褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 シンシナティ・キッド(1965) 年季が違うぜ

2024年03月06日 | 映画(さ行)
 ギャンブル映画の中でもポーカーを扱った映画は多くあるが、今回紹介する映画シンシナティ・キッドはその中でも名作の部類に入るだろう。ポーカー(スタッド・ポーカー)での対決シーンも見どころだが、天才が凡人以下に叩きのめされるストーリー展開が良い。ギャンブルを生活の生業にすることの厳しさを本作から教えられる。

 さて、早速だがストーリーの紹介を。
 アメリカ南部のニューオリンズにおいて。通称シンシナティ・キッドと呼ばれるエリック(スティーヴ・マックウィーン)は地元では無敵のスタッド・ポーカーの名手。その強さはイカサマをしている疑いをかけられるほどだ。
 ある日のこと、ポーカーの世界ではザ・マンと呼ばれており30年間に及んでナンバーワンに君臨するランシー(エドワード・G・ロビンソン)がニューオリンズの地に降り立つ。そのことを聞きつけたエリックはギャンブラーとしての血が騒ぎ、ランシーに勝負を挑むのだ・・・

 エリックとランシーの激闘は大いなる見せ場だが、彼らの周囲の人間のキャラクター設定も興味深い。カネのやり繰りに困っていてイカサマを仕掛ける奴や、ポーカーが下手くそで自業自得で負けているのにヤクザみたいに脅迫してくる奴、そしてエロいフェロモンを出しまくって誘惑してくる美女など。特にエロい美女が勝負に集中させてくれないし、ギャンブラーにとっては女はご法度であることが本作を見ればよくわかる。
 そして、本作で印象に残る台詞が「年季が違うぜ」。エリックが冒頭で黒人の靴磨きの坊やからコイン投げの勝負を挑まれて勝った時の台詞だが、この台詞が最後にも効いてくる。ダメな時は何をやってもダメなんだということの教訓が得られる。
 そして、この世の中には疫病神みたいな女が存在するのと同時に、聖女のような女性がいることも本作では教示してくれる。単なるギャンブル映画に収まらない色々なテーマを内包しているのだ。
  スティーヴ・マックウィーンの勝負師としての表情が印象的だし、百戦錬磨のランシーを演じるエドワード・G・ロビンソンの貫録も印象的。そして、ポーカーの中でもスタッド・ポーカー(5枚のうち4枚まで見せておいて、最後の1枚を見せない)にしているのが、視覚的に抜群の効果を発揮している。そして、ジャズの街であるニューオリンズらしさも描かれているし、レイ・チャールズによる主題歌も良い。とにかく娯楽作品として楽しいし、どこか切なさの余韻も感じられる映画シンシナティ・キッドをお勧めに挙げておこう

 監督はノーマン・ジュイスン。今年の1月に亡くなっていたことを今まで知りませんでした。人種差別が色濃く残るアメリカ南部で白人警察と黒人刑事がタッグを組んで殺人事件に臨む夜の大捜査線、本作と同じくスティーヴ・マックウィーンが大富豪の泥棒を演じる華麗なる賭け、アル・パチーノが弁護士を演じるジャスティス、シェール、ニコラス・ケイジ共演のラブコメ月の輝く夜に、デンゼル・ワシントンが実在のボクサーを演じたザ・ハリケーン等、お勧めがたくさんです








 
 
 
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映画 ザ・タウン(2010) 強盗稼業です

2024年01月28日 | 映画(さ行)
 最近は二刀流という言葉がよく躍っているが、監督と俳優(主演)の両方をこなしてしまうベン・アフレックも二刀流と言えるだろう。しかしながら最近は監督業も不振だったり、今さらバットマンを演じたりで迷走している感じもあるが、再び監督業に気合いを入れて専念して欲しいと個人的には思う。
 そんな彼の監督・主演をこなした最高傑作となると今回紹介するクライムサスペンスの傑作ザ・タウンを挙げたい。今ではあんまり有名でもない気がするが個人的には何時までも語り継ぎたい映画であり、ザ・ヒートを思い出させる銃撃戦はテンションがアゲアゲだ。
 この映画がユニークなのはアメリカ、ボストンのチャールズタウンが舞台であること。ボストンと言えばメジャーリーグに少しでも興味がある人ならば、現在は吉田正尚、かつては松阪大輔、上原浩司といった日本人選手も在籍していたことで知られているが、今回の映画で見せるボストンはとんでもない危険地域。本作の中でも説明があるが、このチャールズタウンは広大なアメリカの中でも最大の犯罪地帯。なんせ家系代々が強盗を生業としていたり、犯罪利権が存在している。我々のような一般人にとっては絶対に近寄りたくない場所だ。

 さて、ベン・アフレックの故郷ボストンへの愛を感じさせるストーリーの紹介を。
 ボストン、チャールズタウンの銀行において。今日もダグ(ベン・アフレック)と弟分であるジェム(ジェレミー・レナ)と他に2人の家族同然の仲間と現金強奪を企む。今回も鮮やかな手口で大金を奪うことに成功。しかし、人質にとった女支店長であるクレア(レベッカ・ホール)が同じ町の住人だと知る。彼らはもしかしたらクレアに正体がバレてないか不安に陥り、ダグはクレアを追跡するのだが・・・

 綺麗なオネエさんをストーカーしてたら、いつの間にかお互いに恋に落ちてしまう。クライムサスペンスでありながら青春ドラマの要素も感じさせる。ダグは、もうこんなえげつない強盗稼業を辞めようと、タウン(チャールズタウンを地元の人々が愛着を込めて呼ぶ)をクレアと一緒に抜け出したいと願う。しかし、クレアに対して銀行を襲って怖い目に遭わしたのは自分だとはバレたくないし、代々家系が強盗稼業であることなど知られたくない。このもどかしい気持ちが男心を揺さぶる。
 しかし、そんなダグを簡単にタウンから抜け出せないようにしているのが、チャールズタウンを仕切る強盗斡旋者の存在。もうこれが最後の強盗の仕事と決意しながらも、斡旋者の奴らが『この仕事を断ったら付き合っている女を殺すぞ』と脅して強制的に大金強奪の仕事を持ち掛けてくる。そしてすぐに血が上りやすいジェムの存在。彼とは兄弟のように幼い頃から一緒に行動し、しかもジェムからは恩を受けている。そんな彼と簡単に別々の道を歩めるのか。更にはダグ達を追いかけるFBI捜査官のアダム(ジョン・ハム)による猛烈な追跡。ダグはこれらの障害を乗り越えてタウンを抜け出すことができるのか⁈
 もちろん本作は前述したように銃撃戦が素晴らしい。特にボストンのレッドソックスの野球の本拠地であるフェンウェイ・パークを舞台にした激しい銃撃戦はかなり引き込まれる。そして、レベッカ・ホールブレイク・ライヴリーといった美女達の存在も男どもにとっては嬉しいところだ。パワフルな映画が観たい人、クライムサスペンスが好きな人等に今回はザ・タウンをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したようにベン・アフレック。彼が監督、主演した映画ではアルゴ、彼が監督に専念したゴーン・ベイビー・ゴーンがお勧め。






 


 

 




 
 








 

 



 

 
 
 

 





 

 

 
 
  
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映画 スポットライト 世紀のスクープ(2015) 性的虐待事件を追う

2023年10月05日 | 映画(さ行)
 日本で多くの男性アイドルグループを輩出してきたジャニーズ。しかし、今や故人になった前社長ジャーニー喜多川による所属タレントやデビュー前のジャニーズJr.に対する性的虐待が明るみになった数々の事件においてジャニーズは大揺れどころか存亡の危機に瀕して消滅してしまいそうだ。次々と明るみになるジャニーズ事務所の杜撰な会社経営は、芸能界だけでなく日本社会全体を揺るがしている。
 さて、このような未少年に対する性的虐待事件があまりにも大きく報道されているが、特に日本だけの問題ではない。実は世界中で昔から存在し、特に世界中のカトリック教会で神父が未成年者を性的虐待する事件が頻発していたのだが、そのことを暴き出す切っ掛けになった記者たちの苦闘を描いた映画が今回紹介するスポットライト 世紀のスクープ。本作を見るとジャニー喜多川による性加害事件と多くの共通点が見出される。その点において、本作は少しばかり前の映画になってしまうが、まさに今の日本にとって非常にタイムリーな映画と言えるだろう。

