平安夢柔話

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ぬけまいる

2015-02-10 10:02:10 | 図書室3
今回は、先日読み終わった時代小説を紹介します。

☆ぬけまいる
 著者=朝井まかて 発行=講談社
価格=1620円(単行本) 832円(講談社文庫)

[要旨]
 一膳飯屋の娘・お以乃。御家人の妻・お志花。小間物屋の女主人・お蝶。若い頃は「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれ、界隈で知らぬ者の無かった江戸娘三人組も早や三十路前。それぞれに事情と鬱屈を抱えた三人は、突如、仕事も家庭も放り出し、お伊勢詣りに繰り出した。てんやわんやの、まかて版東海道中膝栗毛!

 江戸に住む女3人が伊勢神宮へ旅をする道中を描いた時代小説です。

 時は黒船が現れる10年ほど前…。

 一膳飯屋の娘、お以乃は独身で、様々な奉公先を転々としたあと、今は母の店を手伝っている身。
 この先どう生きていったらいいかわからないまま戯作を書き、弟が奉公する版元に持ち込みますが、原稿を読んだ弟から、「才能がない、やめた方がいい」と一蹴され悶々とした気分に。
 そこへやってきたのが幼なじみのお蝶。彼女もまた、家庭の中で疎外感を感じ、恋人に浮気され、鬱憤を晴らすためにお以乃の所に来た様子。
 更にもう一人の幼なじみ、お志花もどうやら複雑な事情を抱えている様子でお以乃を訪ねてきます。

 そこで、「3人で旅にでも出ようか」という話になり、伊勢に抜け詣りしようということになって即出発。

 こうして始まった伊勢旅行はまさに珍道中。
 出発した早々、巡礼を騙った小娘一行にだまされ、全財産を巻き上げられてしまいます。
 途方にくれた3人ですが、小田原でふとしたことから知り合った団子屋老夫婦のもとで旅人たちのための足裏マッサージ稼業をやってお金を稼ぐことになります。

 こうして少しお金を貯め、再び旅に出た3にんですが、抜け詣りのため手形がなく、箱根の関所を通ることができません。そんな3人を助けてくれたのは、宿でたまたま隣同士の部屋になった駿河国の商人を名乗る長五郎という、彼女たちより少し年下の男でした。

 さらには、江戸に行った店主の留守番替わりに店を任されたり、たまたま泊まった宿屋のごたごたに巻き込まれたり…と、色々なことが起こります。

 読み進むうちに、2つの謎が気になってきます。

 一つはお志花の抱えている事情。他の2人の事情は語られるのに、なぜかお志花についてはラスト近くまで謎のままです。
 もう一つは箱根で3人を助けた長五郎の素性。彼は3人の道中の所々にちょこちょこ顔を出すのですが、どうやら堅気ではないということが次第にわかってきます。実は彼は歴史上の有名人物なのですが、それがわかったときはびっくりしたと同時にやっぱり…という感じでした。

 そんな謎のほか、3人が出会う人たちがみんな魅力的。そんな魅力的な人たちとの心温まる人情エピソードにはほろりとさせられます。
 また、主人公の3人が個性的で、それぞれ感情移入できました。3人とも、女のたくましさが感じられてすがすがしかったですし。そして、一緒に旅をしている気分になって楽しく、上で書いた謎も気になって、2日間で読了してしまいました。

 この小説は江戸時代が舞台ですが、完全なフィクションですので誰でも楽しく読むことの出来る1冊だと思います。特に、時代劇の好きな方と旅の好きな方には絶対にお薦め☆です。

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