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イラン原油の禁輸措置の法的根拠とは何か

2012年01月14日 19時20分50秒 | 法関係
気になるので、もう少し書いておきたい。
まず米国の事情というのがあることは分かる。それは主として国内的な政治状況によるものである。議会を中心に、対イラン制裁を強めるべし、という声及び姿勢は顕著になっているであろう、と。オバマ大統領への圧力は増しているはずだ。
同時に、米国国内法によって、制裁対象の法的根拠が与えられているであろう、ということも分かる。制裁法の意義や是非は別として、そういう法律が米国内で作られているということは事実なのだから。議会と立法手続に基づいて制定されたのだから、そのことを当方があれこれ述べる立場にはない(抱くとしても個人的感想ということになる)。

そういう米国国内法が存在することと、日本(或いはEU諸国や韓国なども含めて)がイラン産原油を禁輸すべし、ということを求められる法的根拠は必ずしも一致しないのではないか。


>http://www.mof.go.jp/public_relations/conference/my20120112.htm

ガイトナー財務長官発言
『また大臣と私は、日米協力のあり方ということでイラン中央銀行を国際金融システムから切り離し、石油収入を減らすといった方法を含め、イランの政府に国際義務遵守をどう働きかけていくかということについて、日米がどう協力できるか、その方策を検討しました。』
『まずイランですけれども、先程申し上げましたしご存知だと思いますけれども、ヨーロッパと日本、世界中の国々と緊密に協力することによってイランに対する圧力というのを大幅に高めています。イランの中央銀行を国際金融システムからどうやって切り離すか、そしてまたイランの石油輸出収入をどうやって削減出来るかについての方策を模索しています。』

このガイトナー発言からすると、やはりいくつかの疑問を生じるわけである。
・イランの負う”国際義務”とは何か?
・イランの石油収入削減の根拠とは何か?

国際的な約束を守らないので、「制裁を加える」(昔の変な学生運動みたいな言い草ではある)ということなら、イラン以外の国だって色々とあると思うが。どうして他の国には、制裁を加えないのだろうか。イランの違法性の理由とか、義務に反するので罰を与えることの正当性が全く見えない。
イランへの制裁法(CISADA)で対処するとして、その法律がどのように日本の原油輸入削減ということと結びつくのか、説明がないと判らない。単に「イランが憎たらしく、反抗的なのが気にくわない」ので、その嫌がらせとして「イランの商売を邪魔してやるぜ」というのと、違いがあるようには見えない。

それに、仮にCISADAを根拠とするなら、法律の解釈論か法適用の技術論のようなことになるだろうから、「どうやって削減できるか」というような話にはならないはずだ。ルール(法)を示して、これこれこうだから、この条項なり罰則が発動される、と説明できるはずなのだから。それは必然的にそうなる、ということであって、遮二無二「どうやってできるか」を考えることではないはずだ。恐らく現時点で、CISADAという法の枠組みではイラン産原油の輸入制限を課すことの正当性が見い出せない、ということなのではないか。そうじゃなければ、法の適用はほぼ自動的に発生するのだから、日米で集まって協議した挙句に「方法を考える」なんてことにはならないはずだ。


要するに、アメリカがご立腹(イスラエルも、だ)なので欧州に同調を求めて、もっと仲間を増やそうということで、日本や韓国にも「お前らも一緒にやるに決まってるよな?」と「イラン苛め」の仲間に加わることを求められているということなんじゃないの?

イラク戦争の時もそうだが、大量破壊兵器があると出鱈目を言って侵攻したじゃないの。そういうのは全部ウソだっただろう?
イランの核開発問題というのは容易ならざることではあるけれども、だからといってイランが何かの犯罪やテロをしでかしたかといえば、そうではないだろう。


CISADAの制裁発動条件というのがあるが、非常にかいつまんでいうと次のようになる。
①「イラン政府の大量破壊兵器、米国指定のテロ組織支援」への便宜供与
②「安保理決議等の金融制裁対象者」への便宜供与
③ ①及び②の為のマネーロンダリング
④イラン中央銀行か金融機関による①又は②の便宜供与
⑤IEEPAにより資産凍結されている組織(関係者)あるいは金融機関への取引幇助、金融サービス提供

ガイトナー長官は上記④に関連しての発言だと思うが、論理の飛躍があり過ぎるように思われる(というか、法的にはCISADAでは困難ではないか、という見解に立っているのであるからこそ、適用は難しい=禁輸措置実施は実現性が厳しいということではないのかな、と)。

適用を言うつもりだとして、次のようなことであろう。
あ)イラン政府が核開発(ウラン濃縮20%)
い)イラン政府にイラン中央銀行は金融サービスを提供
う)あ)が大量破壊兵器開発行為だから、い)は④に該当
従って、④の悪事を働いているイラン中央銀行と知りながら、そことの取引を行う非米国金融機関(例えば日本のメガバンク)の米国内活動は制裁対象=米国での金融活動はできなくなる、と。

そういう理屈であれば、あ)の前提が「大量破壊兵器開発」であると立証される必要があるわけである。IAEA査察に応じて監視下にあるのに、大量破壊兵器開発だと認定できるのか?
極秘に濃縮開始をしたのでもなく、そもそもIAEAが知っているわけだし、違法性をどのように認定できるのか?

イランの国際義務遵守を求める米国自身が、この疑問に答えていない。相手に義務遵守を求めるなら、まず義務違反の事実を立論するべきである。世界で一番国際法を無視ないし軽視しているのは、米国ではないか。イスラエルもそうだがな。


更にいうと、こうした何段論法的こじつけ論でもいいということなら、どんなことだって制裁対象にできるよ。
また例で書いてみるよ。
パリにテログループが存在するとしよう。テログループは偽名で銀行口座を使ったり、カードを作ったりして金融サービスをテロ活動に用いていた、とする。そうすると、そうしたテロ組織に対する支援行為だとか「テロ組織への便宜供与」「テロ組織のマネーロンダリング(幇助)」になってしまうので、この金融機関と取引のあるECBは「悪の中央銀行」ということになる。悪の中央銀行たるECBと取引している在欧金融機関は「制裁対象とできる」みたいなもんだな。
どんだけこじつけだよ、と。これでもいいということですね?(笑)

イラン中央銀行と取引のある金融機関を全て制裁対象とする、というのであれば、米国が法的見解の立論を行う義務を負うはずだ。
まあ、ありもしない大量破壊兵器を「あるある」と言って世界中を騙した挙句、国際法違反で自分勝手な論理でもってイラクに攻め込むことなど朝飯前の米国にとっては、どんな屁理屈でもいいということなのであろうがね。
そういう遵法精神のかけらも持ち合わせてはいない国家が、イラン相手に「国際義務遵守」を求めるとは、まさに笑止。

長くなったので、続きは後で。



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