でパリの下町のアパートに住んでいる。彼の義弟にあたるチャールズ(ジャン・ピエール=ゾラ)はホースを製造する会社の社長であり、家は非常にモダンな様式で斬新さがある。しかしながらチャールズのまだ幼い息子ジェラール(アラン・べクール)はそんな家に息苦しさを感じており、伯父さんにのユロ氏のことが大好き。
 チャールズの奥さんは未だに無職で独身の兄のユロ氏のことが心配で、結婚相手のお見合いのために自宅でパーティをしたり、夫の会社へ勤めさせようとしたり色々と奮闘するのだが・・・

 社長のチャールズの家が見た目もモダンで何かとオートメーション化されている。一方、ユロ氏が住んでいるアパートだがこれが笑える。どんなアパートかは是非本作を観てもらいたいのだが、ユロ氏が住んでいるのは最上階。俺だったらこんなアパートの最上階には絶対に住みたくないと思うのだが、ユロ氏はけっこう平気そうにしているのが笑える。そして、チャールズの家でユロ氏が巻き起こす騒動はけっこうな爆笑もの。何事もオートメーション化された生活に全く慣れていないユロ氏が色々とやらかしてしまうのだが、この辺りの件はまさに当時の現代社会をシニカルに描いている。ハッキリ言って庭に噴水があっても邪魔で鬱陶しいだけ。
 義弟のコネで入社した会社でもユロ氏は騒動を巻き起こすのだが、ホースの製造シーンも爆笑。大失敗をしても世間知らずなユロ氏は大してクヨクヨしないのだが、神経質な俺には非常に羨ましいオジサンに思える。その他にも色々と笑えたり、笑えなかったりのギャグが多々でてくるが、個人的には本作が凄いと思うのが映像を通して伝わるアートセンス。構造、色彩、セット等、今観てもモダンさが失われていない。
 ユロ氏は殆ど喋らないので、面白いことを言うのを期待して観るのは的外れだが、フランス製のこじゃれた映画を観たくなった時に今回はぼくの伯父さんをお勧め映画として挙げておこう。

 監督、主演は前述したジャック・タチ。前述したぼくの伯父さんの休暇はモノクロの映像に抵抗感が無ければ笑える。
 

 
 

 
 








 


 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 ヒート(1995) 銃撃戦にヒートアップします

2022年01月08日 | 映画(は行)
 今やハリウッド映画界のレジェンドとして君臨するアル・パチーノロバート・デ・ニーロ。公開当時では既にバリバリの名優として活躍していた二人が共演したことで話題になったのが今回紹介する映画ヒート。アル・パチーノが凄腕の刑事、そしてロバート・デ・ニーロが強盗団のリーダーとして2人の男同士の対決に胸が熱くなる映画だ。よく本作で語られるのがロサンゼルスの人通りで繰り広げられるド迫力の銃撃戦。しかし、作り手側もこの名優の2人を単なるアクション映画で共演させるだけでは勿体ないことに気付いたのか、男の哀愁を全編に渡って漂わせている。
 刑事と強盗犯という相対する2人。しかしながらお互いをその道の本物と認め合い、更に両者ともに仕事に対してストイック過ぎるために愛する女性の気持ちを考えてやることができないでいる。俺なんかは仕事で悩むことばかりだが、この2人の男は仕事よりも私生活の向き合い方に悩んでいるのが何とも切ない。

 ストイック過ぎる役作りにこだわることで知られる名優2人が、仕事にストイックな刑事と強盗を演じる演技合戦が楽しめるストーリーの紹介を。
 ロサンゼルスにおいて。ニール(ロバート・デ・ニーロ)率いる強盗団は白昼堂々と現金輸送車を襲うが、最近仲間に引き入れたウェイングロ(ケヴィン・ゲイジ)が考えなしに警備員を撃ち殺してしまったために、無駄に他の警備員を殺して逃亡する。今まで綿密な計画を立ててあらゆる強盗を成功させてきたニールだったが、災いになりそうなウェイングロを殺そうとするが一瞬のスキを突かれて逃げられてしまう。
 この事件を担当することになったのがロサンゼルス市警の敏腕刑事であるヴィンセント(アル・パチーノ)。事件現場を見たヴィンセントは犯行の手際良さからプロの仕業だと見抜き、強盗団逮捕に執念を燃やす。わずかな手掛かりからヴィンセントは、強盗犯のリーダーがニールであることを割り出すのだが・・・

