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映画 ジャスティス(1979) 悩める弁護士が見れます

2020年06月19日 | 映画(さ行)
 ハリウッド映画というのは本当に法廷映画の分野において傑作が多いが、今回紹介する映画ジャスティスもその例に漏れない。ちなみにジャスティスとは正義という意味。しかしながら、正義の意味をマトモに理解している人間は俺も含めて殆ど居ないし、人によって考える正義というのは違うのかもしれない。
 さて、アル・パチーノ演じる主人公である弁護士の最初の登場シーンが非常に面白い。いきなり刑務所に投獄されている惨めな姿が見られる。それにしても、なぜ弁護士ともあろう人間が刑務所に入っているのか。そこには憧れの職業である弁護士の姿はまるでない。法廷映画ならではのサスペンスやスリルは二の次。そんなことよりも真っ当な弁護士が何かと悪戦苦闘する姿を通して、司法制度の限界、法の矛盾が描かれている。法治主義の下に生きる我々にとって、なかなか考えさせられる内容だ。
 
 それでは弁護士という職業がいかに大変な仕事であるかが理解できるストーリーの紹介を
 アメリカのボルチモアが舞台。刑務所に若い弁護士であるアーサー(アル・パチーノ)が拘留されていた。普段からそりが合わずに対立していたフレミング判事(ジョン・フォーサイス)を裁判中に殴ってしまったのだ。優秀で何かと正義漢の熱い彼のもとには、拘留所を出た後でも直ぐに仕事が舞い込み、継続中の仕事も重なり何かと忙しい。
 ある日のこと、フレミング判事が強姦罪で告訴される。普段から彼を嫌っているアーサーと同僚たちはザマ~見ろとばかりに笑いこけ、そして彼は有罪だと揶揄するのだが、あろうことにフレミング判事はアーサーに弁護を頼み出てきた。当初は弁護を断っていたのだが・・・

 無罪の証拠があるのに未だに刑務所から脱してやれない苦しみ、仲間の怠慢でせいで依頼人が自殺してしまったり、大嫌いな人間なのに弁護を引き受けさせられたりで次々と悩ましい問題が主人公に襲い掛かる。しかも、自殺願望を持っている判事、精神がすっかりおかしくなってしまった弁護士、デタラメな裁判など彼を取り巻く法曹界の人間のダメっぷり、そして正当に裁くことができない法の矛盾等がマトモな弁護士である主人公を苦しめる。
 弁護士になりたいと思っている人に、まずは本作を観ろと言いたい。それからでも難関な司法試験を受けても遅くない。だいたい公職選挙法に違反している奴が法務大臣になってしまう今日この頃。ロクでもない奴が権力を握ってしまうのだから、憧れの職業に就いてもその後は色々なジレンマに悩まされるだろう。
 個性的な登場人物達は楽しいし、使用されている音楽は格好良いし、社会派作品にありがちな退屈さはない。そして所詮は人間が作り上げた法律、制度に完璧なものなどあり得ないことを気づかせてくれる内容が良い。何はともあれアル・パチーノが好きだけれど本作は未見の人、法曹界の現実を知りたい人、弁護士になりたがっている人、正義という言葉が大好きな人・・・等に今回はジャスティスをお勧め映画に挙げておこう

 監督はノーマン・ジュイソン。人種差別をテーマに描いた映画を時々見受けるが、エンタメ性に優れた作品も多い。白人署長と黒人刑事が対立しながらも殺人事件捜査に協力しあう夜の大捜査線、ポーカー試合を舞台にしたギャンブル映画シンシナティ・キッド、大人の気分が味わえるサスペンス映画華麗なる賭け、ロマンチックコメディの月の輝く夜に、実話を基に冤罪で刑務所に入れられてしまった黒人ボクサーが自由を勝ち取るまでの姿を描いたザ・ハリケーン等、お勧め多数の名監督です。

 

 
 
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映画 砂と霧の家(2003) House(ハウス)とHome(ホーム)の違いが理解できる?

2020年02月03日 | 映画(さ行)
 毎日、何かと愚痴をこぼしてばかりいる俺だが、この寒い冬でも暖かい家に帰って布団の中で寝れることに幸せを感じる。しかしながら、今こうしている間にも自分の住む家が無くなってしまったり、手放さないといけない事が起きるようなことが充分にあり得るのは、災害の多い日本に住んでいる者ならば感じること。誰にだって好まざるともホームレスになってしまう可能性はあるのだ。
 さて、一軒の家を巡って元住人と現在の住人との激しい対立を描いた映画が今回紹介する砂と霧の家。原題のHouse of Sand and Fogを直訳しただけの邦題だが、これが非常に意味深で逸品なタイトル名だということは本作を観ればわかる。

 もしも自分の住む家がなくなったらどうしよう、なんて考えさせられるストーリーの紹介を。
 夫に家を出ていかれ精神的ダメージを背負ったキャシー(ジェニファー・コネリー)は、亡き父親の遺産である家で独り暮らし。しかし、わずか500ドルの税金をうっかり滞納してしまったために家を差し押さえられてしまう。キャシーが弁護士に相談へ訪れたところ、行政の手違いだと判明。難なく差し押さえを回避できると思っていたのだが、既に家は競売に掛けられており、イランから亡命してきた元高官のベラーニ(ベン・キングズレー)一家に買われていた・・・

 イスラム革命のあおりを受けてイランから亡命してきたベラーニだが、故郷では大佐である高官だった男なだけにプライドが高い。しかしアメリカに来てからは昼は肉体労働、夜は売店でバイトをしている屈辱の日々。そんな彼の目に相場の4分の1という非常に安い物件が目に入った。時代背景はリーマンショック前であり、しかもこの家から海が見渡せるように祖国を思い出させる。そして、しばらくしてからは、この家を相場で売って大金を得て、イランでの優雅な暮らしをアメリカの地でもう一度なんて野心に燃えている。それだけに偶然見つけたとは言え、この家に対する執着心は並外れている。一方キャシーの方も、このまま黙って見過ごすとホームレスになってしまうだけでなく、父親の遺産であり様々な思い出が詰まっている家を簡単に手放せない。
 お互いに引くに引けない事情があるだけに、一軒の家の所有を巡って激しいバトルが繰り広げられる。しかも、なかなか着地点が想像できないので先々の展開が気になり、退屈しないで観ることができる。そして、主人公の2人だけでなく脇役に至るまで細かい人間描写が優れているのも素晴らしい。特にキャシー側の助っ人的な役割を果たす地元の副保安官の男のキャラ設定が抜群。そりゃ~、キャシーを演じるジェニファー・コネリーみたいな美人でプロポーションも抜群だったら、助けたくなるのも当然ってか。

 ストーリーはドンドン悪い方向へ転がっていくし、結末もなんだか後味が悪く感じる。しかし、観終わった後に多くの人は感じるだろう。家よりももっと大切な物があるんだということを。ひたすら明るくて楽しい映画しか好まない人にはお勧めできないが、個人的には本作のような暗闇の中で一寸の灯りが見えるような映画はお気に入り。アメリカとイランの仲がただならぬ気配が漂っている今だからこそ今回は砂と霧の家をお勧め映画として挙げておこう。



 監督はヴァディム・パールマン。非常に斬新な構成と驚愕な結末に感動させられるダイアナの選択がお勧めです。


 
 

 

 
 
 
 
  
 
 
 
 
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映画 シャイニング(1980) スティーヴン・キングVSスタンリー・キューブリック。才能のぶつかり合いです

