江戸糸あやつり人形

江戸時代から伝わる日本独自の糸あやつり人形。その魅力を広めるためブログを通して活動などを報告します。

立つ位置が変わると

2013-05-02 23:43:54 | 日記
2001年にパレスチナ・イスラエル公演を経験し、
パレスチナ側から見たとき、日本で報道されているのと随分違うことに気付いた。
その時出会った某新聞社の遊軍記者は、パレスチナ側の東エルサレムに
活動の中心をおいていたのだが、
西エルサレム(イスラエル側)にある支局の人間とは、
モノの見方が180度変わってしまったと言っていた。
パレスチナの東と西に境界線など全くないのに、
立つ位置が変わるだけで、世界の見え方が変わるのだ。

その頃米大統領が和平へのロードマップを発表したが、
パレスチナ側の眼を持って見ると、欠点が私にも分かる内容で
案の定パレスチナ側に否定されてしまった。

日本ではなかなかパレスチナ側からの報道に接することがないのだが、
最近手にした「パレスチナ問題とキリスト教」(村山盛忠・著 ぷねうま舎・刊)
は、キリスト者の眼を通して問題点を明らかにした好著だった。

ユダヤ教の伝統には、三つの誓いがあるそうだ。
1つは、民としての自律を獲得しないこと、
そして、たとえほかの諸々の民の許可が得られても「イスラエルの地」に
    大挙して組織的な帰還を行わないこと、
最後に、諸々の民に盾を突かないこと

こんな誓いがあると知ると、今の現状はなんなのかと考えてしまう。
ただ著者は、もっと別なところに問題はあるという。
それはホロコーストに代表されるユダヤ人問題。

欧州で民族主義国家が樹立していくとき、
どの民族にも馴染まないユダヤ教を信じる人々(ユダヤ人)は
各地で排除されるようになる。
ホロコーストはまずハンガリーで始まり、ロシアに広がり、欧州全土に
広がってナチスドイツに行き着く。
三つの誓いをかたくなに守っていたユダヤ人の中にも
ホロコーストから逃れようとする人がでてくる。  そして約束の地へ。
結局欧州は、「ユダヤ人問題」を「パレスチナ問題」にすり替えてしまい、
「ユダヤ人問題」を解決することを止めてしまった。

そしてイラクを攻撃したブッシュ大統領は、「十字軍」を名乗ったが、
いまだ欧米から抜けない「十字軍意識」が問題だと指摘する。

ところが十字軍と戦ったキリスト教徒がいた。
エジプトを中心に活動しているコプト教の人々。
ナザレで公演したとき、フランス系の修道院に宿泊したが、
コーランが聞こえてきて不思議な気持ちになった。
しかしキリスト教とイスラム教が共存できる、その証を経験していた。

日本にいると、パレスチナは遥かに遠いところで、
意識なんかしなくても平和に暮らせる、と多くの日本人が思っている。
そしてイスラム教に改宗すると、テロリストになると思い込む人も
増えている。
「イスラム教で共通なのはアラーの神だけで・・・・」などと
軽々しく口にする世の中の先頭に立っている人もいる。
でも、と思う。
立つ位置を変えて世の中を見てみると、
今まで気づかなかったことが見えてくる・・・

いろいろ考えさせられた良い本だった。
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