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映画 イージー・ライダー(1970) アメリカン・ニューシネマの傑作

2019年09月19日 | 映画(あ行)
 先日ピーター・フォンダが亡くなった。父親は名優ヘンリー・フォンダ、姉は名作に多く出演し、政治的発言の多いジェーン・フォンダ、そして娘は若手時代は話題作に多く出演していたブリジット・フォンダ。芸能一族の真ん中にいる存在なのだが、ハッキリ言ってピーター・フォンダの印象が一番薄い。しかしながら、彼の名前は今回紹介するアメリカン・ニューシネマの傑作であるイージー・ライダーによって永遠に色褪せることはない。
 そもそもアメリカン・ニューシネマとは何なのか?この言葉の意味をある程度は知っておかないと本作の凄さが理解できない。だいたい1940年代頃までのハリウッド映画というのは、もうそれは楽しい映画ばかり。希望や気力が湧いてくるようなハッピーエンドばかりの映画が殆どを占めていた。まさにその時代のアメリカ人は映画を観て、夢を買っていたのだ。そのことは戦後の日本人にもアメリカって本当に素敵な国なんだと勘違いを起こさせた。
 ところがケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争の敗戦等による1950年代後半から1960年代にかけてロクでもない出来事ばかりを目の当たりにしたアメリカの若者は、本当に俺たちの国は正義で自由な国なのかよ?と疑問を感じだし、現実感ゼロの映画なんかはもう彼らには不満だらけ。欺瞞だらけの従来のハリウッド映画の限界だ。
 そんな時にさっそうとアメリカ映画に起こったムーブメントがアメリカン・ニューシネマと呼ばれる作品群。その中でも今回紹介する映画イージー・ライダーはその代表的な記念碑的な作品だ。

 さて、今や名作として映画史に残る作品として知られているが、内容の方はと言うと案外単純で、髪や髭を伸ばしっぱなしの若者が格好良いバイクに乗ってアメリカ南部を横断するストーリー。真の自由を求めて彷徨う彼らの見たアメリカとは如何なるものだったのか?
 麻薬を売りさばいて大金を得たキャプテン(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)はロサンゼルスから楽しい謝肉祭に参加するためにニューオリンズへハーレーダビッドソンに乗って向かう。道中はやたら信仰の深い家族のところで飯をおごってもらったり、ヒッチハイクをしていたヒッピーを連れたりして自由気ままな旅を続ける。
 そして彼らはパレードに無許可で参加したことで留置所に送り込まれるのだが、そこで出会ったのが弁護士のハンセン(ジャック・ニコルソン)。そのまま意気投合した彼らはハンセンも一緒に旅を続けるのだが・・・

 俺がこの映画を初めて観たのは30年ぐらい前のこと。その頃から既に本作は名作としての誉れが高かったが、正直なところ何処が良いのかサッパリわからなかった。なんだか退屈だったし、やっぱり公開された時期から既に20年近く経ってから観ているので、何だか賞味期限切れのような感じを受けた。しかし、今改めて観なおすとアメリカの現代社会に大いに通じる部分もたくさんあることに驚いた。この映画を観た時はアメリカン・ニューシネマという意味をわかっていなかったし、俺も大人になるにしたがってアメリカという国の影の部分も知ることになり、本作の描かれていることが少々理解できるようになったということか。
 本作で描かれているのがドラッグ、反権力、ロック、ヒッピーといったカウンターカルチャー。本作を見ればアメリカ社会の大きな転換点が少々でも理解でき、この頃からアメリカ社会の問題が未だに解決されていないことがたくさんあることに気付かされる。
 個人的にはジャック・ニコルソンが自由について語るシーンがあるが大いに賛同した。欧米諸国の人が語る自由は、日本人が軽々しく口にする自由とは大きく違う。彼らにとっては自由を得るために常に戦ってきた歴史がある。
 バイクで旅するシーンは綺麗な風景と楽しい音楽が流れて、目にも耳にも心地いい感覚が残るし、後半のドラッグでラリッてしまったシーンは個人的にはツボ。画面は眩しいと感じたり、ストーリー性は大して無かったりでド素人が撮ったような映画にも見えたりするが、逆にその粗削りっぽさがこの映画の魅力にもなっているか。
 ハーレーダビッドソンのバイクに想い入れのある人、ロックな音楽が好きな人、アメリカって自由で寛容性があると思っている人、麻薬を扱った映画を観たい人、ピーター・フォンダという名前に興味が湧いた人、既存社会に対して不満を持っている人・・・等などに今回はイージー・ライダーをお勧め映画に挙げておこう。

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映画 イノセント(1976) ルキノ・ヴィスコンティ監督の遺作

2019年09月03日 | 映画(あ行)
名門貴族の末裔である名匠ルキノ・ヴィスコンティ監督。生涯を裕福な暮らしができる境遇でありながら、イタリア共産党に入党(後に離党)したり、私生活もバイセクシャルであることを公言するなど何かと二元性を抱えている人物として知られている。戦後間もなくの頃は、他のイタリア人の世界的有名な監督と同様に貧しいイタリア社会を描いたネオリアリズモから出発しながらも、元々が金持ちなので他の監督と違い次第に豪華絢爛、そして耽美的といわれる作風に変貌を遂げていき、数々の名作をこの世に遺した。
 そんなヴィスコンティ監督が遺作として辿り着いた映画が今回紹介するイノセント。ちなみにイタリア語の原題はL'innocenteであり、意味は『罪なき者』。タイトル名だけから内容を想像すると、清廉潔白な俺のような人間が主人公かと思いきや、貴族階級に属し、傲慢、我儘、女たらしであるダメ男が主人公。
 
 ヴィスコンティ監督が死を間際にして、自らの出自である貴族を容赦なく叩きのめすストーリーの紹介を。
 20世紀初頭のローマ。トゥーリオ伯爵(ジャンカルロ・ジャンニーニ)は妻のジュリアーナ(ラウラ・アントネッリ)とは愛が冷めており、今は未亡人である公爵夫人であるテレーザ(ジェニファー・オニール)と不倫の真っ最中。しかしながらトゥーリオは妻とは別れたくないし、愛人とも離れたくない。誰に何と言われようと我さえ良ければ満足している。
 ある日のこと、トゥーリオが愛人テレーザと旅行に出かけている最中に、実家へ弟のフェデリコ(ディディエ・オードパン)が友人で作家のフィリッポ(マルク・ポレル)を連れてくる。そこへ出合わせたジュリアーナとフィリッポは見つめ合った瞬間から互いに惹かれていく。
 トゥーリオは愛人テレーザとの不倫旅行から帰ってきて、妻のジュリアーナの様子から不倫相手いることに気付くのだが、そのことはトゥーリオに自分が本当に愛していたのはジュリアーナだったとを気づかせる。トゥーリオとジュリアーナは再び愛し合うことになるのだが、既にジュリアーナはフィリッポの子供を妊娠しており・・・

 昔の西欧の貴族の世界は俺のような底辺の社会で生きる人間には憧れたりするが、いやいや本作を観てそんな想いは吹っ飛んだ。このトゥーリオ伯爵だが男として相当なダメっぷりを発揮してくれる。妻に対しては妹扱いで、しかも俺には愛人が居てもオッケーだと力づくで認めさせている。しかも、この男は西欧の人間には珍しく無神論者。何かと傲慢で強がりな奴だ。
 妻に近づいてくる男に対して毛嫌いするのは理解できるが、愛人に近づいてくる男でさえケンカ腰になる。そして俺は自由人だから何をしても良いんだと妻のジュリアーナに、わざわざ話すとは余計なお世話。最初から最後までこんな調子でストーリーが進む。そりゃ~、他の男との子供を妊娠してしまうジュリアーナは罪が深いかもしれないが、悪いのは罪を犯していなくてもトゥーリオ、お前だ!
 無神論者の人間に天誅が降されるだけの結末だったら観終わった後は確かにスッキリしたかもしれない。しかし、映画史にその名を轟かすルキノ・ヴィスコンティ監督は、そんなありきたりのエンディングに逃げない。この天才監督はバイセクシャルなだけあって女性の気持ち、恐ろしさをよく理解している。そして、典型的なダメ男についてもよく理解している。
 生涯にわたり駄作知らずで、名作及び傑作を撮り続けていただけに、本作は彼の監督作品の中で特に優れている方でもないと思うのだが、画面から伝わる映像は流石だと感じさせる。そして、遺作にして彼の作品の中で最もエロいシーンを見せつけられる。奥さんの役のラウラ・アントネッリだが、どこかで見たことがあるな~なんて思っていたら、何と青春エロ映画の『青い体験』、『続・青い体験』に出演していた女優さんだった。確かにあのエロシーンを撮りたいと思えば、この女優を大監督が引っ張り出してきたのも大いに納得できる。
 そして、ダメンズを演じるジャンカルロ・ジャンニーニだが、この人の目力が凄い。顔の表情だけでもアカデミー主演男優賞級の演技だと感心させられる。
 ルキノ・ヴィスコンティ監督と聞いて心が躍る人、ヨーロッパ映画の名作に触れたい人、『青い体験』を観ている人、金持ちが嫌いな人等に今回はイノセントをお勧め映画として挙げておこう