2019年08月14日 | 映画(さ行)
 アメリカのモダンホラーの小説家スティーヴン・キングの作品は多く映画化されているが、大ヒット作もあれば、全く見向きされない作品も多い。もちろん今回紹介するのは大ヒットした方の作品。出来上がった映画を観たスティーヴン・キングが激怒したのが、今回紹介する映画シャイニング。一応小説の方も買ったのだが、読むことなく埃が被ったままになってしまっていて、原作と映画の違いはわからない。まあ、原作と映画が大いに違うというのはよくあること。しかし、スティーヴン・キングが後に自ら監修を務めてテレビドラマ化するとは、かなり映画の内容に不満をもっていたことが確かだ。 
 しかし、原作者が映画化版に腹を立てていたからと言って映画の出来が悪いとは限らない。だいたい本作の監督は天才スタンリー・キューブリック。その華麗なる映像表現、カメラワークは本作においても魅せるように小説界と映画界の異端児及び天才同士の対決が見られる趣がある。
 ストーリーは売れない作家や超能力が出てくるように、この原作者らしさが出ているホラー。今ほど貧乏暇なしと感じさせる時代は無いと思うのだが、本作の主人公らしき(?)家族たちは半年の間だが、誰も居ない豪華ホテルで生活できるようになる。邪魔者は入らず、食料の貯蓄は充分にあり、時間はたっぷりあるような、働けども働けども楽にならないような俺にしてみれば憧れるような生活をしている家族を見ることができる、と思っていたら後半は怒涛の如く恐怖が襲い掛かってくる。退屈に感じるような生活が一転して、ホテルの中や雪が降り積もる庭園を逃げ回るような慌ただしい展開。こういう映画を観るとやっぱり人間同士の付き合いって大切なんだと心からそう思う。

 大金持ちのように、大きな家で暮らしたいと思うような気持が一気に吹っ飛ぶようなストーリーの紹介を。
 小説家志望のジャック(ジャック・ニコルソン)は管理人として、コロラド州の山頂にある由緒あるホテルに妻のウェンディ(シェリー・デュバル)と息子のダニー(ダニー・ロイド)の三人でやって来た。この地は冬は豪雪地帯になってしまい、利用する客はいないので従業員も去り春を迎えるまでの半年間、家族3人だけでホテル暮らしをすることになる。
 しかし、シャイニングと呼ばれる超能力を持つダニーはホテルに来る前から怖い夢を見るようになる。それはホテルに来てからも同じで夢に現れるだけでなく、実際に現れたりする。そして、邪魔も入らないホテルで執筆活動をしていたジャックは精神が狂いだし、その狂気じみた行動は、妻のウェンディと息子のダニーに向けられるのだ・・・

 シャイニングと呼ばれる超能力だが、ダニーともう1人持っている者が出てくるのだが、俺が見たところ超能力が全く活かされていないように見えた。まあ、あるに越したことはないが。しかし、この映画の見所はやっぱりジャック・ニコルソンの壊れっぷりだろう。普通に立っているだけでも怖い顔をしているのに、更なるオーバーアクトが恐怖を助長する。また、奥さん役のシェリー・デュバルが良い。恐怖に歪んだ顔がとても素晴らしいし、この人も元々の顔がホラー映画に合っている。
 そんな夫婦役の両者の演技が素晴らしいが、キューブリック監督のイマジネーションは流石だ。巨大迷路、双子の少女、トイレでの会話シーン、ワープロで打たれた文字など一つ一つのシーンが非常に印象的で効果的。そして、俳優の表情を写し出すシーンがちょっと変わった角度から撮られていたりしているのが、常人にはないセンスを感じさせるし面白い。
 ホラー映画なのに芸術的センスを求めている人、ジャック・ニコルソンのやり過ぎな演技を見たい人、ハラハラドキドキする映画を観たい人、冬の雪山が好きな人・・・等に今回は映画シャイニングをお勧めとして挙げておこう

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 監督は前述したスタンリー・キューブリック監督。この世に多くの名作、傑作を遺した天才であり、完璧主義者。暴力、セックス、ドラッグ、そして台詞、映像、音楽で魅せる近未来を描いた時計仕掛けのオレンジ、スラング用語の嵐のベトナム戦争映画のフルメタルジャケット、一分単位の時間にこだわりを感じさせる犯罪映画の現金に体を張れ、栄光と転落といったありきたりのテーマを完璧な映像で描いたバリー・リンドン、核兵器の恐怖を描いた博士の異常な愛情、暴政極まるローマ帝国の反乱を起こした剣闘士を描いた伝記映画スパルタカスなどお勧め多数の監督です。
 
 

 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

 


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映画 聖なる酔っ払い伝説(1988) ルトガー・ハウアー主演です

2019年08月12日 | 映画(さ行)
 先日ブレード・ランナーやヒッチャー等の映画において悪役で強烈な個性を発揮したルトガー・ハウアーが亡くなられた。享年75歳、合掌。
 どちらかと言うと脇役に回ってインパクトを残すタイプの俳優だが、本作ではそんなイメージをがらりと変えて、橋の下で新聞に包まって寝ているような乞食の役で堂々たる主演している映画が今回紹介する聖なる酔っ払い伝説。最近は酔っぱらった勢いで言いたい放題、やりたい放題の政治家の行動が目に余るが、そうは言っても飲まなきゃやってられない気分になるものわからんでもない。そんな酒飲みにでも優しい手を差し伸べてくれる暖かい気持ちになれる映画だ。

 それでは人生諦めた感のある大人達に少しばかりの清涼飲料水を与えてくれるようなストーリーの紹介を。
 パリのセーヌ川における橋の下で暮らしているアンドレアス(ルトガー・ハウアー)。ある日の事、土砂降りの雨に遭ってしまい、慌てて橋の下に戻ろうとしていると、見知らぬ金持ち風の老人(アンソニー・クウェイル)から呼び止められる。そして不思議なことに、その老人が次の日曜日にある教会でお金を返すことを条件に200万フランを貸してくれる。
 アンドレアスはそんな大金を借りても返す当てなど全くないのだが、それ以来彼にはラッキーなことが次々と起こる。先ほど借りた金でワインを飲んでいると隣に座っていた人から仕事をもらったり、買った財布の中にお金が入って居たり、昔の彼女と出会ったり・・・等など。
 しかしながら、約束通りに200万フランを返そうと教会にくるのだが、何故か邪魔が入って返せないのだが、それでもアンドレアの周りで次々と奇妙な出来事が起こるのだが・・・

 俺なんかはこんな老人に一度だけでなく何度でも会いたいなんて思ってしまう。頼んでもいないのに勝手にお金を貸してくれるし、次々と自分の身に嬉しいことが起きる。前述したように知らない人から仕事を頼まれたり、買った財布の中にお金が入っていたり、昔の旧友と出会ったり、そして金持ちになっている知り合いと出会って豪華ホテルに泊まれたり、高級スーツをもらったりで羨ましいことばかり。特に俺がアンドレアが羨ましいと思ったのが、色白の可愛い女性と出会って楽しい夜を過ごしたりしたこと。しかしながら大金を借りておきながら、ロクに働かずにワインを飲みまくるから、また無一文になってしまい万事休すと思いきや、またまたあの人がやって来るなんて最高過ぎる。
 それでもどうしてアンドレアスはこんな落ちぶれた生活をしているのかと思ったりするのだが、過去のあることが原因であることをしっかり説明している描写があったりで、切ない場面も出てくる。ラッキーなことばかり続くお伽噺のような世界が描かれているのかと思いきや、ふと現実に戻されたりでそのサジ加減が抜群の構成だ。
 パリを舞台にしながらどこか錆びれた雰囲気だったり、ド派手な撃ち合いや爆発があるわけでもなく淡々とした映像にストーリー。そして、個人的には意外な結末だと思ったりするのだが、これがキリスト教的なラストシーンなのかな~?なんて考えさせられるエンディングはどこか美しく感じさせられる。
 とにかく俺の人生はどうしてこんなに辛いことばかりが起きるのかと嘆いている人、酒を飲むのが辞められない人、悪役ばっかりしているルトガー・ハウアーしか知らない人、何だか素敵な気分になる映画を観たい人に今回は聖なる酔っ払い伝説をお勧め映画として挙げておこう

聖なる酔っぱらいの伝説 [DVD]
エルマンノ・オルミ
パイオニアLDC


聖なる酔っぱらいの伝説 Blu-ray (2枚組)
ルトガー・ハウアー,アンソニー・クェイル,サンドリーヌ・デュマ
紀伊國屋書店


 監督はイタリア人のエルマンノ・オルミ。本作は非現実的なイメージがありますが、ドキュメンタリータッチにしてパルビゾン派画家のような美しい映像が楽しめるリアル感丸出しの農民達の生活を描いた木靴の樹がお勧めです。


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映画 シャーロックホームズの冒険(1970) シャーロック・ホームズが20世紀最大のミステリーに迫る?

