ザ・競馬予想(儲かるかも?)

競馬予想(三連単予想)をします(主に重賞)。しかし、最近は映画の記事が多いかな?

映画 見知らぬ乗客(1951) 交換殺人がテーマです

2019年06月20日 | 映画(ま行)
 もしも全く知らない人から『お前の嫌いな人を殺してやるから、俺の嫌いな人を殺してくれよ。』なんてお願いされたら、あなたならどうする?。そんなバカバカし過ぎる願い事をを引き受ける奴なんかは、余程の変わり者ぐらいしかいないだろう。そもそもそんなことを頼む奴がこの世の中に居るのか?
 時々、アホな夫婦が友人の夫婦とパートナー交換をしたがっているような噂を聞いたりするが、今回紹介する映画見知らぬ乗客は、まさかの交換殺人を題材にした内容。あり得ないような素っ頓狂な設定かと思いきや、実際に観ると非常にリアルで怖い映画。サスペンス映画の神様と称されるアルフレッド・ヒッチコック監督の力量と原作者であるミステリー女史パトリシア・ハイスミスがタッグを組んだ作品として非常に楽しい映画だ。

 所々でいいかげんな描写も目立つが、実験精神旺盛なヒッチコックらしさを感じさせるストーリーの紹介を。
 テニス選手であるガイ(ファーリー・グレンジャー)は男遊びを繰り返している妻ミリアム(ケイシー・ロジャース)と離婚したがっていた。離婚した後はモートン上院議員(レオ・G・キャロル)の娘アン(ルース・ローマン)と再婚しようと考えていた。
 ある日の事、ガイが列車に乗ってくつろいでいるとブルーノ(ロバート・ウォーカー)いう名前の金持ち風の男から話しかけられる。全く見知らぬ男であるブルーノから話しかけられて困惑しているところへ、更にとんでもない相談をされる。ブルーノは予めガイの今の状況を知っており『俺はアンタの女房を殺してやるから、俺の大嫌いな父親を殺してくれよ』と交換殺人の提案をしてきたのだ。
 ガイはブルーノの話は冗談だろうと思って途中の駅でサッサと降りて彼とはこれっきりだろうと思っていたのだが、ブルーノは本当に妻ミリアムを殺害してしまう・・・

 交換殺人と言っても、両方が殺人を犯さないと成立しないだろうと思いきや、片一方が殺人を遂行するだけで完全犯罪が成立しそうになってしまうアイデアが面白い。ガイが行く所にブルーノが現れては『早く俺の父親を殺してくれよ』としつこく追い回し、ドンドン行動がエスカレートしていく様子を見ていると本当に怖い。しかも、ガイの場合はうっかり列車にライターを置き忘れてしまったから、それを利用されて妻殺しの犯人にされそうになってしまう。ストーカーや自己満足のために議員になりたがる奴は悪知恵が働くから本当に困る。
 しかし、本作はストーリーのアイデアも楽しいが、ヒッチコックの演出も大きな見どころだろう。最初は2人の顔は見せずに靴だけを写し出したり、モノクロの映像を活かした洞窟の中のシーンだったり、殺害場面での眼鏡の使い方だったり、テニス場での観客の中にブルーノを目立たせる演出だったり、ライターの使い方だったり・・・色々と魅せる。遊園地での回転木馬の対決シーンも今観てもちょっと斬新な感じがして楽しめる。
 なぜヒッチコックがサスペンス映画の神様と称されるのか知りたい人、ヒッチコック監督作品を『鳥』『サイコ』しか観たことが無い人、昔のモノクロ及び手作り感が漂うスリラー映画を観たい人等に今回は見知らぬ乗客をお勧め映画として挙げておこう。そして、知らない人から話しかけられたら相手にしないようにとアドバイスをしておこう

見知らぬ乗客 特別版 [DVD]
アルフレッド・ヒッチコック,パトリシア・ハイスミス,ディミトリ・ティオムキン
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント


 監督は前述したようにアルフレッド・ヒッチコック。何の関係も無いのに突然事件に巻き込まれる一般市民を描く映画が多い。北北西に進路を取れハリーの災難知りすぎていた男等、お勧め映画多数です。




 
 
 

 




 
 
 
 


 
 
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映画 ミッション(1986) 宣教師の活動が描かれています

2019年04月24日 | 映画(ま行)
 トム・クルーズ主演の大ヒットシリーズ映画のタイトル名とよく似ているが、あちらのようなスパイ映画でもなければ興奮するようなアクションシーンなんか無い。スペインのイエズス会から植民地の南米に派遣された宣教師たちの理想と現実を描いた宗教映画であり、史実に基づく歴史映画が今回紹介するミッション
 偏屈な考え方をしている俺なんかは、宣教師なんか植民地支配を強固にするための国家の手先だろう?ぐらいに思っていたのだが、本作の宣教師たちはえらくマトモ。彼らの布教活動の様子が最初の方で描かれるが、南米特有の大自然に大いに苦しめられ、先住民であるグアラニー族から敵視される様子に当時の布教活動の過酷さがよくわかる。そのことを表現する冒頭の殉教者が激流のイグアスの滝に放り投げられるシーンが衝撃的だ。しかし、それでも南米の先住民に対して、とても素晴らしいキリストの教えを広めようとするガブリエル神父(ジェレミー・アイアンズ)の無私無欲の姿勢は宣教師としてお手本だし、私利私欲で議員になりたがる政治家には彼の爪の垢を煎時て飲まさせてやりたいと思わせる。
 そんなイエズス会の宣教師たちと先住民であるグアラニー族の人々との交流だけが描かれていても充分に感動できる映画になっていたと思うが、本作がさらに優れているのは、キリストの愛をもってしても権力者の横暴を止めることができない事実を描いているところ。往々にして正義が必ず勝つとは限らないことは歴史が証明しているが、本作を観るとそのことを痛感する。しかし、何時の世にも正義の行いは次の世代に引き継がれ、決して忘れ去られることは無いのだ。

 自然と文明、平和と戦争、愛と憎しみ、罪と赦し等のような対立構造が重厚に描かれているストーリーの内容をできるだけ簡単に紹介を。
 18世紀の半ばの南米の奥地において。先住民のグアラニー族の人々にキリストの教えを説こうとして殉教してしまった前任者の後を受けて、ガブリエル神父(ジェレミー・アイアンズ)が布教にやってきた。再度やってきた宣教師に対して相変わらず警戒心を持ち続けていたグアラニー族の人々であったが、ガブリエル神父が奏でる音楽の力によって彼らには次第に交流の心が生まれてくる。
 しかし、ガブリエル神父の目の前でショックなことが起きる。それは奴隷商人であるメンドーサ(ロバート・デ・ニーロ)が、グアラニー族の人々を捕らえて売り飛ばしていたこと。ある日の事、メンドーサは恋人を取られたことに腹が立ち、弟を殺害。彼は独房に入る。
 メンドーサが独房に入っていることを聞きつけたガブリエル神父は、メンドーサと面会する。すっかり心を閉ざしてしまっていたメンドーサだったが、ガブリエル神父との再会は彼に希望を与え、彼の自らに課した重労働はグアラニー族の人々から赦しを得る。そしてガブリエル神父の弟子としてイエズス会に入信。すべてが丸く収まり、グアラニー族と宣教師たちの交流の場である土地は安住の地として平和な時間が過ぎていくはずだった。しかし、彼らの土地はスペインとポルトガルの領土の係争地になってしまい宣教師たちとグアラニー族たちは土地から立ち退きを迫られる。国家間の思惑に巻き込まれたガブリエル神父とメンドーサは対立してしまう。あくまでも平和的な解決を望もうとするガブリエル神父、再び剣を持って戦おうとするメンドーサ。そんな2人にスペインとポルトガルの軍隊が迫ってくるのだが・・・

 ガブリエル神父の博愛精神がメンドーサの心にも届いて感動した瞬間に、私利私欲にまみれた政治家たちが登場。自らの欲望のために権力を使いたい放題の偽政者の前には信仰、希望、愛を打ち砕いてしまうことを改めて痛感する。ガブリエル神父の愛にあふれた行動が全て台無しになるかのような展開にショックを受けるが、それでも小さな希望の灯を感じさせるエンディングに何故か救われた気分になる。
 しかし、個人的に本作で最も印象に残っているのが、ロバート・デ・ニーロ演じるメンドーサの贖罪を行うシーン。まるでイエス・キリストが十字架を背負ってゴルゴタの丘に向かっていくような宗教的なイメージを抱かせる感動的な場面だ。罪を償うことの厳しさ、罪を赦すことの寛大さを教えられる。
 厳しい自然を描き出す映像は勿論だが、今や音楽映画の巨匠として君臨するエンニオ・モリコーネの雄大な音楽は本当に素晴らしい。そして今や大ベテランの域に達している2人の名優ロバート・デ・ニーロジェレミー・アイアンズの演技派ぶりだけでなく、若きリーアム・ニーソンが重要な役で出演しているのも今観ればけっこうな驚きを得る。
 宗教映画はあんまり日本人には好まれない気がするが、本作には色々と普遍的なテーマが描かれており日本人にも共感できる要素がたくさんある。それにしても何故だろう?明日からは滅私奉公の精神で社会に貢献したいと思えるのは。そんな俺と同じように崇高な精神に導かれたい人に今回は映画ミッションをお勧めとして挙げておこう

