平安夢柔話

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杉本苑子の枕草子

2009-09-24 21:01:48 | 図書室2
 今回は古典の現代語訳の本の紹介です。

☆杉本苑子の枕草子(わたしの古典9)
 著者=杉本苑子 発行=集英社

内容(「BOOK」データベースより)
 中宮定子に仕えた清少納言が、後宮の好尚や有り様を記録した『枕草子』は、一人の作家による随想と小説を、一冊にまとめた作品集といっていい。「春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎわ…」この冒頭は、あまりにも有名である。にくきもの、心ときめきするもの、見ぐるしきもの等々、清少納言が、その美意識をすみずみにまで生かしきった世界が、いま現代語訳で新たに蘇る。

*この本は初め、「私の古典」シリーズの第9巻として単行本が出版され、その後、集英社文庫から文庫化されましたが、単行本・文庫本ともに現在では絶版のようです。興味を持たれた方、図書館か古書店を当たってみて下さい。
 なお写真は、私が所持している「私の古典」シリーズの単行本です。


 以前に紹介した「円地文子の源氏物語」「阿部光子の更級日記/堤中納言物語」と同じく、私の古典」の中の1冊です。

 私はこの本を20年くらい前に購入しました。そして、折に触れてはぱらぱらとめくって拾い読みし、「枕草子」の世界を少しずつ楽しんでいたのですが、お恥ずかしながら全部読んではいませんでした。今度、最初から最後まで読み通してみたのですが、訳者の主観を交えることなく、清少納言が表現した世界をそのまま再現してくれていて、とてもわかりやすく読みやすい訳だと思いました。

 ただ惜しいことに、この本、全文訳ではありません。面白そうな章段が半分くらい取り上げられているだけです。でも、有名な章段は網羅されているように思えましたので、枕草子ってこういうものなのだ~と、大まかな内容をつかむのには充分な本だと思います。

 特に、歴史小説家の杉本苑子さんらしく、日記的章段と呼ばれる章段の訳に力を入れているような気がしました。
 清少納言が、中宮定子の出産のため、平生昌の邸宅にお供をする話、積善寺供養の話、雪山がいつ消えるか賭をした話などは、一つの物語として楽しく読めました。宮中に出入りする貴族たちの描写の章段も面白いです。私たちは「枕草子」によって、一条天皇御代の宮廷の様子を生き生きと知ることができるのですが、それを杉本さんはそっくりそのまま、この本で伝えてくれています。

 また、「枕草子」には、現代でも通じるようなことがたくさん書いてあると、改めて感心しました。
 特に、「そうそう!」と思ったのは、「うれしきもの」の中にある、「初めて読む物語の一の巻が面白く、続きが読みたいとあこがれていたとき、二の巻が入手できたときの喜び」という文章。よくわかるなあ。そして、そのあとの、「物語が進むに従ってつまらなくなるものもあるけれど」もわかる気がします。千年前の人も現代人と同じ事を考えていたのですね。

 他にも、「そうそう」と思った文章は数え切れないくらいありました。これを機に、ぜひ全文訳のものも読んでみたいと思いました。

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