褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 レ・ミゼラブル(1998) 名優二人の演技が凄いです

2017年06月27日 | 映画(ら行)
 比較的最近に超豪華キャストで同名タイトルのミュージカル映画が公開されていたような気がするが、本作はもうチョッと古い映画。ちなみに本作はミュージカルではないので歌いながら涙を流すようなシーンは出てこない。
 今でもアッチコッチで何回も映画化され、ミュージカルの舞台が行われるなど世界中で人気のあるレ・ミゼラブル。フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの小説を原作とする同名タイトルの映画化作品だ。
 原作は相当長いが本作は囚人ジャン・ヴァルジャンとシャヴェール警部の二人の関係に焦点があてられており、それぞれリーアム・ニーソンジェフリー・ラッシュの現在も活躍する名優が演じている。そして本作はこの二人の演技合戦の様相も呈するところが大きな見どころ。とくにジェフリー・ラッシュの目つきが、やば過ぎで役に入り込んでしまっているのがよくわかる。
 
 さて、18世紀半ばに描かれたレ・ミゼラブルは現在に至るまで、なぜこれほどの人気があり、読み継がれるのか?俺なりの答えとして原作全体に伝わる無償の愛が何時の時代にも必要だということが伝わってくるからだろう。無償の愛を受けた人間が、さらに無償の愛を多くの人に与えていく。この連鎖関係が実に気持ち良い。
 恩返しという言葉が、よく良い意味で解釈されているが、無償の愛には恩返しという見返りなど求めていない。俺が先輩から受けた恩は後輩に施す。そして後輩は俺に恩返しをするのではなくて、さらにその下の後輩に恩送りをする。恩送りという言葉だが、俺の知り合いが使っていたので、最近は俺も頻繁に使わさせてもらっている。
 しかし、一人で恩送りばかりしていたんでは自分の生活が大変だ。だが、最近実感するのが恩返しを求めなくても、結果として恩返しをしてもらってるよね~と言うこと。ああ、ありがたや。

 本作も確かに無償の愛といったテーマは描かれている。しかし、前述したように囚人と警部の人間関係が多く描かれているので、この二人の間に無償の愛など無いし、元からあるわけがない。
 本作を面白くしているのが、同情の余地があるとはいえ保釈中にさらに罪を重ねて逃亡生活を強いられてしまっているジャン・ヴァルジャンと彼を執拗に追いかけるシャヴェール警部の何十年にも及ぶ追走劇。まさにスリリングなレ・ミゼラブルを観ることができる。

 無償の愛を受けて罪人から一転して非の打ち所がない人間となったジャン・ヴァルジャン、あくまでも法に従いとことん罪人の汚名を被っているジャン・ヴァルジャンを追いつめるシャヴェール警部、二人にはどのような結末が待っているのか。それではストーリーの紹介を。

 腹を空かして、ついつい目の前にあったパンを盗んでしまって19年の重労働の刑を受けたジャン・ヴァルジャン(リーアム・ニーソン)は保釈される。しかし、帰るところのない彼だったが司教のお宅で泊めてもらう。しかし、あろうことかその夜に銀食器を盗み、司教に暴力をふるい逃亡。その矢先に憲兵に捕まって、司教の前に連れ出されるのだが、そこでジャン・ヴァルジャンは司教の無償の愛に接し善人として生きることを誓う。
 時は流れて9年後、ヴィゴーの市長兼工場長となったジャン・ヴァルジャンは偽名を使っているが今やすっかり市民の尊敬を得ている。しかし、そこに重労働の刑場で門番だったシャヴェール警部(ジェフリー・ラッシュ)が新任警察署長として赴任してきてしまい・・・

 次から次へと善人として生きてからも厄介なことがジャン・ヴァルジャンの身に起きるが、裁判所での正義の行動は凄い。まあ、俺だったら違う選択をして市長の座にしがみついていたかもしれない。
 この映画はあの有名なナポレオンが没後の時代設定。彼はヨーロッパ全土を支配する勢いで侵略して行ったが、実は彼の業績として我が国日本の民法も影響を受けているナポレオン法典の制定に深く関わっていることがある。ジャン・ヴァルジャンとシャヴェール警部との激しい会話のやり取りで法律を用いた舌戦の場面があるが、この時代ぐらいから世界中に法律という概念が出てくるのか?という興味に惹かれるシーンだ。
 シャヴェール警部が頭の中が法律に支配されている真面目というよりも堅物の人間。そんなシャヴェール警部を見ていると、何時の時代でも法律では解決できない問題があるということを感じる。しかし、ナポレオン法典が出来てまだ間がない時に、このようなテーマを盛り込んだヴィクトル・ユーゴーはやっぱり凄い。