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 監督は前述したルキノ・ヴィスコンティ。前述したように名作ぞろいですが、個人的なお勧めはアラン・ドロン主演の若者のすべて、女の恐ろしさを思い知らされる夏の嵐、女装、幼児性愛、近親相姦、虐殺等、何でもありの地獄に堕ちた勇者ども、時間に余裕があればルートヴィヒも観て欲しいです。

 
 
 


  

 







 
 
 
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映画 愛と精霊の家(1993) 豪華スター及び多くのテーマをぶっこんでます

2019年08月08日 | 映画(あ行)
 だいたいスターがたくさん出演している映画といえば、その殆どが失敗作品と思って間違いない。しかし、映画の世界にも例外というのもあり、まさに今回紹介する映画愛と精霊の家がそれだ。本作は今でも主演級の女優として活躍するメリル・ストリープやグレン・クローズ、ジェレミー・アイアンズといった実力派が出演し、本作時には既に大ベテランの域に入っていたアーミン・ミューラー=スタール、ヴァネッサ・レッドグレイヴといった名優たちが出演しており、当時の若手としてアントニオ・バンデラス、ウィノナ・ライダー、ヴィンセント・ギャロと言った面々が出ている。そして本作の優れているのが内包するテーマの多様性が挙げられる。生と死、愛と憎悪、家族の絆、政治、そして一見どうでも良いような超能力まで描かれている。
 南米のチリを舞台にした映画だが、描かれている内容はワールドワイドに通じるテーマがあり、日本人にも考えさせられる内容が含まれている。現実の世界においても醜い対立があり、何かと争いが絶えない。本作はその辺りの描き方が、残酷かつパワフルで観ていて怠さを感じさせない。本作で見せる対立は、身分の違い、政治的イデオロギー、貧富の格差、世代間の違い等など。現実の世界でも未だにこのような対立があり、やられたらやり返すの復讐、報復が後を絶たない。お隣の国の大統領も何を勘違いしているのか報復にでるぞ、なんて叫んでいる。
現実の世界は前述した通り、あらゆる対立が生み出されたり、さらに激化したりで、俺自身がこの世に生きてて嫌になることが多々あるが、本作が導き出す世界もやはり絶望か、それとも希望か。

 チリのある一家を通して半世紀にも渡る激動のストーリーの紹介を。
 1928年のチリにおいて。政界、財界において権力を持つ名家であるトルバエ家。政界のトラブルに巻き込まれ長女のローザが毒殺される。まだ幼い次女のクララ(メリル・ストリープ)は超能力をもっており、あらかじめ予知能力で、そのような悲劇が起きることを想像していながらも助けられなかったことにショックを受け、それ以来すっかり口を閉ざしてしまった。
 ローザの婚約者であったエステバン(ジェレミー・アイアンズ)は彼女の死にショックを受けるが、それをバネに20年間働きづめて大農園を作り上げる。故郷に戻ったエステバンはすっかり大人の女性になったクララと愛し合い結婚し娘ブランカ(ウィノナ・ライダー)を授かる。しかしながら、次第にエステバンは権力を握り、横暴になっていくのだが・・・
 
 観ている最中はベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『1900年』を思い出した。内容もチョット被っているしジェレミー・アイアンズ演じるエステバンだがあの映画のバート・ランカスターに風貌が似ていると思ったのが俺だけか。しかし、このエステバンの政治家になってからの横暴振りが凄い。自らの農場で働く労働者はこき使い、逆らう人間には銃を向ける。そして、嫁が居るのに外で女を孕ませて反省もせず、一緒に暮らしていた姉は邪魔だからと追い出し、嫁や娘にも手をだしてしまう。そりゃ~、こんなに相手の言うことに耳を貸さない独裁的な人間が現れたら社会主義が台頭するのも当然だ。当たり前だがこういう人間は次第に孤独になっていく。
 しかし、一方でこんなバカ亭主に対しても愛を持って接するのがメリル・ストリープ演じるクララ。正直、こんな男をなぜ愛するのかと不思議に思ったりしたが、心の綺麗な人は相手の長所を見抜くのがうまい。全く役に立っていないような超能力を持っているのが不思議だったのだが、ここぞという時に超能力を発揮した場面は大いに感動した。俺なんかだったら超能力を私利私欲に利用してしまいそうだが、心の清い人は違う。そして、クララと横暴な夫エステバントとの距離感が抜群。ひたすら夫の暴力に耐えている女房が描かれているような映画もあるが、それはハッキリ言ってダメだ。実はこの映画には独裁者如きに立ち向かう勇気が描かれているのが気持ち良い。
 そしてこの映画の最大のテーマは赦し。この赦しというのがわかっていてもできないし、俺なんかはとっても反省させられた。そして、この赦しが次の世代へ受け継がれていく過程に大いなる希望を感じさせる。本当にこの赦しの精神は見習いたいのだが、そうは言っても永遠に許せない奴が一人だけいる。
 まあ観ている最中はメリル・ストリープのブリッコな演技にムカついたりしたが、途中からはそんなことを忘れて集中して観ることができた。他にも褒めるべき点があったように思うが、それは各自で確認してもらうことにしよう。
 スターはスターでも名優達の豪華共演に酔いたい人、重厚な人間ドラマが観たい人、南米が舞台なのにラテン系の人間が少ないことが気にならない人、多くのテーマを深く読み解きたい人・・・等に今回は愛と精霊の家をお勧め映画として挙げておこう。

愛と精霊の家 [DVD]
メリル・ストリープ,ジェレミー・アイアンズ,ウィノナ・ライダー
パイオニアLDC


 監督はデンマーク人のビレ・アウグスト。個人的にデンマーク人の映画監督は優秀だと認識しているが、そのように思わせてくれた監督さん。北欧の大自然の厳しさを感じさせるペレ、あのヴィクトル・ユゴーの普及の名作の映画化作品のレ・ミゼラブル、偉大なる政治家ネルソン・マンデラの知られざる実話を描いたマンデラの名もなき看守がお勧めです。





 
 
 
 

 

 

 
 
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映画 暗殺の森(1970) 巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督の傑作

2019年03月27日 | 映画(あ行)
 もう昨年のことになるが巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が亡くなった。日本人には坂本龍一が音楽を担当し、彼も出演していたラストエンペラーが馴染み深いか。しかし、巨匠と呼ばれるだけあって他にも傑作、問題作を連発。そんな中でも比較的お勧めしやすい作品となると今回紹介する暗殺の森ということになる。なんだか物騒な邦題がつけられているが、原題はイタリア語でIl conformista。日本語に訳すと『同調者』という意味になる。確かに本作を観ると邦題をつけた人の気持ちが、わからないでもない。しかし、根幹をなすテーマとしては原題の『同調者』がより相応しい。
 よく映画を観る時の心得として知ったからしい人が、『映画というのは何の予備知識もなく観るのが正しい見方だ』なんて上から目線で語る人がいる。しかしながら予備知識なしで本作を観ると多くの人が難解に感じ、退屈する可能性が高い。せめて本作を観る前に第二次世界大戦前後のイタリアという国家を知っておいて方が良いだろう。戦前から戦中にかけてイタリアはベニート・ムッソリーニ独裁の全体主義、軍国主義であるファシズムが台頭する。しかしながら、戦争で負け続け、ファシズムに勢いが無くなると戦争末期から戦後にかけてイタリアに大きな波が吹き寄せてきたのは共産主義。イタリアの政治的イデオロギーの変化を予備知識として持っておけば、本作のジャン=ルイ・トランティニャン演じる主人公の男性の露骨すぎる卑怯な振舞いの変化に納得するはずだ。
 