 実話を基にした非常におぞましい事件に対するジャーナリスト達の苦闘を描いたストーリーの紹介を。
 2001年、アメリカはマサーセッツ州のボストンにおいて最大の新聞数を発行するボストン・グループに新局長としてユダヤ人のバロン(リーヴ・シュレイバー)を迎え入れる。新任早々でバロンはとてつもない計画を実行するように社内の極秘捜査を行う担当部門である少数精鋭のチーム『スポットライト』にゲーガン事件を操作するように命じる。その事件は1971年にゲーガン神父が少年に対して性的被害を負わせたこと。ボストン・グループに記事にしていた事件だったのだが、事件の重大さの割に軽く扱っていたことにバロンは不満だったのだ。
 そしてロビー(マイケル・キートン)をリーダーとするスポットライトチームはゲーガン神父の1971年からの行動を徹底的追求するのだが、そこに浮かび上がってきたのは、驚くほど腐敗したカトリック教会の実像であったのだが・・・

 出るわ出るわのゲーガン神父による少年少女に対する性加害に対する数々。しかも、その様な性的虐待を行ったいたのはゲーガン神父だけではなく出るわ出るわのロクでもない神父たちのおびただしい数々。そして、教会幹部たちの隠蔽体質と腹立たしいその方法。しかも、教会だけでなく見て見ぬ振りををしている人間がボストンの偉いさんの中には多くいることを知らされる。そのような中でスポットライトの面々も妨害に遭ったりで、とてつもない労力を費やされることになる。
 そして、本作では性被害に遭ってしまった人達の苦悩も描かれている。この辺りは夢をもってジャニーズからデビューをしようと思った少年達が屈辱を味わって挫折してしまい、未だに悩まされることの辛さを知ることができる。
 アメリカのジャーナリズムの凄さと同時に、日本のジャーナリズムの浅ましさの比較までしてしまい、何とも複雑な気分にもさせられた。記者たちの仕事は大勢が揃って頓珍漢な質問を長々とすることではない。記事に書いて読んでもらうこと。もっと本作のジャーナリストのように独自で取材をして、メモを必死でとり、歩いて取材をしろ!と言いたくなる。
 他にも権力がいかに人間を誇大妄想させてしまうかを痛感するし、東山社長には本当に真摯に被害者の方々と向き合って欲しいと思う今日この頃である。そんな訳で今回は現在の日本に非常にタイムリーな映画スポットライトをお勧め映画に挙げておこう





 
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映画 シェイプ・オブ・ウォーター(2017) 大人向けのファンタジー映画の傑作

2023年09月06日 | 映画(さ行)
 少し前までマイノリティー(少数派)という言葉が社会に躍った。かつてはマイノリティに属する人間(例えばゲイ、黒人、障害者等)は大多数を占めるマジョリティー(多数派)から差別や偏見に晒されてきた。しかし、最近はマイノリティーに属する人でもようやくだが、社会的地位を築いてきたように最近は少しずつだが感じることがある。そんなマイノリティーに対する優しさを感じさせる映画が今回紹介するシェイプ・オブ・ウォーター。本作では人間と半魚人のあり得ない組み合わせの恋愛模様が見れるが、これが結構な感動もの。どうしてディズニーなどに観られるファンタジーがずっと人気があるのか少しばかりわかった気分になった。

 大人向けのダークファンタジーのストーリーを簡単に紹介を。
 米ソ冷戦下において。アメリカの機密機関で清掃員として働く女性イライザ(サリー・ホーキンス)は映画館の上にあるマンションで独り暮らし。声帯を負傷して発声ができない彼女には隣人の売れない画家のジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)、そして同じ職場の同僚の黒人女性ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)しか、付き合いがなく、毎日を同じことの繰り返しの単調な生活を送っていた。
 しかし、ある日のこと仕事中に、普段は傲慢な態度をとっている軍人であるストリックランド(マイケル・シャノン)が研究室から血まみれになって飛び出してくるのをイライザは目撃する。イライザはこっそり研究室に入ってみると、なんとそこには恐ろしい姿をした半魚人(ダグ・ジョーンズ)が居た・・・

 凶暴で気味の悪い半魚人だが、イライザが毎日こっそりと会いにくると次第に心を通わせていく。その内にあれほどグロテスクで不気味に見えた半魚人が段々と可愛く見えてくるから不思議な気分になった。半魚人もただ奇声を発するだけで、イライザも言葉を発せない。それでも心が通じ合うことに何だか嬉しくなってくる。
 半魚人が生体解剖されると知ったイライザは半魚人を脱出させようとする。しかし、イライザだけの力ではどうにもならない事は誰の目にも明らか。そんな時に彼女の願いの手助けをするのが、実はゲイであるジャイルズ、そして黒人女性のゼルダ。それともう1人怪しい奴も助けに入ることになるが、半魚人を助け出すのがマイノリティーに属する人間だということに希望を感じさせるではないか。まるでディズニー映画の名作と似ている気がしないでもないが、本作はかなり暴力、性描写が多いのでディズニー映画のように、子供と一緒に観ることは止めておいた方が良いとアドバイスしておこう。
 そして、アメリカの軍人をコレでもかと悪役に描き、マイノリティーに属する人間の活躍を描いており、これがトランプ大統領の時に制作されていることに本作の政治的立場が明確なのも個人的には興味が惹かれた。
 アメリカの政党で共和党よりも民主党が好きな人、マイノリティに対して優しい視線で描かれている映画が好きな人、ギレルモ・デル・トロ監督の映画が好きな人、ダークファンタジーが好きな人・・・等に今回はシェイプ・オブ・ウォーターをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したようにギレルモ・デル・トロ。本作の半魚人の異形の創造物を登場させる辺りはこの監督の面目躍如。他にお勧めはアクション映画ではブレイド2パシフィック・リムヘルボーイ、本作と通じるダークファンタジーではパンズ・ラビリンスがお勧め





 
 
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映画 戦火のかなた(1946) 戦争の悲惨さがわかります

2023年08月26日 | 映画(さ行)
 第二次世界大戦の末期において、アメリカを中心とする連合軍は1943年7月10日にシチリア島に上陸してから1945年4月にイタリア全土をナチスドイツから解放する。連合軍はイタリアのバルチザンと協力してナチスドイツと戦ったのだが、これが2年近くも掛かっているのだから、相当激しい戦闘が繰り広げられていたに違いない。この時の状況をアメリカ軍、バルチザンからの目線で描いた映画が今回紹介する戦火のかなた。ちなみに本作は1946年に公開だからイタリアが解放されてから公開までに1年ぐらいしか経っていないことになる。確かに映像は瓦礫の山のシーンもあったりで戦争の生生しい雰囲気が出ている。この戦後の映像の機材を持ち出して素人の俳優を使ってロケ撮影を敢行しているところは、まさにネオリアリズモの作風を感じさせる。
 ちなみに本作は6章からなるオムニバス風の作品。前述したように戦争のド迫力シーンは無く、戦場で兵士が撃たれてバタバタ死んでいくようなシーンは殆ど無い。反戦映画だが、戦争とは命を奪うだけでなく人間としての感情を狂わしたり、道理がまかり通らないことも戦争のダメな理由に挙げなければならない。戦争で生き残っても永遠に消えないダメージを受けてしまうことを本作を観ればわかる。

 連合軍がシチリアに上陸してからの6話出てくるが一話すつ簡単にストーリーを述べておこう。
1.連合軍がシチリア島に上陸する。若きアメリカ人の斥候兵と早く戦争が終わって欲しいと願うイタリア人の少女は二人だけになった時に、言葉は少しだけ通じ友情が芽生えるが・・・。