 この映画のジャン・ヴァルジャンのように改心して、善人に変わることが出来れば良いが、実際はなかなか人間は変わることができない。そして自分には良いことなんか何もない無償の愛で接することがどれだけ難しいことか俺にはよくわかる。
 しかし、この世の中は口だけは偉そうなことを言って、行動が伴わない人間が多すぎる。世のため、人のためと言いながら、恩返しを求める奴が多いから、貧しくて苦しい人は全く報われない時代になってしまっている。そう言う意味では本作は政治家を志す人は必見かもしれない。権力は自らの欲望のためではなく、公のために使うということが理解できるだろう。
 ミュージカル映画が嫌いな人でレ・ミゼラブルに興味がある人、俳優の凄さを知りたい人、何だか恩を仇で返されていると思っている人、自分さえ良ければ良いやと思っている人などに今回はレ・ミゼラブルの1998年版をお勧めとして挙げておこう

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 監督はデンマーク人のビレ・アウグスト。最近はデンマークからユニークな映画監督が多く出てきているが、その少し前の世代の監督になる。北欧の厳しい自然、社会を描いているペレ、豪華キャストで愛欲の世界が繰り広げられる愛と精霊の家、ネルソン・マンデラと看守の友情を描いたマンデラの名もなき看守がお勧めです。





 

 


 

 
 

 
 

 
 

 
 
 
 

 
 
 
  


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映画 炎のランナー(1981) 実在した二人のランナー 

2017年06月24日 | 映画(は行)
 オリンピックにしろ、各競技の世界選手権におけるアスリートたちの凄さはテレビを見ていても伝わってくる。その中でも俺が観戦していて、本当にこの人たち俺と同じ人間かよ!なんて驚嘆するのが陸上競技のアスリート達。あの研ぎ澄まされた身体、極限にまで高められる集中力、そして人間離れした記録。彼らのメダルを目指して、この一瞬にかける日々の努力の結果を羨望の眼差しで俺は目撃するわけだ。

 しかし、アスリート達はピカピカのメダルを獲るためだけに、日々のストイックな練習に耐え続けるわけではない。彼らにも生き様があり、我々が想像できない熱い想いを持っていることがわかる映画が今回紹介する炎のランナー。ちなみに本作はアカデミー賞作品賞受賞作だ

 実在した二人のイギリス人ランナーを描いているが、彼らはいったい何のために走るのか。オリンピックで金メダルを獲得するため以上の熱い想いで走る彼らのストーリーの紹介を。
 1919年のイギリスのケンブリッジ大学に入学したハロルド・エーブラムス(ベン・クロス)は自分がユダヤ人であることから偏見にさらされていることを強く意識する。人種差別に対する反発心が彼をひたすら走らせる。
 その頃スコットランドのエディンバラではエリック・リデル(イアン・チャールソン)がラグビー選手として活躍していたが、彼の走りは陸上関係者の中でも注目の的。しかし、彼の本業は宣教師。走ることにのめり込むエリックに対して妹のジェーン(シェリル・キャンベル)は早く本業に打ち込んで欲しいと彼に訴えるが、彼は自分の脚が神から与えられた賜物だという信念から走り続ける。
 そんな二人は1923年の競技会において100mで直接対決をするが、わずかの差でエリックが勝利する。
 そして1924年のパリオリンピックに二人とも出場することになるのだが、思わぬ事態がエリックに降りかかる。それは彼の信仰心が試される出来事だったのだが・・・