 一人の男を通して、歪んだ思想、恋愛が描かれているストーリーの紹介を。
 第二次世界大戦前のイタリアにおいて。すっかり大人になった青年マルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)だったが、彼は幼いころに大人の男性から性的虐待を受けそうになり、相手を射殺してしまったことに、ずっとトラウマを抱えていた。そんな悩みを払拭するためにファシズムにのめり込んでしまい、組織の一員となる。
 そんなマルチェロにファシズムの幹部から命令が降りる。それは、今はパリに亡命している大学での恩師であるクアドリ教授(エンツォ・タラシオ)を見張ること。クアドリ教授は反ファシズム運動の活動家として動きを活発化させていた。マルチェロはちょうど若くて可愛いジュリア(ステファニア・サンドレッリ)と結婚したところであり、新婚旅行を口実に彼女と一緒にパリへ向かう。マルチェロは久しぶりにクアドリ教授と出会い、会話も交わす。しかし、マルチェロはクアドリ教授の妻で若くて、妖艶な美貌をしているアンナ(ドミニク・サンダ)の虜になってゆく。
 マルチェロはジュリアに内緒でこっそりとアンナと楽しんだりしていたが、マルチェロに上司からクアドリ教授を殺害しろとの命令がくだり・・・

  政治、サスペンス、人間ドラマがドロドロに描かれており重厚な雰囲気が漂う映画であるが、何気にそんなシーン居る?見たいな場面も随所に見られる。唐突に同性愛、幼児性愛、不倫といった歪んだ性描写が出てくるが、そういうシーンを何の恥ずかし気もなく描くところが、ベルトルッチ監督らしいところ。本作が公開された1970年は、まだベルトルッチ監督の年齢が29歳の若さだったことを考えると、天才は常人にはない発想があることを思い知らされる。
 出番はそれ程多くないのだがドミニク・サンダのエロい雰囲気のインパクトが強くて映画のテーマを忘れそうになってしまうが、あくまで本作の主人公はジャン=ルイ・トランティニャン演じる素っ頓狂な理由でファシズムに傾倒する男性。しかしながら、何かとこの男が優柔不断のダメ男。政治信条のブレっぷりは凄いし、女性関係もだらしないし、自ら責任を取らないどころか他人のせいにしてしまう卑怯者。こういうような奴は本当に何処でも居るんだということを思い知らされる。しかし、映画は観ている者に訴えかける。果たしてお前はこの男を非難する資格があるのか?と。
 ダメ男のストーリーを延々と見させられることに退屈さを感じる人もいるかもしれないが、重厚な映像は流石はベルトルッチ監督。タイトルの名前にもある暗殺場面のシーンは残酷でありながら美しさを感じさせるし、セットの美術的エッセンスはなかなかの見所で良い映画を観た気分にさせる。
 ヨーロッパの名作に興味がある人、ベルナルド・ベルトルッチ監督と聞いて心が躍る人、綺麗な女性を見たい人等に今回は暗殺の森を紹介しておこう。

暗殺の森 [DVD]
アルベルト・モラヴィア,ベルナルド・ベルトルッチ
紀伊國屋書店


 監督は前述した通りベルナルド・ベルトルッチ。5時間を超える長い映画だがイタリアの現代史が理解できた気分になれる1900年。当時は芸術か猥褻かで議論の的になったラストタンゴ・イン・パリ、すっかり冷めきったアメリカ人夫婦が愛の絆を確かめようとする姿が痛々しいシェルタリング・スカイがお勧めです。






 
 
 




 

 

 
 
 
 







 
 

 
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映画 生きるべきか死ぬべきか(1942) ポーランド国民への応援映画です

2018年10月21日 | 映画(あ行)
 ウィリアム・シェークスピア原作のハムレットでの有名な台詞『To Be or Not to Be(生きるべきか死ぬべきか)』がタイトル名になっているが、このタイトルが本作中でも抜群の効果を発揮するのが今回紹介する映画生きるべきか死ぬべきか
 本作は1942年という第二次世界大戦中の真っ最中に製作された映画。当時ナチス・ドイツにボロボロに蹂躙されてしまっていたポーランドに対して、ハリウッドからポーランド国民に向けてのエールを送った映画だ。しかも、エールを送っただけでなく誰が観ても笑えるコメディ映画になっているところが、当時のハリウッドの底力を感じさせる。まあ、俺が言っていることを信用してもらえないかもしれないが、古今東西の数多あるコメディ映画の中でも最も笑える部類に入る映画。しかも、笑いが洗練されているのでお笑いの勉強もできる有難すぎる映画だ。

 さて、早速だが最初から最後まで笑えるストーリーの紹介を出来るだけ簡単に。
 1939年のポーランドのワルシャワにおいて。有名女優であるマリア・トゥーラ(キャロル・ロンバート)と、その夫であり自称ポーランドの名優ヨーゼフ・トゥーラ(ジャック・ベニー)の夫妻を看板スターとする劇団があり、連日満員の盛況だった。
 ある日、ハムレットを上演中に、ハムレットを演じていたヨーゼフが、ここは一番の見せ場とばかりに、有名な台詞である『To Be or Not to Be(生きるべきか死ぬべきか)』を言うのだが、その瞬間に客席にいたイケメンの若者が立ち上がってその場を去って行く。あまりのショックにヨーゼフはすっかり自分の演技力に自信を無くしてしまう。
 実は若者はポーランド空軍に属するソビンスキー中尉(ロバート・スタック)であり、ヨーゼフの長台詞中に『To Be or Not to Be(生きるべきか死ぬべきか)』を合図に、マリアの楽屋へ行き彼女に逢っていたのだ。
 ハムレットが上演される度にソビエンスキー中尉とマリアは相変わらず逢瀬を重ねていたが、いよいよナチスドイツがワルシャワに侵攻。ハムレットの舞台劇も中止を余儀なくされる。
 その後、ソビエンスキー中尉はイギリスにいてドイツへの反撃の機会をうかがっていた。仲間たちと故郷ワルシャワの事を話している時に、その場にシレツキー教授(スタンリー・リッジス)もいた。彼は近いうちに秘密任務としてワルシャワに行くことになっていた。しかし、ソビエンツキー中尉はシレツキー教授がドイツのスパイであることを見抜く。
 ソビエンスキー中尉はワルシャワヘ戻りトゥーラ夫妻たち劇団のメンバーと一緒にシレンツキー教授の狙いを阻止しようと奮闘するのだが・・・

 色々と笑えるシーンがあるのだが、冒頭の始まり方が凄い。まだドイツがポーランドに侵攻する前なのにワルシャワの中心地にヒットラーが独りで現れる。その場にいた人々はヒットラーの出現に驚くが、当のヒットラーは何も気にせずに立っている。実は・・・なのが笑わせるし、これが最後のクライマックスの伏線になっているのに感心する。
 トゥーラ夫妻とソビエンツキー中尉が三角関係のままナチスドイツを必死で騙そうとするが、ヨーゼフが彼らの関係に気を揉んでいるために、ついつい自分の役割に集中できなくて失敗しそうになっているのが笑える。
 それとナチスドイツの描き方も笑える。特にエアハルト大佐という偉いさんがいるのだが、このオッサンが頭が悪く、自分のミスをことごとく部下に押し付ける無責任な人間。もし本当にナチスドイツの人間が、こんな奴ばかりだったらもっと早く戦争が終わっていたのにと思ってしまった。
 他にも笑える場面があるし、けっこうなスリルもあったりで本当に楽しい映画。これが第二次世界大戦中に製作されたことに多くの人が驚くはずだ。
 笑える映画を観たい人、ポーランドに興味のある人、熟練したテクニックを感じたい人、そして下ネタでしか笑わすことが出来ない人、エルンスト・ルビッチ監督と聞いて心が躍る人・・・等々に今回は映画生きるべきか死ぬべきかをお勧め映画に挙げておこう。

生きるべきか死ぬべきか [DVD]
キャロル・ロンバード,ジャック・ベニー,ロバート・スタック
ジュネス企画


 監督はハリウッド黄金期を支えたエルンスト・ルビッチ。洗練されたユーモアは多くの人を魅了した。彼のお勧めはグレッタ・ガルボ主演のニノチカ、マレーネ・ディードリッヒ主演の天使、真面目に生きようと思える天国は待ってくれる、ジェームズ・スチュアート主演で文通のやり取りが懐かしい街角 桃色の店が良いです。





 
 

 

 
 
 

 
 

 
 
 
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映画 ウォーリアーズ(1979) ストリートギャングの逃亡アクション

2018年09月24日 | 映画(あ行)
 よく夜のニューヨークは怖いと聞くが、確かに今回紹介する映画ウォーリアーズを観てたら怖い。一斉にニューヨークのストリートギャング達が集まるシーンも怖いが、夜のニューヨークの風景が怖い。顔をペイントしながらバットを持っているグループや、もちろん拳銃を持っているグループもあり、へんてこりんな衣装をしたグループが多数。夜中にこんな奴らと運悪く出くわしたらアーメンと心の中で叫んで死を覚悟しなければならない。
 それにそこら中にある壁や電車に落書きしてあるのが怖い。ニューヨークの夜にうっかり電車に乗ったらストリートギャングが乗っていたらと思うと、その後に何が起きるかを想像すると怖い。まあ、ニューヨークの治安の悪さがよくわかり、日本に居ててもなるべく夜は外出を控えようと心に決めた。

