平安夢柔話

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河内源氏 ~頼朝を生んだ武士本流

2017-09-30 20:03:48 | 図書室1
 久しぶりに歴史評論の本を紹介します。

☆河内源氏 ~頼朝を生んだ武士本流
 著者=元木泰雄 発行=中央公論新社・中公新書 本体価格=800円

本の内容
 十二世紀末、源頼朝は初の本格的武士政権である鎌倉幕府を樹立する。彼を出した河内源氏の名は武士の本流として後世まで崇敬を集めるが、祖・頼信から頼朝に至る一族の歴史は、京の政変、辺境の叛乱、兄弟間の嫡流争いなどで浮沈を繰り返す苛酷なものだった。頼義、義家、義親、為義、義朝と代を重ねた源氏嫡流は、いかにして栄光を手にし、あるいは敗れて雌伏の時を過ごしたのか。七代二百年の、彼らの実像に迫る。

目次
1 河内源氏の成立
2 東国と奥羽の兵乱
3 八幡太郎の光と影
4 河内源氏の没落
5 父子相剋―保元の乱の悲劇
6 河内源氏の壊滅―平治の乱の敗北
むすび―頼朝の挙兵

 河内源氏の祖、頼信から頼朝挙兵までの一族の歴史が述べられている本です。専門の先生が正確な史料に基づいて書かれたものですが、新書という形態なので一般向けに書かれたと思われるのでわかりやすいですし、何よりとても面白いです。

 上でも書きましたが、主に頼信以降のことが書かれていますが、武門源氏の祖、源経基についても少し触れられています。
 経基の出自については、同じ元木先生の「源 満仲・頼光」(ミネルヴァ書房)に詳しく書かれていて、私もこちらの本を参考にさせて頂き、こちらに記事を書きました。
 で、今回読ませていただいた「河内源氏」によると、経基は貞純親王が夭折してしまったため元平親王の養子になったのではないかという説が紹介されていました。これは納得の行く説だと思いました。

 このように冒頭から興味深い記述が。それで、私の読み違いや勘違いもあるかもしれませんが、興味を惹かれた内容を少し紹介させて頂きますね。

☆満仲の3人の子のうち、頼信が一番暴れん坊。彼は平忠常の乱を鎮圧したことで有名だが、実はそれよりずっと以前、忠常を攻撃し降伏させたことがある。それ以来、2人は主従関係を結んでいたのだそうです。紹介されていた「今昔物語」に書かれた頼信のエピソードにも興味津々。

☆前九年の役・後三年の役で活躍した義家は決して栄光の人生を歩んだわけではない。後三年の役は私闘とされ、朝廷からの恩賞もなく、弟の義綱と対立し、嫡男の義親は西国で暴動を起こすなど、挫折の連続だった。特に、一歩間違えれば義綱が嫡流になったかもしれなかったなんて、このことは知りませんでした。

☆為義と義朝は、親子でありながら対立していたというのは知っていたのですが、義朝は一時廃嫡され、投獄に追いやられていたのですね。
 そしてなぜ、保元の乱で為義が崇徳方、に、義朝が後白河方についたのかも納得。
 元々為義は摂関家の忠実・頼長と主従関係で、義朝は鳥羽院・美福門院と主従関係だったのですね。

 更に、河内源氏嫡流だけではなく、傍流についても記述されていますし、藤原氏や天皇家、平氏との人間関係にも触れられていて興味深かったです。私はこのような、「一族の歴史」みたいな本が大好きなのかもしれません。

 それにしても親子・兄弟での苛烈な嫡流争いは河内源氏の伝統なのかなと思ったり。でも、全国各地に勢力を広め、土着の武士たちと主従関係を結んでいくところは見事だなと思いました。壊滅しても復活する、これが河内源氏の底力なのかもしれません。読んで良かったと思えた1冊でした。興味を持たれた方、ぜひどうぞ。

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