ミッション HDニューマスター版 [DVD]
ロバート・デ・ニーロ,ジェレミー・アイアンズ,レイ・マカナリー,リーアム・ニーソン,エイダン・クイン
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


 監督はローランド・ジョフィ。彼の映画監督デビュー作品にあたるカンボジア内戦を舞台にしたキリング・フィールドがお勧めです。


 

 

 

 

 


 
 
 


 



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映画 ミラーズ・クロッシング(1990) コーエン兄弟が放つマフィア映画

2019年04月16日 | 映画(ま行)
 今や名実ともに世界を代表する映画監督になった感のあるコーエン兄弟。彼らの映画のファーゴ以前の最高傑作と言えば今回紹介する映画ミラーズ・クロッシング。俺がコーエン兄弟の監督作品で最も好きな作品だ。
 本作はマフィア映画の分野に当たるが、その手の映画はクソ真面目な作品ばかり。しかし、本作も表面上はシリアスなドラマが展開されるが、コーエン兄弟作品なだけあって所々で笑わしてくれる。そして、それ以上に本作の優れたところは、登場人物たちのキャラクター設定。だいたいガブリエル・バーン演じる主人公のキャラクターからして、なかなか興味深い。それほど口数が多いわけでなく、何事にも怯えた素振りを見せずに、非常にクールで頭が良い。見た目はゴッドファーザーのアル・パチーノと被るような役柄のように思えたりする。ところがギャンブルが大好きで、競馬で負け続けて借金を重ねる。そして、見た目とは裏腹に喧嘩がやたら弱い。とにかくボコボコに殴られているし、カヨワイ女性の一発のパンチに思いっきり吹っ飛ばされてしまう有様。それでも敵対するマフィアのボス連中の間を上手いこと渡り歩くように、頭が良いからまだマシな方だと思いきや、よく考えれば周りがアホすぎるだけってか?
 そして主人公だけでなく他の登場人物のキャラクター設定もなかなか楽しい。アイルランド系のマフィアのボスは老人でありながら、まるで体操選手のように運動神経が良い。そして、ターミネーターの如くマシンガンをぶっ放して自分を殺しにきたヒットマンを追いかけて返り討ちにするあたりは意外性があって笑える。そしてイタリア系のマフィアのボスは、人の見る目の無さに驚きと笑いを提供してくれる。ユダヤ系のノミ屋はとにかく笑えるぐらいに卑屈で卑怯者でホモ。他にもビックリするような奴らが登場するが、偏見、差別、知能、禿げ頭等を笑いのネタに取り入れてくるブラックジョークのセンスは流石はコーエン兄弟だ。

 際立ったキャラクターの登場人物達の思惑が絡み合い、次々と意表をつく展開が楽しいストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 禁酒法時代のアメリカの東部が舞台。町を仕切っているアイルランド系のマフィアのボスであるレオ(アルバート・フィニー)と彼の右腕であるトム(ガブリエル・バーン)は主従関係を超えて熱い信頼で結ばれている。しかしながら、レオは自分の女であるヴァーナ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)がトムと関係を持っていたことを知らないでいた。
 レオに対して、彼の部下であるが勢力を伸ばしつつあるイタリア系のマフィアであるジョニー(ジョン・ポリト)が自分が仕掛けたボクシングの八百長の邪魔をするバーニー(ジョン・タトゥーロ)を差し出せと迫ってくる。バーニーはヴァーナーの弟であり、その関係でバーニーはレオの庇護を受けていたのだ。レオはジョニーの要求をアッサリ拒否。しかし、そのことを切っ掛けにレオとジョニーの抗争が激化。そんな中でトムとヴァーナの仲がレオの知るところとなり、激怒したレオにトムは追い出されてしまう。
 仕方なくトムは敵対していたジョニーを頼ることになるのだが、ジョニーからバーニーをミラーズ・クロッシング(森の十字路)で殺すように命令されてしまい・・・

ありきたりのギャングの抗争が描かれているが、男同士の友情、裏切り、欲望、葛藤等がテーマに含まれているだけに濃密なドラマが展開される。主人公のトムは頭が良いのか、ただ運が良いだけなのか観終わった後にふと考えさせられるが、その辺りの余韻を残すような終わり方が個人的には非常に気に入っている。果たしてトムの策略は最終的に成功したのか、失敗したのか!?その辺りに気をつけて本作を観れば、この映画の面白さがよくわかる。
 人生の教訓めいた台詞が多いのも印象的だし、冒頭の方の森の中の上空を映すカメラワークが途中で抜群の効果を発揮させるし、次々と意表をつく展開がとにかく楽しい。ちょっと変わったギャング映画が観たい人、コーエン兄弟監督と聞いて興味が湧いた人、真面目さと笑いのサジ加減のバランスが絶妙な映画を観たい人等に今回はミラーズ・クロッシングをお勧め映画として挙げておこう

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ガブリエル・バーン,アルバート・フィニー,マーシャ・ゲイ・ハーデン,ジョン・タトゥーロ,ジョン・ポリト
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 監督は前述したコーエン兄弟。個人的な贔屓目もあるがお勧め映画多数。前述したファーゴ、ゆるゆるの脱獄ムービーオー・ブラザー!、本作以上に個性的なキャラクターをした人物が多数でてくるビッグ・リボウスキ、迫力のある追走劇が見られるノーカントリー等が良いです。



 
 

 
 
 

 
 

 







 
 
 
 

 
 
 



 

 
 
 
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映画 ミスティック・リバー(2003) 悲劇の連鎖反応です

2018年12月31日 | 映画(ま行)
 毎日を何の悩みもなく、ノー天気に過ごしている俺でさえ、衝撃を受けた映画が今回紹介するミスティック・リバー。表面上では人殺しの犯人は誰だ?というサスペンス映画のように見えるが、実際は多岐に渡るテーマが内包されている。特に我々の善悪に対する常識的な考えを嘲笑うかのような展開は、観ている者を大いに混乱させ、更なる深い悩みに陥れる。
 それにしても本作の登場人物たちは、どいつもこいつも、やることなすことが全て空回りで、悪い方へ向かって突っ走る。それは、まるでワザと不幸になるために行動しているのかよ、なんて思えたりしたのは俺だけか。にわかには理解しがたいような行動をする奴ばかり出てくるために、夢の中の出来事のように思えたりするが、よく考えたら極めてリアルな世界が描かれている。そして、この世の中はなぜ理不尽な事が次々に起きてしまうのか、そんな疑問が少々理解できるような映画でもある。

 ある忌まわしい出来事によって友情が引き裂かれてしまった3人の少年達。そんな彼らの25年後を描いたストーリーの紹介を簡単にしよう。
 アメリカのボストンの郊外において。道端で遊んでいたジミー、ショーン、ベイブの少年3人は、舗装している歩道の乾きかけているセメントに自分の名前を書き込んでいた。そこへ現れたのが警察らしき2人の人物。彼らは他の2人を残して、ベイブだけ連れ去ってしまう。実は彼らは警察ではなくて、連続少年誘拐犯。4日間監禁されたベイブは自力で脱出するのだが、それ以来ジミー、ショーン、ベイブたち3人の関係は疎遠になっていた。
 そして25年の時を経て、ヤクザ稼業をしていたジミー(ショーン・ペン)は堅気になって小売店で店長をして働いている。しかし、ある日のことジミーの愛娘ケイティ(エミー・ロッサム)の惨殺された死体が発見される。よりによってこの殺人事件を捜査することになったのが、今は殺人課の刑事になっているショーン(ケビン・ベーコン)。そして、あろうことか殺人の容疑者として捜査線上に浮かび上がってきたのがベイブ(ティム・ロビンス)。殺人事件を切っ掛けにして再会した幼馴染みの3人だったのだが、とんでもない運命に導かれてしまい・・・

