マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『谷中暮色』を観る

2009年11月01日 | やねせん

 昨日(10月31日)、「シネマアート新宿」へ『谷中暮色 Deep in the Valley』(舩橋淳監督作品)を観に行きました。事前に見たパンフレットに、上映前に監督初め主演の男女優のトークショーを予定と書かれていた事もあり、開場20分前には30人ほどの列が出来ていました。観劇料シニア1000円を払い入場。この料金設定は有難い限りで、定年間近の日々には心待ちしていたものの一つですが、意外と活用していません。今年に入っても観た映画は「点の記」と「女神の報酬」の二本だけ。久しぶりの映画鑑賞です。
 
 この映画が10月末に上映されることを知ったのは「やねせん」散歩のときでした。ポスターが、谷中銀座入口付近のお店に貼り出されていました。又10月半ばに、若い元同僚と一献傾けたお寿司屋さんで、店主にその話を振ると、無口だった店主は急に饒舌になり「そのポスターに登場する赤い自転車、うちの孫のものでね」とそのポスターに登場する店脇の小路地に案内してくれました。そこにはちゃんと赤い子供用の自転車も置かれていました。観る前からこんな面白い情報が入ってくればいやが上にも盛り上がります。


    (ポスターに登場する赤い自転車)

 「新宿シアター Screen1」は座席数60ほどの小劇場。10人ほどの立ち見が出来、程なく監督と主演男優(野村勇貴)と主演女優(佐藤麻優)が登場。簡単な挨拶の後上映開始となりました。


        (新宿シネマ 6階)
 


         (上映前の挨拶)

 谷中がどのように撮影され、紹介されるのかを観たい、これが一番大きな動機です。が、観る前から”構成”はやや複雑で重層的と知っていました。その通りでした。時制が3つ登場し交差するのです。現在、過去、大過去です。
 谷中に存在した五重塔が炎上・消失した昭和32年が過去。それを撮影した8ミリフィルムの存在を知り、その行方を追い求める男女の織り成すドラマが現在。そこに幸田露伴原作「五重塔」の劇中劇の大過去が挟まれ、現在と大過去が交互に登場します。
 現在は面白い”構成”です。8ミリフィルムを捜し歩く俳優の演じる二人が実在の人々を訪ねインタビューするのです。言わば”虚”が”実”を訪ねるのです。”実”で登場する地元の人々は多彩です。墓標の戒名を記す書の達人・山車人形作りの五代目・かんな使いの名棟梁・了ごん寺住職・炎上する五重塔を撮影した写真家・初音小路の飲み屋・常在寺の墓守などのみなさん。仕事振りが撮影され、過去と五重塔への思いが語られます。観ていて一番楽しかった場面です。
 8ミリフィルムを捜し訪ねるという脚本の基に進められた撮影。”実”の世界への訪問の過程で、8ミリフィルムに到達したのです。谷中明王院に存在していた事が分かったのです。その様に脚本を作り変え、その8ミリフィルム再生の中で、塔の炎上場面が登場します。物凄い勢いで炎上する五重塔、最後には崩れ落ちていきます。ここが圧巻でした。
 映画を観、パンフレットを読んで気が付いたことが幾つかあります。推測も交えてですが、
 ①この映画は2009年第59回ベルリン国際映画祭で絶賛されたこと
 ②監督舩橋淳は前作「ビッグ・リバー」に続いて、この作品でもベルリン国
   際
映画祭ワールドペレミアムという快挙となったこと
 ③五重塔は谷中墓地内「感応時」(天王寺)に建てられていたこと
 ④
「新宿シアター 2」ではコーヒーの無料サービスがあったこと
 ⑤五重塔再建運動が推進されていること
 ⑥谷中の地名は本郷台地と上野台地の間の深い谷の中にあった事に
  
由来するらしいこと
などなどです。
 購買してきたパンフレットでは著名な映画評論家や映画監督から、その作品の意味するところが語られ、賞賛の辞が述べられていました。その中で私が共感を覚えたのは次の指摘です。
 『炎上する五重塔の映像以上に、”不在”であるはずの塔が
  この町に住む人たちの心にいまも確固として存在していることに心を
  うたれた。
  この映画が描くのは塔へのノスタルジアではなく、その”不在”の大き
  さである。
  仲俣暁生(文芸評論家)』


       
(上映後の監督と主演女優)
  
 ここに登場する「谷中映画保存協会」は「映画保存協会」の事ではないでしょうか。「映画保存協会」は歩いて15分の距離。日曜だけの開館、今日訪れて確かめたいと思います。
 
 

 

 


 
 


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