2.ナポリにおいて。アメリカ人の黒人憲兵がイタリア人の少年に酔って寝ている最中に靴を盗まれてしまう。ある日のこと、黒人憲兵はその少年を見つけて靴を取り戻すために少年を引き連れて彼の家に向かうのだが・・・。

3..ローマでは酔ったアメリカ人兵士と拾った娼婦が一室に入って会話をする。兵士が寝そうになりながら『俺らがローマに来た時のイタリア女は本当に良かった』と6カ月前のことを語り出す。実はその時に出会った女が今、目の前にいる娼婦だったのだ。アメリカ人兵士が眠っている間に、娼婦は自分の家の住所をこっそり部屋の管理人に渡すのだが・・・。

4.フィレンツェの野戦病院で働いていた看護婦は、恋人であるバルチザンの闘士が怪我をしているとの噂を聞きつけ、恋人に会うために市街戦の真っ只中で撃ち合いをしている所へ行こうとするのだが・・・。

5.3人のアメリカ従軍僧が宿を借りに、カトリックの修道院を訪ねる。しかしながら3人のアメリカ人は1人はカトリックだが、後の2人はプロテスタントとユダヤ教。頑ななカトリックの神父たちと宗教の対立を起こしてしまい・・・。

6.いよいよ北イタリア。アメリカ兵士とバルチザンは四方八方をナチスドイツに囲まれてしまい、捕虜になってしまう。捕虜の運命は・・・。

 この6話だがどれも最後はハッピーエンドにならない。戦争の悲惨さを描きながら、ナチスドイツに対して敵意を表した内容になっている。しかし、戦争で潰されるのは命や建物だけでない。1において友情が崩れ去り、2においては子供達をスラム街に追い詰め、3においては一生忘れらえない出会いだったはずが、別れはあまりにも脆すぎたり、4においては恋愛関係をあっさりぶった切り、5においては戦争によって出会うことになるイタリアとアメリカの宗教家だが、本来の宗教は心の拠り所であるはずなのになぜか対立を煽ることになってしまったり、5においてはラストが強烈。こうもナチスドイツは腐っているのかと思わされた。
 戦争と言う異常な時代において一輪の花のような素晴らしい出来事もあったりするが、殆どはロクでもない出来事ばかり。どんな真っ当な人間も狂わしてしまう。本作から人間が持っている良心が見られなかったのが残念。しかし、繰り返すが本作の公開はイタリアが解放されてから1年での公開。そうなると撮影時のスタッフ達は戦争の生々しい経験がまだ身に染みていることだろう。本作のような映画を見ると戦争が終わりますようにと願いながら、自分の無力さを感じさせられるのが無念だ。今回は古い映画だが戦争の悲劇を色々と描くためにオムニバス的な構成になったが、観た人は色々と感じるだろう。ちょっと画面が暗いのが難点だが、戦争の生々しさを描いているという点で戦火のかなたを、お勧めに挙げておこう

 監督はネオリアリズモの巨匠ロベルト・ロッセリーニ監督。この前年に撮られた無防備都市、そしてロベレ将軍がお勧め


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映画 邪魔者は殺せ(1947) 瀕死になりながらの逃亡

2023年08月07日 | 映画(さ行)
 タイトルから想像すると、酷い内容の映画を想像してしまう。ちなみにタイトルの原題はOdd Man Out。意味は「残りもの、余りもの」「仲間はずれ」といったところ。個人的には原題の方もおかしいと思うのだが、もっとおかしいのが邦題の付け方。この映画のどこに邪魔者が居たのか?そして、殺せなんて命令している奴も出てこない。確かに主人公のバックボーンは決して褒められないが、なかなか最後は感動できるストーリーだし、人殺しをしているシーンはあるが、観ている間は主人公がそこまで悪い奴に見えない。むしろ、自分も怪我を負ってフラフラになりながら逃亡している姿に悲しみすら感じさせるストーリーが今回紹介する映画邪魔者は殺せ。そして本作が面白いのが単なる逃亡記録のような構成になっているのではなく、主人公が逃亡中に出会う最中に偶然にも居合わせた人々の様々な反応が人生を感じさせる。散々、悪事を働いているが、そのまま放って置けば死んでしまうような人間を目の当たりにした時、人間はどの様な行動を取ってしまうのか。高い賞金目当てに警察に突き出すか、それとも出来る限りの命を助けるために最善の努力をつくしてやるのか、それとも・・・

 内容だけでなく、映像テクニックにも感心させられるストーリーの紹介を。
 北アイルランドにおいて。ある部屋においてジョニー(ジェームズ・メイソン)を首領とする5人の男たちが組織の資金集めのために銀行強盗の計画を立てている。ジョニーは獄中に8カ月、脱獄して隠れて半年。1年以上もの間、外出していなかったジョニーを今回の強盗の実行部隊から外す意見もあったのだが、ジョニーはこの中ではリーダーだということもあり、頑なに降りることを拒んでいた。
 いよいよ銀行強盗を実行する。現金は簡単に奪えたが、逃げる段階でジョニーのブランクの長さが響く。ジョニーは銀行の職員に追いつかれてもみ合うことになるが、ジョニーは銀行員を射殺するのだが、銀行員の撃った弾を左肩に喰らってしまう。
 他の仲間が乗っている逃亡用の車にジョニーも乗ろうとするが、運転手が焦ってしまっているためにジョニーは殆ど車に捕まったままの状態で発車。猛スピードで走る車に乗り込めなかったジョニーは振り落とされてしまう。逃亡用の車に乗っていた仲間達が助けに行こうかとする間に、しばらく微動だにせずに倒れていたジョニーは急に立ち上がり、走って別方向へ逃げ出してしまい・・・

 北アイルランドを舞台にしてるのでこの組織はIRAだとすぐにわかる。時間にして16時から24時に至るまでの8時間のドラマが描かれているが、主人公は17時に負傷して、それから7時間も瀕死の状態で警察の目を避けながらの逃亡。しかも天気が雨が降り出し、終盤は雪が降り出すなど、地味なストーリーだがドラマチックな演出もなされている。
 7時間の逃亡劇といっても防空壕に隠れている時間や、倒れているところを心優しき人に拾われて家に運ばれたり、意識が薄らぐ中で辿り着いたところが酒場で閉店までビール付きで休憩させてもらったりで、ずっとフラフラになりながら血を出しながら歩いている訳ではない。しかしながら、次第に死が近づいていく様子が見てとれるし、彼を慕う綺麗な女性の存在に、愛は信仰を超えるほどの尊さがあるんだよな~、なんて思えたりする。
 本作が公開されたのが1947年ということを考えるとIRAの暴力革命に対する批判が込められているのが丸わかりだし、それでいて何処かテロリストに対する優しさを感じさせるのは何故だろう。音楽はドラマ性を高めるのに充分な役割を果たしているし、主人公の意識が薄らぐ中での幻を見るシーンの映像テクニックは非常に洗練されているし、他にも褒めたりない所がたくさんあるような気がする。
 サスペンス映画でありながら、観ていて色々な想いを起こさせるドラマ性がある。唯一の欠点はタイトル名だけ。非常に洗練された映画を観たいという人に今回は邪魔者は殺せをお勧め映画に挙げておこう

 監督はサスペンス映画の名匠であるキャロル・リード。映画史に遺る大傑作第三の男、これまたサスペンス映画の落ちた偶像がお勧め











 

 
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映画 ザ・ギフト(2015) 贈り物攻撃です

2023年07月18日 | 映画(さ行)
 7月7日は七夕の日、ではあるが他にギフトの日としても制定されている。俺は七夕の日は短冊に願い事を書くのに必死でプレゼントを贈ることなど全く頭に無かった。しかし、ギフトの日だったと聞いて俺の頭に浮かんできたのが、タイトル名通りズバリである、今回紹介する映画ザ・ギフト。正直なところ肝心の7月7日からだいぶ日が経ってしまったの感は否めないが。
 俺は面倒臭がりの人間だから、贈り物を考える時間が苦痛なのだが、貰う方なら何でもオッケー。それでも時々だが、まるで空気が読めていないような、ありがた迷惑な贈り物を貰う時もあったりした。さて、本作のストーリーがまさにそれ。最初は俺も貰って嬉しい白ワインだったのが、次第にエスカレートしていき最後にもらうプレゼントは・・・