 25年ぶりに旧友に出会うことを楽しみにしていたプチ同窓会のような気分になる映画、と言うのは嘘。過去のトラウマ、後悔に責められて前進できない大人達がいる。時々、いつまでも過去に囚われてないで前に進め!なんてアドバイスしている人を見かけたりするが、俺に言わせれば余計なアドバイス。一度背負った重い十字架は決して一生消すことができないということを本作を観てたらよく理解できる。この仲良く遊んでいた3人も、子供の頃の起きた忌まわしい過去が消えない限り、再び友情が戻ることはないのと一緒。決してあの頃には戻れないし、一度失敗したら取り返せない人生の厳しさを思い知らされるし、甘い言葉をかけたぐらいでは過去に受けた傷は決して消せない。
 しかし、この映画を観ていたらなぜ犯罪が起きてしまうのかが少しわかった気になる。本作で描かれているのが嘘、疑惑、コミニュケーション不足が招く世界。それは、映画の世界だけではなく、この現実の世界も一緒のこと。俺の身近でも嘘をつきすぎて、自己保身のために更に見苦しい嘘を重ねたり、自分の飲み代を浮かすためにピンハネ、横領をしているために何処からかイカさまをしてカネをパクっているんじゃないかとソイツに対して更に疑惑が深まったり、他人の親切なアドバイスをシャットアウトして自己中で独裁者のごときやりたい放題の馬鹿がいる。こんな人間が偉そうにモラルを語るんだから、そりゃ~犯罪が起きてしまう。住みやすい場所の町づくりを始めるためには、こんな奴を生み出さない環境整備をすることが条件の一つに挙げられるだろう。
 しかし、この映画が凄いのは人間描写が優れていること。あり得ないような偶然の積み重ねは、リアリティゼロの内容に思えたりするが、主要の3人の登場人物は勿論のこと、それ以外の脇役に至るまでキャラクター設定がしっかりしているおかげで重厚な人間ドラマを見ることができる。
 25年前の出来事、25年間に起こっている最中、そして25年後の現在を通して、贖罪、十字架、家族愛、復讐、後悔、怒り、憎悪、裏切り、嘘、時間の経過、犯罪社会を描き切ってしまうクリント・イーストウッド監督の凄さを感じ、そして最も彼の特徴が色濃く出ている映画だろう。そして、後味の悪さがずっと残るがほんの少しの小さな希望が描かれているのが良い。これだから理不尽な出来事に遭っても強く前を向いて行こうと思える。
 単純明快な映画に飽きた人、いつまでも余韻が残る映画が観たい人、しばらく深~い悩みに陥りたい人、人生の厳しさを知りたい人、自分は世界で一番不幸だと思っている人等に、今回はミスティック・リバーをお勧め映画として挙げておこう。

ミスティック・リバー 特別版 〈2枚組〉 [DVD]
ショーン・ペン,ティム・ロビンス,ケビン・ベーコン,ローレンス・フィッシュバーン
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 監督は名匠中の名匠であり今でも積極的映画を撮っているクリント・イーストウッド。お勧め映画が多数。今回は彼にしては余裕綽々のミュージカル映画ジャージー・ボーイズ、比較的最近の作品で今まで何の役に立っていない人生を送ってきたと嘆いている人には勇気づけられる15時17分、パリ行きをお勧め映画として挙げておこう。

 

 
 


 
 

  
 

 

 



 





  
 

 

 

 

 


 

 
  
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映画 息子のまなざし(2002) オッサンと少年の微妙な交流を描く 

2018年12月04日 | 映画(ま行)
 社会のド底辺で暮らす人々を描き続けるベルギーの至宝ダルデンヌ兄弟監督。その作風は台詞は少ない、画面がブレる、ドキュメンタリータッチ、いっさい音楽がない(最近はそうでもないが)等。ハリウッドの超大作を見慣れている人には全く面白くないような映画を撮り続けているが、今や世界を代表する名匠として注目されている存在だ。
 そんな彼らの個性が特に出ている作品が今回紹介する息子のまなざし。ストーリーは静かに進み、殆どのシーンが不細工なオッサンのドアップばかりなので観ていて苦痛に感じる人が多いだろう。前半はオッサンが部屋を出入りしたり、階段を上ったり下りたりするシーンばかりで、しかも説明なんか全く無いので観ていて何が何だかわからない。しかし、このオッサンの一言を切っ掛けにがぜん盛り上がる。それでもストーリーのテンポは変わらないのだが。

 早速だがまるで冴えないオッサンと、訳ありの少年の静かだが奥の深い交流を描いたストーリーの紹介を。
 表情は暗く、ユーモアの欠片も感じさせないオリヴィエ(オリヴィエ・グルメ)は職業訓練学校で大工仕事を教えている。ある日のこと、フランシスという少年が大工仕事を希望して入ってきたのだが、彼の履歴を見たオリヴィエは手一杯であることを理由に断る。
 フランシスは溶接の方に回されるのだが、注意深く彼を見ていたオリヴィエは急に心変わりをしてフランシスを大工仕事の方で引き受けることにした。実はオリヴィエとフランシスの間には驚く因縁があったのだ・・・

 それにしても何でこのオッサンはこんなに暗いのか!その理由を明快に知らされた時に観ている我々をショックのどん底に叩き落とす。そりゃ~、誰だってこんなオッサンの状況になったらニコニコなんかしてられない。そしてこのオッサンと少年が二人きりで車を走らせながら、オッサンが少年に短い会話をしかけるが、大して盛り上がらないのにチョットばかりスリルを感じたのは何故だろう。
 そして観終わった後は、色々なテーマが隠されていることに気づく。人間は他人をどこまで許せるのか、復讐の是非を我々は問いかけられる。更に、大して明るい未来が見えなさそうな社会的な弱者に対して優しさを感じさせるのが良い。この先も大きな悲しみを背負って生きる人間、そしてこの先も罪を背負って生きる人間に少しの希望を感じさせる。
 そして、ダルデンヌ兄弟監督の作品の特徴でもあるのだが、中途半端で終わるようなエンディング。いきなり終わってしまう印象があるが、観ている人に色々な感情を思い起こさせるエンディングだ。そして、何だかド素人が撮ったような映像に見えたりするが、実は大工道具が非常に色々な役割、メタファーを感じさせる映画だったことに気付いたときに、この映画の凄みが多くの人に理解されるだろう。
 ダルデンヌ兄弟監督作品と聞いて心が躍る人、ド派手に感動する映画よりもシミジミと後から感動がくる映画を観たい人、音楽が全く流れない静かな映画を観たい人等に今回は映画息子のまなざしをお勧めとして挙げておこう。

息子のまなざし [DVD]
オリヴィエ・グルメ,モルガン・マリンヌ,イザベラ・スパール,レミー・ルノー
角川書店


 監督は前述したように今や世界的に名匠として知られるジャルデンヌ兄弟。個人的に非常にお気に入りの監督さんで、社会派作品の映画が好きは人はハマる人もいるだろう。父親の駄目っぷりが描かれているある子供、国籍売買が描かれているロルナの祈り、どうしようもなさそうな少年を描いた少年と自転車がお勧めです。

 
 

 
 
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映画 水の中のナイフ(1962) ロマン・ポランスキーの長編映画デビュー作

2018年10月25日 | 映画(ま行)
今や巨匠中の巨匠であるポーランド人であるロマン・ポランスキー監督。彼のデビュー作品である祖国ポーランドで撮った唯一の映画になるだろう映画が今回紹介する水の中のナイフ。登場人物がたったの3人しかいないし、舞台は殆どがヨットの中か上。極めて閉塞感を感じさせる映画だ。
 タイトルだけから内容を想像すると怖いシーンがあるのかと思ってしまいそうだが、そんなシーンは俺が見たところ全く無いように思えた。むしろ本作が描いているのは格差及び差別社会を描いたストーリー。経済格差、男女の差、世代間の差などが、たったの3人の登場人物しか出てこない中で描いている。
 
 週末になるとヨットで船出するぐらいの裕福な夫婦、そしてお金を持っておらずヒッチハイクをしている若者。そんな3人の中で最も欺瞞に満ちた人間をあぶり出すストーリーとは如何なるものか。
 年齢差はあるが裕福な夫婦である夫のアンドジェイ(レオン・ニェムチック)と美しい妻クリスチナ(ヨランタ・ウメッカ)は週末の休日を利用して、ヨットでクルージングするために車を走らせていた。
 運転中に若者(ジグムント・マラノウッツ)が飛び出してくる。この若者はヒッチハイクしており、アンドジェイ(レオン・ニェムチック)は少々気分を害しながらも若者を乗せ、しかもヨットにも乗せて3人でクルージングをすることになる。
 しかしながら次第にアンドジェイ(レオン・ニェムチック)と若者の間には溝が生じてくる。そして、クリスチナ(ヨランタ・ウメッカ)と若者の仲を疑い出したアンドジェイ(レオン・ニェムチック)は、若者の唯一の所有物であるナイフを海の中へ捨て、若者もナイフに気を取られて海へ落ちてしまい・・・