 さて、ストリートギャングがニューヨークのスラム街をひたすら逃げるストーリーの紹介を。
 ニューヨークのストリートギャング達が一斉にブロンクスの公園に集まる。ニューヨークのストリートギャングで最も勢いのあるリーフズの呼びかけでニューヨーク中から集まって来たのだ。ブルックリン・コニーアイランドを縄張りとするギャングであるウォーリアーズもやって来た。リーダーは黒人のクリオン(ドーシー・ライト)、その右腕であるスワン(マイケル・ベック)を含めて9人でやって来た。他のグループも9人一組でやって来たのだが、およそ100組のグループのストリートギャング達が集まったのだが、流石にメチャクチャ多いし、怖い。
 リーフズのリーダーであるサイラス(ロジャー・ヒル)が高い台に上って集まった全グループに呼びかける。『停戦協定を今こそ結び、ニューヨークを我々で支配しよう!そうすればマフィアも警察も怖くない』なんて演説してたら、ズドンと一発。サイラスは撃たれて高い台から落ちてしまう。その時に外で待機していた警察も乗り込んでくるわ、ギャング同士で大騒ぎ。実は撃ったのはローグスのリーダーであるルーサー(デヴィッド・パトリック・ケリー)なのだが、ルーサーは『撃ったのはウォーリアーズだ』と叫び濡れ衣を着せる。
 ウォーリアーズのリーダーであるクリオンはリーフズのメンバーたちにリンチに遭ってしまい死亡。残りのウォーリアーズのメンバーはスワンをリーダーとして、とにかくバラバラになりながらもコニーアイランドへ逃げようとするのだが、リーフズの新しきリーダーであるマサイはウォーリアーズに復讐するために全グループにウォーリアーズを全員生かして帰らせずぶっ殺せと指示をだし、ウォーリアーズをひたすら追いかける・・・

 ストリートギャング達は馬鹿なのかもっと早く逃げれば良いのに、なぜか可愛い女の子が一人ついてきて足手まとい同然で一緒に逃げることになってしまったり、ちょっと休憩と女の子ばかりがいる部屋でエロいことでもしようかと考えていたら、実は女ばかりのギャング集団で危うく撃たれそうになったり、ウォーリアーズのメンバーの中に夜の公園の椅子に座っていた女性に気を取られてその女性にちょっかいをかけたら手錠をかけられてしまってパトカーが急に集まってきたりで、もっと必死で逃げないといけないのに、なぜか女性が現れるとそっちの方に気をとられてしまうのが笑わせる。しかし、メインはバイオレンス。逃げながも追いかけてくる奴は叩きのめす。アクション映画として見せ場はたくさんあり、けっこう燃える映画になっている。
 それと笑わせるのが情報通の黒人女性DJの存在。『どこどこのメンバーがウォーリアーズを捕まえるのに失敗しました』なんて放送してくれるのだが、ストリートギャングの世界もネットワークが凄いな~と妙なところで感心してしまった。確かにこれだけネットワークが充実していると逃げ切るのが大変だ。
 怖そうな奴らがたくさん出てくるが、残酷極まりないシーンは無いのでグロさはない。なかなかよくできたアクション映画であり、結末はちょっとさわやかに感じるぐらいだ。
 ロクな人間が登場しない映画だが、夜は独りで外出しない、怖そうな人とは目を一瞬でも合わさない、可愛い女性だからと言っていつも手を出してはいけない、電車に落書きをしない、ゴミはきちんと拾いましょう・・・等、見た目とは裏腹に人生の勉強にもなるストーリーが展開される映画ウォーリアーズを今回はお勧め映画に挙げておこう


ウォリアーズ [DVD]
マイケル・ベック,ジェームズ・レマー,トーマス・ウェイツ,ドーシー・ライト,ブライアン・タイラー
パラマウント


 監督はアクション映画に定評のあるウォルター・ヒル。犯罪人を車に乗せて逃亡する主人公を描いたザ・ドライバー、実際の兄弟が演じている西部劇の傑作ロング・ライダーズ、白人刑事と黒人の囚人が組んで犯人捜しをする48時間、ちょっとロックなアクション映画ストリート・オブ・ファイヤーが良いです。
  

 
 
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映画 アルタード・ステーツ 未知への挑戦(1979) 人類誕生の謎に迫る

2018年09月17日 | 映画(あ行)
 本作に出てくる重要な道具として人間が入れるタンクが出てくる。それはアイソレーション・タンク。どうやら色々な用途で世界中及び日本でも使われているようだが、本作ではウィリアム・ハート演じるか科学者が変性意識状態(日常的な意識状態以外の意識状態のこと)になるために、自らアイソレーション・タンクに入って、自分自身で人体実験をしている。ちなみにタイトル名のアルタード(altered)は変性意識状態の事を示している。タンクの中には液体が入っており、この科学者が何のためにアイソレーション・タンクに入るのかは、後ほど追々と説明するが、個人的には好き好んで入ろうと思わない。

 さて、あまりにも優秀過ぎる科学者であるがために、この世の最大の謎を解明しようとするストーリーの紹介を簡単に。
20歳代半ばにして博士号の資格を持つ天才科学者エドワード(ウィリアム・ハート)は自ら何時間もアイソレーション・タンクに入って研究していた。人類は古代から進化のプロセスを辿っているので、人類の細胞は原始時代からの今まで引きずっているので、細胞のもっている記憶を逆に原始時代まで遡ることによって、人類の誕生の真理が明らかになるはずだと考えていた。アイソレーション・タンクに入って、幻覚を引き起こすのだが、エドワード曰く『面白いぞ』とか言って、外で監視していた友人のアーサー(ボブ・バラバン)と話していた。
 その後にエドワードは人類学者のエミリー(ブレア・ブラウン)と結婚し、子供も生まれて研究を一時中止する。お互いに生活は順調だったのだが、エドワードはメキシコにキノコを食べて幻覚を引き起こし過去にトリップをする部族が居ることを知る。またまた研究にのめり込むエドワードに愛想を尽かしてエミリーは子供を連れて出て行ってしまう。
 メキシコへ行き、キノコの効果を自ら確かめたエドワードは、また自らアイソレーション・タンクに入る。そうするとキノコによる幻覚作用と併用すると効果が抜群。彼の頭の中には原始時代にトリップするだけでなく、他のイメージも見える。どんどん実験を重ねていくのだが、次第にエドワードの体にも変化が訪れるのだが・・・

 アイソレーション・タンクやキノコなど使って幻覚を引き起こしているが、見ていて俺自身が麻薬をを使ってラリっている気分になってしまった。トリップした時のイマジネーションがなかなか面白く、キリストを茶化したような映像も出てくる。
 けっこう笑えたシーンが実験後に口から血を流しているエドワードの体のレントゲンを撮り、それを専門家に見せると『猿のレントゲンなんか持ってくるな』と言われたりするのには笑ってしまった。
 しかし、後半はなんだかホラー映画。すっかり変身してしまったエドワードが暴れまくる。さて、そんなエドワードの暴走は止められるのか?ラストシーンは正直なところ、俺はこんな結末で良いのか?なんて思ったのだが、もしかしたら感動する人の方が多いかもしれない。
 SF映画とホラー映画が融合したような映画。エイリアンみたいなアクションシーンは全くないが、色々と見どころはたくさんある。豊かなイマジネーション、そんなこと有りえね~!なんて思わせたり、ブラックユーモア的なセンスで笑わせたり・・・。
 ケン・ラッセル監督作品と聞いて観たいと思った人、幻覚症状を味わってみたい人、何だか変わった映画を観たい人、科学者になりたい人・・・等に今回はアルタード・ステーツ/未知への挑戦をお勧めしておこう。


アルタード・ステーツ~未知への挑戦~ [DVD]
ウィリアム・ハート,ブレア・ブラウン,ボブ・バラバン
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督はイギリス人のケン・ラッセル。シュール、エロ、変態のイメージがあります。彼のお勧めは少し毒舌なミュージカル映画トミー、ちょっとエロいホラー映画白蛇伝説、男二人がスッポンポンで対決する恋する女たち、キャスリン・ターナーが綺麗だった頃のクライム・オブ・パッションが良いです。
 

 




 

 

 

 
 





 

 
 
 
 
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映画 或る夜の出来事(1934) ロマンチックコメディの傑作