 何だか嬉しくなるようなタイトル名だが、観終わった後にショックのどん底に叩きのめされるストーリーの紹介を。
 金銭的にも何の不安もない夫のサイモン(ジェイソン・ベイトマン)と妻のロビン(レベッカ・ホール)はシカゴに住んでいたのだが、とある理由でサイモンの故郷であったロサンゼルスに引っ越してきた。家はでかいガラス張りでそこから見える風景は美しく、家の入口には池があり、豪邸そのもの。近くの店で夫婦で買い物をしていると、かつてサイモンと高校の同級生だったゴードン(ジョエル・エドガートン)から声を掛けられる。お互いが25年振りの再会だったのだが、サイモンにとってゴードンとは特別仲が良かった訳ではなかったのでそれほどの感激がはなかった。しかし、それ以来ゴードンから最初こそ白ワインを贈り物として家に贈られたのは良かったのだが、次の日にはいきなり池に鯉が数匹自分たちが居ない間に贈られており、それだけで止まらず次第にゴードンのエスカレートしていく贈り物に夫婦はヤバい気配を感じるのだが・・・

 高校時代に仲が良かった訳でもないのに、どんどん贈り物を届けてきて、しかも決まって夫のサイモンが不在で、ロビンが1人で在宅の時に現れるゴードン。しかも、家が豪邸でガラス張りだから家の外から中がスケスケで見えている感じがするし、ロビンを演じるレベッカ・ホールだが身長が高くて抜群のスタイルをしていて超美人。これは如何にもヤバいことが起きそうだと観ていてドキドキしていたが、当の本人であるロビンは人が良過ぎるところがあり、平気でゴードンを家の中に居れてしまうし、サイモンがアイツは高校時代から少しばかりヤバい奴だったぞなんてアドバイスされても、人付き合いが苦手そうなゴードンに対して同情していて話し相手に進んでなりたがるなど、まるで聖母マリア様のような優しい心で接している。
 しかし、本作のテーマの一つとして因縁、謝罪、欺瞞、そして仕返しといったものが挙げられる。ゴードンが不気味そうな雰囲気を終始醸し出しているのと反対に、サイモンは良き旦那であり、出世はするし妻からすれば最高過ぎる夫。しかし、先ほど述べたテーマがあからさまになった時に、悲劇が訪れる。そして、ゴードンからの最後の贈り物が届いた時には夫婦ともども、観ている我々もショックに襲われる。いや、ショックだけで収まるようなレベルでは無いっか?!クライマックスへ行くまでの構成が抜群で、より一層サスペンス感を盛り上げるのが良い。
 サイコがかりなサスペンスを観たい人、サイモンの気持ちになって観ることができる人、豪邸に住みたい人・・・等に今回は映画ザ・ギフトをお勧めしておこう

 監督は本作で不気味なゴードンを演じるジョエル・エドガードン。本作で監督としての才能を見せつけていますが、まだ若いので今後の監督作品も期待できそうです。







 
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映画 質屋(1964) ひたすら空虚な主人公

2023年07月14日 | 映画(さ行)
 今の人々にとってホローコスト(ユダヤ人大虐殺)と言っても、ずい分と昔のような気がするだろう。しかし、本作が公開された1964年と言えば多くのユダヤ人にとってホローコストに対する恐怖を拭いされていない時代。今回紹介する映画質屋はユダヤ人大虐殺をテーマにし、ナチスによるホローコストを生き延びた主人公のお話し。家族や仲間が目の前でナチスに殺され、自らは生き残った罪悪感に苛まされながら質屋を営みながら生活している。しかし、彼はあの日以来すっかり感情を無くしてしまったようで訪れるお客さんに対して常にぶっきら棒で接し、事あるごとに脳裏に家族がナチスに殺されたり、ユダヤ人の強制収容所やそこに運ばれるギュウギュウ詰めの列車や、仲間を見殺しにしてしまった出来事などがフラッシュバックされ、あの時の恐怖が頭から離れないでいる。そんな彼が信じれるのはカネだけだったのだが・・・

 前半はひたすら陰気臭い質屋のオジサンの様子を見せられるが、後半は少しだけ盛り上がる?ストーリーの紹介を。
 ドイツ系ユダヤ人のソル・ナザーマン(ロッド・スタイガー)は郊外の住宅地で亡き妻の妹の家族と一緒に暮らしており、そこからニューヨークの貧民街で黒人のロドリゲス(ブロック・ピーターズ)の支援を受けて質屋を営んでいた。もう一人の店員はラテン系の少年で母親と2人暮らしのヘズス(ハイメ・サンチェス)。彼はソルとは逆によくしゃべり、将来は自分でも店を構える夢を持っていた。そして非常に物知りなソルから色々と学ぼうとしていた。しかしながら、物知りなソルと色々と哲学的な話をしたいために訪れるお客や、彼に好意を寄せる青年福祉局の夫人マリリン(ジェラルディン・フィッツジェラルド)のようなお客さんも訪れたりするのだが、その様な人達に対しても彼は心を決して開こうとしなかった。
 そんなある日のこと。質屋の経営は実のところ赤字経営。スポンサーであるロドリゲスが赤字の補填と店の改装のための5,000ドルを部下を通してソルに渡し、しっかりと金庫に保管する。しかし、ソルはヘズスの恋人であり娼婦のメイベル(セルマー・オリヴァー)が店を訪れたことを切っ掛けに、ロドリゲスが売春や賭博に手を染めるこの街の暗黒街のボスであることを知ってしまう。ソルはロドリゲスの所へ自ら乗り込んで行き、お前のカネなんか受け取れないと凄んでみせるのだが・・・

 ソルだが常に表情は暗く、殆ど喋らないし、見た目もオッサンそのもの。こんな人に親しく話しかけようとする人が居るわけないだろうと振り返った今も思ってしまう。この映画でソルとロドリゲスが口論しているシーンがあるが、ユダヤ人のことを「私達」と訳されているが、この時に急に猛烈と語り出すソルがユダヤ人の歴史を話してくれるし、そしてなぜユダヤ人は金儲けが上手なのか説明してくれる。この場面は今も巻き戻して見たいと思うぐらい俺的には興味が惹かれた。
 不愛想なソルだが、今でもユダヤ人の収容所で見殺しにしてしまった親友に対する負い目、自分だけが生き残ってしまった事に対する懺悔の想いからかもしれないが、親友の妻のテッシー(マルケータ・キンブレム)や一緒に暮らしていて病弱なお父さんの面倒を見続ける等、義理堅い面もある。しかし、そのような面倒が見られるのも誰のお陰なのかをじっくりと考えた時にソルが受けるショックの大きさの度合いが、観ている我々にも少々わかってしまう。今までカネしか信用できなかったソルの信念が脆くも崩れ去るのだが、これは辛い。俺も色々な飲み会でピンハネをされたのだが、そいつからカネを返してもらおうかと考えた時があったりしたが、そのおカネがもしかしたら市民の税金が紛れ込んでいるかもしれないと思うと、返してもらう気が失せた。
 すっかり人間もカネも信用できなくなってしまったソルだが、果たして彼の苦悩は晴れることがあるのか?キッツイ結末が待っているが、ほんの一瞬だが彼を癒すような希望の灯が点される。
 クインシー・ジョーンズの音楽はニューヨークの雰囲気にばっちりだし、モノクロとセピア調の画面の使い分けは見事だし、ストーリー展開は流石の一言。楽しい気分になりたい時に観る映画ではないが、人間のトラウマ、後悔、悲哀といった心の闇をえぐり出すような作品が好きな人に今回は映画質屋をお勧めに挙げておこう