2019年07月27日 | 映画(さ行)
 推理小説家であるコナン・ドイルが生み出した私立探偵シャーロック・ホームズ。頭脳明晰にして観察力は抜群。そんな彼が大活躍するホームズシリーズは19世紀の末に発刊されてから現在においても根強い人気を誇っている。そういえば、少し前にもガイ・リッチー監督でその名もずばりシャーロック・ホームズという映画があった。さて、本作と同じ題名の推理小説があるが今回紹介する映画版シャーロックホームズの冒険は名匠ビリー・ワイルダーI・A・L・ダイアモンドの名作を多く生み出した黄金タッグによる共同脚本によるオリジナルストーリだ。
 もちろん本作においてもシャーロック・ホームズの頼りになる相棒であるワトスン医師も登場するし、イギリス政府の重要役人である兄のマイクロフト・ホームズも登場する。そして登場人物のキャラ設定はホームズシリーズと殆ど同じ。しかし、黄金タッグの脚本による映画版はシャーロック・ホームズとワトスン医師の掛け合いで、けっこう笑わせてくれる。
 そして、何と言ってもオリジナルらしさを感じさせるのが俺が物心ついた時から噂されていた20世紀最大の怪獣伝説が折り込まれているところ。頼まれた難事件解決のついでに20世紀最大のミステリーも解決してしまうとは、さすがは英国ナンバーワンの頭脳をもっているシャーロック・ホームズ。そして今までワトスン医師は名探偵の足を引っ張るだけの存在だと思っていたのだが、それは俺の大きな勘違い。彼の存在が無ければシャーロック・ホームズの名は永遠に埋もれていたことを冒頭の場面から教えてくれる。
 
 名探偵シャーロック・ホームズの超人的な活躍を見るというよりも、ちょっぴり切ない気分にさせてくれるストーリーの紹介を。
 医者であるジョン・ワトスン(コリン・ブレークリー)の遺言にしたがって、彼の死後50年後に銀行に預けられた未公開文書が開かれる。そこには驚くべきシャーロック・ホームズ(ロバート・スティーブンス)についての秘密が隠されていた。
 19世紀末のロンドンにおいて。ホームズとワトスンの間に少々亀裂が走りかけたある日の夜のこと。ずぶ濡れになった美魔女風の女性が運び込まれる。しかも、その女性は記憶喪失にかかっており打撲の傷の痕跡も見られた。観察力と鋭い推察力でホームズは彼女の持ち物からその女性の正体がベルギー人で名前をガブリエル(ジュヌビェーヴ・パージュ)であることを知る。ホームズは機転を利かせて記憶を蘇らせ、彼女が訪れてきた理由が夫の捜索であることを知る。ホームズは早速行動を開始しようとするが、英国政府の役人である兄のマイクロソフト・ホームズ(クリストファー・リー)から、何故か今回は止めておけ!と釘をさされる。
 しかし、そんな妨害などものともしないホームズはワトスンやガブリエルと身分を偽りながら捜査を続け、事件の鍵となるスコットランドのネス湖に向かうのだが、伝説の怪獣であるネッシーを目の当たりにしてしまい・・・

 さて、シャーロック・ホームズだが事件が無い時は下宿先であるベーカー街221Bで科学の研究に勤しんでいるのだが、その熱心さは麻薬にまで手を出してしまうほど。助手であり、医者でもあるワトスンも忠告はするのだが、マイペースなホームズは彼の言うことには耳を貸さない。本作はミステリー映画の部類に入ると思うが、ホームズの私生活が垣間見られたりするところにも興味が惹かれる。
 しかし、本作を観れば改めて思わせるがビリー・ワイルダー監督は職人であること。パラソル、白いカナリア、小人達、アイテムなど小道具を巧みに使う。この熟練されたテクニックは今の映画監督に最も欠けている部分だろう。それほどハラハラドキドキすることはないが、事件解決後にはちょっぴりセンチメンタルな気分になったりで余韻が残る。
 コナン・ドイルのホームズが活躍するシリーズが好きな人、ビリー・ワイルダー監督の映画が好きな人、ネッシーって懐かしいと感じた人、笑えるシャーロック・ホームズの映画を観たい人等に今回はシャーロック・ホームズの冒険をお勧め映画として挙げておこう

シャーロック・ホームズの冒険 (特別編) [DVD]
ロバート・スティーブンス,コリン・ブレイクリー,アイリーン・ハンドル
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 監督は前述したビリー・ワイルダー。人間ドラマ、サスペンス、コメディ、社会風刺とあるゆる分野に名作を遺した名監督。あえて一本だけをお勧めとしてあげるとアパートの鍵貸しますが良い。



 

 

 
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映画 知りすぎていた男(1955) ケ・セラ・セラ~♪

2019年06月01日 | 映画(さ行)
 先日のことになるが、歌手であり女優としても活躍されていたドリス・デイさんがお亡くなりになられた。享年97歳、合掌。彼女が出演した映画で最も有名な作品と言えば今回紹介するアルフレッド・ヒッチコック監督の知りすぎていた男。歌手である彼女の持ち味が十二分に発揮された作品であり、彼女が歌う主題歌『ケ・セラ・セラ』(どんな歌かググりたい人はこちら♪→ケ・セラ・セラ)は有名だ。
 常に悩み事が多い俺なんかは自分自身によくケセラセラと言い聞かせていることが多いのだが、悪夢のような出来事が起きる本作の主人公に、このような言葉をかけるのは流石に不謹慎。小さい子供を抱える夫婦にとって、最も恐ろしい出来事が襲い掛かる。

 サスペンス映画の神様と呼ばれることが多いアルフレッド・ヒッチコック作品群の中でも非常に楽しめる部類に入るストーリーの紹介を。
 医者であるベン(ジェームズ・ステュアート)は元歌手であり妻であるジョー(ドリス・デイ)と息子の三人でアフリカのモロッコに観光しに来る。バスの中でアラブ人といざこざに遭ったときにフランス人のベルナール(ダニエル・ジェラン)に助けられたことから、彼を夜の夕食に誘う。しかし、ベルナールに急用ができてしまい夕食はベンとジョーの2人だけと思いきや、後ろに座っていたイギリス人の老夫婦から話しかけられて意気投合。翌日、この老夫婦と市場に行き見物をしていると、何やら周りが騒然としだす。アラブ人が倒れ込みながらベンの耳元で囁く。『某国の政府の要人の暗殺、アンブローズ・チャペル』と謎の言葉を残して間もなく死亡。実は死んだ男はアラブ人に変装していたベルナールであり、彼はフランスのスパイだったのだ。
 地元の警察に参考人としてベンとジョーは呼ばれたために、老夫婦に息子を預けてホテルへ先に帰らす。しかし、ベンは警察の取り調べを受けている最中に息子が老夫婦に誘拐されてしまったことを知り、絶望的な気分になりながらも息子を助けるためにロンドンへ飛ぶのだが・・・

 何気ない普通の市民である夫婦が、暗躍するスパイから聞きたくもない超重要秘密事項を知らされて息子が誘拐されてしまう。しかも、自分たちには全く関係のない国際的な陰謀に巻き込まれてしまうオマケ付き。この設定がヒッチコック監督の得意とする巻き込まれ型サスペンスだ。息子を助けたいのは当たり前だが、要人暗殺計画阻止の役割まで背負わされてしまう不運。さすがにコレは見ていてケセラセラなんて言葉を掛けられない。息子が誘拐されたことを知った時のドリス・デイの絶叫は、実際に息子を持つお母さん達なら彼女の気持ちがよくわかるだろう。
 冒頭での打楽器のシンバルを叩くシーンが、後半での演奏会でのクライマックスシーンで抜群の効果を発揮する。この演奏会が10数分ぐらいのシーンだと思うが、このスリルを感じさせる演出方法が抜群の出来で大いに感心させられる。そして、主題歌のケ・セラ・セラがこの映画を盛り上げる。渾身のドリス・デイの歌声を是非映画で聴いて欲しい。
 ショッキングな展開なのだがユーモアが他のヒッチコック作品より多く入ってくる。笑いとサスペンスが上手くミックスしていて、イギリス流のブラックジョークを見ることが出来るのもお勧めポイントだ。
 そして本作がヒッチコック監督らしいと感じさせるのが、殆ど頼りにならない警察、見ていて危なっかしい主演女優の行動力、短剣が背中に刺さる殺され方、ボケをかますギャグ、観光名所の活用、スパイ映画、意外性のある配役等など、随所に他の作品でも観ることができる彼らしさがたくさん出てくるのが良い。
 ドリス・デイケセラセラを歌っているシーンを見たい人、実はヒッチコックの映画を観たことが無いのだがどれから観たら良いのか迷っている人、名匠の熟練のテクニックを感じたい人、サスペンス映画が好きな人等などに今回は知りすぎていた男をお勧め映画として挙げておこう。