2018年09月05日 | 映画(あ行)
 ロマンチックコメディの名作で誰もが知っている映画となるとローマの休日が真っ先に思い浮かぶだろう。しかし、ローマの休日に影響を与えている映画となると今回紹介する或る夜の出来事が俺の頭にはパッと思い浮かぶ。しかし、この映画はローマの休日だけでなくその後における恋愛映画において大いなる影響を今でも与え続けている傑作だ。ボーイ・ミーツ・ガール 、スクリューボール・コメディといった恋愛映画によく使われる言葉は、この映画から始まる。
 合コン、飲み会、イベント等で初めて顔を合わせた男女が、第一印象が悪くてそのまま何も発展しないことが多々ある。俺もその類で何の成果も出ない合コンを繰り返しては、電話番号もゲットできずにカネだけ無駄に浪費している今日この頃。だいたい俺の良さは出会った一瞬だけではわからない。
 まあ、俺のボヤキはどうでも良いが、本作はまさに偶然にも出会った知らない者同士の男女が、最初は言い合いばかりしながらも次第に仲良くなっていく話。ところがこの男女の2人が、かなり笑わせてくれる。マイアミからニューヨークまで世間知らずのお嬢さんと、少々態度が横柄な新聞記者との珍道中。恋愛映画でもありロードムービーの趣もあったりする。

 色々な名シーン、名台詞、笑いがいっぱいのストーリーを簡単に紹介を
 富豪のお嬢さんであるエリー(クローデット・コルベール)には飛行士であるウェストリー(ジェムソン・トーマス)という名の婚約者がいた。しかし、ウェストリーの女癖の悪さは有名で、エリーの父は彼女を結婚させないためにマイアミ沖の豪華船に監禁していた。父親はエリーを何とか説得しようとするが失敗。エリーは船からダイブして逃亡してしまう。父親はさっそく探偵を雇って娘のエリーを探させる。
 エリーはマイアミからニューヨークに居る婚約者のウェストリーの所まで夜行バスで向かおうとする。そこへ居合わせたのがつい先ほど新聞会社の社長と喧嘩してクビになってしまった失業中の記者ピーター(クラーク・ゲーブル)。2人はいきなりバスの座席の取り合いで喧嘩してしまう。お互いに第一印象が悪くて何かとソリが合わないが、ピーターはエリーが富豪の令嬢だということを知ってしまい、これは大スクープになることを確信し、しばらくエリーと一緒に行動することに決めるのだが、次第にエリーはピーターに好意を寄せてしまう・・・

 世間しらずのお嬢さんの一人旅はやばい。鞄を盗まれたり、切符の買い方がわからなかったりで、もう少し勉強しろよ!なんて思ってしまう。しかし、この映画は名シーンの連発。大雨でバスが止まってしまい、2人は夫婦を装って一つの部屋で寝ることになるが、この時に二人を仕切る毛布をジェリコの壁に例えるが、聖書を少しかじっていたらけっこう笑えるし、これがラストシーンで大いなる効果を発揮する。他にも途中でバスを諦めてヒッチハイクをするシーンがあるが、ピーターが偉そうにヒッチハイクのやり方をエリーに教えるが、全く車が止まらない様子に笑える。ヒッチハイクは男性がするよりも女性にしてもらう方がすぐに車が止まってもらえることがわかる。
 それから出番は少ないがお父さんのキャラクターが良い。富豪とはいえ決してお金が大好きな人間ではなく娘のことを考えた行動が素晴らしい。これはなかなか感動した。他にもこの映画を褒めるところはたくさんあるのだが、とにかく笑い、テンポ、ストーリー展開が洗練されていて、何だか素敵な映画を観たような気分になる。
 笑える映画を観たい人、名監督の熟練のテクニックを見たい人、古典的名作映画の素晴らしさを知りたい人に今回は或る夜の出来事をお勧め映画として挙げておこう。


或る夜の出来事 [DVD]
クラーク・ゲーブル,クローデット・コルベール,ウォルター・コノリー,ロスコ・カーン,アラン・ヘイル
ファーストトレーディング


 監督はフランク・キャプラ。ハリウッド全盛期を支えた名監督。本当にどの作品も素晴らしい。ひたすら生きる気力が湧いてくる素晴らしき哉、人生!、この世の中にこういう人間は居ないのかと思わせるオペラハット、マスコミ関係の人はぜひ見て欲しい群衆、生き方に悩んでいる人は必見の我が家の楽園、キャプラには珍しいサスペンスの毒薬と老嬢などお勧め多数です。 

 


 


 

 
 

 

 
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映画 アラビアのロレンス(1963) アラブに命をかけた男のストーリー

2018年08月24日 | 映画(あ行)
 時に名作と呼ばれる映画は歴史上において英雄でもない人間にスポットを当てる時がある。例えばスタンリー・キューブリック監督の映画スパルタカス、メル・ギブソン監督の映画ブレイブ・ハート(ウィリアム・ウォレスが主人公)等がそう。両作品ともに暴政に苦しんだが故に反乱を起こす実在の人物であるスパルタカス、ウィリアム・ウォレスを描いているが結局は失敗に終わっているために、彼らには歴史上においては光を照らされていない。
 そして今回紹介する映画アラビアのロレンスも今更ここで載せなくても有名すぎるぐらいの名作である。しかし、本作の歴史上の実在の人物であるトーマス・エドワード・ロレンスだが、実はこの人物も歴史上において確たる功績を挙げているわけではないので、歴史上においてこの人も光を照らされていない。前述したスパルタカス、ウィリアム・ウォレスの2人は反乱に失敗したが、その後の歴史を振り返れば決して彼らの反乱は無駄ではなかったことに気づく。歴史をひも解けば、一番初めに改革をしようとした者は失敗するものであり、その後に現れる同じ志を持った人間によって成し遂げられるのが普通だ。
 さて、今回紹介する映画アラビアのロレンスの主人公であるトーマス・エドワード・ロレンスはどのように評価されるのだろうか?実は本作はいきなり主人公のトーマス・エドワード・ロレンスがバイク事故で亡くなるシーンから始まる珍しいパターン。その後に彼の葬式が行われた教会で多くの人が集まるのだが、彼らがロレンスを評価する言葉が次々に述べられるのだが賛否両論で極端に意見が分かれる。さて、彼は本当に英雄なのか、それとも偽善者なのか?

 アラブに広がる砂漠を背景に名シーンが連発する映画の印象が強いが、実はロレンスの人間味溢れるストーリーの紹介を。
 1916年、イギリス領エジプトのカイロの英国司令部において。何かと風変わりなことで知られているロレンス(ピーター・オトゥール)だったが、アラビア語に堪能だったことからアラブ方面へ行かされることになる。目的はオスマン帝国からの独立を目指して反乱を指揮しているファイサル王子(アレック・ギネス)と会い、現在のアラブ情勢の情報を得ること。アラブ人をガイドに付けて、ラクダものりこなせるようになるが、道中でアラブ民族同士が争うのに嫌気がさしてきた。
 ロレンスがファイサル王子の基地に向かうと、そこはオスマン帝国の空軍による爆撃を食らっている最中でアラブ反乱軍は成す術もなかった。ロレンスはファイサル王子と会談し、イギリスはアラブの独立闘争を助けることを約束する。ロレンスは一人になっていると、ある考えが浮かぶ。それはオスマン帝国軍の港湾都市であるアカバを攻撃すること。熱い砂漠を何日もかけて歩き、敵の背後をつく奇襲作戦だったが、誰も成功するとは思っていなかったが、まんまと成功を収める。しかし、ロレンスはアカバ攻略に際して、多々あるアラブ民族をまとめる難しさを痛感する様々な出来事を目にする。
 その後もロレンスはアラブの独立のために、アラブの民族衣装まで着てオスマン帝国軍と戦う。しかし、彼はアラブ独立の大義のために戦ってきたつもりが、そんな夢を打ち砕くことが裏では行われていたことを知ってしまい・・・

 よくロレンスは変人と言われることがあるが、ここで描かれるロレンスは人情に厚い。しかし、いざ戦うとなると多くの犠牲者を出してしまうし、アカバ攻撃にしても上司に連絡もせずに彼の独断の行動。時々、アラブが好き過ぎて我を忘れてしまうこともある。彼はアラブのために戦ったが結果はどうだったのだろう?それは今の中東を見ればわかる。中東に色々な国が出来上がってしまい、アラブの国同士で争い、しかもアメリカやロシアやイギリスなどの大国の思惑が絡んでいる状態が今まで続いている。よく言われるイギリスの三枚舌外交に利用されたというべきだろう。
 本作でよく語られるのは砂漠をとらえた映像美。砂漠の地平線からラクダに乗った人物がやって来るシーンはよく覚えているし、マッチの炎を消すと砂漠が現れるシーンは映画好きには語り継がれている。奥行きをかんじさせるショットの凄さなら、あらゆる映画の中でもっとも優れているいえるだろう。
 他にも戦闘シーンも印象に残るし、音楽も素晴らしい。しかし、個人的には冒頭のシーンを活かしたラストシーンに切なさと虚しさが湧き出てくる。そしてファイサル王子がロレンスに最後に出会ったときに語る台詞。これが世界の外交なんだということが理解できる。