 監督はシドニー・ルメット。社会派作品の名作を多く生み出した巨匠として映画界にその名は燦燦と輝き続ける。彼を有名にした十二人の怒れる男、原爆への恐怖を描いた未知への飛行、テレビ業界の裏側を描いたネットワーク、猛烈な軍隊批判をした・・・等などお勧め多数です。

 


 
 
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映画 ストーカー(1979) アンドレイ・タルコフスキー監督作品です

2023年07月11日 | 映画(さ行)
 タイトル名から犯罪映画を想像する人が多いと思うが、この映画が公開された当時は今で言うストーカーという言葉の意味では定着されていなかった。ちなみに今回紹介する映画ストーカーはソ連映画であり、アンドレイ・タルコフスキー監督作品。この監督の作品と聞いて心が躍らない人には正直なところお勧めし難いとアドバイスしておこう。
 彼の映画はよく難解だと言われるが、確かに本作もその部類にはいる。大まかなストーリーは、ある目的地へ3人が突き進む、って話。それだけ聞くとアドベンチャー映画っぽく聞こえて楽しめそうな期待を持たせるかもしれないが、ハッキリ言ってスリル、サスペンスを本作に求めると全くの肩透かしを食らってしまう。妙にテンポはとろいし、グダグダとした会話のシーンが多々あったり、盛り上がるようなシーンも無く、タルコフスキー監督作品にしては綺麗な自然の描写が全くない。しかも2時間半の上映時間と聞くと結構長いと思う人には忍耐力を要求される。

 ダメダメ映画かと思わさせておいて、なかなか深読みしがいのあるストーリーの紹介を。
 昔のことだが、某国の某地域において、その場所に隕石が落ちて、村全体が全滅する事態が発生。政府は軍隊をその場所へ派遣するのだが、そのまま軍隊は帰ってこなかった。それ以来、その場所はゾーンと呼ばれ、政府によって立ち入り禁止区域になってしまう。
 ある日の事、ストーカーと呼ばれる男(アレクサンドル・ガイダノフスキー)が妻の静止を振り切り早朝に出かけていく。ストーカーは違法であるゾーンへの侵入者であり、ゾーンへ行きたいという人を伴って連れて行く案内人である。ストーカーが言うにはゾーンには何でも願いが叶うと呼ばれる部屋があり、今日は教授と呼ばれる男(ニコライ・グリニコ)と作家と呼ばれる男(アナトリー・ソローニーツィン)を連れてゾーンへ行こうとしていた。
 立ち入り禁止区域で監視人からの猛烈な銃撃をかいくぐり、3人はゾーンへ到達する。そこは草原が広がっておりボロボロの軍用機や建築物があった。ストーカーの案内でいよいよ部屋へ行こうとするのだが、そこへ行くまでに様々な罠があり、ストーカーが言うには命を落としてしまう人も居たようだ。3人は仲間割れをしたり、また一緒になったりしながらも自らの望みを叶えるために部屋まで、あと一歩の所までやって来るのだが・・・

 この3人が危険な目をしてまでゾーンへ行こうとする理由は何か?ストーカーは現実世界に絶望してしまっている人を1人でも多く救うためにゾーンへの案内人として向かうのだが、彼は部屋には入ろうとしない。作家と呼ばれる男は、どうやら最近はスランプで書くことを苦痛に感じているためにインスピレーションを得るためにソーンへ向かう。そして、教授と呼ばれる男だが彼がゾーンへ向かう理由は部屋に入ろうとする直前にわかるのだが、これはネタバレを伏せておこう。さて、ゾーンは3人に対して、どのような影響を与えるのか、それとも◦••!
 前述したが退屈な進行の割に非常に哲学めいた台詞や抽象物が意味深。俺が勝手に頭の中で巡らせたことを書くと、隕石って原爆なのか、部屋って教会のこと、途中から現れて3人に付いてくる犬ってキリストのモチーフ?、ラストシーンでストーカーの娘が見せる超能力って人間の浅ましさを皮肉ってる?等。
 そして俺が最も感じた事は、人生に絶望を感じている人に対する癒し、救済。観る人によっては、そんなハッピーな内容だったっけ?となるのも不思議ではない。しかし、人生なんて誰しも困難や苦しいことがあるんだと思えると、俺なんかは急に生きる気力が湧いてきた。
 ハリウッドの娯楽映画に慣れきってしまった人には少々ハードルが高い気もするが、今回は映画ストーカーをお勧めに挙げておこう❗️

 監督は映像の詩人とも称されるアンドレイ•タルコフスキー。ストーリー性がしっかりあるという意味で僕の村は戦場だった、SF映画の金字塔惑星ソラリス、個人的に最も好きなノスタルジアをお勧めに挙げておこう❗️


 

 
 



 




 
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映画 地獄に堕ちた勇者ども(1969) 骨肉の争いが凄すぎ

2023年06月21日 | 映画(さ行)
 今に始まったことではないが、なかなか人の顔と名前が覚えられない。最近の映画ならば登場人物が多くても知っている人が殆どから、ある程度は大丈夫。しかし、俺が生まれる以前の映画で登場人物が多くなると、いくら俺が生まれる以前の当時は大スターだったと言われても、現在において知らないと、これは観ていて辛いものがある。そんな訳で今回紹介する映画地獄に堕ちた勇者どもだが、最初から気合を入れまくって観ないと、前半でストーリーから脱落してしまって何のこっちゃわからん、なんてなりかねない映画。最初の方で富豪一家がテーブルに座っているシーンがあるが、その時までにここに座っている登場人物の顔、名前、人間関係を徹底的に頭に入れておくつもりで観た方が良いだろう。
 しかしながら幸いなことにストーリーは至ってシンプル。第二次世界大戦前のドイツで隆盛を誇る鉄鋼所の跡目を狙っての権力争い。そこにあの大悪党のナチスがチャチャを入れてきて、非情な骨肉の争いが繰り広げられる。そして、なぜナチスがドイツ国内だけでなく、ヨーロッパ全体に暗雲をもたらすほどの圧倒的なパワーを持つことになったのかを少しわかった気分になれる歴史映画の面もある。

 ストーリーは単純でも多くの登場人物、それぞれの思惑が複雑に絡み合う内容をできるだけ簡単に紹介しよう。
 1933年のドイツにおいて。ドイツで鉄鋼産業を中心に隆盛を誇っていたエッフェンベルグ家。ナチスが政権を担うことになってエッフェンベルグ家の当主であるヨアヒム男爵(アルブレヒト・シェーンハルス)は自らの誕生日の祝いの席で、これからはナチス寄りの立場を鮮明にし、自分の側近である副社長にナチスの突撃隊員でもあるコンスタンティン(ラインハルト・コルデホフ)を任命する。その数時間前に国会議事堂が爆破(ドイツ国会議事堂放火事件)され、反ナチス体制側だったヨアヒムの娘婿のヘルベルト(ウンベルト・オルシーニ)を一族から追い出すことになり、しかも彼は国会議事堂放火の罪で国外へ逃亡することになる。そんな時にヨアヒムが何者かにヘルベルトの拳銃によって射殺される事件が発生してしまい・・・