知りすぎていた男 [DVD]
ジェームズ・スチュワート,ドリス・デイ,ダニエル・ジェラン
ジェネオン・ユニバーサル


知りすぎていた男 [Blu-ray]
ジェームズ・スチュワート,ドリス・デイ,ダニエル・ジェラン
ジェネオン・ユニバーサル


 監督は前述したアルフレッド・ヒッチコック。お勧め映画が多数で人によって彼のベスト3が変わるだろうが、個人的に好きな順で5本だけ挙げると、北北西に進路を取れハリーの災難見知らぬ乗客バルカン超特急疑惑の影って感じです。



 
 
 
 
 
 




   


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映画 ザ・ダイバー(2000) 黒人ダイバー(潜水士)のお話

2019年05月22日 | 映画(さ行)
 黒人の・・・なんて内容を聞かされると、どうしても人種差別をテーマにした映画かと思われるが、確かに今回紹介する映画ザ・ダイバーも黒人に対する差別、偏見の内容がストーリーに盛り込まれている。ちなみに本作は実話。アメリカ海軍で黒人としては初めてマスターダイバーの名誉を得た潜伏士であるカール・ブラシアの半自伝映画。しかし、この映画が凄いのは人種差別、偏見を描き出すだけでなく、絶望的な状況に放り込まれながらも立ち上がろうとする熱いストーリーになっていること。時々、「どうせ俺は不細工だから女性にモテないんだ」「どうせ俺(私)は障害者だからできないんだ」なんて言い訳ばかりしている人を見かけるが、熱い想いを持った人間は多少のハンデを抱えてしまったぐらいではへこたれないものだ。

 それではロッキーとフルメタル・ジャケットを足したようなストーリーの紹介を。
 アフリカ系アメリカ人であるカール・ブラシア(キューバ・グッディング・ジュニア)は貧しい農民の子供として生まれ、父親から二度と故郷へ戻ってくるなと強く励まされ、海軍への道を進む。海軍での最初の仕事は料理人だったのだが、泳ぎの上手さを見込まれ当時としては黒人には珍しい甲板兵に抜粋される。
 ある日の事、カールの乗った船にヘリコプターが着陸に失敗し、ダイバーであるビリー(ロバート・デ・ニーロ)が救出に向かうが、アクシデントに巻き込まれたビリーは肺にダメージを受けてダイバーの仕事を辞めることを余儀なくされる。しかし、カールはそのビリーの雄姿を見て自分もダイバーになりたいと思うようになる。
 カールはダイバー養成所に入るために、2年間100通を超える手紙の嘆願書を送り続けて、やっと養成所に入ることを許される。しかも、その養成所の教官はあのビリー。カールはビリーの猛烈なしごき同然の厳しい訓練に耐え、しかも人種差別、偏見の障害を乗り越え、見事にダイバーとなる。
 しかし、カールはダイバーとしての仕事の真っ最中に片足を切断する事故に遭ってしまうのだが・・・

 この映画が本領発揮するのは、ストーリーの紹介で書いたように片足を切断してから。並みの人間ならさっさととダイバーを引退するところだが、カール・ブラシアの偉いところは、片足を無くしても海軍のダイバーを続けようとするところ。しかも、海軍のダイバーなんて仕事はハンデが有るからと言って同情されるような世界ではない。溺れている仲間がいれば、両足がきちんと揃っているダイバーと同じ仕事をしなければならない。片方の足が義足だったので海中を泳ぐのが遅くて仲間を助けられませんでした、なんて言い訳は通じない。
 すっかり落ち込んでいるところに現れたのが半ば使い捨て状態に陥ってしまっている教官のロバート・デ・ニーロ演じるビリー。今や師弟の域を超えて友人としての関係を築いている2人が二人三脚で再度ダイバーとして一線級で活躍するために、そして人種偏見や偏屈な考えで凝り固まっている海軍の上役を見返すために猛特訓が始まる。私利私欲で目立ちたいだけで議員をしている奴なんかは直ぐに見分けがつくが、自分の熱い想いにストレートに向かっていく男の姿は、体がボロボロになっても恰好良い。
 他にも父親の子供に対する熱い想いは黒人としてのプライドを感じさせるし、男を育てるのはやっぱり女性の力が大きいことに気付くし、今さらながらロバート・デ・ニーロの教官役がピッタリはまっている。名作ロッキーのようなチャレンジ精神旺盛な映画が好きな人、スポコン映画が好きな人にもお勧めできるし、すぐに弱音を吐く人、逆に障害を持っているぐらいでへこたれない人、人種差別の映画に興味がある人・・・等に今回はザ・ダイバーをお勧めとして挙げておこう

ザ・ダイバー〈特別編〉 [DVD]
ロバート・デ・ニーロ,キューバ・グッデイング・Jr.,シャーリズ・セロン
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント





 

 
 
 

 
 
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映画 サンドラの週末(2014) 労働者の悲劇です 

2018年12月24日 | 映画(さ行)
 社会の底辺に生きる人々を描くベルギーの映画監督であるダルデンヌ兄弟。今回もそのテーマから外れることはないが、彼らにしては珍しく大スターを主演に起用した映画が今回紹介するサンドラの週末。この監督の作風からして美女が登場する内容は似合わないが、なんと今回は世界で最も美しい顔ランキングのトップにも選ばれたことのあるフランス人女優のマリオン・コティヤールを主演に迎えた。今やハリウッドでも引っ張りだこの女優が出演している映画となると華やかな内容の映画かと思いきや、流石は社会派映画の名監督。労働者のクビ切りが本作のテーマだ。きわめてリアルに労働者の現実が描かれているのを見ていると、まるで我がことのように思わせる。しかもこの映画が描かれている国はベルギーなのかフランスなのか説明はないのだが、すっかりアジアのどこかの国の企業に押されて経営状態が苦しい会社の設定。まるでグローバル社会の成れの果てを見ているような気分にもなってしまうような話だ。

 早速だが、まるで他人事とは思えないようなストーリーの紹介を。
 サンドラ(マリオン・コティヤール)は精神的な疾患で会社を休職していたのだが、ようやく仕事に復帰しようと思っていた矢先の金曜日のこと。突然、働いていた会社の上司から解雇の通告を受ける。彼女が解雇を免れる方法はただ一つ。週末の土日を使って同僚たちにボーナスの破棄を認めさせて、彼女の復帰の是非をめぐる月曜日の投票で同僚16人の内の過半数を獲得すること。サンドラは夫の助けを得て、同僚たちを説得するために駆けずり回るのだが・・・