 なぜ今の中東はアラブ民族同士で争うのかを知りたい人、世界の外交の厳しさを知りたい人、約3時間半という長時間の映画に耐えることが出来る人、砂漠の美しさと残酷さの両方を知りたい人、人間の内面も砂漠と同じで善悪があるということを理解したい人・・・等に映画アラビアのロレンスを今回はお勧めしておこう。

アラビアのロレンス (1枚組) [AmazonDVDコレクション]
ピーター・オトゥール,オマー・シャリフ,アレック・ギネス,アンソニー・クイン
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


アラビアのロレンス [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
ピーター・オトゥール,オマー・シャリフ,アレック・ギネス,アンソニー・クイン,ジャック・ホーキンス
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


 監督はイギリス人のデビッド・リーン。彼の映画は本作も含めて大スクリーンで見たくなる雄大さが特徴。ベニスを舞台にした中年男女の恋を描いた旅情、戦争映画でありながら日英米の軍人の違いを描いた戦場にかける橋、ロシアの大地の自然の厳しさを余すことなく描いたドクトル・ジバゴ、アイルランド独立を背景にした不倫映画ライアンの娘などお勧め多数です。




 
 
 

 
 

 


 
 
 
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映画 甘い生活(1960) 退廃したローマが見れる

2018年08月17日 | 映画(あ行)
 イタリアのローマと言えば、日本人もそうだが世界中の人が観光旅行に行きたがる憧れの都市。あの名作中の名作である映画ローマの休日を観て、ローマに行きたいと思った人は多いはずだ。ところがイタリア人の超有名監督がローマを描くと、そこには我々のイメージをぶっ壊すようなローマが現れる。退廃的、堕落しきったローマが描かれているのが今回紹介する映画甘い生活
 冒頭からローマの上空をキリスト像を吊るしたヘリコプターが飛んでいたり、主人公のイタリア男は彼女が居るのにも関わらず、セレブの美女をナンパ、ハリウッドからやってき美人女優とはトレビの泉で戯れて水遊びをしているし、上流階級は乱痴気パーティー。反カトリックやモラル崩壊を感じさせ、ローマに住む人の心の闇をえぐり取ったスキャンダラスな内容は、戦後のイタリア映画に現れたイタリアネオリアリズモ的な作品に終止符を打っただけでなく、世界中にも衝撃を与えた。

 さて、それでもやっぱりローマへ行ってみたいと思わせるストーリーの紹介を
 作家を夢見てローマにやって来たマルチェロ(マルチェロ・マストロヤン二)だったが、すっかりゴシップ記者に成り下がり、セレブな有名人が現れる高級クラブやカフェでシャッターチャンスを狙っている。しかも恋人のエマ(イヴォンヌ・フルノー)と一緒に住んでいるのに、セレブの美女マダレーナ(アヌーク・エーメ)をナンパするだけでなく、ハリウッドからやって来た美人女優シルビア(アニタ・エグバーグ)もナンパしてトレビの泉の中に入って遊んでいたりした。しかしながら彼の心はどこか満たされない。
 ある日のこと、マルチェロはエマを連れて、古い友人のスタイナー(アラン・キュニー)の自宅に行く。スタイナーは頭も良く、妻と子供二人で幸せそうに暮らしているのを見て、マルチェロは少しの安らぎを得て、自分も将来はスタイナーみたいに幸せに暮らそうと思うようになる。
 それでも、相変わらずマルチェロの女遊びは止まらず、上流階級の人の中に入り込み遊びまくる。しかし、ある日のことスタイナーが子供二人を道連れに無理心中おこしてしまう。そのことにショックを受けてしまったマルチェロは・・・

 伊達男のマルチェロ・マストロヤンニが彼女が居りながらナンパしまくるのが印象的。特にセレブな美女を口説きまくる様子は見ていて、羨ましいとは思うが、やっぱり俺には真実の愛が欲しい。そして、我々が憧れていたローマの退廃、堕落にショックを受ける。本作で描かれるローマからは、あの隆盛を極めていた頃の、ローマ帝国のプライドなんか何も感じられない。
 すっかりローマによって心身ともに疲れ切ったマルチェロが最後に見ることになる、浜辺に打ち上げらた怪魚は何を意味するのか?きっとそれは今の自分を象徴しているのだろう。それにしてもこれほど観終わった後に空虚な気分になる映画は珍しいが、これからは競馬や風俗にお金を使うのは控えようと思った。
 三時間もある長時間映画に耐えられる人、これからローマに行きたいと思っている人、人生の厳しさを知りたい人、フェデリコ・フェリーニ監督と聞いて心が躍る人、ヨーロッパの名作映画を観たい人・・・等に今回は映画甘い生活をお勧めとして挙げておこう。

甘い生活 デジタルリマスター版 [DVD]
マルチェロ・マストロヤンニ,アニタ・エクバーグ,アヌーク・エーメ,イヴォンヌ・フュルー
アイ・ヴィ・シー


 監督は前述したようにイタリアと言うよりも世界の巨匠フェデリコ・フェリーニ。彼の作品は今回紹介した甘い生活から作風が変わってしまいますが、個人的にはそれ以前の作品が好き。永遠の聖女とでも言うべきジェルソミーナの純真な心に感動する、人生の崖っぷちに追い込まれている詐欺師の姿を描く、騙されても騙されても決して希望を失わずに生きようとするカビリアの夜がお勧めです。





 


 
  


 
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映画 インファナル・アフェア(2002)2人の男の葛藤が描かれています

2018年08月08日 | 映画(あ行)
 巨匠マーティン・スコセッシ監督がリメイクしたように抜群に面白い映画が今回紹介するインファナル・アフェア。香港アクション映画であり原題は無間道。この原題の意味するところは、仏教用語でいう無間地獄のこと。つまり、一度入ると抜け出せない、絶え間なく続く苦しみを指す。この原題の意味を知って本作を観れば、主人公である格好いい2人の男が善と悪の狭間で葛藤する様子に切なさが込みあがってくるはずだ。
 潜入捜査官としてマフィアの組織に入り込み、ボスから厚い信頼を得るまでになるトニー・レオン、そのマフィアの組織から警察に入り込み内部調査課の課長まで上り詰めたアンディ・ラウ。相対する境遇の2人の男。2人とも何かと優秀であるために違う世界でも出世してしまうが、それが地獄の苦しみの始まりだ。
 警察であるのに警察から追われるという矛盾に苦しみ、それ以上にいつ正体がバレてしまうかという不安から精神病院通いをする羽目になり、もう一方はマフィアの手先ながら刑事として過ごしていくうちに何時しか善人になりたいと願う気持ちが芽生えてくる。そんな2人に果たして未来はあるのか?やがて彼らは導かれるように宿命の対決を迎えるのだが。

 早速だが自らの正体を偽って生きていくことの辛さを思い知らされるストーリーの紹介を
 マフィアに拾ってもらった青年ラウ(アンディ・ラウ)は組織の親分であるサム(エリック・ツァン)によって警察学校に送り込まれる。また警察学校でその優秀さをウォン警視(アンソニー・ウォン)から認められた青年ヤン(トニー・レオン)は警察学校を退学処分になるが、それはもちろん建前。実はサムのマフィア組織へ潜入捜査官として送り込まれたのだ。それから10年後、ラウは内部調査課の課長にまで昇進し、ヤンは親分サムの厚い信頼を得ることに成功していた。
 ある日のこと、ウォン警視はヤンから麻薬の密売が行われるとの情報を得る。警察側は密売現場を押さえようとするが、警察の情報はラウによってマフィア側に筒抜けになってしまう。マフィアの組織にしてみれば麻薬の密売に失敗、警察にすれば現場を押さえることができずに検挙に失敗。そのことによりお互いの組織にスパイがいることが判明。両者がスパイ探しをしていく内に警察とマフィアの争いもエスカレート。お互いにおびただしい犠牲者が出るが、それはラウとヤンの宿命の対決が近づくことを意味するのだが・・・

