マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『高瀬舟』を聴く

2013年04月09日 | 映画・美術・芝居・落語

 4月6日(土)、”かたりと”の公演「高瀬舟」を聴きに、竹ノ塚にある、国登録有形文化財の「昭和の家」に出掛けた。”かたりと”とは、語りと和楽の、三人の芸人衆のことで、即ち語りの北原久仁香、筝の山田雅生、津軽三味線の小池純一郎の三人である。これまでに、公演を2回聴いていた。第1回が旧安田楠雄邸での「奉教人の死」、第2回が杉並区南阿佐ヶ谷にある「ドーモ・アラベカス」での「恋愛小説」。今回が3回目で、いずれも文化財など、由緒ある建物での文学作品の朗読と和楽の演奏。
 今回の公演も、「奉教人の死」の時と同じく、津軽三味線と筝の演奏に続いての「高瀬舟」の語りとなった。「高瀬舟」は言うまでもなく森鴎外晩年の短編小説。(写真:かたりとの三人)



         (写真:聴き手席)

 高瀬舟は京都高瀬川を上下する小舟。徳川時代に流刑を申し渡された罪人はこの舟に乗せられ、最後は淀川を経て大阪へと回された。罪人を護送するのが、京都町奉行配下の同心。あるとき護送を命じられた羽田庄兵衛が、弟殺しの罪人喜助を観察していると、如何にも楽しそうな様子。不思議に思った庄兵衛が、そのわけを聞くところから、物語は核心へと入っていく。(写真:舞台)








 短編とは言え、1時間弱にもわたる語りをよどみなく語る北原さんに感嘆する。張りのある声が基調に流れ、時にささやくような微かな声に代わる。喜助の気持ちが昂ぶる場面では、速い言い回しとなり、落ち着いた気持ちはゆったりと語られる。緩急自在に変化する艶のある声。時に流れる津軽三味線と筝の合奏の調べ。明治時代に書かれた、江戸時代の風景の一断面が鮮やかに甦る。
 この語りに魅せられ、聴きたくて毎回の様に集う常連が何人もいる事だろう。当初30名の午後1回の公演は、急遽午前の公演が追加され、2回となったのもその表れか。(写真:語り終えて)




 ”かたりと”が建物を大切に考えている事が良く分かる。その縁で繋がったのだろう「杉並たてもの応援団」も公演に協力する一方、この公演は「昭和の家」が文化財に登録されたことを記念しての催しでもあった、「昭和の家」の接待も温かく、
気持ちよいもので、終演後の建物案内と建物そのもの様子は次回ブログで。