 まずは世界一の美人を解雇しようとする会社があることに、驚かさせられる。しかし、単なる美人であるだけでなくアカデミー主演女優賞に輝いたこともある実力派女優であるマリオン・コティヤールの役作りは流石だ。ノーメークに、ダサいヘアスタイルの出で立ちは、完全に女優オーラを消すことに成功している。これなら、いくら深刻なお願いであり、胸の谷間を見せられたぐらいでは、二つ返事で引き受けたりする男性は居ないのも納得だ。そもそも、彼女だけでなく世の中の労働者たちにとってはボーナスが出る出ないは死活問題にもなってくるし、本作を観ていてもそのことがよくわかる。だいたい『私を復帰させるために、ボーナスを諦めて!』なんて独りよがりのお願いをするようなことは俺にはできない。
 しかし、相変わらずダルデンヌ兄弟監督の弱者に対する視点には感心させられる。本作においても凄い我儘を言っているような主人公であるサンドラだが、実は彼女にもそのようなことを言わざるを得ないほど過酷な状況であることに次第に気付かされる。そして彼女が得られる感動は観ている者にもきっと通じる。人間は決して独りぼっちではないし、無謀な戦いだとわかっていても決して諦めないことの大切さを思い知るだろう。そういう意味では、あのボクシング映画の名作ロッキーと通じる部分があることに我ながら驚いた。
 社会派映画が好きな人、ハリウッド映画のような派手さは無いが渋い映画を観たい人、ジャルデンヌ兄弟監督と聞いて心が震える人、マリオン・コティヤールという美人女優に興味がある人、じわじわと感動する映画を観たい人等に今回はサンドラの週末をお勧め映画として挙げておこう

サンドラの週末 [DVD]
マリオン・コティヤール,ファブリツィオ・ロンジォーネ,オリヴィエ・グルメ
KADOKAWA / 角川書店


 監督は前述したジャルデンヌ兄弟。個人的なお気に入りとして息子のまなざしを今回は挙げておきます。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

 

 
 

 

 

 
 
 
 
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映画 地獄の黙示録(1979) 戦争映画と言われるが・・・

2018年11月26日 | 映画(さ行)
 ベトナム戦争を描いた映画は最近では少なくなったが、かつてはウンザリするほどたくさん公開された。常に俺たちは正義の立場なんだと信じていたアメリカ人が、ベトナム戦争での敗戦、戦場であからさまになった残虐行為の数々を知らされ、アメリカ自体が疑心暗鬼に包まれる国になってしまった。アメリカを描くのにベトナム戦争は決して避けられないことに気づいたハリウッドは次々にベトナム戦争を題材にした映画を撮りまくるが、その口火を切ったのが今回紹介する映画地獄の黙示録。何だか今改めて観るとベトナム戦争を描くというよりも現在にも通じる人間の心の闇が描かれているように思える。
 確かに人間なんかは本当にいい加減な生き物。昨日までは良い人だと思っていたら、今日出会ったら実はとんでもない悪人だった!なんてことがよくあるのは多くの人が経験していることだろう。人間なんて100%良い人なんて存在しない。俺だって、いつもニコニコして良い人のように思われているが、実はとてつもなく腹黒い。

 本作のテーマには戦争といったものがいかに人間を狂わせるか!ということが挙げられると思うが、そんなテーマを深読みするのが馬鹿らしくなるストーリーの紹介を。
 ベトナム戦争の末期において。サイゴンのホテルで虚ろな表情をして待っていたウィラード大尉(マーティン・シーン)に指令がくだる。それは元特殊部隊の大佐であるカーツ(マーロン・ブランド)を暗殺すること。カーツはアメリカ軍の命令を無視して、ジャングルの奥地であるカンボジアに自らの王国を作っていたのだ。
 ウィラード大尉は命令を聞かされていない五人の部下を従い、河川哨戒艇に乗って川を上って行くのだが、途中で自分の常識では計り知れない場面に次々と出くわす。次第にウィラード大尉自身が平常心を保てなくなってきて・・・

 こんな奴が居るか?なんて思わせる人物が登場する。趣味がサーフィンである空軍のキルゴア中佐(ロバート・デュバル)。ナパーム弾をワルキューレの騎行の音楽に乗せて、何千発も落としまくって村中を炎で包み込んでしまう。このシーンが前半の大きな見せ場でかなり面白い。
 その後は川を上って行くと、ジャングルの中からいきなり明るいステージが現れ、ちょっとエロいプレイメートが現れたり、指揮官がいないのに戦い続ける部隊に遭遇したり、何だこりゃ!?と思わせる場面を観ることが出来る。そして最後はウィラード大尉とカーツのガチンコの戦いが見れるのかと思いきや、けっこう俺は拍子抜けした。
 俺が観たのは3時間半ぐらいの完全版。公開時は2時間半(それでも長いが)だったのだが、わざわざ未公開シーンを足したのだが果たしてこれは成功したのかどうか微妙なところ。俺なんかは長くなった分だけ怠く感じたのだが。しかし、この映画が本当に面白いのは舞台裏での出来事。
 主役のウィラード大尉役のキャスティングが実は撮影に入ってからも交代になったり、マーロン・ブランドが撮影に参加した時は台詞を全く覚えていなかったり、あまりにも太ってきてしまったためにアクションシーンの予定を変更したり、主役のマーティン・シーンが撮影の途中で心臓マヒで入院したり、カメラマン役のデニス・ホッパーが麻薬中毒のまま撮影に参加していたり、トラブル続き。それにつれて撮影期間が大幅に延長したり、予算も超えてしまったためにコッポラ監督自身が私財を投げうったり等、舞台裏の方がメチャクチャ楽しい映画。そういう裏話を知りながら観れば、何で最後の方がグダグダなのか理解できるかもしれない?
 観る人によって評価が大きく変わる映画だと思うが、巨匠コッポラ監督が自腹を切ってまで完成させた映画として今回は地獄の黙示録をお勧め映画として紹介しておこう。

地獄の黙示録 [DVD]
マーロン・ブランド,マーティン・シーン,ロバート・デュヴァル,ローレンス・フィッシュバーン
KADOKAWA / 角川書店


地獄の黙示録 劇場公開版/特別完全版 [Blu-ray]
マーロン・ブランド,ロバード・デュバル,マーティン・シーン,デニス・ホッパー
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン


 監督は前述したようにフランシス・フォード・コッポラ。名作ゴッドファーザーは俺が一番好きな映画という理由でお勧め。他にはジーン・ハックマン主演のラストが皮肉なサスペンスカンバセーション…盗聴…、今やすっかりベテラン俳優になってしまったオジサン、オバサンたちの若さに驚く青春映画アウトサイダー、ジョン・グリシャム原作、マット・デイモン主演のレインメーカー、コッポラ監督健在を印象づけたコッポラの胡蝶の夢等、お勧め映画多数の巨匠です。
 
 
 
 
 
 
 
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映画 そして誰もいなくなった(1945) 傑作推理小説の映画化

2018年10月18日 | 映画(さ行)
 ミステリー小説の女王であるアガサ・クリスティ女史の代表的作品でもある推理小説の同名タイトルを原作とする映画化作品が今回紹介するそして誰もいなくなった
 たくさんの友人が周りに居たのに、いつの間にか一人ぼっちになってしまった俺のことを言われているような嫌味なタイトル名だが、小説版とは少し違うために展開、登場人物のキャラ、そして結末も違うので原作を読んだ人でも見終わった後は新鮮な気分になれる。
 そして、監督のルネ・クレールらしいライトコメディなタッチが効いていて、たくさんの死人が出てくる割に悲惨な印象が全くない。それに冒頭からの登場人物達の紹介の方法がなかなか楽しい。

 それでは有名なストーリーを出来るだけ簡単に紹介を
 遠く離れた孤島に8人の男女が荒波の中を頼りない船に乗せられてやってくる。孤島の豪邸には予めお手伝いさんとしてやってきたロジャース夫妻の2人が既に到着していたのだが、肝心の招待者であるオーエン氏は不在だった。
 しかも、集められた10人はロジャース夫妻を除いて皆が初顔合わせ。しかも、その中には誰も招待者であるオーエン氏を見た者はなく、全員がオーエン氏から手紙で招待された者ばかりだった。
 そんな中でロジャースがレコードをかけると、それは音楽ではなく集められた10人の罪状が告発された内容だった。全員がその罪状を否定するのだが、1人が毒入りの水を飲んで死んでしまったことを切っ掛けに更に1人、また1人と殺される。
 死んでしまった者以外に、今生きている者の中に殺人者が居る事は明らか。最後に生き残った者がオーエンを演じていた者だという結果になるはずだと思われたのだが・・・