 いつ正体がバレるかのドキドキ感が非常に心地いい。香港映画といえばカンフー、銃撃戦のような見た目から派手な展開で楽しませることが多いが、本作は心理戦で楽しませる。それでいてインパクトのある死人も出てきたり、意表をついた展開もあったりで、香港映画にしては脚本がしっかりしているように感じた。
 しかし、本作を観ていて思うのは悪人が善人になろうとしても決してなり切れないこと。俺には本作の結末は、それは無いんじゃないの~!?なんて思えたが、これからも自分の正体をバレずに一生を過ごさないといけないことを考えると、まさに無間地獄。本作は三部作なのでその後の展開が楽しみだ。
 主役の2人は格好良くてアジアのスターと呼ばれることはあるし、個性的な脇役陣も良い。それに待ち合わせ場所がどうしてスターバックスじゃなくて、ビルの屋上なんだ?なんて疑問も湧いたが、考えてみれば誰も目に触れない場所といえば、なるほど屋上がうってつけだと妙に感心してしまった。
 ド派手なドンパチなんか無くても、スリルを味わえる映画なんか充分に作れる見本のような映画。ガラス、エレベーター、文字、携帯電話といった道具が巧みに使われているのも演出の妙を感じることができてポイントが高い。いつも当ブログでは小難しい映画ばかり紹介しているような気がするが、今回は誰が観ても面白い映画としてインファナル・アフェアをお勧め映画として紹介しておこう。

インファナル・アフェア [DVD]
トニー・レオン,アンディ・ラウ
ポニーキャニオン




 


 

 
 

 

 


 

 


 

 


 

 

 


 
 
 


 

 


 

 



 

 

 

 

 

 
 



 

 
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映画 イヴの総て(1950) ショービジネス界の暴露ストーリー

2018年05月08日 | 映画(あ行)
 華やかな印象があるブロードウェイの舞台。しかし、外見とは裏腹にそこで繰り広げられる人間関係はドロドロ。そんなブロードウェイの裏側を描き切った名作が今回紹介する映画イヴの総て。利用できる物は何でも利用し、他人を踏み台にして成り上がっていく野心満々の女性が描かれている。
 その様子を見ていて、俺の身近にいる人間とソックリ過ぎて笑えた。古い映画ではあるが、卑劣な手段を使って成り上がろうとする人間が何時の時代にも存在することがよくわかる映画だ。
 
 早速だがショービジネスを描きながらも、他の世界でも見られるリアル過ぎるストーリーを紹介しよう。
 アメリカ演劇界の授賞式において、最高の賞を新進女優のイヴ(アン・バクスター)が受賞する。イヴは満面の笑顔を浮かべ、その場は満場拍手の嵐で埋められているのかと思いきや、数人がその授賞式の様子を不機嫌そうに見ている人たちが居た。なぜ彼らはイヴの受賞を喜ぶことができないでいるのか?それは8か月前にさかのぼる。
 女優志望のイヴは、毎日を舞台の楽屋口で大スター女優であるマーゴ(ベティ・デイヴィス)に会いたいと待ちわびていた。そんな努力のかいもあり彼女はマーゴと会って話す機会を得る。マーゴはイヴを気に入り自分の付き人にする。何かとよく気づくイヴをマーゴは信頼して、重宝していたのだが次第にイヴは本性を現していく・・・

 このイヴという女性の成り上がり方が凄い。田舎から遥々やって来たことや、マーゴの大ファンであることを話し、そして自分の不幸な生い立ちを訥々と話す。イヴの顔を見ていたら清純そうなので、マーゴだけでなく一部の周りの人も彼女に同情的になってしまう。しかし、観ている我々はやがて彼女の正体を知ってしまって唖然とする。俺なんかは嘘八百を並び立てて、大女優に近づく様子を見ていると、俺の脳裏にも心当たりのある人間が浮かんできた。
 そして、イヴの狡猾なところは自分の仲間をしっかり押さえていること。何人かはイヴの野心には気づいているのだが、それでもイヴを信用してしまって自分が気づかないうちに彼女の仲間になってしまっている人がいる。もう笑ってないと仕方がないと諦めるとするっか。
 しかし、イヴは仲間にした人間の良心につけ込んで裏切り、ついには大女優のマーゴを踏み台にして成り上がっていく。このサクセスストーリー?を見ているとショービジネスの世界の恐ろしさを知り、実はこんな奴は何処にでも居ることに改めて気づかされた。そして騙すよりも騙される人間でありたいと不本意ながら自分に言い聞かせるのだ。
 しかし、これだけのストーリーならば別に大したことはない。なぜなら俺の身近にもあるような展開なのだから意外性なんか殆ど感じない。この映画が名作たるゆえんはラストシーンにある。あまりにも意味深すぎて観ている者の想像力を掻き立てる素晴らしいシーンだ。俺もこのシーンのおかげで留飲を下げることができた。
 ショービジネスの世界に興味がある人にはもちろん観ることをお勧めするし、とにかく他人を騙したり、蹴落としてでも成り上がりたい人にはバイブル的な教科書としてお勧めできるし、素っ頓狂な映画は見飽きてリアリティのある映画が観たくなった人、名作とよばれる映画はどの様なものを言うのかを知りたい人にお勧めとして今回はイヴの総てを挙げておこう

イヴの総て [DVD]
アン・バクスター,ベティ・デイヴィス
ファーストトレーディング


 監督はジョーゼフ・L・マンキーウィッツ。派手さは無いが職人気質を感じさせる映画を撮る印象がある。個人的には歴代美人女優のナンバーワンだと思っているエヴァ・ガードナーが見ることができる裸足の伯爵夫人、シェイクスピアの戯曲の映画化ジュリアス・シーザーがお勧めです。


 
 
 
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映画 オール・ザ・キングスメン(1949) 政治腐敗です

2017年11月03日 | 映画(あ行)
 衆議院選挙が終わったものの、やっぱり自公連立の圧勝。結果はさておき日本の政治家のダメっぷりが目に余る選挙として永遠に記憶に残りそうだ。いや、逆に議員のアホさが目立ちすぎて全く記憶に残らないか。
 しかし、政治家が自らの保身のために右往左往するのを見ているのは何とも気分が悪い。志が低い政治家が多すぎるのも問題だが、俗物以下の政治家を当選させてしまったり、生み出してしまう日本の国民も悪い。
 ただ目立ちたいだけで議員の職に就きたい人間を、この頃はよく目にしてしまうが、それでも政治家を志す人間の中には貧しい人を助けたい、困っている人を助けたい等、決して私利私欲のためではなく、大いなる理想を求めて政治家になろうとする人間も多いはず。
 ところが、なぜか多くの政治家は権力を握った途端に、クズ以下の人間になってしまうことがある。
 
 さて、そんな最もダメな政治家の見本のような人間を主人公にした映画が、今回紹介するオール・ザ・キングスメン。こんな奴いる?というぐらいのクズな政治家を描きながらも、骨太な政治ドラマとして見応えのあるストーリーの紹介を!
 若い記者であるハーデン(ジョン・アイアランド)は上司の命令で地方に飛び、そこでウィリー・スターク(ブロデリック・クロフォード)と出会う。ハーデンはスタークが町に蔓延る腐敗、汚職、不正と戦う姿に感銘を受ける。
 ハーデンはスタークの取材をしている内に彼らには次第に友情が芽生えてくる。スタークは知事州選挙に立候補し、最初こそ敗れるものの三度目のチャレンジにしてようやく知事になる。選挙中からスタークの右腕として活躍していたハーデンだったが、スタークが知事に就いてから、権力の虜になっていくのを目の当たりにする・・・


 当初は真っ当なことを訴えるも、権力を握ってからが大悪党の主人公のスターク。自分の名前を付けた道路、大学を作り、恐喝、賄賂は当たり前。女に手を出し、人殺しにも手を染める。まるで何処かの国の独裁者を思わせる非道さ。善人から悪人に変貌するのは簡単。しかし、なぜこのような人間が民衆の支持を得て、権力者になってしまうのか。
 この映画のスタークもそうだが、弱者を煽り立てるポピュリズムからスタート。思いつくままに民衆受けすることばかり言っている政治家には気を付けないといけない。
 それに俺もそうなのだが、おだてられると直ぐに調子に乗ってしまう奴が多すぎる。私利私欲に走ってしまう政治家をその前にストップさせるのは実は民衆の責任でもある。実は本作においても、その民衆のレベルの低さが描かれている。圧倒的な権力を握ってしまった奴ににすり寄るその姿勢は、傲慢な人間を更に冗長させてしまう。

 よく政治家の中には『相手のことばかり批判している!』なんて文句を言っている奴がいるが、このような狭い器量しか持てないようでは、政治家の資質があるとは思えない。
 民衆は政治家をおだて過ぎてもいけないし、政治家たるものは堂々と相手の批判、意見に対して耳を傾けることが必要だ。そもそも金持ちになっているような政治家なんか存在してはいけないし、生存中に名誉を欲するような政治家なんかは俺に言わせれば最低だ。