 最初は社会的地位もあり、ヨットを扱うことに長けており、偉そうにしていたアンドジェイ(レオン・ニェムチック)だが、若者が海へ落ちて姿が見えなくなってから、ダメっぷりを見せる。実はこの映画は前半は大して面白いようにも思えないのだが、ナイフが海の中へ落ちてからが面白い。
 特に説明はなかったのだが、この夫婦の結婚生活が夫が必要以上に自分を偉そうにしていたことがわかる。しかし、ダメっぷりがバレてから完全に主導権は妻の方に移る。最後の車の中での夫婦の会話において完全に立場が逆転してしまったことがわかるエンディングが非常に巧みだ。
 この映画の製作当時のポーランドは共産党の一党独裁国家。このような格差を描いた映画は自国では受けなかったが西側諸国においては受けた。むしろ何かと格差社会の問題を言われる現代の方が受け入れやすい内容。ポランスキー監督が本作を最後に西側諸国へ飛び出して映画を撮り続けているのも当然の成り行きだろう。
 タイトルから想像できるようにナイフが扱われるシーンが多いが、まさに若者を象徴していることが理解できる。当時弱冠30歳に届くか届かないかの年齢だったポランスキー監督自身を象徴しているのかもしれない。
 陰影のあるモノクロの画像は非常に印象的であるし、狭い空間でのブレのないカメラワークもポランスキー監督らしさが既に感じられる。また女優のヨランタ・ウメッカが美人なだけでなく、メガネフェチを喜ばせる。
 ロマン・ポランスキー監督のデビュー作品と聞いて心が躍った人、一度見たことがあるが何が言いたいのか意味がわからなかった人、何だかハッキリしない抽象的な映画を好む人・・・等に今回は映画水の中のナイフをお勧め映画として挙げておこう

水の中のナイフ [DVD]
レオン・ニェムチク,ヨランタ・ウメツカ,ジグムント・マラノヴィチ
角川書店


 監督は前述したようにロマン・ポランスキー監督。一番有名なのは戦場のピアニストだが、それ以外にもホラー、サスペンス、文芸作品と多くの分野において傑作が多数。お勧めはホラー映画のローズマリーの赤ちゃん、ジャック・ニコルソン主演のハードボイルド映画チャイナ・タウン、ジョニー・デップ主演の知的ミステリーの雰囲気を感じさせるナインスゲートが良いです。




 

 
 
 
 

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映画 マレーナ(2000) これぞモニカ・ベルッチのお勧め映画です

2018年08月28日 | 映画(ま行)
 今や53歳になったモニカ・ベルッチことベルッチ姐さん。2017年の世界で最も美しい顔ランキング100(女性)で未だに100以内に入っているベルッチ姐さん。50歳を超えてランキング入りしているのは勿論彼女だけ。イタリアの宝石と呼ばれるその美しさは50歳を超えても妖しく輝いている。何と言っても50歳代初のボンドガールを演じて、何時までもくよくよしているダニエル・グレイグ演じるジェームズ・ボンドをベッドで癒しを与えた。ア~、俺も癒されたい。
 そんなベルッチ姐さんの魅力が爆発しているのが今回紹介する映画マレーナ。舞台となるシチリア島の美しさもベルッチ姐さんの神秘的にさえ感じる美貌、そしてデカいオッパイ、いかしたお尻、ムチムチのエロボディの前には、彼女を引き立てる小道具にしか過ぎない。もっと世界中の人がベルッチ姐さんの素晴らしさに気づけば、世界は平和になるはずだ。

 さて、肝心の内容だが、12歳の少年がベルッチ姐さんを初めて見た時の美しさの感動のあまり、オナニーはするわ、ストーカーはするわ、彼女のパンティは盗むわ、彼女の家の中は覗くはで、犯罪レベルのエロエロ少年になってしまうストーリー、なんて言ってしまえば元も子もない。しかし、そんな少年でも立派に成長する青春物語だ。
 ベルッチ姐さん演じる主人公は27歳だが、12歳の少年が大人の女性の魅力にハマっていくことにまずは驚いた。俺が12歳の少年の時って、まだ10代のアイドルだった柏原芳恵ちゃんが好きだったことを考えれば、外国の少年の美しき女性を見る目の肥えていることに、レベルの違いを痛感してしまった。

 話が脱線ばかりしているが、それではちょっとエッチだけれどチョッピリ切なくなるストーリーの紹介を。
 1940年、第二次世界大戦中のイタリアのシチリア島が舞台。新婚ホヤホヤのマレーナ(モニカ・ベルッチ)だったが、結婚して2週間後に夫は戦場に行っており、今は独りで暮らしている。とにかくマレーナの美貌は凄い。彼女が歩いているだけで男性は少年から老人まで全員が振り向き、「いいケツしてるな~」等、ひそひそ話し合っている。一方、女性の方だが嫉妬からマレーナに反感を持っている。
 ある日のこと、自転車を買ってもらって喜んでいた12歳の少年レナート(ジュゼッペ・スルファーロ)は、マレーナを初めて見て更に大喜び。それ以来レナート君の頭はマレーナのことしか考えられないでいた。次第にシチリア島にも戦火の炎が近づいてくるが、戦争に行っていたマレーナの夫が戦死したとの連絡が村中に伝わってしまい・・・

 何度も書くがベルッチ姐さんが素敵すぎる。彼女が周りに流されることなく表情を変えずに歩き、そして殆ど喋らない。これが俺から見ればベルッチ姐さんの神秘性を高めているような気がした。レナート君はまだ12歳の少年なのに、ストーカー行為にはまってしまい、これは気持ち悪いぐらいのエロ親父に一直線に向かっていくように思えて心配した。しかし、彼はストーカー行為をしていたことが、結果的にだがマレーナの一番の理解者になっていった展開に説得力があった。
 途中でマレーナがボロボロになっていくが、戦争とは高貴で美しい物を破壊してしまうということが大いにわかるし、男というのは女性のエロさに接して成長するんだということがよく理解できる。
 モニカ・ベルッチの素晴らしさを知りたい人、少年の成長物語が好きな人、ちょっとエロい映画を観たい人、男というのがどれだけ馬鹿なのか知りたい人・・・等などに今回は映画マレーナを紹介しておこう。

マレーナ [DVD]
ジュゼッペ・トルナトーレ
日活


マレーナ [Blu-ray]
モニカ・ベルッチ,ジュゼッペ・スルファーロ
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督は今のイタリア映画界で孤軍奮闘している感じすらあるジュゼッペ・トルナトーレ。あの名作ニュー・シネマ・パラダイスの監督さん。他にも船から一歩も降りたことがない不思議な主人公を描いた海の上のピアニスト、残虐なシーンが多いサスペンスですが観終わった後に大きな感動が得られる題名のない子守唄、そして名優ジェフリー・ラッシュ主演のミステリー映画鑑定士と顔のない依頼人がお勧めです。
 
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映画 三つ数えろ(1946) レイモンド・チャンドラー原作です

2018年07月09日 | 映画(ま行)
 有名な推理小説作家であるレイモンド・チャンドラーの『The Big Sleep(大いなる眠り)』を原作とする映画化作品が今回紹介する映画三つ数えろ。ちなみに邦題の『三つ数えろ』だが、たびたび出てくるシーンで、拳銃を相手に向けながら「三つ数えるまでに、吐かないと撃つぞ!』という脅し文句の台詞からきている。本作は1946年の古い映画だが昔の映画はたまによくできた邦題を目にすることがある。
 原作者であるチャンドラーが創りだした私立探偵フィリップ・マーロウが主人公が活躍するシリーズの推理小説だが、本作以外にも色々と映画化されフィリップ・マーロウを演じた俳優も多いが、何だかんだ言っても、やはり格好良いのはハンフリー・ボガードが演じるフィリップ・マーロウ。それは渋い中年の男性の魅力をまき散らし、世の中に蔓延る凶悪犯に対しては徹底的に追い込み、どんな時でもユーモアを忘れず、そして女性には優しい。これがハンフリー・ボガードが演じるフィリップ・マーロウの印象だ。ふと思ったのだが、このキャラクター設定はまるで俺とソックリなので驚いた。