 置物のインディアン10体が、1人死ぬごとに1体壊される。観ている人が『今何人殺されたんだったっけ?』と悩まないための親切な設計。それに誰がインディアンを壊しているのかわからないのが不気味な雰囲気を煽る。
 そして登場人物が10体のインディアンを見て、歌う音楽がブラックジョーク。その音楽の通りに1人ずつ死んでいくストーリー展開は今ではそれほど珍しくはないが、このようなストーリー展開を思いついたアガサ・クリスティは、やっぱり凄いと思わせる。
 しかし、この映画は笑えるようなシーンもある。疑心暗鬼になっている各人の部屋から鍵穴を覗いて隣の部屋の人物を覗いているシーンや、名優バリー・フィッツジェラルドウォルター・ヒューストンといったベテラン達の演技が飄々とした面白さを感じさせる。
 個人的にはサスペンスというよりも、次は誰が死ぬのか?ということをメインに楽しんだのだが、オーエン氏になりすましているのは誰か?何のために10人が集められた?実はオーエン氏は孤島のどこかで隠れているんじゃないかと考えたり、色々と楽しめるための要素がたくさんある。
 そして、結末が訪れた時にまだ残っているじゃん!なんて思っていると、最後のオチで確かに誰もいなくなったわ!と俺は感心した。
 アガサ・クリスティと聞いて心が躍るミステリーファンの人、ミステリー小説において原作と映画と見比べるのが好きな人、最近のハイテクノロジーを活かした犯罪映画よりも手作り風の犯罪映画が観たい人・・・等に今回は映画そして誰もいなくなったをお勧めに挙げておこう。


そして誰もいなくなった CCP-147 [DVD]
バリー・フィッツジェラルド,ウォルター・ヒューストン
株式会社コスミック出版


 監督はフランス人で1930年代のフランス映画黄金期を支えたルネ・クレール。ナチスの脅威にフランスを逃れてハリウッドで映画を撮るようになったのが本作。ハリウッド時代のお勧め作品として後にテレビシリーズでも人気の奥様は魔女が面白い。 
 フランス時代では、あのチャップリンにも影響を与えた自由を我らに、トーキー初期を感じさせ音楽が印象的な巴里の屋根の下、そして不器用な男とお花売りの娘の恋愛を描いた巴里祭が良いです。 


 
 



 
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映画 成功の甘き香り(1957) 骨太の社会派映画

2018年10月07日 | 映画(さ行)
 金や富の匂いがするニューヨークを舞台に野心家の男たちが成功を求めて暗躍する。マスコミの裏側を暴露した社会派映画の傑作が今回紹介する成功の甘き香りだ。
 バート・ランカスタートニー・カーティスの当時の大スターの二人が、両方とも悪役を演じている。
 人気コラムニストとして権勢を誇るバート・ランカスターの傲慢さ、成功するために大物に媚びを売り、弱みを握った相手を卑怯な手段をつかってでも陥れたりする姑息で小物のトニー・カーティス。両者ともに悪役ながら正反対のキャラクターで魅せる。
 日本でコラム二ストと言ってもあんまりピンとこないが、本作を見る限りアメリカのコラムニストはかなりの凄さを本作では見せてくれる。豊富なネタを持っているために政治家にも脅しをかける。そして同業者のライバルが弱みを見せたら、それを脅しに利用して成り上がっていこうとしたり、自分のネタを新聞に載せてもらうために生活苦にあえいでいる女性も利用する卑怯っぷりが見れる。
 
 それでは良心の欠片もない人間のクズっぷりを見ることができるストーリーの紹介を。
 ニューヨークを中心に活躍する人気コラムニストであるJJ・ハッセンカー(バート・ランカスター)は政治家にも顔が利く超大物。目障りな相手が居ると電話一本で陥れることができるので、誰も彼に対して表立って批判する者はいない。
 そんな彼でも悩ませているのが最愛の妹スーザン(スーザン・ハリソン)がナイトクラブでバンドのギター弾きであるスティーヴ(マーティン・ミルナー)と恋仲であること。妹を溺愛するJJ・ハッセンカーは自分に媚びを売ってくるシドニー(トニー・カーティス)を利用して妹スーザンとスティーヴの仲を引き裂こうとする。
 シドニーはスティーヴを陥れるためにウソの記事を新聞社に卑怯な手段を使って売り込むのだが・・・

 ニューヨークは俺の物だと言いかねない傲慢な男が、妹を結婚させまいとする内輪揉めの小さな話がメインストーリーになっているのが少々残念だが、それでもウソやでっち上げで他人を陥れる様子を見ているとマスコミの怖さを感じるし、保守と言われる政治家、書評が大いに叩かれて陥れられている何処かの国を見ていると、本作のストーリーが決して日本人にも絵空事でないことがわかる。
 男の野望、欲望の犠牲に立つのは常に女性。本作を見ているとそのように感じるが、ラストシーンは女性の強さを簡潔にだが上手く描いていると思う。
 モノクロの画面に写し出される夜のニューヨークの雰囲気は渋くてジャズが似合う。そして、絶対に嘘やデタラメを言って人を騙してはいけないと心に誓おうと思える映画だ。
 渋いモノクロの映画を観たくなった人、悪役が活躍する映画観たい人、ニューヨークが好きな人・・・等に今回は成功の甘き香りをお勧めしておこう。

成功の甘き香り [DVD]
トニー・カーティス
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 


 

 
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映画 獣人(1938) ついつい発作が起きてしまいます

2018年09月29日 | 映画(さ行)

 フランスの文豪エミール・ゾラの同名タイトルを原作とする映画化。冒頭でいきなりエミール・ゾラの画像と署名が出てきて驚いた。そして、その後に主人公のジャン・ギャバン扮する機関車の操縦者の先天的な精神的な病の説明がされる。それは『時々、女性を殺したくなる症状』俺はこの説明を聞いて、そんなことがありえるのかと思ったのだが。もうこんな男性と知り合いになった女性は、運が悪かったと諦めるしかないのか?

 それでは早速だが、祖父や父から遺伝子を受け継いでしまったがために悲劇を生みだしてしまうストーリーの紹介を?
 機関車の操縦士であるジャック(ジャン・ギャバン)は祖父や父から先天的な遺伝子を受け継いでいた。彼はそのおかげで故郷に彼女がいたのだが、結婚せずにいた。
 ジャックは自分の操縦する機関車が修理される3日間を故郷で過ごしていたのだが、3日間が終り彼はル・アーブル駅に戻る。その道中の列車の中で助役ルポーとその妻セヴリーヌ(シモーヌ・シモヌ)が彼らの養父である金持ちの爺さんを殺害する。
 みんなが列車を降りた後に犯人捜しが行われたのだが、ジャックはルポーとセリーヌが殺したことに気づいていたのだが、彼は知らないふりをする。
 セリーヌは念のためにジャックに近づいてきた。ジャックは口外しないことを誓うのだが、そのことを切っ掛けにジャックとセリーヌは愛し合うようになり、夫婦仲が悪かったセリーヌはジャックに夫のルポーを殺害するように持ち掛ける。ジャックは実行しようするのだが・・・

 実は変な遺伝子を祖父や父から受け継がなければ、ジャックは本当は好いやつだ。しかし、いくら遺伝だと言っても常に保護観察者が側にいないとダメだろう。しかも、男を殺そうとして殺せず、女はいつの間にか殺害してしまう。しかし、このなかなか滅多に見ることが出来ない設定のお陰で面白い映画を見た気分になれた。
 遺伝子によるアイデアはエミール・ゾラの自然主義文学から発生した。だからエミール・ゾラの愛読者ならこの無理があるような設定でも受け入れられる。
 しかし、俺がよくわからなかったのは自分の先天的症状を知っていながら、セリーヌとは愛し合おうとしたこと。ジャックはセリーヌを愛していながらも、犯罪者とならば発作が起きてしまっても良し、という考えからだろか?
 そんな疑問があるが、雨の中で2人がこっそり遭うシーン、当時の映画にしては激しい殺害シーン等、時代を考えれば鉄道の発展にも驚いた。印象的な場面があるので退屈感はない。
 エミール・ゾラの小説が好きな人、ちょっと昔のフランス映画を見たいと思った人、ジャン・ギャバンが好きな人、ラストは悲劇で終わる映画が好きな人等に今回は獣人をお勧めしておこう。

獣人 [DVD]
ジャン・ギャバン,シモーヌ・シモン,ジュリアン・カレット,ブランシェット・ブリュノア
ジュネス企画


 監督は印象派の巨匠オーギュスト・ルノワールの次男坊であるジャン・ルノワール。1930年代から40年代にかけてのフランス映画黄金期を代表する監督。お勧めは反戦映画にヒューマニズムを叩きこんだ大いなる幻影、ジャン・ギャバン、ルイ・ジューヴェの当時のフランスの二大スターが競演したどん底、インドを舞台にした西洋人と東洋人の交流を描いたが良いです。 
 
 

 

 

 
 
 
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映画 サクリファイス(1986) 名監督アンドレイ・タルコフスキーの遺作です

2018年09月12日 | 映画(さ行)
 ソ連の映画のレベルの高さを世界中に広めたアンドレイ・タルコフスキー監督。その作風はよく難解だと言われる。そして映像の詩人と呼ばれ、特に水をモチーフにした自然描写は独特の感性がある。よく彼の作品で家の中に居るのに雨が降っているシーンがあるが、『何で?』と質問されても、それはタルコフスキー監督の個性だという答えになってしまう。特に後半の彼の作品群になると人類の救済をテーマにした作品に偏ることになるが、核戦争をテーマにした作品が今回紹介する映画サクリファイスだ。
 ちなみにタイトルのサクリファイスの意味は『生贄、犠牲』といった意味。日本人は神社に行って『世界が平和になりますように』と祈ってるだけの人が多いが、俺に言わせれば、こんなのは平和という尊いものを冒涜しているにしか思えない。祈っているだけで平和がやってくるはずがない。祈った後に具体的に行動しないとだめだ。だいたい神様も人間の限りない我儘を全部聞けるはずがない。そりゃ~、神様だって祈ってくる人に対して何か見返りを求めてくるのは当然だろう。そのことは旧約聖書に親しんでいるヨーロッパ人はよく理解しているようだ。

 さて、本作の主人公は核戦争が勃発した時に彼は神様に何を犠牲として差し出すのか?それではストーリーの紹介を。
 舞台はスウェーデン、バルト海をのぞむゴッドランド島。かつて舞台俳優と名声をはせていたアレクサンダル(エルランド・ヨセフソン)だが、今は上手く仲がいっていない妻と娘と喉を手術したために声が出せない幼い息子と暮らしている。そして女性の召使が2人がいる。
 アレクサンダルの誕生日の日、郵便屋さんのオットー、医師であるヴィクトルもやって来て、誕生日祝いをする。
 ある日のこと、二階で息子を寝かして降りてきたアレクサンダルだがテレビで核戦争が勃発したことのニュースを見る。そのことに妻は発狂してしまう。無神論者だったアレクサンダルは初めて神様に祈るのだが・・・

 最初の方は伝説、文学、絵画などの話がグタグタ言っているが、そういうことに興味の無い人は退屈するかもしれない。まあ、だいたいタルコフスキー監督作品は最初はダラダラしているので退屈だ。しかし、この映画がちょっと面白くなるのはやはり核戦争が起こってから。別に核戦争が起こっているシーンなんかは出てないが、その場にいる人間の本性が少し垣間見れてから楽しい。アレクサンダルの妻は自己中だし、女性の召使の一人であるマリアは魔女だと噂されていることがわかり、けっこう男を誘っていることがわかる。
 そして感動するのがアレクサンダルが神に祈るシーン。彼は日本人のように『お願いですから助かりますように!』なんて自分の願望だけを言ったりしない。自らの大切な物を犠牲にすることを誓うのだ。そして祈った後に目的を達成するために実行する。俺はキリスト教徒ではないが、たまには参考にすると自分の心の癒しになる。
 しかし、この映画は何気に美しい。アレクサンダルとマリアが愛するシーンの空中を浮遊したり、湿地帯に建てられている家が燃え上がっているシーン、冒頭のシーンとエンディングのシーンの映像など。そして結末は暗闇の絶望の中にも、わずかな希望を感じさせる光が小さいけれども生きる気力を感じさせるのが良い。
 そして、アレクサンダルに届くお誕生日プレゼントが色々あったが、果たしてこれらは何かのメタファーなのかと深読みのしがいがある。まあ、タルコフスキー監督の映画を観て彼の意図を探ろうとすればするほど無間地獄におちいりそうになるが。
 アンドレイ・タルコフスキー監督作品と聞いて心が躍る人、キリスト教の考え方に少しでも触れてみたい人、宗教画やロシア文学に詳しい人、そして神社に行くたびに同じことばかりお祈りしている人、自分さえ良ければ良いという自己中の人、難解な映画が好きだというレアな人・・・等に映画サクリファイスを今回はお勧め映画としておこう。

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エルランド・ヨセフソン,スーザン・フリートウッド
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 監督は前述したアンドレイ・タルコフスキー。水、火、木、などの自然を写し出し、犬、馬、ヤギなど動物を登場させ、宗教、平和への祈りを込めた独特の映像は、まさに映像の詩人と呼ぶのに相応しい。彼のお勧めはストーリー性はしっかりしている僕の村は戦場だった、そして2001年宇宙の旅とならぶSF映画の金字塔とでも言うべき惑星ソラリス、タルコフスキー監督がイタリアで撮った平和と祖国への想いが伝わってくるノスタルジアが良いです。でも、彼の映画はどの作品も合う合わないがあると思います




 


 




 
 


 

 





 
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映画 市民ケーン(1941) 映画界の金字塔と言うべき作品

2018年09月09日 | 映画(さ行)
  映画史に語り継がれ続かれている大傑作が今回紹介する映画市民ケーン。しかもオーソン・ウェルズが弱冠25歳にして監督、主演まで兼ねた彼のデビュー作。現在においても映画評論家達の評価が高く今でも映画史上最高傑作と呼ばれる作品だ。この映画を褒めるのによく撮影技術のことが言われる。パンフォーカス、長回し、超ローアングル、老けメイク、時間軸構成など。しかし、このような予備知識を無しで本作を観て、あのシーンの撮影テクニックが凄いぞ、と気づく人はまずいない。今の映画の特撮技術に慣れてしまっている人にとって、正直なところ本作を観ても驚くことは何もない。1941年という時代を想像しながら見れば、あの映像はどうやって撮ったんだろうと思うかもしれないが、このシーンはどんな撮影テクニックが使われているのかを考えながら観るのはやめた方が良い。『映画好きならば絶対に市民ケーンは観ろ!』なんて偉そうに言うような自称映画評論家が多いが、ハッキリ言って余計なお世話だ。
 そりゃ~、俺だってスピルバーグ監督のジュラシックパークを見た時はリアルに動く恐竜に驚いたが、やはり映画に求めるのは感動できるか、衝撃があるか。その当時の人はこの映画の革新的な作りに衝撃を受けたようだが、今を生きる俺の観点から言うと、確かに後世に残る傑作映画はこの映画から凄い影響力を受けている。俺も本作以前の古い映画も見ているが、この映画の題材、構成、結末は現在の映画に見られるパターンが多い。
 実はこの映画の主人公は当時実在したウィリアム・ランドル・ハーストをモデルにしている。彼は新聞王と呼ばれ、アメリカのメディアを殆ど支配下におき、当時のアメリカにおいて世論を大きく動かすことすらできた。実は俺が面白かったのは、この新聞王の描き方。まだ存命中でありアメリカの政界、財界、民衆に大きな影響を与え、海外の大物政治家にも繋がりのあったハーストを25歳の青年が果たしてどのように描いてしまったのか。