 ヨアヒム男爵を長とするエッフェンベルグ家の壮大な内輪揉めが発生。身内や会社の重役、そしてナチス親衛隊の偉いさんを交えての裏切り、騙し合い、殺し合いが繰り広げられる。そんなエッフェンベルグ家の中でも、特に変わり者なのがヨアヒムの孫に当たり、父親は先の大戦で死亡したマルティン(ヘルムート・バーガー)。最も政治、会社のことに興味がない人物なのだが、マルティンはヨアヒム家の直系であるために、何かと権力争いに利用される立場になってしまう。しかも、笑えるのが彼のキャラクター設定。女装好き、ロリコン、ゲイ、そして母親のゾフィー(イングリッド・チューリン)を強姦してしまうような変態野郎。弱みを握られてアッチやコッチから脅され、コロコロと立ち位置を変えるいい加減な人間として描かれているのだが、こんな奴が居るか~?なんて思えるぐらいの個性的過ぎる設定なのだが、これが観終わった後に考えると、実は何かと考えさせられる暗喩的な人間だと気づかされる。
 ナチスの中でも親衛隊と突撃隊があり、親衛隊による突撃隊を粛清する『長いナイフの夜』も描かれているが、この馬鹿騒ぎシーンは強烈なインパクト。現実はこの事件によってヒットラーによる独裁政治の行方は決定したのだが、この場面はナチズム批判を感じさせる名演出シーンだと言えるだろう。
 ドイツの退廃的ムードが気持ち悪く感じたりもするが、ナチスの狂気、それに抗うことが出来ない地獄の世の中を感じさせ、鉄鋼所から猛烈な勢いで湧き出る火炎が人間の欲望を象徴する。映画にひたすら楽しさを追求する人には向かないのは確かだが、ナチスの怖さを知りたい人、知らない人も多いと思うのだが第二次世界大戦前におけるナチスドイツを知りたい人、とことん人間の闇の部分を追求したい人、ドロドロの人間関係の映画が好きな人、そしてルキノ・ヴィスコンティ監督作品と聞いて心が躍る人に今回は地獄に堕ちた勇者どもをお勧め映画に挙げておこう。繰り返すが、最初から登場人物の顔と名前と人間関係を必死で頭に叩き込んで観るつもりでご鑑賞を

 監督は前述したルキノ・ヴィスコンティ。イタリア映画のみならず世界に名を遺した大映像作家。デビュー作品から最後まで名作を撮り続けた偉大なる巨匠。本作も含めて彼の作品は好き嫌いが分かれると思うが、個人的に俺が彼の作品で最も好きなのはアラン・ドロン主演の若者たちのすべて、他に遺作となったイノセント、イタリアの時代の変遷を老教授の心に染みこませた家族の肖像、女の情念を描いた夏の嵐はビスコンティ監督は敷居が高いと思っている人でも比較的観れると思います。他にサスペンス映画としてフィルムノワールの代表作品としてジェームズ・M・ケインの小説の映画化郵便配達は二度ベルを鳴らすは初期のヴィスコンティ監督作品としてお勧めです。

 

 
 
 




 






 




 
 

 

 
 
 


 
 



 

 

 
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映画 戦艦ポチョムキン(1925) 映画史において革命的な作品です

2023年06月10日 | 映画(さ行)
 1925年のソ連時代の映画、ということで相当古いし、もちろんモノクロ、サイレント。本作のハイライトシーンの舞台となるオデッサの階段だが、現在におけるウクライナに位置し、このシーンのおかげで戦艦ポチョムキンの名は永遠に語り継がれ、映画史上に燦燦と輝く名作となった。今回俺自身がやっと観ることが出来たのだが、流石の俺もモノクロ、サイレント、そしてソ連映画となると本当に見応えがあるのか不安だったのが、今に至るまでズルズルと観るのを引き延ばしてきた原因の一つ。恐らく多くの人も俺と同じ想いを持っている人も多いはずだが・・・

 早速だが、実際に起きた戦艦ポチョムキンの反乱を基にしたストーリーの紹介を。
 戦艦ポチョムキンが航海している最中の出来事。日頃の上官の仕打ちに水兵達は不平不満を募らせていたのだが、ある事を切っ掛けに水兵達の不満が爆発する。それは、うじ虫の湧いた肉のスープを無理矢理飲まされそうになったこと。そんなスープなど水兵の誰も飲んでいないのだが、上司から非情な宣告が通知される。それはスープを飲んでいなかった者は銃殺刑に晒されること。その宣告を切っ掛けに水兵達は一致団結して、上官達に立ち向かい戦艦ポチョムキンを乗っ取るのだが・・・

 あらすじにも書いたが肉に湧き踊っている「うじ虫」の様子の見せ方のアイデアに感心させられた。1つ間違えればグロテスクの極みだが、モノクロの映像ということもあり不快感はない。むしろ帝政ロシアの専制政治の批判に対するメタファーとして効いてくる。
 そして戦艦ポチョムキンを乗っ取って、オデッサに入港してからのシーン。そこまでに宗教、市民の不平不満等などを描いて見せるなど、ソ連万歳のシーンが色々あったように思えたが、そんな物を忘れてしまいそうになるぐらいぶっ飛んだシーンが、冒頭で述べたオデッサの階段における虐殺シーン。このシーンを面白いと書いてしまうと、このご時世においては非常に不謹慎も甚だしいのは承知しているが、一気に飲み込まれるぐらいの勢いで俺の脳内を活性化させられた。
 オデッサの階段が映画史において革命をもたらし、後々においてブライアン・デ・パルマ監督も自らの作品において露骨にパクっているし、もしかしたら黒澤明監督の普及の名作である七人の侍もあれほど面白い映画にならなかったかもしれない。
 古すぎる、サイレント、モノクロなんて理由で敬遠してたら勿体ない面白さが、本作にはある。そして上映時間も75分と短いのも有難い。出来ればもっと平和な時に観て欲しいと思ったりしたが、あんまり観るのを先延ばしにして欲しくないぐらいの凄さがある、ということで今回は戦艦ポチョムキンをお勧め映画として挙げておこう

 監督はセルゲイン・エイゼンシュテイン。本作で才能を見せつけたが、けっこうな早死にしているのであんまり作品が多くないのが残念。この監督では本作しか観ていないが、イワン雷帝が観たいです。





 
 
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映画 サンセット大通り(1950) 映画界の内幕をバラします

2023年06月07日 | 映画(さ行)
 元国会議員で暴露系YouTuberを名乗る〇〇シーが逮捕されたが、今回紹介する映画サンセット大通りは同じ暴露系でも、映画界の内幕を暴き出した映画。最近でもハリウッドの内幕を描いた映画は多いが、本作はその走りであり、それらの映画に大きな影響を与えているのは間違いあるまい。
 かなり古い映画であり、今では古典的名作として挙げられることのある映画ではあるが、昔のサイレント映画に造詣が深い人にとってはたまらないシーンが連発。なんせ実名はバンバン出てくるし、サイレント映画界時代の大物だったあの俳優、映画監督も本人役で登場する。そういった意味ではサイレント映画にオマージュを捧げているようにも思える映画だ。
 さて、本作を観る前に知っておきたい事として大まかな映画の時代の流れの説明が少し必要だろう。だいたい1900年頃に映画は始まったようだが映像はモノクロ(白黒)で、サイレント(無声映画)。しかし、1920年代後半からトーキー(声有りの映画)となり、やがてカラー映画も作られることになる。そんな映画の流れに被害を受けたのがサイレント時代に活躍した女優たち。サイレントにモノクロの時代なら美人や可愛い子ちゃんであれば、映画スターの座に居続けられるとしたものだが、それがトーキーになってくると台詞は棒読みではいけないし、訛りがキツイ、発音が悪いとかも致命傷になりかねない。更にモノクロだと顔のシワやシミがバレなかったりで誤魔化しが利かすことができるが、カラーになるとそれらをカバーするのが大変だし、モノクロだと美人だと思っていたのにカラーになったら案外だったなんてこともあり得たりする。更なる加齢による容姿の衰えはモノクロ映画全盛期にスターの座を掴みとっていた女優達の多くは、このような弊害によって急に仕事が無くなったりして、次第に忘れられた存在になってしまうなんてことも多々あった。そして本作が公開された1950年という時を想うと、既にトーキー全盛であり、サイレント時代に活躍した映画女優にとっては如何に厳しい時代だったか、今の人にも想像できるだろう。
 
