リニア中央新幹線は相模原―甲府間で先行開業?

 JR東海が2027年に東京(品川)―名古屋間の開業を目指しているリニア中央新幹線の計画で、相模原市と甲府市(周辺)の区間を先行開業することを検討しているとの報道。乗車時間15分で相模原―甲府間を結び、先行開業で得られる運賃収入で建設費回収を早める狙いがあると云うことだが、果たして相模原―甲府間だけが開業したリニア新幹線に(鉄道マニアの記念乗車は別として、実用の目的で)乗車する人がどれ程いるだろうか。

 リニア中央新幹線の相模原市内駅はJR横浜線の相模原駅、あるいは更に京王線も乗り入れている橋本駅が有力だが、ここでは橋本駅にリニア中央新幹線の「新相模原駅」(郷秋が勝手に考えた仮称。政令指定都市「相模原」をアピールするためには「橋本」や「新神奈川」ではなく「新相模原」がもっとも効果的だと思われる)が設置される前提で考えてみたい。

 現在、新宿から甲府に行くためにはJR中央線の特急「かいじ」「(スーパー)あずさ」を使って1時間30~40分程度かかっているが、リニア中央新幹線の相模原―甲府間が開業した場合、京王線で新宿から橋本が最短37分、橋本駅と新相模原駅間の乗り換え時間を15分、更にリニア乗車時間を15分とみて、合計1時間7分で甲府着となる。JRの在来中央線利用より20~30分程早い甲府着となるが、在来線の「かいじ」「(スーパー)あずさ」ならビールを飲みながら本を読んでいると程良い時間で甲府に着くが京王線車内は無論のこと、乗車時間15分のリニア車内でもビールを飲んでいる暇はない。果たして乗る人はいるのか。

 出発地を横浜と考えるとどうだろう。横浜から湘南新宿ラインで新宿に出て「かいじ」「(スーパー)あずさ」に乗ることになるが、この場合の所要時間は2時間20分。リニア中央新幹線利用の場合には、JR横浜線で橋本まで最短40分、乗り換え時間を15分、リニア乗車時間を15分とみて合計1時間10分なり、半分の時間で甲府到着となる。これなら乗る人もいるかも知れないが、新宿―甲府間の特急料金1300円に対して新相模原―甲府間の「リニア料金」がいくらになるのかにもよっても利用者の数は大きく変わって来ることだろう。

 リニア中央新幹線の甲府以西が開業しても、相模原から本来の首都圏側の始発駅となる品川までの工事に時間がかかることだろうから当分の間「新相模原」が首都圏側の始発駅となるものと思われるが、品川駅開業後は単なる通過駅になってしまうのか、東海道新幹線の新横浜駅のような新たな街が出現するのか、政令都市相模原の行政手腕が問われることになるだろうな。

2022年8月25日追記:山梨県知事がリニア中央新幹線の部分開業(神奈川県駅-山梨県駅間)について前向きな発言をするなど、その機運が高まってきているようです。本文記事を書いてからすでに12年が経過しておりますが、その間に静岡県部分の工事が出来ていないことなどによりすでに2027年の東京-名古屋間の開業は不可能となったのは周知の通りです。そのような中でも神奈川県駅(私が「新相模原駅」とした駅)工事は着々と進んでいるようです。JRとしても採算は取れなくても早期全線開業に弾みをつける意味でも部分開業したい気持ちはあるのかもしれません。初出時に、部分開業した折の東京あるいは横浜からの所要時間を算出しておりますが、読み返してみましたらリニアの山梨県駅から甲府駅(甲府市の中心部)までの所要時間についてまったく触れられていないことに気がつきました。山梨県駅がJR身延線の小井川駅に隣接した場合ですが、甲府駅までは25分程度の乗車時間となります。ただし、JR身延線の運行本数は日中で1-2本程度ですので多くの場合家族や用務先会社等の関係者に車で迎えにきてもらうかタクシーを利用することになるのでしょうか。要するに先行開業しても実用上の利便性はほとんどなく「実際に乗れるショールーム」といった性格のものになるのでしょう。それでも速達性が実感できれば、大阪までへの早期開業に向けてのプラス材料にはなることでしょう。

 ついでにもう一つ書いておくならば、東京-名古屋間2027年開業の最大の障害となった静岡県部分の工事についです。現在の東海道新幹線に新駅(仮称:静岡空港駅)を作ることをJRが約束すれば問題はすべて解決し工事が始まることは間違いありません。なんといっても新幹線が静岡空港の直下を走っているのですから、ここに駅をつくらない手はありません。静岡県としては大井川の流量減少を懸念してリニア静岡工区の着工を認めていないとしてはいますが、静岡空港駅(仮称)の実現はリニア静岡工区問題を解決し、既存の東海新幹線、静岡空港駅、静岡空港、リニア新幹線の相乗効果を考えれば最善かつ唯一の解決策と言えるのではないでしょうか。静岡県知事としては、静岡空港駅(仮称)の要望がJR東海との交渉手段であると「邪推」されることを避けたい思いはあるのでしょうし、JRとしても掛川駅に近いことを理由に渋ってきた経緯があるとは思いますが、ここは大人同士の話としてうまく進めてほしいものですね。

 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、いまどきの首都圏の紅葉。このところの冷え込みで色づくテンポが急に早くなり、木によってはすっかり散ってしまったものもあります。今年は手近な場所とは云え、天気さえ良ければ短時間ですが連日カメラを担いで出かけていたのでしたが、絶好の被写体に巡り会えないでいます。希望は既に来シーズンへ・・・。

コメント ( 2 ) | Trackback (  )
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コメント
 
 
 
Unknown (Unknown)
2024-01-19 23:45:32
掛川駅を廃止しても、静岡空港駅を作って欲しいですね。
 
 
 
Unknown (郷秋<Gauche>)
2024-01-20 11:07:53
掛川駅を廃止ですか?
掛川駅は建設費を地元で負担する「請願駅」として、30億円もの市民募金によってできた駅ですから、それを公言すると夜道を歩けなくなりますよ(^^)
 
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