褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 わが青春のマリアンヌ(1955) 幻想的な青春映画

2021年08月25日 | 映画(わ行)
 最近は俺も年のせいでボケてきたのか、昔好きだった女の子の顔が思い出せなくなってきた。そんなことはハッキリ言ってどうでも良いのだが、酸いも甘いも知ってしまった大人の男性にとって青春時代のノスタルジックな気分を大いに刺激させられる映画が今回紹介するわが青春のマリアンヌ。ちなみに本作は松本零士による『銀河鉄道999』やALFEE(現THE ALFEE)の大ヒット曲『メリーアン』は本作から影響を受けており、日本人にとっても何かと因縁のある映画でもある。
 本作の何が日本のアーティスト達の題材になったかというと、タイトル名にも含まれる美しい女性であるマリアンヌ(マリアンヌ・ホルト)の存在。その幻想的な雰囲気はまさにメーテルを思い出させるし、少年を恋の病に取り付かせるストーリーは、オ~、メリーアン。

 森林、動物、湖、建物、肖像画などの人物以外にも見どころがたくさんあるストーリーの紹介を。
 色々と訳ありの少年達が暮らしている寄宿学校において。そこに暮らす少年達は不良グループとマジメなグループと分かれている。そこへアルゼンチンから少年ヴァンサン(ピエール・ヴァネック)がやって来る。彼はなぜか誰からも好かれる人気者であり、動物までもが彼の虜になっている。
 ある日の事、ヴァンサンは不良グループの一行から湖の向こうに見える謎の多い古城へ行こうと誘われる。一緒に行ったのは良いのだが、古城の守衛と2匹の番犬に見つかってしまい、ヴァンサンだけが逃げ遅れてそのまま取り残されてしまう。次の日の嵐が吹き荒れる最中に、寄宿学校にヴァンサンが戻ってきた。そこでヴァンサンは古城で起こった不思議な体験を仲の良い1人であるマンフレッド(ギル・ヴィダル)に語り出すのだが・・・

 誰からも慕われており、ギターの演奏は抜群で、動物に対する愛護精神に溢れていて、女の子のストーカーまでもが付いてくる愛されキャラであるヴァンサン。しかし、この少年が夢か現実かわからないような美女であるマリアンヌに出会ってから急に恋に狂いだす。優等生ぶりを発揮していたのに、突然の変わりようにドン引きしそうになったが、よく考えたら男は女性の魔力にはとことん弱い。ギターが弾けるところを除いて、俺とヴァンサンはよく似ているところが多いことに今頃気づいた。
 しかし、本作を観た後に多くの人が感じるのが、ヴァンサンが語った出来事は現実なのか夢の中だったのか?ってこと。ちょっとばかり後味が苦くてイタイ恋だが、ヴァンサンの成長を感じさせる終わらせ方が良い。古今東西を問わず、恋は人を成長させるのだ。
 前述したのだが、本作は鹿や犬といった動物を巧みに使っている。まるでヴァンサンと動物達は一心同体のように感じさせる。ここの描き方はなかなかユニークでセンスを感じさせる。他にもモノクロの映像の描写にも見どころがあり、森林の風景、マリアンヌの美しさはカラーでは出せないし、幻想的なイメージを際立たせるのに充分な役割を果たしている。
 しかしながら、滑稽に思わせるシーンも目立っており、守衛の怖さを引き出すためだとは思うが眉毛がデカすぎ。他にも寄宿学校の生徒たちだが、12歳から18歳ぐらいまでの少年達の設定のはずだが、中にはどう見てもオッサンが混じっているように見えた。特に主役であるヴァンサンを演じる俳優も俺には30歳ぐらいに見えたのが非常に残念。大人達が半ズボンを履いて遊びに夢中になっているのがシュールに感じてしまった。
 そのような欠点もあったりするが、失恋でうちのめされた経験のある男性には本作はなかなか見応えがあると思うし、銀河鉄道999をアニメで見ていたり、メリーアンの曲を今でもカラオケで歌っている大人にも本作はツボにはまるかもしれない。他にもありきたりの恋愛映画には飽きたという人のためにも今回はわが青春のマリアンヌをお勧め映画として挙げておこう。

 監督はフランスの名匠ジュリアン・デュヴィヴィエ。本作は彼の後半の傑作として挙げられることがあるが、1930年代の作品に映画史に名を連ねる作品が多数。特にジャン・ギャバン主演の望郷、タイトルは野暮ったいが今の時代だからこそ見る価値があるにんじん、人生の深みを感じさせる舞踏会の手帖等がお勧めです。

 
 