 さて、例の如く難事件に立ち向かう私立探偵フィリップ・マーロウが活躍するストーリーの紹介を。
 私立探偵フィリップ・マーロウハンフリー・ボガード)は大富豪のスターンウッド将軍から、ある依頼を受ける。その内容とはスターンウッド将軍には今は亡き妻との間に2人の美人姉妹がいるのだが妹のカルメン(マーサ・ヴィッカーズ)が博打の借金を背負っていることを理由に、ガイガーと言う男から脅迫されているので、ガイガーを自分から遠ざけて欲しいということ。そして更にスターンウッド家には将軍のお気に入りの用心棒であり、マーロウとも知り合いであるリーガンが消息不明になっていることを知らされる。そして、マーロウは依頼を引き受けてスターンウッド家を出ようとすると、めちゃくちゃクール美人の姉であるヴィヴィアン(ローレン・バコール)に引き止められ、父親のスターンウッド将軍からの依頼内容を詮索される。
 スターンウッド将軍の2人娘が両方とも美人であることにテンションが上がったマーロウは早速ガイガーの後を付けることに成功。しかし、一瞬のスキにガイガーが何者かに撃たれて殺害されてしまい・・・

 よくサスペンス映画を観ていると、登場人物と名前が一致しなくて必死で頭の中を整理しているうちに、何が何だかわからないうちに終了~、なんてことがよくある。実は本作も最初からかなり気合を入れて観ないといけないタイプの映画。色々な人物が何気なく登場したと思っていたら直ぐに殺されたり、悪そうな奴が立て続けに出てきたり、綺麗な女性4名ほど出てくるが、みんなストーリーに関係があったり、観ていて大変。しかも、最初は一つの事件を追っていけば良いのかと思っていたら殺人事件が次々に起こってしまい、これらが色々と絡みあったりするので、頭の中でストーリーの整理をしながら映画を観ることになるので、普段から脳みそを使い慣れていない人は本当に大変だ。
 まるで同時進行で複数の事件が起きているような印象があるが、そんな込み入ったプロットも、ラストで一発解決。なんだ俺が騙されているような気がするが、一網打尽で悪人をやっつけるダイナミズムを感じさせる終わり方が本当に素晴らしい。そして、男は女性には優しくしなければならないことが、よくわかる有難い映画だ。
 そしてこの映画は冒頭の入りが凝っている。煙草を吸っている男女のシルエットが描かれているが、なんだかゾクゾクさせる素敵なシーン。映像の力は小説を超えていることを証明しているシーンだろう。
 そして、ハンフリー・ボガードの台詞が女性をナンパするのに使えそうなのが良いし、気の利いたユーモアの使い方も勉強になる。また、女性が観てもローレン・バコールの美しさや仕草から、ファッションセンスや男性を惹きつける方法がわかるだろう。
 かつてのハリウッドの大スターであるハンフリー・ボガードの名前を聞いて心が躍る人、昔のハリウッドの女性の美しさを知りたい人、一度観ただけで登場人物と名前が一致するほど記憶力が抜群に良い人、ストーリーが複雑であればあるほど興味が出てくる人、2回続けて観ても良いかと思えるほど時間に余裕のある人・・・等に今回は映画三つ数えろをお勧め映画として挙げておきます

三つ数えろ 特別版 [DVD]
ハンフリー・ボガート,ローレン・バコール,マーサ・ビッカーズ
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督はハリウッド黄金期を支えた巨匠ハワード・ホークス。コメディからサスペンス、アクションまで幅広い分野に傑作を遺している監督。傑作西部劇リオ・ブラボー赤い河、空が大好きなパイロット達を描いたコンドル、腹を抱えて笑える赤ちゃん教育などがお勧めです。 

 

 
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映画 メッセージ(2016) SF映画だけの範疇にとどまらない

2018年06月11日 | 映画(ま行)
宇宙人と人類のコンタクトを描いているSF映画が今回紹介するメッセージ。本作における宇宙人と人類のやりとりを見ていると、地球上でも起きていることが示唆されているような気がする。文化、伝統、民族、言語の違いが地球上では争いのネタになっているが、ただ『う~』とだけ響くような音を発するような宇宙人の言語を理解しようとする難しさが本作から多いに伝わってくる。そして言葉が理解できなかったり、相手の言語の特徴がわからなかったりしてお互いの意思が疎通できない時、一発触発の戦争の危機に陥るわけだ。今や世界がグローバル社会からナショナリズムの社会に向かいつつあるが、そういう意味でメッセージは現代的なテーマを描いている。

 しかし、確かに宇宙人が地球にやってきた理由を調べる過程も面白いが、それ以上に興味が惹かれるのが女性主人公が普通の人間では到達できない心境に達してしまうところ。実はこの映画はアメリカ本国でのタイトルはメッセージではなくてArrival(到達、到着の意味)。確かに宇宙人から人類に警鐘をならすメッセージも非常に重要だが、そんなことよりも女性主人公が知りたくもないような有難迷惑な心境に達してしまうことに驚きと感動を覚える。

 さて、SF映画として観るよりも人間ドラマとして観る方が深く感動できるストーリーの紹介を。
 ある日のこと、世界各地に十二機の巨大な宇宙船が現れる。これらの宇宙船が地球にやって来た理由を探るためにアメリカ政府から女性言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)と物理学者であるイアン(ジェレミー・レナー)が応援を要請される。
 彼らは宇宙船の中に入っていき、宇宙に乗っている異星人に恐々として会いに行くが、なんと目の前に煙のようなものの中から現れたのはひょっこりはん、と言うのは冗談。今まで見たことのない七本足のタコ状の異星人が二体現れる。
 彼らが地球にやって来た目的を知るために、タコ足星人の言語を理解しようとするのだが地球上の言葉とは色々と異なる点があり、もう一つ理解できない。しかも、ルイーズは結婚もしていないのに、まだ見たことのないはずの我が娘に起こる恐ろしい出来事がフラッシュバックのように脳裏を駆け巡ることに悩まされるようになり、研究がなかなか進まない。
 そして、そうこうしているうちにタコ星人を敵と見なした各国(中国を筆頭にロシア、スーダン)の軍事リーダーが軍事行動の準備に入り、アメリカ政府も同調して軍事準備を進めることになってしまうのだが・・・


 この宇宙船は何のために地球にやって来たのか?そもそもこのタコ足星人は侵略者なのか、味方なのか?そんな謎と恐怖を感じながら我々は観るわけだ。しかし、この映画は冒頭から伏線を張りまくり、観ている者をミスリードに導くような演出もなされていて、サスペンス映画を観ているような気分になる。凝ったストーリー構成の巧みさと、伏線を回収していく作業がクライマックスで大いに効いてくるのだ。タコ足星人が墨汁のようなものを噴射して描き出す文字がなぜ円形状なのかを考えれば面白いし、表面的な言語のやり取りだけでは相互理解が難しいことがよく理解できる。

 そして、現在の自分に置かれた状況に絶望してしまっている人がいるが、この世の中には更に将来にたいしても希望が持てない人がいる。そりゃ~、そうだ。アメリカは民主党から共和党の大統領に変わっても、色々と問題がドンドン山積みのように増えていくし、どんな経済政策を打ち出しても格差社会は拡がったまま。日本だってそうだ、政権が代わり総理大臣が変わって五年が経っても、懸念されている外交問題は何にも解決していないし、経済も株価が上がっただけで中小企業なんかは生き残りに必死。もしかしたら経済格差はさらに拡がったんではないか?アメリカや日本だけでなく世界中がそうだ。米ソ冷戦時代が終わり、これでもう戦争が起きる心配が無くなったと思ったら今では中国の軍事的膨張、テロリストの多発など、世界的に希望のある未来への見通しが立たないどころか、不安さえ感じる。
 しかし、そんな未来に対して希望の持てない人に本作は癒しを与えてくれる。進んでも地獄、退いても地獄そんな時にどのような判断を下せばいいのか?そのことは本作で具体的にラストで述べられているし、女性主人公が降す覚悟の選択に大いに感動できるのだ。まあ、男性の俺にはあのような選択は無理だな。それにしてもこの映画は本当に色々なテーマを内包している。異文化交流、コミニュケーション、言語学、時間、家族愛・・・等。

 そして主演女優のエイミー・アダムスや他の俳優も演技が安定しているし、音楽がまた良い。そして、程よく脳みそを使わせる展開も良い。もしかしたら既に観た人の中には、つまらなく感じる人もいたと思うが、そんな人でも再度観ることにチャレンジしたら本作の凄さに色々と気づけるはず。
 今まで俺が観てきた映画の中でも名作に入るぐらいの傑作、多くの人にお勧めとして今回は映画メッセージを挙げておこう

メッセージ [DVD]
エイミー・アダムス,ジェレミー・レナー,フォレスト・ウィテカー
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント



 これが原作本です
あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)
公手成幸,浅倉久志,古沢嘉通,嶋田洋一
早川書房


監督はあのカルト的ファンを持つブレードランナーの続編であるブレードランナー 2049に抜擢されたカナダの俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴ。彼のお勧めはびっくりな結末が見られる灼熱の魂、父の日に見せたくなるプリズナーズ、なんだか微妙なラストシーンに思わせる複製された男、麻薬王と捜査官の戦いを描いたボーダーライン。今のところ俺が観た映画の中では外れ作品がない。今後も注目の監督です。






 
 



 

 
 
 

  
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映画 皆殺しの天使(1962) 金持ちのダメっぷりが笑える?

2017年09月24日 | 映画(ま行)
 シュールレアリズムの巨匠サルバトーレ・ダリの盟友にして、映画界において鬼才ぶりを発揮してきたルイス・ブニュエル監督。チョイチョイ問題作を連発してスペイン、フランス、メキシコ等を渡り歩いて映画を撮り続け、名作、迷作、珍作を連発しているが、そんな中でも今回紹介する皆殺しの天使はメキシコ時代に撮った名作であり、とことん不条理を追求した珍作だ。

 豪邸に集まった金持ちの大人たちが、帰りたいのに部屋から一歩も出られない様子を描いた密室劇風の展開が繰り広げられる。立派なスーツを着た男性と、豪華にドレスアップした女性が何日間も閉じ込められたような状態で、次第にボロボロになっていく。それにしても、彼らはなぜ帰ろうとしないのか観ていて誰もが不思議に思うはずだ。
 拉致されて監禁されているわけでもなく、豪邸全体の外から頑丈な鍵が掛けられているはずもない。しかも、豪邸の外には警備員や野次馬がいるが、彼らとて中に人が居るだろうと思いながら、救出しようとするわけでもなく、興味深く外から見ているだけ。

 さて、金持ちの男女は如何にして豪邸から脱出するのか~!?と言うよりも、立派な身なりをした大人が右往左往する様子が何となく可笑しい気分になるストーリーの紹介を。
 豪邸から執事を残して、使用人や給仕たちが次々と去って行く。それと前後するようにオペラ鑑賞を終えた貴族風のご一行が男女で20名ぐらい、夫妻のお招きでやって来た。
 彼らは料理を口にしながら歓談し、ピアノ演奏を楽しんだりするのだが、時計の針が12時をとっくに過ぎても誰も帰ろうとしないし、なぜか誰も帰れない。
 しかも、そんな状態が数日続き、激しい疲労、飢え、渇き、エロに襲われた彼らは醜悪な争いを繰り広げ、死人まで出てしまう始末。ところがその中のある1人が、フトしたことからこの困難な状況から脱出する方法を思いつく・・・ってアホか(笑)

 日頃、衣食住に対して何の感謝もしていない金持ち達から、それらを取っ払うと果たしてどうなるのか?いつもは横柄にしているお金持ち達のダメっぷりが明らかにされていくのが面白い。
 さっさと家に帰れば良いのに帰れない金持ち達の頭の中の構造が理解できないし、実際に本作を観ていても帰ることが出来ない理由がハッキリと明かされているように俺には全く思えなかった。

 しかし、この映画は他にも不思議なシーンや想像力を掻き立てるような場面が多い。なぜ、豪邸で働いていたお手伝いさん連中は、金持ち連中が来る前に早々と出て行ったのか?なぜ熊と三匹の羊が飼われているのか、外の野次馬たちは何を意味するのか・・・等々。
 それにギャグが古いのか、俺に笑いのセンスが悪いのか、笑いたくても笑えないシーンが多く出てくる。料理を持ってくる人が豪快にずっこけたリ、軽い下ネタだったり、金持ち連中のアホさだったりがブラックジョーク過ぎて、俺は笑うことができなかった。
 そして、ラストにおける教会に羊が逃げ込んだり、教会の外で警官達が一般市民に向けて無差別に発砲していたり、何かと意味深な場面も多い。
 個人的には、お金持ち同士が狭い空間でアホなことをしているのが、後から笑えてきて大好きな映画。けっこう登場人物が多く、顔と名前一致せず、こいつの職業は何だったけ?と悩んでしまうのが、観ていてシンドイという欠点はあるが、これも監督の策略かと思えてしまう。

 チョッとばかしシュールな映画を観たい人、ちょっと見ただけで顔と名前と職業が一致するぐらい記憶力が良い人、金持ちの人を見ると嫉妬に駆られる人、どうなってんだ~、コレ?と思うような映画を観たい人に、今回は皆殺しの天使をお勧めとして挙げておこう

皆殺しの天使 HDマスター [DVD]
シルヴィア・ピナル,エンリケ・ランバル,ルシー・カジャルド,エンリケ・G・アルバレス
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督はルイス・ブニュエル。変な映画が多いが真面目な作品もあったりで、その作風はかなり幅広い。映画史に残る目ん玉を剃刀で切るシーンで始まるアンダルシアの犬、カトリーヌ・ドヌーヴ主演のアホ映画昼顔、メキシコの貧困を描いた社会派映画忘れられた人々、本作と同じくブルジョワを皮肉ったブルジョワジーの密かな愉しみ、美女の二人一役という珍しいパターンの欲望のあいまいな対象等、お勧め映画多数です。 

 
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映画 無防備都市(1945) イタリアネオリアリズモの傑作です

2017年07月02日 | 映画(ま行)
 第二次世界大戦後にボロボロになってしまったイタリアだが、逆にそのことを利用してドキュメンタリータッチの手法、素人の起用などでネオリアリズモと呼ばれる傑作が次々と生まれたイタリア映画。そんな中でも今回紹介する映画無防備都市は代表的作品だ。
 俺が思うに本作を含めて1940年代末から1960年代にかけてのイタリア映画は全盛期であり最強だ。最近のイタリア映画は本当に面白くないからなのか、内容がどうしようもないからなのか本当に見かけない。

 実は本作は1945年の映画で、第二次世界大戦が終わりイタリアが解放されてからまだ間もない時に製作された。まだ民衆にファシズム、ナチスの恐怖から完全にぬぐい去れていない時期のはずだが、内容はナチスに対するレジスタンス達の戦いを描いている。その内容もしかりだが、モノクロの映像を通して生々しい緊迫感が伝わってくる。
 本作がどのくらい傑作かというと、あの大女優イングリッド・バーグマンがこの映画を観て、夫と子供を捨てて、本作の監督であるロベルト・ロッセリーニのもとに走ったぐらいだ。
 
 さて、ナチス配下の秘密警察であるゲッシュタポの残忍性が際立って描かれ、そして不屈のレジスタンス達の苦闘を描いたストーリーの紹介を。
 ナチスの支配下にされてしまったローマにレジスタンスの指導者であるマンフレディが資金集めのためにやってくる。しかし、すでにマンフレディはゲッシュタポから狙われており、マンフレディは同志のフランチェスコのお宅を隠れ家にする。自分で身動きできないマンフレディは神父のドン・ピエトロに資金配送を頼んでいた。
 しかし、彼らの行動はなぜかゲッシュタポに筒抜けになる。神父ドン・ピエトロの手引きでマンフレディを別の隠れ家へ連れて行こうとするのだが・・・

 舞台はカトリックの総本山のおひざ元であるローマなのに戦争の状況では神の祈りでさえ全く通じない。レジスタンス達とその家族に訪れる運命は悲惨な出来事ばかり。
 結婚式の日に、ゲッシュタポに捕まったフランチェスコを追いかける婚約者のピーナ(アンナ・マニャーニ)が、背後からナチスに撃たれて射殺される場面は名シーンであり、よく映画のポスター等で見かける。
 口を割らすまで徹底的に拷問するシーンは、ナチスの非情さを際立たせると同時に、イタリア民族の誇り、信念の強さをまざまざと見せつける強烈なシーン。その時に神父がひたすら祈り続ける姿に涙する。
 『立派に死ぬことは難しいことではない、立派に生きることが難しいのだ』なんて素敵な台詞を言ったかと思うと、神に仕える者らしく慈悲の心を示す神父ドン・ピエトロの結末、そして最後の子供たちの姿。救いようのない世界にほんのわずかな希望を感じさせるシーンが最後に見れる。
 
 古い映画、モノクロ、イタリア映画と聞くと、それだけで退屈しそうで敬遠されそうだが、実際は最初から惹きこまれる映画。まだ生々しい傷跡が残るローマが描かれているだけに、近頃作られる戦争映画なんかよりもリアリティがある。タカ派、ハト派のすべての人に観てほしい映画として今回は無防備都市を挙げておこう