 表面的にはスポ根ドラマのサクセスストーリーを装っているが、人種偏見、宗教といったテーマが打ち出されている。
 一人は人種偏見を見返すために走り、もう一人は神から与えられた才能を示すため、そして神から与えられた試練をクリアするために走る。彼らはオリンピックでメダルを獲ることよりも、もっと熱い想いを心に秘めて走っていたのだ。
 しかし、この映画の価値を高めているのが、比較的最近に行われたロンドンオリンピックでも流されていた音楽。主にスローモーションで選手たちが砂浜を走るシーンで流れるのだが、これが観ている者のハートを熱く燃えさせる。さあ、これから戦うぞ!みたいな感じ。
 
 そして本作はイギリス映画であり、時代背景も第一次世界大戦が終わった後の話。今やすっかり老大国となってしまったイギリスだが、世界においてイニシアチブを発揮することができず、スコットランド独立騒動、EUを離脱としようとするなど迷走に陥ってしまっている。まさにこの時から大英帝国の没落が始まったことを考えると、歴史的観点からも興味が惹かれる映画だ。
 何かとロクでもないことばかりが最近続くイギリスだが、この映画を製作した当時は少しばかりのプライドを感じさせる。他にも今観ると色々と発見できる炎のランナーを今回はお勧め映画として挙げておこう。

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映画 太陽がいっぱい(1960) 格差社会の悲劇を感じます 

2017年06月20日 | 映画(た行)
 先日、アラン・ドロンが映画、舞台から引退するとの意向を示した。かつての美男の代名詞だった彼もすでに80歳を超えた。さすがに現在の姿からは今でいうイケメンからは程遠い容姿になってしまったが、昔の彼はメチャクチャ格好良い。
 顔が良いのは勿論だが、スマートな服の着こなし、上着のジャケットを肩に掛けて歩く姿は昔の男性のみならず俺だって真似するし、煙草は吸わない俺だが彼の煙草を吸うシーンの格好良さを見ていると、40歳半ばを過ぎているのに今から煙草デビューをしようか!なんて本気で思う。

 数々の名作に出演しているアラン・ドロンだが、その中でも最もお勧めしたい映画が今回紹介する太陽がいっぱい
 最近もキャロルなど多くの作品が映画化されているミステリー作家であるパトリシア・ハイスミス女史の原作の映画化作品だ。
 今や格差社会なんて言葉がすっかり定着してしまっているが、本作がまさにソレ。大金持ちの御曹司の傲慢な男、そして貧乏ですっかり卑屈になってしまっている男。そんな格差社会の両極端にいる2人の出会いが、アラン・ドロン演じる貧乏人の男の野心に火をつける。
 
 巧みな知恵、涙ぐましい必死の努力によって完全犯罪を目指すアラン・ドロンの運命を描いたストーリーの紹介を。
 大富豪の息子フィリップ(モーリス・ロネ)はアメリカを飛び出し、ヨーロッパ中で遊びまくっている。フィリップの父から高い報酬で彼を連れ戻すように依頼を受けた貧しく孤独であるトム・リプリー(アラン・ドロン)は、フィリップにアメリカに帰るように説得を試みるが、彼は帰ろうとする意思が全くない。それどころかトムはフィリップに金が無いことを見越されて自分の手足のようにこき使われ、美しいフィリップの恋人であるマルジュ(マリー・ラフォレ)とイチャついているところを見せつけられる。
 ある日のこと、トムとフィリップ、そしてマルジュの3人はヨットで友人のパーティーに向かう。ヨットの中でも酷い仕打ちを受けたトムは、マルジュをヨットから降ろすことに成功。ヨットの中でフィリップと2人きりになったトムは彼をナイフで刺し殺し、死体をロープで縛り海へ放り出す。
 そして、トムは完全犯罪を成立させるためにあらゆる細工を施す。苦労の末に完全犯罪を成立させ、しかもマルジュを自分の女にし、フィリップの遺産もマルジュを通して手に入れて、すっかり幸せな気分に酔いしれていたトムだったのだが・・・

 最近の映画を観ていて時々思うのが、犯罪者がニコニコし過ぎ。その挙句に捕まってもニコニコしながら刑務所に入ってそのまま終了~なんて映画を見かける。映画の中の話であっても犯罪者は必死になって逃げる気を見せないと観ていてシラケた気分になってしまう。その点では本作のアラン・ドロンからは充分に必死さが伝わる。
 フィリップを殺害した後に、彼に成りすますためにサインの筆記を真似るのに猛練習したり、電話での会話の口調もバレないように声も真似し、偽造パスポートの作り方も手抜きがない。
 そしてチョイチョイやばい場面に出くわすのだが、必死に逃げるの当然で、さらには殺人の犯行を重ねてフィリップがやったように見せかける。そんなアラン・ドロンを見て何故か「頑張れ~」なんて声援を送ってしまいそうになっている俺がいる。必死になっている人間を見ると応援したくなるのは誰もがみんな同じ!なんて言っている俺ってアホか。
 ニーノ・ロータの哀切漂う音楽はしっかりマッチしているし、犯罪場所が太陽が燦々と輝く海のど真ん中っていうロケーションが妙に印象的で、ラストでも効いてくる。アラン・ドロンの犯罪者になってからの目つきがやばいし、それを写し出すカメラワークも抜群だ。そして格差社会や同性愛的な怪しい雰囲気もあったりで、古い映画だがむしろ現在の方が内容は受ける感じがある。
 サスペンス映画の名作のド定番の本作だが、まだ観ていない人は勿論だが、既に観たことがある人も色々と新しいことを発見できるかもしれない。ってことで今回は太陽がいっぱいをお勧め映画として挙げておこう

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アラン・ドロン,マリー・ラフォレ,モーリス・ロネ
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 監督はフランス映画界の名匠ルネ・クレマン。哀切漂う音楽で有名な禁じられた遊び
、凄すぎる豪華キャストを集めた戦争映画の大作パリは燃えているかがお勧めです。

 アラン・ドロンの他の出演作品ではルキノ・ヴィスコンティ監督の若者のすべて山猫、ジャン・ギャバン競演の大金強奪映画地下室のメロディー、クールな殺し屋を演じたサムライ、チャールズ・ブロンソン競演の男の友情が理解できるさらば友よ、アドヴェンチャー、恋愛、友情、アクションを混ぜ合わせたような冒険者たちがお勧めです。
  
 
 
 

 

 



  


 


 



 

 

 
 

 

 

    
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映画 自転車泥棒(1948) 戦後イタリアの不況のどん底を描く

2017年06月17日 | 映画(さ行)
 日本と同じく第二次世界大戦の敗戦国であるイタリア。その後における両国の目覚ましい経済発展、やがて訪れる不況の波。何となく現在に至るまで同じような歩みを感じるのは俺だけか。
 戦後の不況のどん底状態のイタリア社会を描いた映画が今回紹介する自転車泥棒ネオリアリズモを代表する名作だ。

 冒頭から職を求めて職業安定所に殺到する人の多さにもびっくりするが、自転車の多さにもびっくりする映画だ。
 今や歩いて5分ぐらいしか掛からないようなコンビニへ行くのにも車を使っている俺。よく考えたら自転車って30年近くも乗っていないことに気がついた。しかし、本作に描かれている戦後の間もないイタリア社会は自転車があるか、ないかは大きな死活問題の状況。盗まれた自転車を必死の思いで探し続ける父と少年の姿に泣けてきた。

 さて、こんな貧困の時代が日本にもあったんだと感じさせるストーリーの紹介をしよう。
 数年間仕事に就けなかったアントニオ(ランベルド・マジョラーニ)は、ようやく役所のポスター貼りの仕事を得ることができた。しかし、そのためには自転車があることが条件。ところが生活苦を続けていたアントニオは自転車を質に入れていた。彼は女房と相談してベッドのシーツを数枚を質に入れて、自転車をとり戻す。
 仕事初日、ポスター貼りの仕事をしていたアントニオだったが、一瞬のスキをつかれて、自転車を盗まれる。自転車を買う金もないアントニオは、息子のブルーノ(エンツォ・スタヨーラ)を連れて、自転車を探し回り、ついに犯人らしき男を見つけ、問い詰めるのだが・・・

 この世の中、必ずしも正義が勝つとは限りない不条理な世界。真面目にやっても報われないどころか、なぜか次々と災難が自分の身に降りかかる時がある。しかし、そんな時にこそ自分の真価が試される。
 本作のお父さんがまさにソレ!残念ながらこのお父さんは誤った方向に導かれてしまう。しかし、人間なんて100%心が清い人なんかいない。俺なんかいつもニコニコ、どこからどう見ても善い人にしか見えないが、実はけっこう腹黒い。
 そして、このお父さんのある行動を完全な悪人として批判できる奴がいるのか?だいたい自分を良い様に見せている奴の方がもっと信用がならない。