 
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映画 アルジェの戦い(1966) アルジェリアの独立戦争を描いています

2021年08月15日 | 映画(あ行)
 フランスから地中海を南に隔てたところに北アフリカのアルジェリアがある。かつてはこの国もフランスの植民地だったのだが、フランスからの独立を目指して戦う姿を描いた戦争映画が今回紹介するアルジェの戦い。正直なところ日本人にとってはアルジェリアという国は遠い異国の地であり、今となればちょっとばかり昔の時代なので大して興味が湧かないテーマのように思えたりする。しかし、映像を通して伝わるパワーは現代に生きる我々にも衝撃を与えるし、戦争の悲惨さを改めて教えさせられる。
 植民地支配を行うフランスとアルジェリア人はアルジェリア国土の様々な所で戦いを繰り広げていたのだが、本作が描かれている戦いの場所はカスバ及びその周辺の地区。あの名作映画望郷の舞台となっていることで有名であり、世界遺産にも登録されている所だ。
 ストーリーの軸はフランスからの独立を目指す地下組織に加入して奮闘する若者アリの行動が主となっている。独立戦争を描くといっても戦車、戦闘機が出動して爆撃、ミサイルが飛び交うようなスペクタルな場面はない。しかし、カスバの狭い場所で撃ち合ったり、爆弾を装置したり、拷問シーン等、ドキュメンタリータッチで描いているのが効果を発揮しており緊迫感が伝わってくる。そして、登場人物の顔のアップの表情が多いが、その表情が非常にリアリティがあり、怖さを感じさせる。

 それでは植民地支配を続けようとするフランス軍とアルジェリア独立を目指す地下組織の抵抗を描いたストーリーを紹介しよう。
 1954年、アルジェリアのカスバが舞台。常日頃から悪い素行を繰り返している青年アリ(ブラヒム・バギアグ)は刑務所を出た後に、アルジェリア独立を目指す抵抗組織FLN(民族解放戦線)に入り、フランス警察との闘争を繰り返す。この事態を重くみたフランス政府はマチュ(ジャン・マルタン)中佐をリーダーとするフランス軍をアルジェリアの派遣。そのことを境に次第にFLNは苦境に立たされ、アリ自身も次第に追い込まれていく・・・

 なかなか細かい部分でも興味を引き付けられるように描かれている。アリ青年がFLNにスカウトされる方法、イスラム系らしさを感じさせる規律が厳しいFLN の内部の結束、そしてFLN がフランスの警察を始末していく場面などは、ちょっとした娯楽性を感じさせる。
 そして、次々警察が殺されて業を煮やした署長がカスバへ出かけて爆弾を仕掛けるのだが、ここでの爆破シーンが凄い。本作の凄さに度々出てくる爆破シーンがあるのだが、これが本当に建物をぶっ飛ばしている。地下組織も警察も繰り広げる爆弾の仕掛け合い。罪なき一般市民が血まみれになっているシーンをみて人間の愚かさがクローズアップされる。
 さらに衝撃なのが、地下組織活動に女性や幼い子供が自らの意志で参加していること。戦争映画の良し悪しの判断の要素は人それぞれにあると思うのだが、単に勝った負けただけでなく生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれた時の人間の心理状況が描かれているのを個人的には重視している。その点ではこの映画はバッチリ描かれているし、そしてどちらからの偏った見方をしていないのが良い。
フランス側の事はもちろんだが、地下組織側の立場の問題点に突っ込んでいる点も良い。特にFLNのリーダーがアリに話しかける会話のシーンは非常に惹きつけられる。『革命や戦うことよりも独立した後の方が大変なんだよ』。だいぶ端折って書いてしまったが、本作を観なおした時はこのシーンの台詞をしっかり自分の心に植え付けよう。
 他にも本作を観ると、我々日本人にとっても考えさせられることがある。本作のラストで民衆が叫ぶ『独立、誇り、自由』。この三つの言葉が日本人の俺には突き刺さる。未だにGHQの置き土産である憲法が真の意味での『独立、誇り、自由』を奪っていることにハッとした。
 他にもフランス人のアラブ人に対する差別、そして映画音楽の大家であるエンニオ・モリコーネの音楽、ジャーナリズムの役割、オールロケや大量のエキストラ出演による迫力のある描写など、他にも褒めないといけない点が多々ある。あまりにも嘘パチが多い戦争映画に飽き飽きさせられている人に今回はアルジェの戦いをお勧め映画として挙げておこう。

 監督はイタリア人のジッロ・ポンテコルヴォ。本作はイタリア制作の映画であり、本国の名作映画である無防備都市の影響を受けていることが分かります。




 
 
 
 

 
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