 アル・パチーノ演じるヴィンセント刑事は度々の結婚生活に失敗して現在は3人目の奥さんと暮らしているのだが、今回の事件を切っ掛けにまたもや離婚のピンチに陥る。家庭よりも世の中に蔓延る悪を捕まえることに熱中してしまう敏腕刑事。俺のような平和に暮らしたい人間には頼もしい刑事に思うのだが、家庭の方は何かとトラブル続き。犯人を捕まえようとする時はテキパキと部下に指示をし、猛ハッスルして犯人をライフルを持って追いかけるのだが、私生活の疲れを隠せない枯れた大人の男の魅力を放つ。
 一方、ロバート・デ・ニーロ演じる強盗団のリーダーであるニールだが、仲間を大事にし、彼らの家族に対する面倒見も良い。しかし、彼自身は家族を持つと、しがらみが出来て犯罪の仕事に差し障りがあるので、ずっと家庭を築かずにいた。『高飛びするには30秒しか時間の猶予はない』なんて台詞を言っているように一生独身を貫き身を軽くしていたのだが、若い女イーディ(エイミー・ブレネマン)と瞬く間に恋に落ちてしまう。魅力的な女性の方から話しかけられてしまうと、ついつい仲良くしたいと思ってしまう切ない男心。篤い義理と人情、そして犯罪だけで一切の正体もバレずに生きてきた男だが、恋愛は男を盲目にしてしまうのか微妙に判断に狂いが生じてくるのが、チョット恋愛には不器用だが渋い大人の男の魅力を放つ。
 まさに映画史に語り継がれるであろう銃撃戦も楽しいが、主演の2人もそうだが、脇役に至るまでのキャラクター設定が練り込まれているのも本作の魅力である。人間描写にまで力を入れてしまったために3時間という長時間映画になってしまったが、最初から最後まで見せ場たっぷりで飽きさせない。どこか影を持った男の格好良さを本作は堪能できる。
 ロサンゼルスを全面に映し出す夜景のショットを挟んできたりで、マイケル・マン監督のロサンゼルスに対する熱い想いも感じ取れることが出来るし、この主演2人の刑事と強盗の対決という関係から、やがてプライドを賭けた戦いに昇華するのが心地良さを感じる。
 渋いオジサンの戦いに燃える人、武器マニアの人、ロサンゼルスに熱い想いを持っている人、豪華キャストが出ている映画が好きな人・・・等に今回は映画ヒートをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したマイケル・マン。男同士の戦いを描かせたらナンバーワンの監督。ダニエル・デイ=ルイス主演のラスト・オブ・モヒカン、アル・パチーノ、ラッセル・クロウ共演のインサイダー、トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス共演のコラテラルがお勧め
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 バベットの晩餐会(1987) 美味しそうな料理が出てきます

2021年12月30日 | 映画(は行)
 美味しそうな料理が出てくる映画の名作は多いが、今回紹介する映画バベットの晩餐会も美味しそうなフランス料理がクライマックスで登場する。そういう点で本作はグルメ映画の類に入れてしまう人が多いが、俺にとってはそのことが少しばかり腹立たしい。あ~料理が美味しくて幸せ、なんてレベルの内容ではない。人生の哀歓を感じさせる映画であり、否が応でも過ぎていく時間は時代の変遷、過去に対する後悔を呼び起こす。本作はそんな苦味を味わうことになったりするが、料理を食べつくした後に小さな幸せを感じることができる。そして、多くの人間が身近にある幸せに気づいていないことを教えてくれる。

 それではどんより曇ったデンマークの寒村を舞台にしたストーリーの紹介を。
 美しい姉妹であるマーチ―ネーとフィリパは、敬虔な牧師である父親の助けをしながら慎ましく暮らしており、父親も村の人々を説教を通して尊敬を集めていた。ある日のこと、姉のマーチーネーにだらしない生活を戒めるために叔母さんの家で謹慎中のローレンス士官が彼女に一目ぼれしてせっせと教会に通うが、清廉潔白な生活に耐えられなかったローレンス士官は故郷へ帰ってしまう。そして妹のフィリパにはフランスの有名オペラ歌手アシールが近寄ってくるが、非常に厳格な牧師である父親がアシールをフィリパと会わせなくしたために、仕方なくアシールはフランスに帰ってしまう。
 そして時代は過ぎ、今や父親の牧師は死んでいなくなり、姉妹も結婚せずにそのまま年齢を過ぎてしまい、教会を憩いの場として訪れていた人々も今では信仰も薄らぎ、口喧嘩が絶えなかった。そして雨が降る夜にくたくたになって姉妹の家を訪ねてきたのが中年女性のバベット(ステファーヌ・オードラン)。フランス革命のあおりを受けて家族を亡くしてしまったバベットはオペラ歌手のアシールと知り合いであり、彼から姉妹の事を聞かせれていて、亡命して姉妹の家に身を寄せてきたのだ。
 ただ働き同然でお手伝いさんとして姉妹の家に居候することになったのだが、いつもフランスの知人に宝くじを買ってもらっていたバベットに一万フランの大金が当たったとの嬉し過ぎるニュースが入ってきた。姉妹はついにバベットはフランスへ帰ってしまうのかと思ったのだが・・・

 明るい太陽が見られずに、どんよりとした空模様に寒そうな波打つ海岸。俺がこんな場所にいてたら鬱病になってしまいそうな村を舞台にストーリーが展開される。大したハッピーな話も出てこないが、ユーモアを交えながら淡々とストーリーが進む。古い概念、篤すぎる宗教への信仰、因縁が人々の心を少しばかり暗いものにさせてしまうが、そんな雰囲気を一気に変えてしまうのが、バベットが振る舞うフランス料理。村の人々にとって斬新過ぎるフランス料理とそれを調理するバベットを悪魔のように恐れおののく様子がけっこう笑えたが、次第に村の人々の疑心暗鬼な気持ちが溶けていく感じが見ていて心地良い。
 本作にはキーワードとして芸術というのが挙げられるが、芸術なんてものの価値は金額で決められるものではない。カネは欲しがるが、自分の給与を少しばかりの期間限定でもカットされるのを嫌がる議員が居るのも情けない限りだが、議員の評価は決して議員報酬の高低で決められない。両方とも鑑賞者、住民にどれだけ満足感を与えられるかだろう。そして幸福度なんて決してカネでなんか測ることはできない。
 グルメ映画ではない、なんて書きながら出されるフランス料理はやっぱり美味しそうだし、観終えた後の心地よさはハリウッド映画では味わえない奥深さ。デンマーク映画のレベルの高さを見せつける作品として今回はバベットの晩餐会をお勧めに挙げておこう


 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする