褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 ボーダーライン(2015) 麻薬戦争の舞台裏を描いています

2019年08月24日 | 映画(は行)
 今年の1月メキシコ大統領アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドールはカルテル(麻薬組織)の撲滅をすっかり諦めたのか、中途半端な形で『麻薬戦争終結』を宣言してしまった。そもそも麻薬戦争とは何なのか?カルテル同士の抗争を終わらせるために、2006年にメキシコ政府が本腰を入れて、軍隊や当局を送り込む。さらにはカルテルの違法薬物市場と化したアメリカも黙って見てるわけにいかず麻薬取締局(DEA)を送り込む。ところがカルテル同士の抗争が鎮火するどころか、これらが入り乱れての武力紛争化してしまった。メキシコ政府の軍事介入以降は麻薬戦争絡みの被害者は皮肉なことに民間人も巻き込まれて年々増加する一方。どうやら麻薬戦争のおかげで20万人以上の人が命を失った。そりゃ~、今の大統領にしたら、俺の頃に始めた武力介入じゃないんだからとサッサと終結させて当然ってか。
 そんな麻薬戦争を舞台にした映画が今回紹介するボーダーライン。サスペンス映画でありながら登場人物達のそれぞれの思惑、人間性がしっかりと描き込まれており一種のヒューマンドラマとしても見応え充分。本作は2015年に公開されているから、まさに麻薬戦争の真っ只中。そして、現在のアメリカ大統領であるドナルド・トランプが共和党の有力候補として売りだしてきた頃と時期が被ることを思うと非常に興味深く感じる作品だ。
 
 それではアメリカとメキシコの国境を舞台に、我々日本人の常識では全く太刀打ちできないことを感じさせるストーリーの紹介を。
 アメリカのアリゾナ州において、FBIの女性捜査官であるケイト(エミリー・ブラント)は今日も先頭にたって誘拐犯のアジトに乗り込み大活躍。その功績が気に入られて、国防総省を主体とする特別チームにスカウトされる。かなりだらしない格好をしたマット(ジョシュ・ブローリン)がチームリーダーとして君臨するのだが、彼らの目的は誘拐事件の主犯とされるカルテルの親玉の組織を壊滅させること。ヤバそうな勘が働いたケイトだったのだが、少しばかり興味を持ってしまった彼女は作戦に参加することを決める。
 テキサス州のエルパソに移動したケイトは、そこでマットのパートナーであるコロンビア人のアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)と会う。何者なのか得体の知れない人物のように思われたが、メキシコの無法地帯化しているシウダー・フアレス市ではやたら現地に詳しく、行動力は抜群でアドバイスも的確。しかしながら、アレハンドロの常識外れな行動、それを許可しているかのようなマットの態度にケイトは次第に疑念を抱くようになり・・・

 冒頭からFBI捜査官であるケイトの女性でありながらも、男性顔負けの勇気とリーダーシップを発揮する場面を見ることができる。同時にアメリカって国は女性も男性も関係なく、最前線で戦わなければいけないほど凶悪犯が蔓延っていることに愕然とさせられる。これは流行りの女性主人公が大活躍するアクション映画なのかと思いきや、そんな期待は全く裏切られる。
 アメリカでもハードな現場を見ていたはずなのだが、メキシコに乗り込んだらアメリカでの経験が殆ど役に立たないし、同行していた男性たちからは『見ておくだけで良いんだぞ』なんて言われてしまう有様。だったら何でわざわざスカウトされるんだと思ったりするが、明快な回答を見せつけられた時にビックリさせられる仕掛けだ。
 そのメキシコの無法っぷりだが、市民が普通に行き来できる場所で死体がありえない姿で吊るされていたり、何台にも連なったデルタフォースの車がメキシコ警察の主導でシウダー・フアレス市に乗り込むのだが、とにかく一瞬でも止まったら四方八方から弾丸が飛んでくるので、狭い通路も混んでいるところもスピード違反などお構いなしにぶっ飛ばす。高速道路で渋滞に巻き込まれて、怪しい奴を発見したら、あらかじめ完全武装していたアレハンドロと仲間たちは民間人の目の前で撃ちまくる。そして、日常的に銃声や爆発音が鳴り響く様子を見て、正直俺なんかは『ア~、日本に産まれて良かった』と心からそう思った。世の中には法を守ってたんじゃ自分の命が吹っ飛んでしまう場所があることを知ることができるのだが、それでも日本人の中には死んでも良いから法を遵守しなさいと余計な説教をしてくる迷惑な奴がいるからイライラさせられる。
 
 何が善で悪なのか、この世の中は本当に正義が通用するのか、なぜ麻薬が無くならないどころかその栽培、使用が合法化してしまう国が出てくるのか、トランプ米大統領はなぜメキシコとの国境に壁を作ろうとし国民はそれを支持してしまうのか、そして恨みを買ってしまった人間は一生背負い続けることになってしまうことが理解できる映画ボーダーラインを今回はお勧め映画として挙げておこう

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 監督はカナダの俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴ。本当に重た~い映画を撮る監督。最近はブレードランナー2049に抜擢されるなど最もノッテいる監督の1人。母親が子供達を愛する姿を意外な形で表現した灼熱の魂、この世の中において自分と同じ人間がもう1人存在することを知ってしまったらどの様な行動をとってしまうのかを描いた複製された男、誘拐された我が子を探し出すために何でもありのお父さんを見ることができるプリズナーズ、そして宇宙人とのコンタクトを通して女性の強さを感動的に描いたメッセージ等、俺が彼の映画を見たところ今のところ外れなしです



 
 
 
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 

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