 それでは映画史に残る大傑作のストーリーの紹介を。
 大豪邸において寂しく新聞王ケーン(オーソン・ウェルズ)が『バラのつぼみ』という言葉を残して死んだ。早速、彼の記録映画が製作されるが、それを観た経営陣たちは何か物足りなさを感じていた。しかし、死ぬ間際に発した言葉『バラのつぼみ』の意味を知ることによってケーンの人物像が明らかになると考え、ニュース記者のトンプソン(ウィリアム・アランド)は、ケーンの生前を知る者を片っ端から訪ねていく。
 ケーンの生涯の最初の転機は両親とはまだ幼い頃に引き離されて、銀行家の金持ちサッチャーを後見人として育てられたこと。しかし、ケーンが最も興味を持ったのは新聞の仕事。彼は友人のリーランド(ジョゼフ・コットン)、バーンステイン(エヴェレット・スローン)を引き連れ、新聞経営に乗り出す。民衆受けする記事を載せて新聞の売り上げを伸ばしまくり、そして大統領の姪であるエミリー(ルース・ウォーリック)と結婚。後々は大統領にまでなろうかという勢いで、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで一躍注目の人物になる。
 そして、ついにケーンは州知事に立候補し当選するような勢いだったのだが、思わぬ墓穴を掘ってしまい次第に人生の歯車が狂ってくる・・・

 一度でも栄華を極めた人間の落ちっぷりが凄い。この主人公ケーンだが他人のアドバイスは全く聞かずに、自己中心。そりゃ~かつての友達も愛する奥さんも離れて行ってしまう。まるで自分を応援してくれている人を裏切ったり、騙したりしているために段々と人が離れていく俺の知人を思い出す。
 しかし、笑えるのが愛する売れない歌手をしている女性に対して豪華な宮殿やオペラ劇場をプレゼントしているところ。しかも、その宮殿はヨーロッパから集めた骨とう品だらけで動物園なみに象やキリンがいる。しかし、さすがにそんな物をもらっても喜べない。女性がでかい宮殿で一人ぼっちでジグソーパズルをしているのには笑ってしまった。
 そしてケーンがその女性が宮殿を出て行ってしまう時に言うセリフが凄い。『こんなに愛しているのに、なんで愛してくれないんだ?』。とんでもなく自己中で笑った。

 しかし、オーソン・ウェルズは老けメイクをしていない時でもかなりのおっさんに見える。お前本当にこの時はまだ25歳だったのかよ。しかし、本作を観て思うのは若さというのは一歩間違えれば恐ろしい。当時の新聞王ハーストは絶大な権力を持ち、まだ存命中なのにかなり馬鹿にした内容の映画を撮ってしまった。俺はその部分がかなり面白かった。それは若者が軽い冗談で、新聞王をからかってやろうかと思ったぐらいのつもりで撮ったのじゃないかと俺は想像してしまったのだが。しかし、若僧が大手の新聞会社を敵に回してはいけない。それは今の日本でも、政治家がメディアからデタラメなでっち上げで袋叩きに遭っていることからもわかる。
 ちなみに本作市民ケーン新聞王ハーストの圧力に遭う。おかげで映画の興行成績は惨敗。アカデミー賞も本命視されながらこちらも惨敗。そして、オーソン・ウェルズ自身もその後は自由に映画を撮らさせてもらえず、その後の監督作品は出来上がったフィルムが映画会社からズタズタにカットされるなどされてしまう。結局、彼は監督として市民ケーンを超える映画を撮ることもなく、脇役で見るぐらいになってしまった。
 さて、結局『バラのつぼみ』の意味は何だったんだろう。最後に理解できる仕組みになっているのだが、俺にはハッキリとしたことがわからなかった。個人的には幼い時に離れた母親との思い出の象徴だと思っているのだが。この白黒はっきりしない終わり方も今風のハリウッド映画に近い気がする。
 映画史に残る最大の傑作を見てみたい、ストーリーの内容は無視してもどんな驚くような映像技術を使っているのか知りたい人、謎解きが大好きな人、主人公の馬鹿っぷりに笑いたい人、新聞王ウィリアム・ランドル・ハーストに興味が湧いた人に映画市民ケーンを今回はお勧めしておこう。


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 監督は前述したように悲劇の天才オーソン・ウェルズ。この人のお勧め映画は黒い罠。冒頭からの長回しは、流石だと思わせます。

 

 



 

 

 
 
 
 
 


 

 




  
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映画 静かなる男(1952)アイルランドの誇りを感じさせます

2018年08月11日 | 映画(さ行)
 よくアイリッシュ魂という言葉を聞くが、実は俺には何のことを言うのかよくわからない。しかし、本作を観れば何となくだがアイリッシュ魂を感じれることができる。だいたいアメリカ合衆国においても警察や消防隊で活躍するのはアイルランド系アメリカ人が比較的多い。なぜならケルト民族でありゲール語という語源を持っている彼らは体がデカくて、心が広い。そして本作に登場するアイルランド人はバーに通って酒やビールを呑み、歌をよく歌い、よそ者にも気さくに話しかけてくる。それでいて古いしきたりに拘ような頑固な部分も持ち合わせている。そしてこれは本当なのかどうか殴り合いが好き。本作でもそのようなアイルランド人の特徴が描かれているが、そこにはジョン・フォード監督らしい人情劇に仕立てて、全体的に詩情豊かに描かれているのが本作の特徴だ。

 アイルランドの緑豊かな風景が綺麗でありノスタルジックを感じさせ、それでいてアイルランド人の誇りを感じることができるストーリーの紹介を。
 アメリカからショーン(ジョン・ウェイン)が幼少期を過ごしたアイルランドのイニスフリー村に帰ってきた。彼は人手に渡っていた生家を買い取ろうとするのだが、地主の粗暴なレッド(ヴィクター・マクラグレン)もこの家を買い取ろうとしていたので2人の間には険悪な雰囲気が流れる。
 ある日のこと、ショーンは赤毛の女性メアリー(モーリン・オハラ)に一目惚れ。彼女もショーンのことを好きになるのには時間は掛からなかったが、実は彼女はレッドの妹。もちろんレッドが妹のメアリーとショーンの結婚を許すわけがないが、今や村中の人気者であるショーンは村人達のおかげもあり、ショーンとメアリーは結婚することになる。しかし、アイルランドでは奥さんになる方は持参金を持って嫁入りするという風習があるのだが、兄のレッドは持参金をメアリーに持たさなかった。アメリカの生活になれたショーンは持参金なんかどうでも良かったのだが、メアリーにとっては一大事。メアリーはショーンに兄のレッドから力づくで持参金を奪うように背中をおすのだが、ショーンはある事件を切っ掛けに二度と拳を使わないことを決めていたのだ。
メアリーはショーンが意気地なしだと思い、列車に乗ってダブリンへ行こうとする。それを見てショーンはついに意を決してレッドに殴り合いの喧嘩を挑むのだが・・・

 自然の豊かさに目が行き勝ちだが、ショーンとレッドが殴り合うシーンが素晴らしい。アイルランドの野原から小川を超えての怒涛の殴り合い。男同士のプライドを賭けた殴り合いが本当に気持ち良い。しかし、この殴り合いのシーンを女性が見たらきっと阿保らしいと思われないかちょっと心配。世の中の風潮として殴り合いの喧嘩なんて問題外なんて言う人が多いだろう。しかし、男のプライドを賭けた殴り合いは時に真の友情を育むことがある。
 しかし、こんなシーンを撮れる監督はもう居ないな。ジョン・フォード監督の人情、ユーモア、抒情詩的な部分が最も活かされた映画であり、彼の数多い名作群の中では個人的に最も好きな映画が本作。観終わった後の爽快感は本当に良い映画を観た気分にさせてくれる。
 ジョン・フォード監督の作品は西部劇しか観たことが無い人、アイルランドに興味がある人、男ってやっぱり馬鹿だと思ってる人、人情喜劇のような映画が観たい人、男にとって一番大事なのは命よりもプライドだと信じている人・・・等に今回は静かなる男を紹介しておこう。


静かなる男 [DVD] FRT-190
フランシス・フォード/ウォード・ボンド/ジョン・ウェイン/ヴィクター・マクラグレン/モーリン・オハラ
ファーストトレーディング



 監督は前述した西部劇の神様と呼ばれるジョン・フォード。多くの傑作を世に遺した実績はまさにハリウッドの大巨人。西部劇の代表作駅馬車、スタインベックの原作の同名タイトルの怒りの葡萄、本作以上に詩情豊かな我が谷は緑なりきを今回はお勧め映画として挙げておこう。





 



 

 


 

 

 

 
 



 




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