無防備都市 [DVD]
アルド・ファブリーツィ,アンナ・マニャーニ,マルチェロ・パリエロ,フランチェスコ・グランジャケット
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督は前述したロベルト・ロッセリーニ。戦争をオムニバス方式で描いた戦火のかなた、しょぼい詐欺師が英雄としての死を選ぶロべレ将軍がお勧めです。


 
 




 
 
 
 
 
 
  
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映画 未知への飛行(1964) 核戦争の恐怖を描く

2017年04月30日 | 映画(ま行)
 我が国ニッポンのお隣の朝鮮半島ではミサイルを盛んに飛ばすだけでなく、核実験も繰り返し行っている。今や世界で一番の危険区域に日本はあると思うのだが、どうやら我が国民の多くは、日本が核兵器を持つことに対しては大声で反対と叫んでいる割りに、よその国が核兵器を持つことに対しては殆んど非難もしないし、核兵器を力づくで廃止させようとする気など毛頭もないらしい。もはや北朝鮮の暴走を止められるのはアメリカの軍事力だけなのか。
 米ソ冷戦時代においては一歩間違えれば本当に核戦争が起きるような雰囲気があったという。そして当時ハリウッドでは核戦争をテーマにした作品が多く作られた。その中でもスタンリー・キューブリック監督の博士の異常な愛情と今回紹介する映画未知への飛行は双璧をなすだろう。

 さて核兵器を持つことの恐ろしさを描いた内容のストーリーの紹介をしよう。
 米ソ冷戦時代において。アメリカ空軍のグレディ大佐率いる核搭載爆撃機の編隊の巡回飛行中に指令が下される。それは「ソ連の首都モスクワを核攻撃しろ!」。仕方なくグレディ大佐はモスクワに向かうのだが、実はアメリカの軍事コンピューターの誤作動によるミス。早速アメリカ政府は対策を協議するのだが、グタグタしている内にグレディ大佐率いる爆撃機の編隊はフェイル・セイフを超えてしまう。それは大統領が命令しても引き返さないことを意味していた。
 アメリカ合衆国大統領(ヘンリー・フォンダ)がクレディ大佐に命令しても、当然の如く無視して規約どおりにそのままモスクワへ向かう。大統領は核戦争を回避するために、ソ連首相とホットラインを通して対策を練るのだが・・・

 博士の異常な愛情は核戦争の恐怖を悪ふざけのノリで描いていたが、本作は極めて真面目に描いている。ヘンリー・フォンダ演じる大統領なんかは、現在のアメリカ合衆国大統領よりも大統領らしく見える。
 しかし、本作を観ていると核兵器が存在している限り、ヒューマン・エラーだけでなく、あらゆる原因で核戦争が起きてしまう可能性があることに気付かされる。ましてや今や核兵器を持っている国が有数あり、北朝鮮のような狂った独裁者が支配している国も持っていることを考えると、俺なんかは不安で安心して寝られない。
 核兵器が投下されそうになる緊迫感は相当なものだし、ラストではヘンリー・フォンダ演じる大統領の苦渋の選択に驚き、世界を動かすリーダーの責任感の重さを実感させられる。まあ、今観れば何だか違和感のある描写があったりするように思うが、米ソ冷戦の緊迫感の真っ只中に制作された映画として観ると本作の凄さを感じることができるだろう。
 今や何かと油断のならない情勢が日本の近くで起こっているが、だからこそ観ておきたい映画として未知への飛行をお勧め映画として挙げておこう

未知への飛行 - フェイル・セイフ - [DVD]
ヘンリー・フォンダ,ダン・オハーリヒー,ウォルター・マッソー,フランク・オバートン,ラリー・ハグマン
Happinet(SB)(D)


 監督は社会派サスペンスの分野で多くの傑作を遺したシドニー・ルメット十二人の怒れる男セルピコ狼たちの午後ネットワークがお勧め。


 


 

 
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映画 ミュンヘン(2005) 実録スパイ映画です

2017年04月06日 | 映画(ま行)
 1972年にドイツのミュンヘンでオリンピックが行われた。しかし、平和の祭典であるはずのオリンピックに悲劇をもたらしたのがミュンヘンオリンピック事件。イスラエルの選手団11人を黒い九月と名乗るパレスチナ過激派グループが殺害した事件。
 ミュンヘンオリンピック事件の顛末を描くだけでも充分にサスペンスフルで面白い映画が出来そうなものだが、本作はその後のイスラエルの諜報機関モサドの暗殺部隊による黒い九月の幹部に対する報復作戦の様子が実話を基にじっくりと描かれている。
 本作の監督はユダヤ人のスティーヴン・スピルバーグなだけにイスラエルに肩入れした作品になるかと思いきや、意外にもそんな単純なイデオロギーに満ちた映画ではなかった。
 彼が凄いのは一つの事を切っ掛けに多義に渡るテーマを内包した作品を撮りあげてしまうこと。本作が制作された30年以上前の出来事から、祖国、家族、戦争、人間性、復讐・・・といった普遍的テーマを本作品にぶち込んだ。
 しかし、そうは言っても平和ボケした日本人が観れば色々と驚きの場面が登場する。国家公認の暗殺部隊の存在、国を持たない民族の悲劇、各地で繰り広げられるスパイの暗躍など。しかし、驚くといっても世界を見渡せばこんな事はアッチコッチで行われているのは当たり前のこと。この映画の出来事が現実だと思わせない日本って本当に素敵だと感じる。

 実は本作を観ていて最も驚いたのがモサドにに対する俺が持っていた認識の甘さ。古今東西においてモサドが最も優秀な諜報機関であり、そこに属するスパイの連中も一寸のスキもないぐらいストイックで、愛国心に満ち溢れ、特殊能力を兼ね備えていて、うつ病になんかならないと思っていたのだが、意外にも粗だらけ。
 爆弾作りの担当者なんてオモチャを作るのが専門だったり、ハニートラップに引っ掛かる奴がいたり、家族が心配で仕事に集中できなかったり。この辺りは俺が今まで抱いていたモサドのイメージを大きく変えてくれたし、スパイも人間なんだという当たり前のことに気づかせてくれた。

 さて、スパイ映画と言うよりも社会派映画と言った方が正しいストーリーの紹介を。
 1972年のドイツ、ミュンヘンでのオリンピックが開催している頃、イスラエル選手団の宿舎に黒い九月と呼ばれるパレスチナ過激派集団が乱入。成り行きで2人を殺し、残りの9人を人質に立てこもる。彼らの目的はイスラエルの投獄されている200人以上の同志の解放。しかし、西ドイツ側のまずい対応もあり人質はみんな殺害。生き残った黒い九月のメンバーは逃亡してしまう。
 自国民を殺されたイスラエルは決して黙って見過ごさない。ゴルダ・メイヤ首相はモサドの長官を呼び出し、今回の事件に関係した黒い九月のメンバーの幹部11人を報復をするように命令する。モサドはアヴナー(エリック・バナ)をリーダーとする専門知識を持った5人の暗殺部隊を組織し、リストに載ったメンバーを一人ずつ消していくのだが・・・

 暗殺部隊の5人は当初こそは祖国のために正義の行いをやってきたと信じていた。しかし、他人を巻き添えにしたり、リストに載っていない人間を暗殺したり、挙句の果てに逆に自分の命を狙われたりするうちに、本当に自分のやっていることは祖国のためにしていることなのか?と次第に疑問を抱き始める。
 なんせ現在においても自国民を殺している独裁者を消し去っても、新たにさらにひどい暴君が誕生したり、テロリストの温床になってしまっているのは誰もが承知していること。本作においてもそんな矛盾に悩んでいる様子が描かれている。
 銃撃戦や爆発の激しさは目を見張るものがあり、エログロもあり2時間半を超える長い映画だが全く退屈させない。しかも、色々と深読みのしがいのあるテーマが隠されているのだから、大人の観賞にもってこいだ。
 イスラエルという国に興味のある人、スパイについて詳しい人、スリルを求めている人、なぜ中東は争いが絶えないのか知りたい人等には特にお勧めできる。
 数々の名作、傑作、楽しい映画を遺してきたスピルバーグ監督作品の中でも上位の部類に入る優れもの。まあ、結局のところ高校生以上の人ならばお勧めということで今回はミュンヘンをお勧め映画として挙げておこう

ミュンヘン スペシャル・エディション [DVD]
トニー・クシュナー,エリック・ロス
角川エンタテインメント


 監督は前述しているように今や巨匠としての貫禄もあるスティーヴン・スピルバーグ。誰もが知っている映画ばかりですが、個人的には彼の作品で最も好きな映画としてアミスタッドをお勧め映画として挙げておこう。