 現在、私利私欲にまみれ、民のためではなく自分自身のために政治家及び議員になっている奴が多すぎる。馬鹿すぎる政治家を誕生させてしまう日本、そのような地域に住んでいる人々に、今回はお勧め映画としてオール・ザ・キングスメンを紹介しておこう。

オール・ザ・キングスメン [DVD]
ブロデリック・クロフォード,ジョン・アイアランド,ジョン・デレク,マーセデス・マッケンブリッジ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


 監督はロバート・ロッセン。この人のお勧めはポール・ニューマン主演のハスラー
です。


 

 
 

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映画 英国王のスピーチ(2010) リーダーシップの在り方がわかります

2017年07月30日 | 映画(あ行)
 二千六百年以上にわたり万世一系を貫く皇室を戴く日本人の俺からすれば、英国の王室なんかハッキリ言って見下している。しかし、そうは言ってもかつては(今でもそうだが)世界中に自治領、植民地を持ち、世界を支配した大英帝国の国王ともなれば、その威厳を自国民に見せつけなければならない。
 当然のことながら俺みたいに人の前でスピーチをするのが苦手で引っ込みがちな英国王では、多々あるそのような機会において自国民を大いに落胆させてしまうのは明らか。

 さて第二次世界大戦中において、猛烈な勢いでヨーロッパを席巻するナチスドイツと対峙しなければならない国難に見舞われることになった当時の英国王であったジョージ6世。ところが、この国王は吃音症であり、スピーチが大の苦手。彼は難敵を迎えるにあたり、自らの弱点を克服し、いかにして国民を鼓舞するようなスピーチを行ったのか。

 それではアカデミー作品賞を受賞するなど、アメリカ国民にも大いに受けられたストーリーの紹介を。
 1925年の大英帝国博覧会においてスピーチをすることになった英国王ジョージ5世の次男ヨーク公アルバート王子(後のジョージ6世)(コリン・ファレル)だったが、吃音症のおかげで大失敗。
 彼の妻であるエリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)は夫の吃音症を治すべく様々な専門医を探している内に、植民地オーストラリア出身の言語療法士であるライオネル・ローグジェフリー・ラッシュ)に行きあたる。
 ローグは平民でありながらも王族に対して全く臆することなく、しかもアルバートに対してニックネームで呼んだり、少々型破りな指導法を実践するなどで、当初はうまくいかなかった二人の関係だが、徐々に吃音症が治っていくにしたがい友情が芽生えだす。
 そして英国王に即位したばかりの兄エドワード8世(ガイ・ピアース)は、その座を捨てて少々問題ありのアメリカ人女性の元に走り、アルバートは否応なくジョージ6世として英国王に就くのだが・・・

 本作の主人公はジョージ6世だが、実はその兄のエドワード8世の王冠を賭けた恋の方が題材としては興味が惹かれるし有名なのだが、時に映画は大して知られてないような史実が取り上げられる。
 正直なところ、ジョージ6世が吃音症を克服して国民に向けて立派にスピーチできるようになるまでのストーリーと聞いても、スピーチぐらいで大げさな!というのが恐らく多くの人が思うところ。しかしながらダメ男が立ち上がる姿を見ているとハートが熱くなれる。
 世界中を見渡してもリーダー不適格な人間が、その国のトップに就いているのを多く見かけるが、本作を観ればどのような人間がリーダーとして国民の上に立つべきなのかが理解できる。更に、リーダーとして君臨することの大変さも理解できる。この映画を観終わった後に真っ先に思ったことは、俺にはリーダーとしての資質が無い、と言うこと。
 本作は歴史劇の部類に入るのだろうが、そのジャンルにありがちな堅苦しさはなく、なかなかユーモアがあったりする。
 最後のスピーチは俺が聴いている限りでは、それほど大したことを言っているようには思えなかったのだが、イギリスはその後にナチスドイツのヒットラー、ソ連の共産主義のスターリンといった独裁者と対決することになる。そのことを考えれば、スピーチの内容はともかくリーダーの強いメッセージを国民に伝えることの大切さを感じる。
 どこかの国の首相のようにミサイルを近隣に打ち込まれる度に、ほとんど同じ言葉の繰り返しでは、本当に国を守る覚悟があるのか?と思わざるを得ない。

 観る人によってはウヨクチックに感じる人もいるかもしれないが、英国王と平民との友情に色々と共感できるし、リーダーを支える人物の存在がいかに重要であるかも納得できるような描き方がされている。
 我こそリーダーに相応しいと思っている人、人前でも堂々とスピーチが出来るようになりたいと思っている人に今回は英国王のスピーチをお勧め映画として挙げておこう

英国王のスピーチ スタンダード・エディション [DVD]
コリン・ファース,ジェフリー・ラッシュ,ヘレナ・ボナム=カーター,ガイ・ピアース,ティモシー・スポール
Happinet(SB)(D)





 

 
 

 

 
 
 

 

 

 

 
 

 




 

 
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映画 オルフェ(1949) ギリシャ神話の現代版 

2017年06月10日 | 映画(あ行)
詩人、小説家、劇作家、画家としての顔だけでなく映画監督としても名が知られているジャン・コクトー。「天は二物を与えず」なんて言葉があるが、彼の前ではそんなデタラメな表現は通用しない。
 イケメンなだけが長所の俺にとって、多才でマルチな彼の才能は本当に羨ましい限り。映画監督としてはその作品数は少ないながらも、そんな中でも今でも名作として誉れ高い作品が今回紹介するオルフェ。幻想的かつマジックを見せられているような映像表現は観る者の心を魅了する。

 ストーリーはタイトル名から想像できるが、ギリシャ神話オルフェウスを下敷きに、現代版(そうは言っても昔の映画ですが)に舞台を置き換えた。
 そのギリシャ神話のストーリーに少しだけ触れておくと、愛する妻を亡くしたオルフェウスは黄泉の国から妻を連れて地上へ帰ろうとするが、黄泉の国の支配者であるハデスから戻る途中で絶対に妻を見てはいけない、と条件を出されるが・・・。

 まあ、絶対に見てはいけないと言われると必ず見てしまうもの。本元のギリシャ神話では、オルフェウスは悲惨な末路をたどってしまうが、コクトー版オルフェウスの結末は?それでは本作のストーリーの紹介を。
 文学青年たちが集まるカフェにおいて、詩人であるオルフェ(ジャン・マレー)も居た。その場に王女と呼ばれる女性(マリア・カザレス)と詩人セジェストがやってくる。しかし、程なくしてセジェストはバイクに轢かれて死亡。オルフェは王女に無理やり死体のセジェストを運ばされ、一緒に車に乗せられる。そして到着した場所でオルフェは驚くべく光景を目の当たりにする。なんと、セジェストは生き返り、王女と一緒に従者を連れて鏡の中に入っていく。
 オルフェは愛する妻ユウリディウス(マリー・デア)が待つ自宅に帰ってくるが、オルフェの心は妻よりも王女の方へ傾いていた。
 そして、ある日のことユウリディウスはバイクには轢かれ死亡。なぜかいつも附いてくる車の運転手のウルトビイス(フランソワ・ペリエ)のアドバイスを受けて鏡を通り抜け、ユウリディウスに会うために死の国へ行くのだが・・・

 なかなか笑えるのが黒ずくめ衣装の王女のドエスっぷり。命令口調で、いちいち男どもに指図する様子は混迷を続ける民進党の代表であるレンホーさんを思い出させる。
 鏡を通り抜けるシーンは本作が公開された1950年ということを考えると、けっこう驚けるし、死体が起き上がるシーンは今でもよく見られるトリックを使っているが、なぜか新鮮に感じた。
 そして死の国の場面は今見ても幻想的で、流石はジャン・コクトー。そのイマジネーションは同じ人間として嫉妬すら感じてしまう。
 コクトー自身が詩人なだけに、素敵なセリフがたくさん出てくるし、どうせ最後は悲劇で終わるんだろうと観ている最中もそのように思いながら観ていたのだが、良い意味で期待を裏切ってくれる結末は、喜びと悲しみ両方を感じさせる。
 ジャン・コクトーに興味を持っている人、ギリシャ神話に興味がある人、夢心地の気分になりたい人・・・等に今回はお勧め映画としてオルフェを挙げておこう

オルフェ [DVD]
ジャン・マレー,マリア・カザレス,フランソワ・ペリエ,マリー・デア,アンリ・クレミュー
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督は前述しているようにジャン・コクトー。今でも映画化されたりミュージカル化されている美女と野獣がお勧めです。






 

 
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