 そして観ている最中は「あ~、これはロクな結果にならないな~」と何となく感じる。しかし、どこにでも神様って居るんだよな~と思わせてくれるラストシーンに心が洗われる。このお父さんの場合は息子が神様だ。
 決してハッピーエンドではないが、暗闇の中にも小さな希望の灯が薄っすらと光る映画。どんな辛いことがあっても、わずかな希望を持ってさえいれば生きていける!そんな気分になれる映画として、今回は自転車泥棒をお勧め映画として挙げておこう

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ランベルト・マジョラーニ,エンツォ・スタヨーラ
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 監督はイタリアを代表する名匠ヴィットリオ・デ・シーカ。多くの名作を遺したイタリアのみならず彼の映画は日本を含め、世界中に愛されている。
 モンゴメリー・クリフト、ジェニファー・ジョーンズ競演の終着駅、マルチェロ・マストラヤンニ、ソフィア・ローレン競演のひまわりがお勧めです。





 
 






 

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映画 外人部隊(1933) ラストシーンが素晴らしい

2017年06月13日 | 映画(か行)
 フランスの外人部隊といえば、そこに集まってくる人間の背景は色々。純粋に軍人として入ってくる人間よりも、犯罪者が最後の逃げ場としてやってくるイメージが俺にはある。そんな外人部隊の中で過去に傷を背負った者同士が友情でつながることはあっても、お互いの素性については暗黙の了解で干渉してはならない。今回紹介する外人部隊は、そんな内情が描かれている事にも興味が惹かれるが、実は男女の微妙な心理が描かれている人間ドラマ。
 タイトル名にもなっている外人部隊だが、実は単なる背景としての役割を与えられているに過ぎない。男女の恋愛模様及び男女関係がメインテーマとしてあるのだが、その中でも男の馬鹿っぷりが凄すぎる。しかし、多くの男性はその馬鹿さを自らに照らし合わせ、確かに俺もそうだよな~!なんて妙に納得するだろう。
 本作はメチャクチャ古いフランス映画であり、俺も色々と多くの映画を観てきたつもりだが、ラストシーンが最も印象に残っている映画と言えば本作になる。それは何故か?

 さて、決してラストシーンが素晴らしいだけでなく、人生の厳しさを描いている点にも惹きつけられるストーリーの紹介をしよう。
 ピエール(ピエール・リシャール・ウィルム)はパリでフローランス(マリー・ベル)と贅沢三昧の遊びを楽しんでいる。とことんフローランスに貢ぎまくるのだが、実は会社の金を横領していた。
 そんなピエールの悪行もついにバレてしまい国外へ逃亡する羽目になってしまうのだが、金にしか興味のなかったフローランスは彼の頼みも聞き入れることなく、彼に付いて行くことなく姿を消してしまった。
 すっかり自暴自棄になってしまったピエールはアフリカのモロッコでフランスの外人部隊に入る。地獄のような暑さと厳しい行軍の毎日に嫌気がさしていたが、そんな彼の慰めの拠り所は外国人部隊で知り合い友人になったニコライと行軍中の休憩場として訪れる酒場でいつも慰めてくれる女将のブランシュ(フランソワーズ・ロゼー)。
 ある日のこと、ピエールはニコライと酒場で飲んでいると、フローランスとそっくり顔立ちのイルマ(マリー・ベルが二役)と出会い、二人は愛し合うことになるのだが・・・

 冒頭からダメっぷりを発揮してくれるピエールだが、そんな彼にも幸運が舞い降りる。ようやく外人部隊での厳しい日々をイルマと一緒に抜け出せるかと思ったのに、なぜ神は悪戯な状況をピエールに作り出してしまうのか?しかし、男なら馬鹿丸出しのピエールの気持ちがわかるよな~。昔、愛した女性の面影は男をとことん狂わせる。
 一人二役を髪の色、声、性格を変えて熱演するマリー・ベルのカワイ子ちゃんには確かに惹かれる。
 しかし、それ以上に興味深いのが年増の域に入っているフランソワーズ・ロゼー演じる酒場の女将。実はダメ男のピエールを支えていたのはコッチの女性。彼女の優しさはまるで聖母マリア様のようである。彼女の得意のトランプ占いはイカサマもインチキも無くて当たりまくる。このトランプ占いがラストシーンで抜群の効果を発揮する。そして、観ている者の想像力を刺激するエンディングは本当に素晴らしい。
 1930年代から40年代にかけての甘く切ないフランス映画が好きな人、今まで名作と呼ばれる映画を何本か観たがどれも面白くなかったと感じている人、人生を感じさせる映画を観たい人等に今回は外人部隊をお勧め映画として挙げておこう

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 監督は戦前を代表するフランス映画界を支えたジャック・フェデー。本作にも出演しているフランソワーズ・ロゼーは彼の奥さん。彼女を出演させた作品に名作が多い。ミモザ館女だけの都がお勧めです。 
 

 
 
 
 
 
 
 





 


 

 


 
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映画 オルフェ(1949) ギリシャ神話の現代版 

2017年06月10日 | 映画(あ行)
詩人、小説家、劇作家、画家としての顔だけでなく映画監督としても名が知られているジャン・コクトー。「天は二物を与えず」なんて言葉があるが、彼の前ではそんなデタラメな表現は通用しない。
 イケメンなだけが長所の俺にとって、多才でマルチな彼の才能は本当に羨ましい限り。映画監督としてはその作品数は少ないながらも、そんな中でも今でも名作として誉れ高い作品が今回紹介するオルフェ。幻想的かつマジックを見せられているような映像表現は観る者の心を魅了する。

 ストーリーはタイトル名から想像できるが、ギリシャ神話オルフェウスを下敷きに、現代版(そうは言っても昔の映画ですが)に舞台を置き換えた。
 そのギリシャ神話のストーリーに少しだけ触れておくと、愛する妻を亡くしたオルフェウスは黄泉の国から妻を連れて地上へ帰ろうとするが、黄泉の国の支配者であるハデスから戻る途中で絶対に妻を見てはいけない、と条件を出されるが・・・。

 まあ、絶対に見てはいけないと言われると必ず見てしまうもの。本元のギリシャ神話では、オルフェウスは悲惨な末路をたどってしまうが、コクトー版オルフェウスの結末は?それでは本作のストーリーの紹介を。
 文学青年たちが集まるカフェにおいて、詩人であるオルフェ(ジャン・マレー)も居た。その場に王女と呼ばれる女性(マリア・カザレス)と詩人セジェストがやってくる。しかし、程なくしてセジェストはバイクに轢かれて死亡。オルフェは王女に無理やり死体のセジェストを運ばされ、一緒に車に乗せられる。そして到着した場所でオルフェは驚くべく光景を目の当たりにする。なんと、セジェストは生き返り、王女と一緒に従者を連れて鏡の中に入っていく。
 オルフェは愛する妻ユウリディウス(マリー・デア)が待つ自宅に帰ってくるが、オルフェの心は妻よりも王女の方へ傾いていた。
 そして、ある日のことユウリディウスはバイクには轢かれ死亡。なぜかいつも附いてくる車の運転手のウルトビイス(フランソワ・ペリエ)のアドバイスを受けて鏡を通り抜け、ユウリディウスに会うために死の国へ行くのだが・・・

 なかなか笑えるのが黒ずくめ衣装の王女のドエスっぷり。命令口調で、いちいち男どもに指図する様子は混迷を続ける民進党の代表であるレンホーさんを思い出させる。
 鏡を通り抜けるシーンは本作が公開された1950年ということを考えると、けっこう驚けるし、死体が起き上がるシーンは今でもよく見られるトリックを使っているが、なぜか新鮮に感じた。
 そして死の国の場面は今見ても幻想的で、流石はジャン・コクトー。そのイマジネーションは同じ人間として嫉妬すら感じてしまう。
 コクトー自身が詩人なだけに、素敵なセリフがたくさん出てくるし、どうせ最後は悲劇で終わるんだろうと観ている最中もそのように思いながら観ていたのだが、良い意味で期待を裏切ってくれる結末は、喜びと悲しみ両方を感じさせる。
 ジャン・コクトーに興味を持っている人、ギリシャ神話に興味がある人、夢心地の気分になりたい人・・・等に今回はお勧め映画としてオルフェを挙げておこう