 
 

 
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映画 メメント(2000) 時系列が逆向きで進みます

2017年04月05日 | 映画(ま行)
 アイデアは斬新で、主人公のキャラクター設定はありそうであまり見かけないタイプの人間で、次から次へと謎が出てくる楽しい映画が今回紹介するメメント
 本作の構成は時系列が逆向き、いきなり結論から始まって最初の頃に戻ってくる珍しいパターンの映画。ちなみに映画は撃たれて死んでいる男がうつぶせに倒れている場面から始まる。
 そして主人公の男のキャラクターだが、記憶障害を患っている。これだけなら多くの映画でも見られるが、その度合いがかなり酷い。記憶が保てるのがたった10分だけ。つい先ほど出会った人物のことをまったく覚えていないのだから生活するのにかなり支障をきたす。
 最近なんだか俺もAKB48のメンバーを見ても顔と名前が一致しなくて悩んでいたのだが、俺の悩みなんかちっぽけなものだということに本作を観ていたら気づいた。
 この男のハンデは致命的に思えるが、それを克服しているのが反復行為をしっかり身につけていること。出会った人物、重要な場所、物などは必ずポラロイド写真に撮って収め、名前や重要なことは必ずメモに残す。しかも、その残し方がハンパではなく、超重要事項は自分の身体に刺青として残しておく徹底ぶり。おかげでこの男の首から下は刺青のメモだらけ。
 俺はよく仕事中にメモをとりなさいと指摘されることが多いが、この男を見ているとメモをとることの重要さにきづかされた。

 それではネタバレ厳禁のタイプの映画なので、いつも以上に気をつかったストーリー紹介を。
 ある事件を切っ掛けにレナードは(ガイ・ピアース)は、その前のことはしっかり覚えているが、それ以来10分間だけしか記憶を保てない深刻な記憶喪失に陥っている。忘れてもいいように出会った人物の顔、場所の写真を撮りまくり、メモをのこす。そして彼の身体に刻まれた「ジョン・G」という名前。レナードは自らの目的を遂行するために、ジョン・Gを探すべくアッチコッチと動きまくるのだが・・・

 わずかな時間しか記憶がもたないって苦労するから可哀そうだよな~なんて思いながら見てたら、本当に可哀そうなのは物忘れが激しいことを良いことに悪人から利用されてしまっていること。麻薬、身代わり、金絡みといった悪企みに巻き込まれている様子が気の毒になるぐらいなのだが、不幸中の幸いというか俺の心配をよそに彼は自分が利用されていることを全く覚えていないのが、チョッと笑える。
 しかし、観ている最中は次から次へとネタを提供してくれるので頭の中がフル回転状態。一つネタが出てくるたびに、すぐにネタを明かしてくれるパターンだったら単純なのだが、答えが明かされないうちに「ハイ、次~」って感じでネタを出してくるものだから、手を抜いて観ている時間がない。
 また、出てくる奴らが嘘つきが多いので観ていて何が真実なのかわからなくなってくる。実は俺だって本作を何回も観ているのに未だにモヤモヤした気分になっている。そんな俺は本作の監督であるクリストファー・ノーランの術中にハマってしまっていて、何回も観直してしまうのだろう。
 本作の主人公と同様に観ている我々の記憶力も試されている気分になったりもするが、結末はなかなかの衝撃があり、観ている最中もダレルことなく面白く感じられる。
 見る人によっては面倒くさい構成に感じるかもしれないが、監督、脚本が良いと、こんなに面白い映画を作ることが出来るんだということを理解させてくれる映画メメントをお勧め作品として今回は挙げておこう

メメント [DVD]
クリストファー・ノーラン
東芝デジタルフロンティア


 監督は前述したクリストファー・ノーラン。この監督はまだ若いのにお勧め映画が多数。バットマン ビギンズから続くシリーズ物は最高に面白くて考えさせられるし、マジック対決が次第に力技になっていく感じがするプレステージ、哲学的な感じをうけるSF映画インターステラ、そしてこの監督の才能を感じさせるデビュー作品フォロウィングなどお勧め多数です。  
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映画 ミツバチのささやき(1973) 映像詩を感じさせます

2016年08月28日 | 映画(ま行)
 映画というのは名作イコール面白いとは必ずしもならない事が多いのは衆知の事実。俺も20年以上前の学生だった時に、この映画は名作だという評判を聞いてワクワクしながら観たのに、ワケがわからずひたすら退屈だった映画が今回紹介するミツバチのささやき。当時、大した知識も無く、血気盛んな若者だった俺が観て楽しめるタイプの映画ではないのは確かだ。しかし、20代前半の時に観ても楽しめなかった映画も数年後に観返してみると、けっこう良い映画じゃ~ん!なんて思える映画もたくさんある。今やすっかり知識も経験も豊富な四十代も半ばを迎えて本作を再見したら、アラ、ビックリ!流石は名作と呼ばれるだけの奥深さがある。

 これまた映画の法則だが、たいていの人は予備知識無しで映画を観た方が面白いと思っている人が多いと思うが、本作の場合は少々予備知識を持って観た方が少しは感動できる。ちなみに本作はスペイン映画だが、1940年のスペイン内戦の直後が時代背景にして描かれており、公開された1973年はまだフランコ独裁政権だったことを頭の片隅にでも置いて観ると、非常に深読みのしがいがある映画だ。世界史の苦手な日本人の多くは、スペインと聞いてもサッカーが強い国というイメージしかない人が殆んど。しかし『スペイン内戦』『フランコ独裁政権』この2つのキーワードをちょっと勉強すると、つい最近までスペインという国は普通の人々が暮らすには大変だったということが理解できる。

 さて、俺も後で知ったのだが、実は本作のテーマは制作当時のスペイン政権の批判映画。そんなことに気付かせないようなストーリー紹介を簡単に。
 1940年、スペインの小さな村が舞台。ある一家において、父フェルナンド(フェルナンド・フェルナン・ゴメス)は自分の部屋に籠ってミツバチの研究に没頭し、母テレサ(テレサ・ジンペラ)は誰宛てなのかはわからないが手紙を書いている日々を過ごしている。彼らにはまだ幼い姉イザベル(イザベル・テリェリア)と妹(アナ・トレント)の娘2人がいる。
 ある日のこと、この小さな村に移動映画がやってきた。上映される映画は『フランケンシュタイン』、イザベルとアナの姉妹は映画を観るが、そのことは妹のアナに心理面で様々な影響を与えるのだが・・・

 さて、何の予備知識も無く観てしまうと、本作がスペインの独裁政権に対する批判映画だと気付く人はまず居ない。本作はアナを中心に彼女の家族の出来事が淡々と描かれているだけだから。しかし、当時のフランコ独裁政権の最中のスペインで、露骨に当時の政権を批判するような映画は撮れないし、撮れても公開されない。だからかんじんのテーマに気付かない人が殆んどであることは当たり前なのだ。しかしながら、前述した予備知識を持って本作を観ると、非常にメタファーに満ちた作品だということに気付けるだろう(実際は気付けない人が殆んどだが)。
 タイトルの『ミツバチのささやき』が表わす意味は何なのか?、冗談好きの姉イザベルと純粋な妹アナの対比するところの意味は?母テレサの手紙を書く意味?そして上映される『フランケンシュタイン』は何を意味するのか?その他にも色々と暗喩的な表現を用いられているはずだが、このような描き方が映像詩を感じさせる。
 ストーリー的にはドラマチックなことが起きるわけでもないので、途中は非常に退屈。しかし、最後の方でフランケンシュタインの効果が抜群に効いてくる演出はなかなかの感動を味わえる。

 冒頭からアニメチックに始まるシーンはちょっと驚くが、その後は静かな音楽と、少ない台詞、ヨーロッパ映画らしい暗めの渋い画調と全体的に静かな印象を受ける映画。しかし、意外にこの静寂さが、政権批判という内容が込められている作品に感動を与える効果を発揮しているような気も今観れば思ったりした。
 ハリウッドのド派手なアクション映画に飽き飽きしていた人、ヨーロッパ映画の名作を観たいと思っている人、そして何よりスペインという国に対して熱い気持ちを持っている人にはミツバチのささやきを今回はお勧め映画として挙げておこう

ミツバチのささやき HDマスター [DVD]
アナ・トレント、イザベル・テリェリア、フェルナンド・フェルナン・ゴメス
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督は本作が長編第一作であるビクトル・エリセ。今まで長編映画はたったの3作という超寡作ですが、エル・スールもスペイン内戦をテーマにしていてお勧めです。








 
 
 
 
 
 

 

 
 
 

 
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