 長い前触れはこのぐらいにしておいて、本題のストーリーをできるだけ簡単に紹介しよう。
 ハリウッドのサンセット大通りの豪邸で独りの男がプールにうつ伏せで浮かぶ格好で死んでいる男がいる。彼は金に困っていて売れない二流の脚本家であり、名前はギリス(ウィリアム・ホールデン)。彼は何故死んでしまったのか?
 ギリスが死亡する半年前のこと、彼はすっかり生活に困窮し車の取り立てに追われていた。取り立てから逃げおおせた所が、ハリウッドのサンセット大通りにある外見は幽霊屋敷化した豪邸。恐る恐る家の中に入っていくと、そこにはサイレント映画時代の大スター女優であったノーマ・デズモンド(グロリア・スワソン)と怪しげな雰囲気をしている執事のマックス(エリッヒ・フォン・シュトラハイム)が住んでいた。外見とは裏腹に、家の中は結構なきらびやか。最初こそはギリスは追い返されそうになるが、どういうわけか、ノーマからこの家に住んでも良いと言われる。いかがわしい雰囲気が漂うこの家から出て行きたかったギリスだったが、結局は住みこむだけでカネは貰えるし居つくことに決める。しかし、ノーマの過去の栄光に縋り付く妄想は次第に激しくなり、寄りに寄って彼女に惚れられてしまっては益々の不自由さを感じる。脚本家としてハリウッドで成功する夢を全て捨てて、田舎へ帰る決心をしたギリスだったのだが、冒頭の悲劇が起きてしまい・・・

 死亡した人間が『どうして私はこんな事になったのでしょう?』って観客に問いかけてストーリーが進み、ちょいちょい死亡した男のナレーションが入る構成。今では結構このようなスタイルの映画はあるが、当時は相当に珍しいように思う。演出が秀逸なお陰で、この死亡した男性の遺体の撮り方が魅せる。
 さて、この嘗ての大スターであるノーマ・デズモンドだが過去にしがみ付く様子が怖いし、また銀幕に復帰するためのストイックさも怖い。ノーマを演じるグロリア・スワソンだが、この人自体がサイレント期の大スター女優。実は彼女は等身大の自分を本作で演じていたことになる。そして、このような背景が最後の最後で本領発揮の名場面につながるのだ。
 そして、執事のマックスだが異様な雰囲気を醸し出しているが、この人の正体をここでバラすことは止めておくが、演じるエリッヒ・フォン・シュトラハイムを知ると、この映画の非常に計算されいることが良く理解できるだろう。そして、この人物もそれまでは何だか不気味だったのが、最後に一気に光輝く。
 サスペンスタッチでフィルムノワールの典型的な作品だが、最後の最後に強烈なシーンで魅せるから、本作の評価は非常に高い。もちろん最後の最後だけが優れた映画ではない。本作の脚本家はギリスのような二流脚本家ではないことが、映画全体の台詞からよくわかるし、ちょいちょいシニカルな笑いもある。俺が印象的だったのが、ノーマが自宅にかつてのサイレント全盛の映画スターを集めてカード遊びをしているシーンがあるのだが、その時にギリスが語る台詞は笑えた。
 ただでさえ人生負け組みのギリスがノーマによって追いつめられる様子はホラー映画に近いし、非常に洗練されたタッチは演出の妙を感じさせる。あまりにも古い映画なので、本作の登場人物に対して感情移入し難い面はあるかもしれないが、古い映画をよく知っている人にとっては最初の方にも述べたように色々な意味で楽しめる。もちろん映画の方も見応え充分でサスペンス好きな方なら非常に楽しめる。暴露系と言ってしまうと最近では非常に印象の悪さを伴ってしまうのが残念だが、演出のテクニック、シニカルな笑い、ストーリー構成といった玄人受けする映画として今回はサンセット大通りをお勧めに挙げておこう

 監督はビリー・ワイルダー。何回もこのブログでは書いているが、俺の最も大好きな映画監督。随所にテクニックを感じさせる演出は本当に楽しいし、本作のようなサスペンス、ラブコメになかなかに得意幅が広い監督。色々とお勧め映画はあるが、あえて一作だけ挙げるとアパートの鍵貸しますは何回でも観れます







 

 

 
 
 

















 
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映画 三人の妻への手紙(1949) 洗練された映画です

2022年05月29日 | 映画(さ行)
 昔の映画監督には非常にお洒落で落語のような思わず唸らさせられる作品を撮る監督が多くいた。例えばエルンスト・ルビッチ、フランク・キャプラ、ビリー・ワイルダーのような監督は本当に抜群のテクニックで映画ファンを楽しまさせてくれる。そのような監督の中でジョーゼフ・L・マンキーウィッツを忘れてはならないだろう。今回紹介する映画三人の妻への手紙は彼の演出力が活かされた作品で、最後の終わり方もなかなか洒落ている。まあ、相当昔の映画であり当然時代背景も今とは違うから、このようなストーリーは現在では通用しないだろうが、とにかくセンスが良い作品だ。

 駆け落ちなんて要素が入ってくるが、楽しく観られるストーリーの紹介を。
 ニューヨーク近郊において、デボラ(ジーン・クレイン)、ローラ(リンダ・ダーネル)、リタ(アン・サザーン)の女性達は子供達のボランティアでピクニックに行くために遊覧船に乗ろうとしていた。そこへ、自転車にのって少年がやってきて、3人の共通の友人である美女アディ(声のみ)からの手紙を渡される。その内容はアディが3人のうちの誰かの夫とこれから駆け落ちする、という内容だった。近くに公衆電話があったのだが、手紙の内容を読んでいる間に船は出発。3人は平静を装いながらも、実は三人とも夫がアディと一緒に駆け落ちしてしまう理由が思いあたるのだった。三人の妻たちはボランティア活動どころではなく、早く自宅へ帰って夫がアディと駆け落ちしないかそればかり気になってしまい・・・

 もう今だったら船で陸を離れても携帯電話で直ぐに確認できるだが、本作が製作された時代はだいぶ昔。船からの俯瞰的なショットで公衆電話が写されるシーンがあるのだが、何ともやるせないシーンだ。本作が上手いのが駆け落ちを計画しているアディというのが、一回も登場しないこと。しかし、誰もが羨むような美女であることをわからせるような演出がなされているのが巧みな構成。しかもアディというのが色々なシーンでナレーターとして入ってくるので、どれだけの美人なのか考えさせられたりしてストーリーに没入できる。もちろん三人の妻たちの誰の夫がアディと駆け落ちしたのかと考えることによって映画に惹きつけられる。そして、ラストシーンでは思わずなるほど!と楽しめたし、オチも良かった。この映画は公衆電話や手紙、その他の小道具が巧みに使われていて監督の演出の力を感じるし、駆け落ちを題材にしながらも観ていて楽しめるし、笑えることもできる。
 出演陣の三人の妻たちは美人ばかりであり、しかもまだ売れていない頃のカーク・ダグラスが出演しているのも映画ファンには楽しめるだろう。最近にはない上質な映画を観たい人に今回は三人の妻への手紙をお勧めに挙げておこう

 監督は前述したジョーゼフ・L・マンキーウィッツ。お勧めは幽霊と未亡人イヴの総てジュリアス・シーザー裸足の伯爵夫人等がお勧めです。




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映画 ジェミニマン(2019) 驚異の映像を観ることになります

2022年04月03日 | 映画(さ行)
 先日の米アカデミー受賞式の時に、司会者に妻のことを弄られて怒ったウィル・スミスが司会者に平手打ちをぶちかました。俺なんかは流石はウィル・スミス!自分の妻が精神的にダメージを背負わされるようなことを言われて、黙っていたんでは男が廃ると思って、ウィル・スミスの行動を絶賛していた。そして、やはり暴力を行ったことに対してアカデミー主演男優賞受賞時には涙を流しながら謝っていたが、なんだかんだ言っても暴力はいけない。謝罪したウィル・スミスに対して、俺なんかはあの状況でよく謝ったよ、と思いますます彼のファンになったぐらいだ。
 しかしながら、アメリカではあのウィル・スミスの行動に批判が多いし、アカデミー会員を剥奪されるなど、ペナルティーを背負ってしまった。しかし、人を傷つけるような最低な冗談をほざいた司会者に対しては、今のところはお咎めなし。確かに暴力はいけないが、言葉の暴力でショックを受けている人もこの世の中にはたくさんいる。この世の中は何かが狂っている。だいたい、飲み会で参加者を騙してピンハネしている奴が、議員になって市民の税金で報酬をもらっている世の中が存在していることが、正気の沙汰じゃないだろう。