オルフェ [DVD]
ジャン・マレー,マリア・カザレス,フランソワ・ペリエ,マリー・デア,アンリ・クレミュー
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督は前述しているようにジャン・コクトー。今でも映画化されたりミュージカル化されている美女と野獣がお勧めです。






 

 
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映画 パンズ・ラビリンス(2006) 大人向けのファンタジー映画 

2017年06月06日 | 映画(は行)
 普通はファンタジー映画と言えば子供が楽しめるとしたものだが、今回紹介するパンズ・ラビリンスはRG12指定をくらっているため小学生は観ることができない。そりゃそうだ、なぜならファンタジーのくせに残酷な暴力描写が多いから。よって小さい子供がいるお母さんは間違っても本作を一緒に観ようと思って手に取ってはいけない。
 そうは言っても映画自体の内容は本当に素晴らしい出来である。大人の中にもちょっと痛いシーンは苦手という人もいるが、そんなことで本作を敬遠していたのでは非常に勿体ない。だいたい人間なんていうのは真の痛みを経験してこそ、他人の気持ちを理解してあげることが出来るのだ。

 さて、早速だがストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 1944年のスペイン内戦が舞台背景。内戦で父親を亡くした少女オフィリア(イバナ・バケーロ)は身重の母カルメン(アリアドナ・ヒル)と再婚相手でありフランコ独裁政権を支えるヴィダル大尉(セルジ・ロペス)の居る駐屯地に向かう。
 このヴィダル大尉がとんでもなく残虐であり、しかも母カルメンに対しても何の気遣いもない。すっかり嫌気がさしてしまったオフィリアは何とかして、この場所から逃げ出したいと願っていた。
 ある時オフィリアの前に妖精が現れる。オフィリアは妖精の後を附いていくと迷宮にたどり着く。そこで番人であるパン(ギリシャ神話に出てくる牧羊神のこと)出会い、意外なことを聞かされる。オフィリアは地底の王国の王女であることを。
 すっかりその気になったオフィリアだったが、パンは王国に戻る条件として彼女に三つの試練を与えるのだが・・・

 スペイン内戦のフランコ政権の軍と森に隠れているゲリラの戦いの様子が、非常に激しく描かれている。ヴィダル大尉がゲリラ及びゲリラと間違って捕まえてしまった親子でさえも、容赦なく拷問及び処刑。観ている者の痛覚に反戦メッセージを植えつけるシーンだ。昔の時代を描きながらも今を生きる我々にも大いに通じる部分がある。
 オフィリアが現実逃避しておとぎ話の世界にのめり込んでしまうが、彼女は決してメルヘンチックな少女ではなく、極めて現実を冷静に見ていたことを今ブログを書いていて強く思う。
 そして本作の特徴が怪奇的なクリーチャー達。妖精と言っても見た目は昆虫だし、化け物さながら巨大カエルが登場したり、パンの姿も牧羊神という割にまるでプレデターを更にグロテスクにした姿であり、そして真っ白けの化け物が手に目を埋め込んで追いかけてくる奴が怖い。そして、何処かで見たことがあるような気がするマンドラゴラの根の使い方が非常に巧みだ。
 それにしても、どうしてこんな厳しい試練に少女が立ち向かわないといけないのか!と心優しい俺なんかは思うのだが、泣いてばかりいるようでこの少女は本当に逞しいし、勇気もある。とにかく悲惨な状況に居座らずに、自らの手で現状を打破しようとする実行力は大人の俺も見習いたいところだ。
 ファンタジーでありながら大人だからこそ色々と考えさせられるパンズ・ラビリンスを今回はお勧め映画として挙げておこう

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 監督はメキシコの俊英ギレルモ・デル・トロ。ホラータッチの物からアメコミ、アクションと幅広い分野で独自の作風を見せつける監督。本作と同じくスペイン内乱を背景にしたデビルズ・バックボーン、アメコミのヘルボーイ・シリーズ、ホラーアクション映画ブレイド2、そして世界中で最も日本人が楽しめそうな怪獣映画パシフィック・リムがお勧めです。
 
 
 
 
 

 
 

 

 

 

 

 

 
 
 







 
 



 

 

 







 
 

 

 

 

 

 

 

 

 



 
 
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映画 危険な関係(1988) 貴族の気分が味わえます

2017年06月04日 | 映画(か行)
 18世紀のフランスの作家であるコデルロス・ド・ラクロの同名タイトル小説を原作とする映画が今回紹介する危険な関係。フランスの貴族社会を描いているが、今まで色々な国で何度も映画化されているように、世界中の映像作家に人気のある古典的小説だ。
 貴族社会を描いているだけに、豪華な衣装は一度は着て身に着けたいと思わせるし、真面目に働かなくても贅沢ができる浮き世離れした生活ぶりは羨ましいと思わせる。そして男性にはナンパの成功方法がわかる非常に有難い映画だ。

 本作で描かれている貴族社会だが、すっかり性の風紀が乱れてしまっている。元カノから『あの生娘の処女を奪って!』と頼まれたり、社交界のプレイボーイである男の口から『俺は今はガードが堅いと評判の美人の未亡人を狙ってるんだ』なんて会話が飛び出す。
 何だかコスプレ衣装の官能小説の映像化を見せられている気分になったりするが、嫉妬、謀略、裏切りが渦巻く不純な愛欲の世界がゲーム感覚で描かれており、見ていてなかなか楽しい映画だ。

 さて、エロスを求めて心理戦が展開されるストーリーの紹介を。
 メルトゥイユ侯爵夫人(グレン・クローズ)は元カレで社交界のプレイボーイとして浮き名を流すヴァルモン男爵(ジョン・マルコヴィッチ)を呼び出し、セシルの処女を奪うように持ち掛ける。
 ヴァルモン男爵はセシルのような小娘とエロスに溺れていたんでは社交界の恥さらしになると断ったうえで、今は社交界の中で美人で貞淑の誉れが高いとして知られているトゥールベル夫人(ミッシェル・ファイファー)を口説き落としてエロいことをする計略があることを打ち明ける。
 当初は思惑の異なる二人だったが、メルトゥイユ侯爵夫人はあらゆる手段を尽くして自らの野望を達成しようとするのだが・・・

 ヴァラモン男爵のナンパの方法だが、貧しい人に手を差し伸べて良い人に見せておいて、狙った女性の前では自らを可哀相な男性を演じて、徹底的な泣き落とし戦術。俺なんかは女性の前では偉そうな人物を装っているのだが、かえって逆効果だったことに気がついた。
 しかし、本当に怖いのはメルトゥイユ侯爵夫人の女の執念。しかも、演じているのが危険な情事でマイケル・ダグラスをとことん追い詰めるグレン・クローズだから恐怖が倍増する。
 しかし、エロスに快楽を求めながらも、男女の仲に次第に恋愛感情が芽生えてくると、そりゃ~、このような結末を迎えてしまうよね~と妙に納得させられた。
 けっこう笑えたのが、エロい関係になったことを証明する手段として手紙のやり取りをしていること。今のネット社会の時代を生きる我々から見ればこのようなやり取りが、どうしても古臭く感じてしまう。原作が今まで本作を含めて何回も映画化されているのだから、ぜひ現代社会に合わせて再度リメイクして欲しいものだ。
 ヨーロッパの貴族生活にあこがれている人、男女のエロスと恋愛に関わる高度な心理戦を楽しみたい人、今でも活躍している豪華キャスト陣の演技を楽しみたい人、若きキアヌ・リーブスのヘタレな役を見たい人、まだ初々しいユマ・サーマンのオッパイを見たい人・・・等に今回は危険な関係をお勧め映画として挙げておこう

危険な関係 [DVD]
ジョン・マルコビッチ,グレン・クローズ,ミシェル・ファイファー,ユマ・サーマン,キアヌ・リーブス
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント



危険な関係 [Blu-ray]
クリストファー・ハンプトン
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督はイギリス人で傑作を多く残しているスティーヴン・フリアーズ。詐欺師一家の皮肉な運命を描いたグリフターズ/詐欺師たち、ダスティン・ホフマン主演のハートフルコメディのヒーロー/靴をなくした天使、ロンドンに暮らす不法移民たちを描いた堕天使のパスポートがお勧めです。 
 

  
 




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