 さて、話が横にズレまくったがウィル・スミスで思い出した映画が今回紹介する映画ジェミニマン。映画俳優歴としては既に30年近くになると思うが、出演する作品は軒並み大ヒット。ドル箱スターと呼ばれるに相応しい活躍をしているので、今後の彼の映画俳優としての活動が心配だ。その中でもジェミニマンは比較的最近の作品であり、50歳を超えてまだまだアクション映画で頑張る姿が嬉しい作品だ。ちなみに今回のウィル・スミスの役だが、他の映画でもよく見られる引退を決意したヒットマン(暗殺者)。もう既に72人も殺してきた凄腕スナイパー。どうせなら100人を撃ち殺してから引退しろよ!なんて思ったりしたが、本作の台詞にも出てくるが、良心が芽生えてしまうと、暗殺者としてはもう潮時。そもそも溺れそうになった経験から水が嫌いだったり、蜂アレルギーを持っている弱点がある時点で暗殺者として失格だと思ったのだが、完璧な暗殺者が主人公よりも弱点を抱えている暗殺者を主人公にした方が面白いということに気付いたキャラクター設定は確かに本作を面白くした。
 そもそも、引退を決意したヒットマンが何かと妨害されるというのはよくあるストーリー。しかし、この映画が超面白くさせているのが自分と戦う相手。しかも、超驚きのアクションシーンを見せてくれる。

 それでは簡単にストーリーの紹介を。
 ベルギー、リエージュにおいて。高速列車が走っている乗客の中に居るテロリストを狙ってDIAに所属する凄腕スナイパーであるヘンリー(ウィル・スミス)は、その時が来るのを、準備万端で待っていた。高速列車がトンネルに入る前に作戦成功で、テロリストを殺すことに成功。しかし、ヘンリーは運が悪ければ全く関係のない少女を撃ってしまうところだったし、ターゲットの頭部を狙ったのに首筋に命中してしまったことに、ヒットマンとして自信がなくなりDIAを辞めて、暗殺者を引退することに決めた。
 しかし、ある日のこと友人のジャックに呼び出され、ヘンリーが殺した相手はテロリストではなく、分子生物学者であることを知らされる。その情報を知って以来、ヘンリーはDIAの暗殺部隊に命を狙われるが、女性DIAの職員であるダニー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)を巻き込み、元DIAのパイロットで友人のバロン(ベネディクト・ウォン)の協力を得て、バロンの自宅があるコロンビアに逃げる。
 しかしながら、ヘンリーの行動は何故かバレバレ。世界中で悪事を働く組織ジェミニのリーダーであるヴェリス(クライブ・オーウェン)はヘンリー抹殺のために新たなるヒットマンをヘンリーを差し向けるのだが、その新たなるヒットマンの正体は・・・

 実は相手のヒットマンは何と自分のクローン。しかも、23歳の若者だ。23歳の自分のクローンとハイレベルな戦いを見せる。特にバイクを使ったアクションシーンには驚いた。そして何より驚くのが、23歳のウィル・スミスのクローンだが、本物の人間が演じているのではなくて、実写ではないことを知って驚くだろう。実はCGで作られたようで恐るべき映像革新を本作で見ることが出来るのだ。動き、顔の表情、あり得ないレベルであり、本作を観れば、もう大スターに莫大なギャラを払う必要はない。いや、CGで偽物を作り上げるのに大幅に予算を計上する必要があるか。

 とにかくウィル・スミスが可哀想と思う人、革新的映像を使った映画を観たい人、自分VS若き23歳の自分といったあり得ない戦いを観たい人、戦争を利用して莫大な儲けを企んでいる組織があることに怒りを感じる人に今回はジェミニマンをお勧め映画として挙げておこう。

 監督はアジア人で最もハリウッドで成功しているアン・リー監督。アメコミ、文芸、ヒューマンドラマといった非常に幅広い分野で傑作を生みだしている名監督。お勧めは台湾時代の時の恋人たちの食卓、アメリカ南北戦争を舞台としたシビル・ガン 楽園をください、ワイヤーアクションをふんだんに使った任侠映画グリーン・ディスティニー、マーベル映画のブームを起こしたエリック・バナが主演のハルク、第二次世界大戦の日中戦争を舞台にしたエロエロ映画ラスト・コーション、トラと一緒に海を漂流するライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日あたりがお勧めです。
 
 

 



  
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映画 殺意の瞬間(1956) 男は騙されやすいです

2022年03月21日 | 映画(さ行)
 数多くの傑作を遺したジュリアン・デュヴィヴィエと名優ジャン・ギャバンだが、映画史に遺る名コンビと言っても良いと思うのだが、本作もなかなか派手さは無いがフランス映画らしい渋いサスペンス映画になっている。冒頭から流れるシャンソン風の音楽が非常に心地良いのだが、あまりにも恐ろしい歌詞に俺は凍りついてしまったが、その時だけ目をつぶって聴けば良かった。
 ジャン・ギャバン演じる50歳を超えているように見えるオジサンが主演だが、礼儀正しく思いやりのある良い人なのだが、こういう役を本当に彼は上手く演じる。特に本作の彼はマフィアの親分ではなく有名料理店のコックの役だから、尚更良い人に見える。しかし、いつもジャン・ギャバン演じる主人公の欠点はすぐに女性を好きになってロクな結末にならないこと。本作でも20歳ぐらいの可愛い女性に痛い目に遭わされる。

 男って若くて綺麗な女性には騙されやすいと改めて知らされるストーリーの紹介を。
 アンドレ(ジャン・ギャバン)は離婚をしていて子供はいないが、パリの有名料理店のオーナー兼料理長。毎日、有力者が訪れる有名な店だ。そして、彼には息子以上に年齢が離れているが、ジェラール(ジェラール・フィリップ)という知り合いがいるのだが、まるで本当の父親のように面倒をみてやっている。
 ある日こと、アンドレの元嫁であるガブリエル(リュシエンヌ・ボガエル)の娘であり18歳のカトリーヌ(ダニエル・ドロルム)が、マルセイユからアンドレを訪ねてやって来た。20年も前にガブリエルとは離婚しているので、アンドレとカトリーヌは全く血の繋がっていない他人。しかし、カトリーヌは数日前に母のガブリエルが亡くなって、行く場所も無いのでここにやって来たと告げる。どことなく水ぼらしい姿をしたカトリーヌが可哀想に感じ、彼の家に泊めることにし、仕事も与えるようにしたのだが、実はカトリーヌは結構な悪女であり・・・

 離婚して独り者のアンドレだが、お手伝いのおばさん、そしてディスコを経営している母親が近くにおり、この2人の年配の女性が非常にしっかりしているし、巧みなキャラクター設定で重要な役を演じている。この年配の女性がしっかりしているので、もう50歳の中年以上のオジサンが人生の失敗を繰り返さないように止めている。
 しかし、やばいのが小悪魔的美少女であるカトリーヌ。我々のようなオジサンになると、みっともないのだが、少し若い女の子から声を掛けられると大喜びでウキウキしてしまう。本作のジャン・ギャバンもすっかりカトリーヌのあらゆる嘘に騙されて、息子のように仲の良かったジェラールとは完全に仲違いしてしまい、危うく自分の命だけでなく全財産を乗っ取られそうになる。こういう映画を観ると、全く知らない若い女性から声を掛けられると、喜んでばかりいないで少しは相手の企みを考えるようにしなければいけないと思った。
 少し苦い味がするようなサスペンス映画であり、最初は性格の良さそうな可愛い女の子が次第に本性を見せていく展開にスリルを感じさせる。サスペンス映画とはいえ、中年男の悲哀を感じさせる殺意の瞬間を今回はお勧め映画に挙げておこう。

 監督は前述したジュリアン・デュヴィヴィエ。ジャン・ギャバンとのコンビでは望郷が素晴らしいし、地の果てを行くもお勧め。他にオムニバス風に展開される舞踏会の手帖、幻想的な雰囲気が漂うわが青春のマリアンヌ、アラン・ドロン主演で遺作の悪魔のようなあなた等お勧め多数です。
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